amaginoboruさんの「ChronoBox -クロノボックス-」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

淫語を多分に含んだエロと筋道の立ったシナリオを掛け合わせたハイブリッドなエロゲ。粗も少なく非常に完成度の高い作品です。エロはそれ目的での購入もやぶさかではありませんが、シナリオ目的の場合コアユーザは要回避。名作のマッシュアップ的な内容で苛烈な描写も薄く、あえてプレイする必要はないかと思われます。ノベルゲー経験値の少ない方か、あるいは体験版からプレイして予測・考察して楽しむ方にオススメです。
◆初心者にもベテランにも半端なホラーとグロ
いかにもスプラッタ血ドバーな印象を作風から受けるものの、描写はかなりソフト。
イノグレ作品程度の醜悪さで気持ち悪いより綺麗な印象が先立ちます。それでいて
夕焼けや反転で汚物をソフトに表現しているため視覚に優しいのですよね。手足を
スッパスッパ切っても痛々しく見えません。

だからこそ、グロテスクが呼ぶ感情を求める方には届きません。臓物は赤の光で
よくみえず、汁や糞をぶちまけることもない。綺麗な女子の汚物が一切排除されて
いるものだからまったく響きません。「シナリオ上、汚されたと第三者が知るための
儀式」でしかなく、読み手に見せるための描写として書かれていないのです。

とはいっても結局は臓物です。血や裂傷も含め苦手な読み手にはこの程度でも回避の
対象となるでしょう。それこそシナリオはライトユーザに読ませたがっているのに、
コアユーザにも媚びてグロを積んだ結果、回避される一因となってしまっているのです。

ホラー要素も同じですね。グロ以上に苦手な方が多いであろうびっくりギミックを
何故入れたし。多くの方に呼んで貰いたかったのでは?私が本作を紹介するなら「ホラー
要素あるから苦手な人は回避で」って絶対いいますよ。ビックリしますもん。

コアもライトも取り込もうとして両方から回避される。本作は一兎をも得られていない
のです。それはグロだけでなく、他要素にも同じことがいえます。



◆テキストだけがみっともないエロ
と銘うってはみたものの、言葉だけで十分淫靡に表現されていますね。特に御伽の
エロはみっともない言葉全開で存分に楽しめました。単語の一つ一つもエロくだらし
なく、快楽に浸かっている様が(息子へも)ダイレクトに伝わってきます。まころの
海岸フェラも別の意味で良いですね。静謐な中に猥雑な音が鳴り響く様は一見の
価値アリかと。

グラに目を向けてみると、体の線や体躯は見事に描き分けられていますし、
艶かしさや悦楽な様はやはりダイレクトに伝わってきます。
しかしテキストのみっともなさに対しては明らかに追いついていません。綺麗
なんですよね。汚くない。セリフはちんぽちんぽまんこまんこオナニーオナニーで
快楽に酔い狂っているのに。

これはグロ要素も同様で、絶望や痛みに対して目がイってないんです。口元も綺麗で
全く持って汚くない。エロにせよグロにせよ汚いことが読み手をより昂らせるのに、
綺麗なんですよ。イノグレのような雰囲気ゲーなら綺麗にするのもわかりますが、
そういうエロゲではないですよね?糞尿まき散らす状況でも失禁すら滅多にない。

ここにライターとグラフィッカー陣の温度差技量差、そして売り手都合による躊躇が
見て取れます。万人に売りたいから汚いのはダメなのでしょうね。勿体ない。そして
絵師さん達もその手の描写は経験が薄く、描けないのだろうと推測します。こと御伽に
関しては泡吹いて白目向いたって問題ないですもん。なのにやらないのは、そういう
ことなのだと推測します。

加えてシナリオとの連携も今ひとつだったように思います。正しくはシナリオに動か
されるキャラ。物語と設定を重んじるあまり彼ら彼女らが掘り下げられることはなく、
話の牽引役のみとして用いられています。結果エロもキャラへ入れ込むことができず
残念なことに。特に樺音はもったいないなと。

やや乏し気味になってしまいましたが、エロに関してだけはそれ目的に購入しても
決して損しないと思います。純愛エロにしても言葉回しが猥雑で、綺麗な言葉を
好まれる方には向かないものの、特定の需要を十分に満たした描写が約束されて
います。

加えてシナリオも凡庸とはいえ筋道立っていて、十分読めるクオリティですからね。
綺麗方面に秀逸なグラとみっともないテキスト。それらを相応のシナリオに乗せて
楽しむ贅沢を味わったのは久しぶりでした。エロを中心にプレイする方にはオススメ
できる作品です。



以下、シナリオとキャラについて。
様々なエロゲ・ノベルゲーのネタバレを引き合いに出しています。










◆エロゲビギナーを狙ったシナリオ
「シナリオがいい!」との触れ込みを聞いてはいたのですが、なるほど確かに丁寧に
作られています。筋道は明確で読後の疑問点も基本的には解明しつつ、いくつか謎を
残して余韻も作っています。続きが気になる引き方も上手く、ライターさんが自信を
もって勧めるのもわからなくはありません。粗もほとんどありませんし。

ですが「丁寧=面白い」ではありません。優等生な作りではありますが、展開も
ギミックも既存作品の流用が非常に多く、目新しい要素や本作オンリーの見せ場が
ほとんど見当たらないのです。以下、具体例を挙げると

 ・異常者の中の異常者が主人公、異常者だけの学校、ループ設定、消える仲間
   →『CROSS†CHANNEL』
 ・18時15分からの夕暮れ印象、オープニングが徐々に壊れる演出
   →『さよならを教えて』
 ・エンディングからの流れ
   →『euphoria』『STEINS;GATE』
 ・目パチ口パクギミック
   →『MYTH』

私が知っているエロゲノベルゲーだけでもこれだけ見つかっています。もちろん例に
挙げた作品だってオリジナルではないのもありますし、ネタを被らせるなというつもりも
毛頭ありません。

ですがライターさんがSNSで「プレイ後は記憶をなくしてもう一度やりたいと思うはず」
など強気な発言を再三しまくって、だのに既存作品から一歩も飛び出ていないのでは
ガッカリもします。名作要素をマッシュアップして丁寧に組み上げてはいます。しかし
それだけでは面白い物語にはなり得ないのです。

面白くない原因の最たるがキャラクターの扱いです。本作に登場する彼ら彼女らは
常にシナリオに動かされ続けるがため、個性を掘り下げることはありません。進行
フラグでしかなく、人としてペラペラなんです。だからエロもグロも心情感情が
上辺っ面にしか聞こえない。樺音とかメインヒロインなのに全然伝わりませんよね。
(性欲に忠実な御伽・猶猶だけはエロ要素が相まって良好でした。)

ギミックや設定演出は従来名作のままに、しかしキャラクターは設定に動かされる
のみ。これではいくら推理・考察要素が丁寧に配置されていても、キャラや物語に
のめり込めないから取り組もうとは思えません。知っている設定を登場人物の感情
なしに見せられては退屈にもなります。

ゆえに熟練プレイヤーにとって、本作はシナリオゲーたり得ません。「過去名作の
焼き直し」「新鮮味のない新作」と評されたことは想像に難くありません。そんな
読み手は秀逸なエロを主軸とした「エロゲ」として接するのが正しい触れ方なの
かもしれませんね。丁寧に敷かれた物語と伏線は、脇役としてならエロを盛り上げて
くれますので。

そしてシナリオのメインターゲットはむしろ、経験の浅い若年層かと考えます。
過去名作を触ったことのないプレイヤーには目新しいギミックと、それに絡む伏線や
推理要素がこの上なく魅力的に見えることでしょう。それだけにホラーとグロテスク
要素がもったいなくも感じるのですが、言い換えれば入門に適しているとも。
新作でもってエロゲの読み物としての良さを知ってもらう。その役割を担うに十分な
ポテンシャルを有しています。

ただしいずれの読み方にせよ、キャラクター性の弱さが覆ることはありません。エロも
グロも物語も、登場人物の個性というピースを欠いている。それは紛うことなき欠点です。

そういうライターさんと割り切れれば良いのですけどね。桜庭さんCYCLETではぶっとい
キャラで凄まじいシナリオ書かれていますから。やってやれないことはない、むしろ
得手としている方であるだけに、欠点が残念でなりません。



◆推理・考察要素に関して
本作を楽しむもうひとつの方法ではないでしょうか。体験版から謎を散りばめて
読み手へと挑戦する様は本格派の推理小説のよう。本編プレイの前にまず自身で
予測を立て、本編の謎を回収つつも答え合わせをし続けた読み手は、また別の
楽しみ方をされたのではないでしょうか。

物語の引き、伏線の張り方、ヒントや答えの撒き方と非常に丁寧だったように思います。
ただただ答えを受動的に読むのではなく、能動的にのめり込んでいったなら格別の良さが
見つかるのかもしれません。推測なのは私がそのような読み方をしなかったから。上記の
欠点から楽しめず、エロを中心に読んでいたので。

実際既存の感想を読みますと様々な見解が述べられていて、あぁなるほどと首肯する
ことも多々。それ自体が私の本作評を覆すことはありませんが、存分に堪能されている
様をかいま見ることができて羨ましくもあります。ライターさんの「記憶を~」発言は
ここにかかっているのかもですね。



◆化け物について
ライターさん諸作品におけるキーワードです。『ChlonoBox』では樺音が屋上レイプ時に
叫んでますね。他にも猶猶が御伽のオナニー狂いを見て述懐していたり。一般の人間と
して生きていけない彼ら彼女らを指す言葉で、そのことごとくが一般的な常識で図れる
幸せとは程遠いハッピーエンドを得ていました。

さて本作の化け物はというと、従来の意味合いは薄れていたように思います。那由太の
選択からして人間的ですし、例の5人も教会での凶行は化け物そのものでしたが、以後は
罪を背負いつつも常識的な収束を見せています(その後はわかりませんが)。

そも今回の化け物は、トリガーでしか発言しない点が異なります。化け物を脳内に
飼っている普通の人のお話、とでもいいましょうか。その化け物に明確なキャラ付けが
なされていないから、感情にまで及び至ることができないのかもしれません。というか
本体のキャラ付けですら掘り下げ不足ですからね。いわんやをや。

化け物が人や世間とのギャップに苦しみ、あるいは人の道を外して堕ちる様を現す
のが桜庭丸男さんという書き手です。今回はその片鱗を見せつつも副題としてすら
語られなかったことは、氏のファンとしてはうら寂しくありました。

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