エストさんの「ルリのかさね ~いもうと物語り~」の感想

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どうしようもなく、変わってしまう事。変えたくとも、変えられない事。 そんな事でいっぱいのなんともままならない毎日だけど、幸せは確かにそこにあった。 これはそんな小さな幸せを見つけに行く物語。

こんな書き始めの感想はどうかとも思うのだが、ぶっちゃけこの作品フルプライスで売れるクオリティの作品ではない。CGはお世辞にも綺麗とは言えないし、シナリオのボリュームはミドルプライス程度。コンフィグは00年代を彷彿とさせるレベルで貧弱、誤字やキャラ名の入力忘れ、バグも多い。ねこねこソフトの、片岡ともの描く情緒感あふれる世界に浸りたいという方以外にはあまり勧められない作品となっているので、高評価が気になってプレイを考えている方はそこらへんを留意しておかないと厳しい評価になってしまうかもしれない。かくいう私も気になってはいたがねこねこソフトは今作が初プレイであり、シナリオのみならずUIまであまりに古臭いので初めは戸惑ってしまった。


そんな本作だがシナリオのクオリティについてはむしろ高い水準にあったと思う。テーマは一言に書いたように「日常の幸せ」だろうか。依知子√、YURA√、RURI√、RURI/RURI√の個別全4√でヒロイン達と人生を重ね合わせ、言いようのない理不尽に見舞われながらもなんてことのない「日常の幸せ」を描くというコンセプトが丁寧に描かれている。たとえ劇的な変化が起ころうともただ淡々と出来事を描写することで、どんなことがあろうとも日々はそのまま続いていく事の残酷さ、反面その日常にこそ感じられる愛着をしっかりと描けていた。以下、√毎に簡単な雑評。

▽依知子√
この√だけはヒロインと日々を重ね合わせて生きる幸せを描くというコンセプトよりも、「夢を追う」というテーマがメインのテーマとなっており他の物語とは少し気色の違った物語になっている。他の√にも言える事ではあるのだが尺が短いため展開が急激に変わり過ぎているように感じられ、正直このお話はあまり出来が良いとは感じられなかった。依知子と主人公が惹かれあう過程は積み重ねた2人の日々が短い事からあまりに急激な接近に感じられたし、バイトを終えて夢を見失っている自分に気づく依知子√の山場の展開も同様に展開が駆け足のため大きなカタルシスを味わうことはできなかった。賽銭箱に札束をぶちまけるシーンはこの√の一番の見せ所となるシーンのはずだが、むしろシュールなギャグのように映ってしまっていたように思う。全体的にライトな印象が強い√だった。

▽YURA√
 依知子√とは打って変わって主人公と佑咲の関係性が物語の時間軸的にもテキストの厚み的にもじっくり丁寧に描かれており、予想外にも非常に楽しめた√だった(前評判から完全にRURIゲーだと思っていたので)。変えたい自分と変えられない現状に感じる葛藤に悩み、大切に思う日常だからこそそれを手放してしまいたいという佑咲の悩みが丁寧に描かれている。一般的なノベルゲーなら主人公とヒロインの対話シーンをメインの見せ場にしてヒロインの悩みを解決し大団円となるところだが、お見合い会場で主人公と歩んできた日々、幸せを思い返し佑咲は勝手に悩みを解決してしまう。誰に諭されるわけでもなく勝手に悩み、勝手に救われる佑咲の描かれ方に非常にこの作品らしさを感じた。言葉にすると陳腐だが、ままならない毎日をどう思うか、幸せを見つけられるかはその人次第という事なのだろう。RURI√よりパンチが弱い√ではあるが、最も本作のテーマを明確に描いている√でもあり非常に楽しめた物語だった。

▽RURI√
位置づけ的には2人が日々をすれ違わせてしまった、いわゆるBAD√にあたるのだろうがむしろ本作一番の見どころはこの√である。佑咲もいない2人だけの世界を作り上げた主人公達だったが、病に倒れたルリとの間でその2人の世界さえもすれ違わせてしまう。「妹の場合」のシーンではルリの想いが、「兄の場合」では主人公の想いが主観でしっかりと描写されておりこれのおかげでかなり感情移入が出来たと思う。仲を修復し、やがて訪れる終わりに向けてただ大切に日常を紡ぐ2人の姿には心が揺さぶられ涙してしまった。
RURI√は内容的には鬱的な展開が多いにもかかわらず、この√をBADエンドと評する人はあまりいない。これはやはりこの物語でも2人なりの、2人だけの幸せを最後まで紡ぎ切ったからだろう。死という明確な不幸せを目の前にしてもただ日常を大切に生きる、そんな2人を淡々と描いた片岡さんのテキストには何度も感心してしまった。長い期間重みを持って描いてきた2人の人生があるからこそ、最後の夫婦の誓いのシーン、そしてルリの死後の主人公の述懐には大きなカタルシスが味わえた。√突入後は展開に退屈を感じもしたが終わってみれば非常に満足度の高い√となった。

▽RURI/RURI√
 変なタイトルがついたルートだなというのが第一印象だったのだがプレイしてみてタイトルに納得したお話だった。RURI√で2人が上手くいかなかった理由は主人公とルリの関係が「兄と妹」にとどまったこと、即ち庇護する側と庇護される側という対等ではない関係にあったことにあると思う。対等ではない関係は2人の間に遠慮を生み出し、ルリの病が完治しないという最悪の結果につながってしまった。一方TRUE√にあたるRURI/RURI√ではルリは単なる妹という存在を超えて主人公の人生のパートナーとして描かれている。シナリオ選択画面に私服のルリと全裸のルリが並んで表示されていることから考えても、妹であると同時に1人の女性でもあるルリと新たな関係を紡ぎだしていくという√がRURI/RURI√なのだろう。主人公とルリが別々に風呂に入るようになっているなど二人の関係の変化を表す細かい対比も描写されていた。終わってみれば、2人のルリと関係を重ねるという意味合いが表現された良いタイトルの√だったように思う。
 
●総評
 癒し系だとかノスタルジックな作品を作ることに定評のあるねこねこソフトさんだが今作でその良さの片鱗に触れることが出来たと思う。今作もまた、終わった後に少し気持ちが軽くなりさっぱりするような気持のよい作品であった。今の時代にこういう作品は古臭いと思われるだろうし(システム等も古臭い事もあって)セールス的には厳しいものがあるかもしれないが、今後もねこねこソフトらしい作品を作っていってくれればと思う。
素直にプレイしてよかったと思える良い作品だった。
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