エストさんの「ChronoBox -クロノボックス-」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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誤解を恐れずに言うなら「Maggot baits」的に「Re:LieF ~親愛なるあなたへ~」を作り直したような作品だった。 一本筋の通ったテーマを軸にして設定が練られており、グロテスク/ゴア表現を多分に含むホラーサスペンス要素と数多の伏線張りによる考察ゲー要素が読者を物語へ引き込む。 その伏線を重ね続け物語の進展が見られない構成故に展開が穏やかな序盤~中盤の引き込みが弱く、能動的に物語を読み解いていく必要がある(恐らくこの作品自分で謎解きをせず単に眺めてるだけだとそこまで面白くない)など弱点も感じたが両作品のうちどちらかがお気に入りならやってみて損はないのではないかと思う。 作り込みも緻密で素直に面白かった言える一作だった。
※以下はプレイ中のメモ書きを要約整理して感想を付け足したものです。既出の内容がほとんどですし項目にまとまりがあまりないのでご勘弁ください
 

○楽園END
恐らくだがまさかの天国と言う名のEDENで樺音と一緒になるEND
最後のムービーで「ようやく時が動き出した」と表示されるが、海岸線にて那由太は時が動き出せば、つまり罪を償う機会が得られたら海に罪を浄化してもらうと述懐している
最終シーンの背景が海であることを考えると入水自殺を行ったと考えられる
通常ENDで「―本当の幸せは何処にあるの?」との樺音の声が流れるが、そんなものは現実にないとの無情なエンディングであった


○登場人物達の名前
植物、主に「花」の名前に由来する名前が多い
小鳥が「小鳥遊」でなく「高梨子」である事が作中でネタにされていたが、これは梨の字を入れるため敢えての命名に思える
作者曰く名前付けにはルールがあり、姫市天美(と恐らく樺音由来の屍)だけはルールに当てはまらないという
姫市天美だけは真逆の特徴の要素で名前付けがなされているとの発言から考えると、名前付けの性質(共通ルール)は「植物」よりも「自然」が近いように思える
名前の性質を「植物」と考えると、真逆の「動物」から天美の名前が連想されることになるがそのような要素は見当たらない
「自然」の反対たる「人工」の性質が天美に与えられた性質なのではないか(敢えて天海ではないことにも注目したい、詳しくは次の項目で)

登場人物たちに「花・植物」の名前付けがされた意味としては、登場人物たちが…
Ⅰ.楽園たるEDENを彩る美しい「自然」の象徴
Ⅱ.現実世界からログワールドへそのまま自然的に移行した存在(ログワールドにて人工的に生み出されたのではない存在)
Ⅲ.「ブルーメ(花)・シンドローム」の罹患者
などの意味が考えられる
個人的にはⅢが最もそれらしい気がする

○姫市天美
名前が自然物に由来しない例外的存在
姫市天美は現実世界ではフーカのギフトとして描写されているが、ログワールドでの彼女の描写はフーカのギフトとして考えると以下のように疑問が残る

①1周目におけるフーカの屋上での言葉、空を見つめながら、「この空の向こうに…ワタシの帰るべき場所が…」「ワタシの…本当の主は…」
→姫市天美が本物のフーカのギフト(本当の主)でない事を示唆している
②1周目姫市天美が那由太に寄せる無条件の信頼(箱の中身を見ていないことに対して)
③天美が送った手紙を那由太が見た直後、天美のCGと樺音のCGが続けて表示される
④天美が那由太に送った手紙の内容「―あなたを想うこの気持ち、真実だって誓うよ」
→この言葉は樺音が現実世界の廃教会前で那由太に語った言葉と一字一句違わず同じである。ギフトたる姫市天美はテオドールベクトルの影響を受けるため真実の愛など誓えない存在のはず。
真実の愛を誓えるのはブルーメ・シンドロームではない健常者の樺音のみ。現実世界での天美は「この恋心が精神障害によるものなのか。それとも純粋なものなのか。確かめようがないのだから。」と述懐している。

以上から、ログワールドの姫市天美は何らかの形で樺音のログを引き継いだ人工的な仮想存在だったのではないだろうか
その理由については想像するしかないが、雫流が娘に送った最後の安息の時間の贈り物だったのかもしれない(復讐対象者のギフトであるにも関わらず天美√で天美に悲劇的な結末は訪れない)
1周目は作品のプロローグにあたる部分でありながら、樺音の最後の救いを描いたある意味物語のエピローグにあたる部分だったようにも思える(この辺り素晴らしき日々を思い出した)
姫市天美が名前の命名ルールから外されなければならなかった理由は、姫市天美がⅢ「ブルーメ・シンドローム」の罹患者ではない(=フーカのギフトではない)から、もしくは、Ⅱ現実に存在しない非自然的存在だったからと考えられる。
なお、1周目で天美が樺音の頭部を食べた旨を発言しているが、これは那由太にクロノボックスの記憶を想起させてそのギフトを発現させるためとも取れる。これだけで天美=フーカのギフトと確定させるには理由が弱い気がする。

名前の由来について
最早こじつけだが、ひめじ=姫路城、あまみ=奄美の御城(グスク)と城跡に変換できる事から人により形作られた人工物的な性質を持つとも考えられる(もっと上手い説明がありそう、正直わからんかった)

○クロノボックス
Chrono=時間を閉じ込めた箱、那由太の思い出が閉じ込められた禁断の箱(ブラックボックス)
黒ノボックスとダブルミーニングにしているのかもしれない
彼が箱を開けなければとの焦燥感に駆られるのはそこに彼の欠損部位=彼の記憶を思い出すための手掛かりがあるから

箱の中身は次周で対象人物の身体の欠損として現れる、また対象人物はギフトを失う
基本的に欠損対象人物は各エピソードで悲劇的な結末を迎える(特に屍の恨みが強い猶猶。羽瀬がなんで見逃されてるのかはイマイチわからん。男だから展開作りにくいのはわかるけど)
その目的は樺音のために行う、那由太のギフト及び虐めの加害者への復讐
そのため欠損個所は那由太及び樺音のものと対応する
6つ目の箱に樺音の首が入っていたのは加害者5名が最後に欠損させたのが樺音の首だったから
実際に那由太は樺音の死体を見ていない筈なのでこれでギフトが発現するのかは不明だが、復讐対象者の首を欠損させる繋がりからか樺音の首も箱に入っている

黒山羊(雫流)の復讐目的の惨殺劇も以下のように欠損部位と対応している
 声帯のないまころ→斬首
 男性器を欠損し性同一性障害である御伽→レイプ
 全身火傷の四十九→熱棒と電撃棒による拷問
 隻腕のつつじ子→切傷
 隻眼のフーカ→刺突(おそらく「抉る」繋がり)
最後は全員斬首されて首が欠損する=樺音の状態に対応

○周回開始時に表示される言葉と世界
周回が進むごとに世界の説明が美しきものから穢れた汚いものへとシフトする
世界も同様に色彩が変化し背景が反転する、移動時に背景が不自然に切り替わるなど世界が壊れていく様が細かく描かれている
美しきログワールドは醜悪な現実の様相を帯びていく

○SEI
御伽の死体のそばにあった血文字
この段階で世界の背景は全て左右反転して描かれているため、背景にあるSEIも反転させて135と読むのが正解
全航社135便、那由太が事故にあった飛行機の便数を指す
これは黒山羊たる雫流が那由太の記憶を刺激しギフトを発現させるために行ったと考えられる

●軽い総評
間違いなく面白かったんだけど序盤~中盤はちょっと退屈でした。流石に10回近くループを見せられて物語に進展がほぼ見られないとなると少しダレますね。
エンディングについては賛否両論でしょうが私は割と好きでした。本作は全編を通して贖罪と復讐の物語だったわけですが、エンディングでもまったくブレません。
心情的には樺音と那由太の幸せな姿を見たかったところですが、那由太の心情が重々しく伝わってきたおかげもあって納得感のあるエンディングに感じました。
作り込みも緻密というか芸が達者です。他の方も指摘されていましたが教室の鉄格子、部屋のスピーカー、マイスプーン、那由太の利き腕の腕時計など細かいところまで気が使われている。
欲を言えば他の被験者のことやノータッチで終わってしまった羽瀬関連の話などより細部を描いてほしかったとも思いますが、1つの作品として一度完結させるには良い塩梅の伏線回収だったように思います。
次回作があるなら期待したいと素直に思える一作でした。というかChronoBox という作品まだまだ語るべきことが残ってるようにも思うのでどんな形であれ続編が欲しいですね。

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