shindai_alteenさんの「はにデビ! Honey&Devil」の感想

ネタバレ感想を見たくない場合、文字を背景色に設定することが可能です。 → 設定変更

**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

この作品を通して見えてくるべき本質「何を伝えたいのか」「何を感じて欲しいのか」が霞んでしまっている。ゲームジャンルと食い違った主人公や取り巻くキャラクター達の価値観。作品自体をどこか勘違いしているかのようなシナリオ。それらの要素がお互いを打ち消し合い、見えていたはずのものを見えなくさせてしまった。昨今の危機的状況に置かれたエロゲ業界において、主体性のないブランドの作るフルプライスの商業エロゲが生き残れるのだろうか。
●前置き

参考までにブランド『eufonie』の中でプレイした過去作の点数

・ひだまりバスケット(65点)

・恋剣乙女(60点)

このeufonieというブランドの作品は、可愛い造形のキャラクターや有名声優の起用など、キャラゲーの色が強い作品が多いという長所と、シナリオが安っぽいという短所のそれぞれがあるというのが自分のイメージです。また、久々にこのブランドの最新作品にありついたのは、友人の紹介があって(この時点であまり良い作品だとは言われていませんでした)手に取ってみたという感じです。そんな流れでのプレイになりますので、自分にとってネガティブ寄りな作品という認識だった前置きで、感想の中でもかなり低めの評価が蔓延した内容になると思います。ご容赦ください。


●「淫魔に憑かれた女の子といちゃラブADV」

ユーザーにとって「ゲームジャンル」という概念は一体どのようなものなのでしょうか。
自分の場合、メーカー側から「このゲームを一言で表すとこういうものです。」という発売前であったり、未プレイのユーザーに対して与えられる最低限の情報だと思っています。近年はゲームジャンルの多様化が進み、ADVやSLGのような今まであった3文字で概要を教えてくれるものに付随して、「○○で××なADV」とか「△△で□□しちゃうSLG」といった更に細かな紹介をしてくれる親切な作品が多々見られます。このゲームジャンルの表現は『はにデビ』にも用いられており、「淫魔に憑かれた女の子といちゃラブADV」と銘打たれ、「どんな女の子が出てくるか?」「どんなADVか?」といった要素が紹介されています。

一方で、メーカー側がゲームジャンルを公表しているのであれば、「淫魔に憑かれた女の子といちゃラブADV」は『はにデビ』の必要条件でなくてはならないわけで、それを最低限満たす必要があります。同時に、ユーザーがそのジャンル名を脳内で、イコールで結びつけた内容とどこまで一致するかで、評価も大きく変わってくるのではないでしょうか。例えば、「淫魔に憑かれた女の子」が出て来るので「=性的衝動を抑えられない美女に逆レイプされる展開」だったり、「=淫魔という設定を口実に恋愛過程をすっ飛ばし、セックスから始まる恋を描く物語」だったり。

その点を踏まえると、自分はこの作品をまったく評価できないと感じました。確かに、「淫魔に憑かれた女の子」は出てきたし、一部は曲がりなりにも「いちゃラブADV」を表面上では満たせていました。しかし、自分がゲームを一通りプレイした時には、この作品はゲームジャンルの名称から先の一歩が全く違う方角に向けられてしまったという印象を受けました。その要因は、「キャラクターと主人公の関係」「設定の詰めの甘さ」「主人公の愚行」などにあると感じています。以降は、そのいくつかの要因について言及していきます。


●『理不尽暴力女 多めに見るか 許せないか』

まずは多くの人のレビューでも書かれていますが、『理不尽暴力女』の登場が作品の評価に大きく起因しているように思えます。『理不尽暴力女』と言えば、かなり賛否両論分かれるような立ち位置で、かつてのキャラ萌えの天下を築いた「ツンデレ」の成れの果ての姿という認識があります。しかし、オタク文化が広く浸透し、オタクの考える女の子の在り方についてもかなりの思想の違いが出てきたこんな昨今ですから、もちろん『理不尽暴力女』を登場させるという事はかなりリスキーで、「なぜ暴力的なのか?」「なぜ理不尽なのか?」という真理にまで突き詰めない限り、今の時代には耐え難いでしょう。

そんなリスキーな『理不尽暴力女』ですが、今作『はにデビ』には満遍なく登場します。更にはサブキャラクターに集中しているという、まったくもって頭を抱えたくなるような状況に陥っています。先述にもありますが、『理不尽暴力女』に説得力を持たせるには、「行動の裏返し」である真理を突き詰める事などによってのみ解決手段を見出だせると思っているので、そのキャラクターの内面に触れていく必要があるわけです。これを満たすために、過去の『理不尽暴力女』を肯定してきた作品では、いわゆる原型のツンデレであるところのデレの部分にこれでもかという可愛い描写を振る舞い、時には懐の深い主人公が対抗して上手く立ち回ったりと、様々な工夫があってようやくそのリスキーな美しさを見出してきました。
ですが、サブキャラクターとなると話は別です。なぜなら、主人公がそのキャラクターの内面に触れる部分が作中でも圧倒的に少なく、理不尽暴力である真理の証明の余地がほとんど無いに等しいからです。かつてのツンデレ萌えに特化したオタク達ならば、そういった表面上だけでのツンにも「ご褒美」と称賛し、奉っていたのでしょうが、恐らくその時代から10年以上は経っていると思います。今では通用しません。というか、今作のこの評価で、通用しないという事がよくわかりました。

さて、本題と大きくズレてしまったので話を戻すと、キャラクターで言えば、自分が求めていた美少女ヒロイン像は『理不尽暴力女』ではありません。それは『淫魔に取り憑かれた女の子』であり、理不尽に暴力を振ってくるのではなく、「=理不尽なセックスを求めてくる女の子」です。更にユーザー視点で単刀直入に言えば「=てっとり早くセックスしてくれる女の子」だと思っています。(違っていたらスミマセン)

それなのに、てっとり早くセックスをしてくれないサブキャラクターに、理不尽なセックスではなく理不尽な暴力を振られたら、それは大きな肩透かしです。まさにこの『理不尽暴力女』の登場が、そのままメーカーの提示してきたものと違う方角に舵を取ってしまいました。


●主人公と理不尽暴力女

前の項目では、理不尽暴力女について話をしましたが、ここでは「理不尽暴力女と主人公の関係」について考えてみましょう。まず、主人公について書く前に、自分は『理不尽暴力女』に対しての不快指数というのはこのゲームでなければ間違いなく0で、今作でもどうにかすれば擁護する事ができたと思っています。それとは逆に、自分が理不尽暴力女を擁護してしまうほど『はにデビ』の主人公が嫌いです。というのも、主人公の素質次第で暴力的なサブキャラな彼女たちを持ち上げる事も容易だったと思っているからです。逆に、なぜ主人公は彼女たちを持ち上げる事ができなかったのかは2つあって、「主人公が相手を逆上させるような態度を取る事」と「主人公がサブキャラ達を必要以上に邪魔者にしている事」にあります。そして、この主人公と理不尽暴力女とのダメダメな組み合わせが逆の意味で相乗効果をもたらして、ゲームの向かう先を全く違う方角へ動かしてしまいました。

この2つの事項というは薫子ルート以外全てで見ることができます。例えば、葵ルートでは彩弓は「アンタが来てから葵の様子がおかしい」と主人公に話を持ちかける場面がありますが、「いや、細かく言えば転入する前から様子がおかしいはずだから俺は…」という否定+オタク特有の細かい煽り文句のテンプレ構文を平然と言ってのけ、更に彩弓を逆上させた上に、心の内では淫魔について話せないし面倒だから適当に聞き流してやろうという態度を取ります。この場面も、せっかく彩弓がツンツンした態度ながらに心の中を明かしてくれたわけで、親身になって聞いてあげるとか、他にいくらでもやりようはあったはずだったと思います。このような、主人公の嫌悪感の持ったサブキャラに対する意識は、理不尽暴力女の「魅せ方」として最悪です。少しでも可愛く見せようという工夫なくして、ひたすらツンというムチで叩く構図だけをプレイヤーに植え付けさせた挙句、主人公視点の最悪の印象を書かせたテキストがサブキャラに対して悪意を向かせる印象操作のように思えて、本気で虫唾が走りました。シナリオライターの方は今一度、「のび太の大魔境」のジャイアンを見て、理不尽暴力キャラの「魅せ方」を学んでみてはいかがでしょうか?


●主人公とサブキャラクター

サブキャラクターとの関係として付け加えると、実は理不尽暴力女に限らず、瑠璃の先輩、甲斐紗登美にも似たような態度を取ります。以下に瑠璃と紗登美の関係について、主人公が瑠璃に尋ねる場面を引用します。

======================================
【優斗】「特に甲斐さんとか…。」
あの人、教室と同じように振る舞ってる。
さっきなんか野球部顔負けのテンションだったし。
【優斗】「疲れない?
いつも律儀に付き合ってるけど」
【瑠璃】「たまに、ちょっとだけ」
【優斗】「やっぱり」
======================================

瑠璃に嫌だと言わせたい誘導尋問。紗登美というキャラクターは、端から見れば誰にでも優しくて、元気があって、噂話が好きという女の子らしい一面を持つ良サブキャラクターなのに、あいつ嫌じゃね?的な発言を後輩・瑠璃の前で平然と言ってのける無神経さ。というよりも主人公の口から自然と繰り出す嫌味ったらしい口調が最悪でした。

このような主人公とサブキャラクターとのやり取りを見ていると、サブキャラクター達はただ単に「都合よくセックスさせない為の歯止め役」という可哀想な立ち回りをこなされているように感じます。それはもちろん手っ取り早くセックスして欲しいユーザーの期待を逆なでさせるような行為にしかなりませんし、反感を買うことこの上ないでしょう。しかし、自分はそれもこれも主人公がサブキャラクターに対して完全に心を閉ざし、ヒロイン4人との空間を是が非でも守ろうとした行為が招いた結末がこのサブキャラクターの存在に繋がったと思っています。なので、なんとなくこの可哀想な立ち回りをさせられてしまったサブキャラクターには同情してしまいましたし、逆に主人公に対してはただただヘイトが溜まりに溜まったという感じです。そこで1つ、自分なりにこうすればよかったという結論を出してみました。

「サブキャラクター、男にすればよかったんじゃねぇの?」


●セックスの主導権は女にあり、セックスの主動権は主人公にあり

「普通、寝るかどうかの主導権は、女性が握ってるもんだよ」

これは瑠璃ルートの道中で主人公が発した言葉なのですが、まさにこの作品にピッタリのセリフだと思います。淫魔に取り憑かれたエッチな女の子にセックスの主導権を握られ、女の子が思うがままに主人公で性的欲求を満たすという、まさに自分が期待した内容を示す言葉を主人公は代弁してくれました。

しかし、『はにデビ』でセックスの主導権を握っていたのは間違いなく主人公でした。そして、ヒロインの大半は本来の設定をムチャクチャにしてまでも、なかなかセックスの主導権を握ろうとしませんでした。淫魔に取り憑かれ性的衝動を抑えられないと言った筈なのに4人全員が発情しても我慢できる状況だったり、うち2人は発情しても前戯だけで満足できてしまう体質だったり、主人公に唯一最初から好感を持った薫子の意見をないがしろにするなどの展開がまさにそれを裏付けています。この時点で自分の求めた「てっとり早いセックス」が展開されなかったので非常にゲンナリしましたが、更に追い打ちをかけるように主人公が自らの愚行によってセックスの主導権ならぬ主動権を掌握していきます。

主人公の愚行は、ルートの分岐地点から始まります。選択肢でヒロイン一名を選ぶ事で、その日の夜に主人公が各ヒロインの部屋へ訪れるわけですが、その理由がこれまた酷い。「もしかすると○○さんが発情しているかもしれないので心配だから見に行く」という謎理論で、アレだけ秋乃に脅された女子寮の侵入にあっさり成功。しまいには各々の部屋へとわずか数行程度で侵入し、Hシーンが展開。あれだけ「セックスの主導権は~」とかもっともらしい事を唱えていた主人公がする行動とはとても思えません。発情してないか心配だから会いに行くという、「お前はいいからそこでじっとしてろ」のツッコミを誰もしない状態で平然と物語が進行するのは逆に笑えてきます。

そんな主人公ですが、愚行はこれだけに留まらず、遙花ルートでは更にとんでもない事を言い出します。発情した遙花が今すぐにでもセックスしたいというシーンにおいて、主人公はきっぱり「そういうムードじゃない」、そして、セコセコと自宅に帰ってそのままセックス直行かと思えば「風呂入らん?」…まさに鬼の所業。主導権というのは自分が主体となって周りを導くという意味で主導と書きますが、主人公の場合、自分が主となって好きなように動くだけなので主動という言葉の方が相応しい、そう思い主人公には主動権という言葉を敢えて選びました。外面では草食系を装いながら、実際には自分の理想を周りの女の子に押し付け、困らせるというつくづくとんでもない主人公だと思います。そしてこんな主人公とヒロインとのやり取りが主人公の行動に矛盾を生じさせ、ストーリーや設定そのものを更にウヤムヤにしてしまったと感じました。


●総括

ここまでで、大まかに『はにデビ』がゲームジャンルとは対極の道を進んでしまった要因についていくつか書き記してきました。ゲームを制作する時に「ジャンルを決める」のは企画のコンセプト立てと同様で、最初の段階で行われる過程に含まれていると思っています。そうしなければ、どんなゲームにするのかも決まらないし、どんな層に向けて作るのかなどのゲームの根本が分からないわけですし。それを踏まえて、このゲームを制作した場合、『はにデビ』は一体プレイヤーにどう思って欲しかったのでしょうか?もちろん「主人公がクソなゲーム」とか「サブキャラクターがとにかく不快」だと思われる為にゲームを制作している訳では無いのは必然ですが、なぜこのような感想ばかりが出てしまうのかは、やはり「作品の伝えようとする所が見えてこないから」に過ぎないのかなと思います。だって「淫魔に憑かれた女の子」が淫魔に対抗してセックスせずに発情を我慢する展開なんてほとんどのユーザーが望んでいないわけで、主人公が淫魔に憑かれた女の子の誘いを拒絶するなんてもってのほかです。オマケになぜ拒んだ理由もしょうもない内容で、それが災いして設定を殺すという展開など、「結局何したいの?」という言葉しか出てこないというのが、作品全体の感想です。

そんな目的の見えない、主体性のないエロゲになってしまった『はにデビ』ですが、このようなグラフィック全振りのエロゲの悪しき風習を良く示してくれたと思います。エロゲはこうあるべきだという持論は人それぞれにありますが、長所を特大な短所で見事に打ち消し、何も主張してこないエロゲはどの人の心にも刺さりません。今後はもう少し、確固とした目的や主張が伝わってくるような作品を制作して欲しいと思いました。

さて、『はにデビ』の点数ですが、55点を付けました。この点数はガッカリ+「以前と主人公全く違うじゃねぇか!」という感想を抱いた作品『ToHeat2 Another days』と同じ点数を付けています。今作もまた、ガッカリ+主人公が苦手だったので。

長文感想へのレスを書くには
 ・ユーザーIDを有している
 ・COOKIEが有効である
 ・COOKIEを有効にした状態でログインしたことがある
 ・5つ以上一言コメントを書いている
 ・長文感想を書いたユーザーが長文感想へのレスを許可している
の5つの条件を満たしている必要があります。

コメントデータ

このコメントはだいたい649回くらい参照されています。

このコメントは1人の方に投票されています。