arutoさんの「Summer Pockets」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

「感動的なお話だった」けれども設定消化不良
端的に言ってしまえば、期待を良い意味で裏切られる、ということがなかった作品でした。
面白くなかった、というわけではありません。key作品らしい雰囲気や魅力的なキャラクターはとても引き込まれましたし、普通に楽しむことができました。

ただ全体的に(個別、true含めて)シナリオが短く感じたり、謎が回収されていたのかどうか分からないことも多く、不完全燃焼感が残りました。

以下プレイ順にルート感想と疑問部分

・鴎ルート
最も本筋で離れているルートのようでありながら、一番核心に迫るルートだと感じました。
既に眠りについていた(恐らく死? 植物状態などではなく)鴎が蝶となって願いを叶える物語であり、蝶になることや、彼女が消えると他の人から忘れられる(何故か主人公は覚えていましたが)点はうみとの共通点を意識した立ち位置だったのではないでしょうか。
既視感に対する伏線の貼り方などはとても綺麗でしたが、綺麗すぎたり登場人物が多い割にそれっぽい人の存在が皆無なこともありミスリードだと気づきやすかったです。
最初にプレイしたルートということで「胡蝶の夢」というキーワードが思い浮かんだり、蝶つながりのループもの(プレイ中予想)ということで、バタフライエフェクト的な時間遡行の意味合いもあるのかも、などと思ったりもしていました。
一番とっつき易いルートでした。

・蒼ルート
このルートの鍵は迷い橘の存在でしょうか。空門家の風習と、蝶の客観的な存在理由。そしてその蝶が還る先の提示。シナリオの流れとしては想像のつきやすいもので、これといった驚きはなく、世界観が少しずつ明かされていくなかでtrueへの期待が高まったシナリオというイメージです。
疑問点
・迷い橘に導かれていったはずの蒼の魂が、何故一年後に戻ってきたか。
→シナリオ中では迷い橘に導かれる=成仏のような扱いで、蒼の魂もあの世に行ったという風に考えられます。お盆の季節に戻ってくるような双方向的な行き来があるなら、他にも迷い橘に送り返したはずなのに戻ってきている蝶とかがいても良いのでは、という風に感じました。最後の帳尻合わせが強引かなと。
・い な り
→結局あの子は何者だったんですかね……? 特に正体に触れられた記憶も無く宙ぶらりんなまま。


・紬ルート
ある意味一番の謎でした。シナリオについては割愛。このルートの意味については過去と未来の時間を超越して繋がる場所がある、ということの示唆だったのかと。
疑問点
・ツムギの神隠しの理由
→単純に考えれば肉体を持ったまま蝶と同じように迷い橘のところに迷い込んでしまったのではないかと思いますが、ちょっと出てきただけだったのでもう少し色々絡ませることができたのではないかなと。
・紬の正体
→な ぜ ぬ い ぐ る み が う ご く
 いや、鴎にとってのトランク的なものだったのかなとも思いますが、違いとしては鴎のときは寝たきり鴎=トランク鴎で同一視できて、紬は別人ということ。つまりツムギの蝶がぬいぐるみに宿って意思を持ったわけではなく、ぬいぐるみそれ自体に意思が芽生えたということになります。その自己意思形成過程が曖昧なので、予想はできるけど……もう少し欲しいなという感じです。
・灯台から草原へ
→このルートでしか使われなかった設定です。幕間の語りなどでもかなり重要な場所だというのは分かってたので、この灯台も何か重要な意味があるのでは……? と思いましたが何も無かったです。はい。

・しろはルート
しろは可愛かったです。以上。他のルートにも言えることでしたが、シナリオの盛り上がりを楽しむという感じではなく、じんわりと染み入ってくるお話でした。
個人的には幼少期の未来予知がALKAルートの良いノイズであり、その後のキーポイントになってたのは良かったかと。
疑問点
・しろはの家柄
→成瀬家は由緒正しく昔からの家柄とのこと。神社もあるし、未来予知もできる。これで蝶の導きをやっているのが成瀬家ではなく空門家だというからよく分からない。蒼の家柄については個別ルートでも簡単に触れただけだったので全く別の問題といえばそうなのかもしれないが、どうにも腑に落ちない。
・時の編み人
→時々目のハイライトが消えて出てくる人。結局あなたは誰だったんですかね……? サマポケ思わせぶり選手権で上位に食い込んできます。

・幕間・共通うみちゃん関連
うみちゃんが重要キャラだというのは誰か一人でもクリアすると既読スキップのおかげで予想ができ、二人目クリアで確信できました。それが周回を重ねて記憶が抜け落ちているのか、それとも周回自体を遡って本来のうみちゃんに近づいていっているのかが分かったのはALKAルートに入ってからの事でしたが。
この時点でkeyお約束のループ現象にうみちゃんが深く関わっている、さらに言えば個別ルートの後に掘り下げがくるであろうことは明らかでした。そのため途中から個別ルート自体よりもその後の展開に興味がシフトしていました。ある意味個別ルートを単体で楽しめなかった要員の一つ。
あとうみちゃんが個別ルートの途中から急激にフェードアウトしていたのも露骨でした。

・ALKAルート
「おとーさん」「羽未」 そしてうみが幼くなりながらも過去の周回の面影の描写などからおおよの流れが分かります。一方で未来のことについて思いの外あっさりと話され、ちょっと拍子抜けしました。途中で「MD」と「アプリ」で時代の違いを描写する場面がありましたが、現代の人からすればうみの時代が現在、今まで舞台となっていた時代が過去というような印象を受け、ハイリ父親ぶりとかから、物語の本当の起点は未来のハイリにあるのかなーなんて思ったりもしましたが、別にそんなことはなかったぜ!
物語として見れば、お祭りの日まではしろはルートのマイナーチェンジ、その後はうみが忘れられていく過程であり、特に驚きはなく予想通りの物語でした。

・POCKETルート
やりたいことは分かったけれども、総じて短いしあっさりしていてこれで終わりなの? という印象を受けました。
七海の正体についても、うみであることは明らかで正体が判明した際の驚きはありませんでしたし、しろはが力を使うことを止めたことでうみのいた未来がなくなり、うみの存在が消える。このことついてもこの後にハイリが主人公で何かが始まるのかな、と思ったらあっさり倉整理して帰り際にしろはとの新しい出会いを演出して終わり、という単純な帰結。
POCKETルート一つとっても、しろは母=瞳は結局何をしたかったの、とか、鏡子さんは何者だったの、とか、あの加藤家の倉って何だったの、とか、なにゆえ鴎はラストで元気になってたの、とか色々思うところがありました。

その他疑問
・ハイリの回想やモノローグで七海の声が聞こえたりした部分があったけれど、あれは結局なんだったの?
・POCKETラストでまるでハイリも傷が無いような表現(=二人に傷が無かったら、もしかしたらしろはの方だけないヨ、という意味かもしれないが)があり、別に七海の行いがどうあれハイリの行動の方へは影響しないんじゃないかなーなんて。バタフライエフェクトとか言われたらそこまでですが。
・うみの、従妹として島に呼ばれた発言は、うみが同時代の人間でなく、別の記憶を植え付けるなんて描写もなかった(忘却こそあったが意図的ではない)ため、それを疑問に思わず受け入れてる鏡子さんは少なくともうみの正体を知っていた……?
・プロローグ最後の、この瞬間を何度も思い出す的なハイリ君の発言はいずこへ……? あれのせいでしろはを失った後の本土での未来編(or現代編、解釈の違い)があるのではと期待させられました。

総評
上記には展開が予想できただの、盛り上がりが無かったなど、散々書きましたが、話の本筋は非常に染み入るものがあります。
ただ、こちらに記載した以外にもあれ? って思うような消化されていない設定とか、疑問に思う様な部分があったりして、途中から全体のシナリオ構成を変更したのかな、という不信感を抱きました。使われない伏線、明かされない正体、そういったものが多すぎて謎も全て明らかになっていないのに終わりと言われても……という消化不良感がクリアした直後の感想でした。
もちろん単に伏線を理解しきれていない可能性もありますが。雰囲気を楽しむなら大いにオススメできます。設定などの細かい部分を見る人や、中身の濃いシナリオを求める人は不完全燃焼になるかもしれません。

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