morufaさんの「星降る夜のファルネーゼ」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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決められたレールの上を直走るだけの法廷バトル
ミィティの処女作は、なんと皆の記憶にも新しい法廷バトル物。



タグは法廷バトルを主軸に中世ヨーロッパの町並みを貴重とした魔法と魔女が存在するファンタジーテイストな
内容となっており、これだけきくと非常に食べ合わせの悪いマッチングのように思えてくる。

実際のところその懸念はおおむね間違ってはいないのだが、この作品を諸手を上げて賞賛できない
大きな理由は別のところに存在する。



まずプロット構成だが、物語は話構成(5話+True1話)で成り立っており、各ヒロイン毎のルート分は
5話目がそれぞれ内容の違う事件を一件だけ解決する形で差し込まれている。

これに関しては皆も記憶に新しいIRODORI発の『桜花裁き』が比較対象として出てくるかと思うが、
今作のこの個別ルートの形は個人的にはこちらのほうが気に入っている。件の桜花裁きの個別ルートでは、
事件が全て解決した後の後日談程度の内容でしかなかったため、形式としては今作の方が非常に
好ましく思える。

ただ正直なところ形式が好ましかっただけで内容が良かったかといわれるととても首を縦に振ることはできず、
メインヒロインであるファルネーゼルートとTrue以外は文字通りの消化試合のような内容となっており、
特にオリヒメルートの出来は目を覆いたくなる出来栄えとなっている。



そもそも今作を法廷バトルであるということを確定させる要素が作中の設定だけという部分が大きく、
実際読者が物語に参加して捜査、証拠の獲得、裁判中の異議申し立て、証拠品の提示といった
法廷バトルに欠かせないプレイングの部分がごっそりと抜け落ちてしまっているのは非常に問題だ。

では最初から裁判物の読み物として理解した上でならどうかという話にもちろんなるとは思うが、それでも
私は今作が十分なボーダーを越えられていたかという問いにYesとはとても答えられない。

まず事件発生から裁判が行われるまでのスパンがほぼ1.2日という設定を多用する点に加え、
証拠品の持つパワーの弱さやそもそも「証拠品を手に入れた」という実感が湧かない
流れ作業的な捜査パートは物語を読むだけと割り切っていたとしても気にしないというのは非常に困難だ。

加えて独学で法知識を蓄えたド新人にも関わらずほぼ検事側に追い込まれることなくタンタンと事件の真相を
暴いていく様子も違和感があるし、誤認告訴したのにも関わらず平然と新しい容疑者を告訴しなおす
良く分からない展開が作中においで数回目撃できるのも乾いた笑いが出てしまう。

極めつけは今作独特の裁判ルールである脱衣要素で、正直殺人犯としてつかまる可能性と
絶対に依頼人の素肌をさらさせはしないという主人公の熱意の釣り合いが取れていないせいで
主人公が粘る場面に全く共感が出来ないため、私からすればクリア自体は簡単に出来るのに
敢えて困難な状況でクリアを目指す縛りプレイをしているかのように感じられた。

後は犯人たちの量刑のバランスも理解しがたい部分が多かった。
巷と騒がせた連続殺人犯が死刑で、法の上層部に席を置いていた暗殺組織のボスが隔離施設行きって
なにがどうなったらそうなるのか私には理解が出来ない・・・。



しかしながらファルネーゼルートを含んだTrueエンドはそれなりに読んでいて面白くはあったし、
何気にジャクリーンルートも逆転裁判シリーズの各最終話を模した展開には若干思うところはあった。

特にイヴやファルネーゼたちとのバタフライエフェクトは恐らく今作中一番の評価ポイントではないだろうか。
正直なところこのポイントがなかったら割と高確率で継読中断していたところだった。




最後に総評に移るが、法廷バトル物といういまだ開拓しきれていない分野に挑んでいった点は賞賛出来る点
ではあるが、挑んだだけ、と言えてしまう内容で終わってしまったことが非常に残念でならない作品であった。

今作をこの様な評価たらしめてしまっている点は多くあるが、それら全てを包括している要素はやはり

「法廷バトル物がどういったものであるかという理解の不足」

これに尽きるといえる。

依頼人の圧倒的不利な状況を自分の捜査で手に入れた証拠品や、証人の矛盾を一つ一つ指摘していく
過程、真犯人と真実に辿り着いた時の快感といった、基礎であり全てといえる要素が今作には
まるで足りていなかったのだ。

加えて理屈を突き詰めていく法廷バトル物に何でもありの魔法という要素が根強く絡みついてしまっていた
点もやはり無視できず、その点をライター側も理解していたのか魔法を「一つの殺害方法」として
固定化させてしまった点も、問題が解決したように見えて実は「それなら魔法じゃなくていいじゃん」という
本末転倒な結果になってしまっている。

総じて事前調査不足が如実に出た形といえるが、実を言うとキャラ面も不安定な部分がチラチラ見えていたりする。ファルネーゼはウザ可愛いとウザイの間をいったりきたりしてウザイ印象を受ける場面が結果多く描写
されてしまっていたし、オリヒメもキャラクターの魅力が弱過ぎてエルザにすら食われそうな内容であった。




今回の72点という点数も正直法廷バトル物という分野へ挑んだという事実への基礎点で70点、
バタフライ効果の筋書きに+2点つけただけで他は情状酌量でマイナスにしなかった点がほとんどだ。

法廷バトル物を作ろうとしたのかそれっぽい読み物を作ろうとしたのかは定かではないが、
どちらにせよ今作のようなどっちにも振れていない中途半端な作風は次回では改めた方がいいだろう、
と処女作にしては辛辣な内容で締めたいと思う。

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