エストさんの「景の海のアペイリア」の感想

ネタバレ感想を見たくない場合、文字を背景色に設定することが可能です。 → 設定変更

**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

読者を楽しませるエンタメ作品として非常に高い完成度を誇る超良作エロゲだった。萌え・燃え・笑い・泣き・頭脳戦・SF・先の読めない伏線ゲーとテンポよく切り替わる様々な要素が読者の目を引き付けて離さない。非常に楽しめた一作だった。
○総評
一言で表すと、読者を楽しませる要素がこれでもかと詰め込まれたハイブリット型エロゲ―。
軽快な下ネタギャグパートがあれば学術的な知識を引用したSF要素があり、熱い戦闘シーンがあれば騙しあいの心理戦も描かれるなど様々な要素が非常に高いレベルで纏まっていた。伏線の張り方も上手く、先の展開を読者に予想させない伏線ゲー的面白さもある。
正直それぞれの要素を切り取ってみればこの作品を上回る面白さの作品などいくらでも挙がるとは思う。しかし本作は短いスパンでテンポよく展開を切り替えており、萌え・燃え・笑い・頭脳戦・泣き・SFと手を替え品を替え、畳みかけるように展開を重ねてくる。これが読者の興味を引き続けることを成功させているように思う。本作は基本的にループゲーだが、ループゲーにありがちな似た展開が連続する冗長さを本作には感じなかった点もこの事が大きいだろう。読者を飽きさせないための様々な工夫が伺えた。

○主にシナリオ周りについて
大元の設定からSAOやシュタゲを連想する人も多かったとは思うが、蓋を開けてみれば全く別物の展開でいい意味で何度も驚かされた。特にキャラの根幹設定の覆し方が非常に上手い。公式サイトでは義妹、後輩、幼馴染といったテンプレ属性を持つヒロイン達が紹介されていたが、終わってみればそれぞれのキャラにかなり癖のある設定が付加されており意外性があったのが良かった。また、「二重スリットの実験」を通した世界観設定などはよく思い付いたものだと手放しで褒めてしまっても良いレベルだと思う。
伏線の張り方と回収方法も上手い。共通√で満遍なくバラまかれた伏線は個別√である程度回収されつつも新たな謎を呼び、オーラスで一気に回収されるという理想的な構成で読者を飽きさせない。上でも書いたが、バラまいた伏線から展開や設定を予想させずに読者を翻弄し、楽しませるという意味では本作は非常に高い完成度を誇っていると言えるだろう。一つ一つの展開のオリジナル要素も強く、どこかで見たことのあるようなシナリオ運びも少ないため新鮮な驚きを持って物語を読み進められるはずだ。シンカーの正体など部分的には予測が出来てもこのアぺイリアという物語のプロット全体を予測するのはかなり難しいだろう。
総合的に見て、ライトノベル的な軽いテンポのシナリオゲーとしては今年No.1になりうる非常に力の入った作品といってしまって良いのではないかと思う。

○不満点
欠点としては、ライターの過去作「晴れたか」同様にギャグパートの比重が重く展開が冗長に感じたり、攻略キャラ及び主人公の癖が強すぎて好感が持てない人もいるであろう事、デスゲーム作品であるにも関わらずノリが軽い事などが挙がりそう。また、個別√突入からオーラスにかけては登場キャラが制限されるため若干勢いが失速した感もある。時間構造及び世界構造の説明がややこしい事も人によってはマイナスになりうるだろう。むしろここまでよく考えたものだと私は感心してしまったが、図解されても読むのが面倒になる人もいるだろうぐらいには複雑だ。
基本的には滅茶苦茶面白かったので大満足だったのだが、演出面含めもう少し細部まで完成度が高ければ傑作クラスも見えたのにと惜しい気持ちも。特に戦闘シーンの絵は使いまわしが多く、戦闘シーンの緊迫感を損なっているように感じた。


不満というより小言だが、本作は恐らく現実世界の部室と思われる場所で干渉縞が消えている背景をもって物語が終わる。これは現実さえも誰かに観測されていることを示すある意味不気味さを残す〆方だと思うが、本作の作風的にサクッとハッピーエンドで終わっていた方が後味良かったのではないかなとも思う。これでは三羽のいた現実さえも仮想現実に過ぎないと解釈しうるためあまりスッキリした終わり方には思えない方も多いだろう。
個人的にはこの干渉縞の消失はパソコンの前に座っている我々プレイヤーがアペイリアという物語を観測した事によるものだと考えている。三羽がディスプレイに映る零一達を観測していたように、パソコンを見つめる私達が零一達を観測していたという具合だ。この終わり方なら割とキレイかなとは思うのだがどうだろうか。

○終わりに
今後シルプラDOLCEがどのような作品を作るのかはわからないが、この範乃秋晴さんというライターはライトな傾向の作品作りにおいては非常に力のある方だと思う。範乃秋晴企画の作品はこのアぺイリアが初だが、「あの晴れわたる空より高く」に続きここまでのクオリティの作品を提供するのは並大抵のことではない。
チュアブルソフトが消滅したこともあり、同ライター企画の作品をシルプラDOLCEが輩出し続けてくれる事を願う。少なくとも本作は次回作に大きな期待を寄せたくなってしまう程に非常に満足度の高い一作であった。
新品/中古アダルトPCゲーム販売 通販ショップの駿河屋

長文感想へのレスを書くには
 ・ユーザーIDを有している
 ・COOKIEが有効である
 ・COOKIEを有効にした状態でログインしたことがある
 ・5つ以上一言コメントを書いている
 ・長文感想を書いたユーザーが長文感想へのレスを許可している
の5つの条件を満たしている必要があります。

コメントデータ

このコメントはだいたい1606回くらい参照されています。