Planadorさんの「ロスト・エコーズ」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

廻り始めた未来へ待ち続ける君の心信じて――各種ミス、構成力不足等欠点も多いものの、会話劇の出来を中心に人によってはいい所がそれをぶち抜く突き抜け型設定ゲーです。減点法だと著しく点数が下がりえますが、よいところがずば抜けているため、加点法では人によっては心に残る一作になるポテンシャルを秘めております。体験版をやって、「いいところ」が刺さったら迷わずやってください。長文は先に欠点を抽出した上で本作の史実以外の解説に努めたつもりです。
 先にネタバレなしの結論を言うと「良い所が抜群に突き抜けてる人を選ぶ設定ゲー」なんですよね、これ。
 いやほんと面白かったんですよ。中だるみするところや蛇足とかもありましたが、総じて場面毎の最大瞬間風速は高めの作品です。
 ただまぁ、他の方も仰ってますが、とにかくその配置が悪い。その最大瞬間風速が共通にあって、個別内でもシナリオ配置方法に難あり(琥珀ルートが顕著)で、ラスト固定の卯実ルートに至っては完全に蛇足。
 ということで、兎角いいところと悪いところとが共にはっきりしすぎている作品です。で、量自体は欠点の方が上回っているため、おいそれとそれに目を瞑っていいところだけを推すのは流石に難しく。

 ということで、先に欠点を上げておきましょう。言っちゃなんですが一部は商品としてアカンやろというレベルでの出来てないとこがあります。実際問題減点法で点数をつけるとしたら正味70点前後にしかならないでしょう。
 というより、本作は未完成疑惑が正直拭えません。なんでわかるかって? FANZA公式のサンプルCG(=批評空間の本作ページで見れるCG)にどうして本編で見覚えのない未使用差分一枚が混じってるのYO! 本編自体で未使用CG二枚があるのはグッズ等で使用した販促用のそれのようですが、じゃぁどうして販促用の絵がサンプルCGとして並んでるのか、ということにもなり……。
 あとわかりやすいところでは、全クリしても音楽鑑賞のTRACK29,35,36が空欄のままになること。29は公式通販特典のサウンドトラックの特典からもOP曲のインスト「生まれ変わる未来でインストver」でしょうね。ED曲は漏れなく入っておりますので、消去法で残る35は「千代に恵む神語り」、36はOP曲「生まれ変わる未来で」と思われます。
 まぁそれが故に「千代に恵む神語り」のインストverだけしかないところに、元々の歌唱してるのが本作中にないってことが逆説的にわかってしまうんだけどな! イメージソングとのことでしたが、どこに突っ込む予定だったんだろう……。
 その千代に恵む神語りですが、公式HPではショートver.が公開されていたようですが、それがお亡くなりになってしまった以上、現在ボーカル付きを合法的に聴ける場所が存在しません。以前どなたかが音源出すみたいなことを仰ってたらしいので、無理やりどこかが本作の全歌曲まとめて全曲フル版にしたCD出しませんかね……。

 他にも、シーン回想自体は卯実が四回で他が五回ずつ「なように見えます」が、実際は各キャラバラバラでそれ以上あります。卯実のみ見た目通り四回ですが他キャラは五回だったり六回だったりもっとあったり。
 いやまぁ下手な回想分割で水増しよりはいいと思いますよ正直。だけど流石に結佳の制服青姦シーン(体験版結佳Hシーンにも収録)がシーン回想から見れないのはひどい。結佳の背中流すだけの場面を回想に突っ込むより先に入れるものがあるでしょっていう。
 で、この煽りをモロに喰らったのが晶穂。彼女だけ自慰行為の数がずば抜けてるのですが、回想としての挿入はその内の一つだけ。卯実以外の四キャラは内回想枠一つは自慰に充てられてるのですが、晶穂は自慰を含め明らかなエロシーンを全て回想に突っ込めれば一人で10個行くのに、回想としてはバッサリ。
 ともあれ、本来あるべきシーン数としては、正確には、結佳:5(中身誾千代の背中流すシーンを終盤の制服青姦に置換の上)、雛緒:5、琥珀:6(千羽耶の秘所まさぐるシーン追加)、晶穂:10(風呂場手コキ・自慰×3・撮影会ぶっかけ追加)、卯実:4になります。

 あとは単純にシステム面。誤字といい立ち絵指定ミスといい、それが大丈夫なところと大丈夫じゃないところの差が激しい。桜城十萌氏による軽快なやり取りの場面ではあまりないので、恐らくサブライターが関係したパートで諸々噛み合わなかった結果、であると推測します。
 パッチ1.01が公式HP閉鎖後もミラーサイトにて公開されておりますが、これ自体は当てる必要があるものの、だからといって色々と直っているわけではないです。晶穂ルート後半の誤字大会はそれが顕著。ブランド解散をしてしまったため、個人製作がなされない限り、今後これらが直されることはありません。

 ミスでなくとも、システム自体はかなり貧弱です。特に弱いのがバックログ。
 バックログジャンプがないのは勿論、ロード時にロードポイントより前の文章が表示されないのは当たり前。一番ひどいのは普通に読み進めて選択肢に到達した際「バックログが全リセットされて選択肢以前のログが全消えする」ことです。選択肢ついて「えーと直前の文脈は」って確認しようとしたら出来ないってどういうことやねん。
 ジャンプとまではいいません(2018年なら欲しいのは本音ですが)が、流石に選択肢でログリセットはないでしょうと。ここは明確に欠点ですし、シナリオゲーとしてはあってはならない案件だよなぁと。

 システムに依らない、話自体の欠点を見てみましょう。
 本作は天正14年(1586年)、戦国時代末期の北九州の情勢を前提した作品ですが、日本史の中でも中々に細かい範囲です。私個人は世界史履修でしたから諸々把握するのにも手間取りましたし。
 正直、日本史の中でもかなり細かい、北九州の戦の記録なんて余程興味がなければ人によっては退屈なだけだと思います。まぁそういう人はそもそも本作を購入とはならないとは思うのですが、興味があっても物事を全て把握できるかと言うのはまた別問題でして。
 何が言いたいって、図解が欲しかったんですよ。極論史実自体は自分で調べればいいかもしれないですが、史実とは異なる「本作限定の設定」や「過去改変したことによる現代の相違点」は図解がないととにかくわかりづらい。
 結佳ルートの過去に飛んできた際の里久と晶穂の会話が顕著ですが、特に史実から変わっているところは「史実を把握した上でそこから何が変わってるかを把握する」という二重の確認作業を強いられるんですよね。それ自体はギミックとして有効なことはありますが、本作に限らず同様の仕組みを有する作品は、それをそのまま垂れ流すとプレイヤーに諸々の確認で手間取らせることになります。
 そんな時に有用、もとい手助けをしてくれるのが図解なのですが、本作には一切それがありません。おまけに先述した貧弱なバックログも手伝って、話を理解するという行為自体が阻害されてしまうんですよね。なので、それが原因でギブアップされた方もいらっしゃったんじゃないか、というのは容易に想像がついてしまうところです。

 又、ちらっと先述しましたが、企画・ライターの桜城十萌先生とそれ以外のサブライターで書き口があまりにも違う点もよくないです。
 基本的に桜城先生の文章が本作の大半を占めていますが、晶穂ルート後半と卯実ルート後半は明らかに文章に「キレ」がなくなるんですよね。ここがサブライターのパートであると推測しています。
 で、先述の通り氏のパートとそれ以外のとこでミスの量が段違いなので、文章の質や品質を一定以上は統一してほしかったなとなるんですよね。ここは一回の延期で直んないからのパッチでも直んなかったかーという嬉しくないコンボが決まってしまっています。

 本作発売時、殆ど本作の情報を追ってなかったのでよくわかってないのですが、どうにも当初は発売自体が怪しかったという話もあるらしく(発売予定日変遷:2017/7/28→同10/27→同12/22→2018/2/23)。その上原画のあんころもち氏の製作時期にぶつかった体調不良により晶穂の原画が田宮秋人氏に途中で変更ということも加わり、これ以上の延期は資金繰り自体が危なかったのだろうということの想像は付きます。
 とはいえ、やはりフルプラだからというわけでもないですが、商業ベースで他の各種作品と同じように流通に乗るからこそ、それを前提として商品として満たないところは直す、間に合わないならパッチを出すという最低限のことは全部済ませてから解散してほしかった、というのは消費者としての我儘ですかね。知らないから言えることなのは理解しておりますが。

 とまぁ、こうも明確に欠点だらけなのに高得点なのは、純粋に面白かったから。ただ、そのお話自体も明確に「もっと面白く出来たよねこれ」という条件が付きます。
 ですが、その前提として厳しい元ネタを補って余りあるよさが会話の掛け合い。里久と晶穂の兄妹やり取りを中心に、会話劇の出来は正に白眉。兄妹モノとしての関係性を含めた日常シーンだけに限定すれば過去最高傑作でしょう。
 とにかく、この書き口は本当に真似したい。だけどおいそれと真似出来るような簡単な技量ではないものです。これは本当に是非とも一見の価値があります。

 キャラゲーとしても十二分に通用するヒロイン群も本作のとてもいいところです。
 「シナリオゲーでキャラが立ってる作品はどんなキャラゲー以上にキャラゲーになりうる」というのは個人的な持論ですが、本作のヒロインは下手なキャラゲーより何倍もキャラが立っています。難しいシナリオいらないから普通にイチャラブさせてくれればいいよと思わせてくれるレベル。
 兄との掛け合いでそれが一発でわかる実妹を筆頭に、主人公に朝起こすことを強要する同級生、アホさ加減が天井突破してる先輩巫女、全知全能に見せかけて妙に現代的だけど割と抜けてるとこも多いのじゃロリ系神様と、この設定だけで普通のキャラゲーが組めてしまいます。
 特に雛緒の「仕えてる神におしっこぶっかける巫女」とかキャラ設定として強すぎでしょう。何食ったらその発想出てくるんですかこれは筥崎宮から訴えられろw
 まぁ強いて言うなら、その中でも結佳はシナリオ構造の犠牲になってる節がありますが、これは「本筋を前提としたキャラ設定」という関係上仕方ない節があります。それでも「主人公より体を鍛えてる生まれた時からの幼馴染」と書けば十分それだけでキャラゲーとしても立てそうではありますが。
 ついでに言うなら、十時花蓮/十時夕弦は攻略可能にしてほしかったですね。花蓮自身も「当初は主人公を割と嫌ってるに近い琥珀べったり娘」と一時期流行った百合気味な趣向のキャラですが、過去の夕弦の描写を見る限り寧ろ好いてるに近いので、アプローチとしては見たかったですね。キャラとしても、ヒロインとの百合に特化したキャラにありがちな主人公に当たりが強すぎる等の嫌悪感もなかったですし、そもそも里久への理解もありましたし。花蓮本人も言ってましたが、ヒロインがみんな脳筋状態になることがあったので、そうじゃないアプローチとしての落ち着いた関係みたいなのは見たかったです。

 そして主人公悠樹里久ですが、これが実にいい主人公しているんですよね。
 家事スペックはお手の物。その上で生徒の身分で仕事も一丁前にこなす。タイミングなどで自分に出来ないことは晶穂にちゃんと任せている。両親を亡くした時期は不明ですが、日々の生活に学院に写真館の仕事まで、晶穂と二人三脚ということも相まってとにかく生活力がずば抜けてるんですよね。
 あと貴重なのは、困った時に素直に誰かを頼れる点。これがあることで、友人/立花家家臣の志々岐奈多矩/小野鎮矩や各ヒロインらが場面場面で映えるんですよ。特に晶穂はこれによって史上最高レベルの妹キャラへと昇華されました。それを含めて高スペックの主人公であり、こいつはモテるのも納得出来るとプレイヤーに言わしめるだけの器があります。
 尚且つ大真面目に頭もいい。湍津姫神も舌を巻く着眼点の鋭さは物語を解決に向かわせるだけの説得力があります。こりゃ結佳も問答無用で惚れますわ。琥珀も睡姦願望持っても仕方ないですわ。晶穂もずっとあの想い抱えますわ。過去に飛べば誾千代も加弥も武緒も夕弦も全員意中にさせますわ。その頃雛緒は神を前にして失禁していた。

 他に特徴も上げていきましょう。
 本作の分岐は、シナリオゲーにしては珍しく、概して一世代前のキャラゲーによくあった「好感度システム」的なものを採用しているのが大きな特徴です。付随して、バッドエンドもとい途中エンドが多いのも特徴。攻略サイトとかには殆ど載ってないので代わりに以下にまとめますと。


共通
・雛緒/晶穂/琥珀消失
 ↑各三人共通内個々の選択肢間違えてからの花蓮と寝る際「密着はやめておこう」(結佳ルート進行時のみ「俺の胸を貸そう」)
・千羽耶討たれる
 ↑上記選択肢反対側「俺の胸を貸そう」(結佳ルート進行時のみ「密着はやめておこう」)
  ↑承念寺の和尚に「面倒をかけるわけには」(結佳ルート進行時篠栗の北で三人で話してるという報に「呼ばれるまで待とう」)
・千羽耶討たれる
 ↑共通終盤、三者会談に於ける「それを話してくれていたら」からの即バッド
・ノーマルエンド
 ↑共通終了段階で各ヒロインの好感度足りない場合

雛緒
・武緒的性格のままの雛緒、卯実消失
 ↑「このまま現代へ……」からの即バッド

加弥
・里久過去縛り付け
 ↑「晶穂をもとに戻すんだ」よりシーン回収の上での即バッド


 一応漏れはないはずですが他にもあるとのことでしたら報告お願いします()ともあれ、シナリオゲーに於ける途中エンドって、「選択ミスったからこうやって終わらせられたんだぞ」的な趣で好きなんですが、割と多かったのは嬉しかったですね。
 まぁ途中エンド回収をやるにはシステムが面倒なんですけどね! フローチャートがあれば嬉しかったですが、せめてバックログがセーブ・ロード/選択肢場面でリセットされなければなぁ。バックログジャンプ以前の問題ではありまして……。

 また、petit linge(小さい下着)のブランド名の通り下着には兎角拘りが。ライターとしての拘りもあるみたいですが、一枚絵などに於ける描き込みも見事なもの。予約特典が各ヒロインの「パンツ色紙」であったことからも拘りようが伺えます。
 本編途上でも、特に琥珀を起こす時の一枚絵は下着の種類が別途三種類用意されているなど、差分が潤沢に用意されていたのは、ブランド名としての面目躍如というところでしょうか。そしてそれがちゃんとシナリオに活かされているんですよね。ここはある意味外してはいけない部分でしたので、ここはほっとしたと言いますか。

 とまぁ、兎角ここまで「利点と欠点が共に明確」な作品は中々珍しいように思います。ですが、いいところは他作品の追随を許さないレベルの質が確約されているが故に、それだけに、パッチ当てても直ってない立ち絵指定ミスだとか誤字だとか、いろいろなところが勿体ないなぁと、どうしても思ってしまうのです。
 ひとまず、メインの桜城先生による自身の公開ツイまとめ「ろすえこがくしゅうちょう」が公開されてるので、本作既プレイ未プレイに関わらず一読を推奨します。 https://twitter.com/i/events/1107163014904442880


以下ルート毎にざっと概説と感想。


共通
 一通りの流れとしては卯実登場→結佳の祟り堕ちしかけている現状が判明→里久数回過去に飛ぶ→三者会談で解決、までが全て共通に含まれます。結佳ルート以外では三者会談で一通り解決してしまうので、共通終わった段階で粗筋上の山は終了します。
 個人的には、過去パートに入るのがだいぶ時間経ちすぎだったように思う(里久の夢を過去パートと見なさない)ので、もう少し早く過去パートを前倒ししてくれればなと感じました。日常が楽しかったというのはあるんですが、文字通り過去に「放り出された」感が強かったというのはあるんですよね。
 とはいえ、一回過去パートに入れば、以降はどのように物語を展開させるのかの予測がいい意味でつきませんでしたし、何より現代での会話劇の楽しさと相まって長い共通は飽きずに進められます。

 正直、共通単体ではあまり話すことはありません。というより先述したいいところに共通が割と収斂しているからというのもあります。先程述べてないことで各所挙げてみましょう。
 まず、卯実が里久に過去に飛ぶまでにすることしなきゃいけないこと、前提の説明などはかなりしっかり行われています。先述の通り一部は図表があればでしたが、それが関わらないとこでは文字列だけで優に理解できる解説がなされていました。

 その共通内だと一番正史っぽい行動をしていたのは琥珀ですね。雛緒は個別含めて賑やかし要因、晶穂は琥珀とくっつくのを推す、結佳はあまり関わらないとなると、朝起こしに行って里久に下着を見せる琥珀が割と一強状態になるんですよね。
 幼馴染厨なのでまずは結佳を推しますが、それも含めてお気に入りキャラを上げろと言われると琥珀になります。先述した通りどのキャラも各々「強い」のですが。

 で、後述しますが、結佳が最初各位との絡みが薄いので、どうしても最初は感情移入とかが厳しいんですよね。勿論段々と「物語としてのヒロイン」であることが詳らかにされていきますが、これ自体はだいぶスローペースです。
 だからこそ、そういう意味では、ルート毎の本作の表ヒロインは琥珀で、裏ヒロインは結佳という図式が当てはまるのかなと。共通単体ではある意味武緒の攻略は完了しているわけですが。


姫崎雛緒/姫崎武緒
 神にもなることを望まれた巫女が人として生きることを選ぶまで。

 正直このルートに関しては、里久の我が優先されすぎた結果という節があるので、あまり本筋として見た時にどうなのというとこはあります。
 というのも、武緒が里久に抱いて欲しいと懇願する→里久がお別れが言えなかったので過去に飛ぶ→雛緒の性格が変わってしまったので改変で過去に飛ぶ→卯実が消えたので復活の儀を行う、という、いらんドミノ倒し的な流れになってしまってるからなんですよね。
 で、共通段階での話の流れを見る限り、武緒は晶穂・琥珀ルートの場合でも抱いてないとおかしいのですが、両ルートではその記述もなく。共通で里久に惚れた武緒の描写が漏れなくあったわけですし、両ルートで武緒の誘いを断ったという一文があればよかったのですが。
 まぁ、そもそも論として、神に仕える巫女が、未来から来たおのこに惚れたからと言って易々と身体を許すかなという。というよりむしろ武緒から誘ってますしね。そういう意味でも、上記の他ルートでは里久が断る文面が欲しかったかなと。

 ルート内での雛緒のキャラ描写に関しては、武緒的性格の方向も含めて、よく言えばお得、悪く言えば両得にはなり切れていない節があります。各々を攻略したかったという人は多そうですが、そうすると「この性格パートをもっと増やしてほしかった」とどちらからも言われそうで。
 後はまぁ個人的な好みで、雛緒が悪いキャラではないんですが、方向性として武緒的なキャラが好きなので、雛緒から武緒っぽい正確になった時はそのままでよかったじゃんとついなってしまい。
 勿論それを認めると個別が話として一切いらなくなってしまうのでアレなんですが、そういう意味では必然性が欲しいと思ってしまうルートではありました。共通~結佳ルートに続く本筋からは割と逸れるルートでしたし、それこそもうちょっとキャラゲーだと割り切った構成にしてもよかったのかもしれません。


悠樹晶穂/筑紫加弥
 前世の強力な「想い」が実妹として転生後も重く圧し掛かる話。

 繰り返しますが、共通段階でのやりとりを含めた二人の距離感は兄妹モノの最高峰です。他ルートに行ってもこの二人の家族兼兄妹兼戦友的な関係は本作を読み進める原動力の比重の大きな一つになります。
 ただまぁ、付き合い始めてからの個別後半は正直微妙、もとい宜しくない。いや加弥が晶穂の奥底で眠ってたということ自体はいいのですが、先述した通り、単純に誤字が大量ミスも大量と、パッチを当てても全く直ってないシステムが問題なんですよね。
 この作品の随一の長所である「里久と晶穂の兄妹やり取りの面白さ」が個別後半では消え失せてるので、そもそもがここはサブライターのどなたかによるものなのは間違いないんですが。でも各個別の中でも重い部類になるこここそ、桜城氏の筆で軽妙に飛ばしてほしかったと思うのも事実で。

 話を元に戻します。途中から晶穂の想いと加弥の想いとが交じり合ってごちゃごちゃになるわけですが、ここの琥珀の言動が、バラバラであるようにも見えつつ、二人を応援したいが故の、というのはよかったですね。反対と賛成が仲間内で入り混じる図は新鮮でしたが、でも二人を応援したいから、という気持ちに収斂するのに懐の深さが垣間見えました。
 その上でやはり特筆すべきは加弥バッドエンド。加弥と致したことでそのまま過去に縛り付けられる終わり方ですが、ここはとにかく「現代に於ける各キャラ消失エンドと同様ではあるが、現代において誰も里久を覚えておらず、また過去で里久が生きている」ところがミソですよね。
 各種ヒロイン消失エンドでは、里久だけが消失ヒロインの存在を覚えており、里久が死ぬまでは「消失ヒロインの存在が名目上消えることはない」のですが、ここだけはそれすらもないので、「現代に於いて悠樹里久は存在を許されなかった真の死」を初めから迎えてしまっているんですよね。
 そして結佳ルートラストの描写でも同様ですが、「表面上は物事が解決した乃至存在しなかった」ことこそが、消失した該当キャラがいた痕跡を完全に消してしまうものです。「死者は誰からも忘れ去られて真の死を迎える」とはよく言ったものですが、作中卯実が語った「信者を持たない神は忘れ去られる」という形で本作内でも同様に語っています。
 そういった意味で加弥エンドは重かったです。まぁだったら雛緒や誾千代とヤった際に地に縛り付けられなかったのはどうしてというのはあるんですが。千羽耶は存在がイレギュラーだから、雛緒は性質が神に依るとこもあり、誾千代は湍津姫神による竜珠は影響を受けないものだから、でいいのでしょうか。

 まぁ晶穂ルートの結末だけを見るならば、結果的には兄妹ルートとしては割とよくある感じの着地点に落ち着いたかな、とは思います。ですが、共通からのやり取りと併せて考えると、晶穂というヒロイン自体はルートとして主体的になるキャラではなく、ずっと里久の傍からは離れない、それこそ花蓮/夕弦的な立ち位置の方が目立つ場面が多かったかなと。
 そういう意味ではルートとして見るのもそうですが、恋愛感情抜きの、ずっとただ二人が喋ってる図と言うのは見たい所ではありましたね。まぁ花蓮ルート自体を素直に見たかったというのも含めてのぼやきではあるんですが。自身の考えを以てして、加弥も含め晶穂自身のルート外の方が映えるキャラでした。


神代琥珀/神代千羽耶
 過去で出会った千羽耶がそもそも以前に過去にぶっ飛ばされてた琥珀だったので現代に帰還させるよ! という話。

 先述しましたが、共通の流れからだとルートロック外三人の中では琥珀が一番行き着くのに自然なように出来ています。いや結佳は独りでに里久から離れる、琥珀は誘ってる、晶穂は琥珀との仲を推す、里久は起こす際の下着姿にムラっときてるとなれば、何もなければ環境的には琥珀ルート一直線なわけで。
 実はお金持ちの、トイレなどの全国的水回り陶器メーカーをやってるとこの娘とのことですが、このメーカーは北九州市小倉北区に本社を構えるTOTOがモデルであると推測されます。TOTOの社長の娘ならお金持ち言われて納得するしかねぇ。
 ちなみに学院が香椎にあって神代家も近くにあったとして、その父親が小倉北区まで通うとなると、50kmは軽く離れてはおりますが、そこはJR九州管内では定番の特急通勤でしょうね。正味一時間で付きますし、社長出勤としてはおかしくもないですのでそんなところかなと。

 ひとまず、千羽耶として誾千代に殺された時、琥珀としての存在がどうなったかについてですが、そもそもが千羽耶は「既に過去に飛ばされた琥珀」なので、この時点で現代から琥珀は失踪しています。そして、誾千代は千羽耶殺害がトラウマとなり、精神が祟り堕ちする理由となりました。そういう意味では、今回の騒動の元凶は琥珀と言えます。勿論彼女に全責任おっ被せるのはあまりにも酷ですが。
 正確には、真の元凶は「来世でも」加弥に仕えると和重霞に誓った『琥珀の前世の千羽耶』です。これを起点に、元の世界での琥珀の過去跳躍と→誾千代による千羽耶(琥珀)殺害→誾千代祟り堕ちの開始、となるので、それさえなければ、この物語が始まるということもありませんでした。つまり、里久が何も動かなければ、結佳は湍津姫神により存在を消され、琥珀は発掘に向かった先で竜珠に触れ過去跳躍し現代から失踪(その後誾千代に討たれる)ということになっていたわけです。
 ともあれ、琥珀ルート内の琥珀についてまとめると、『過去改変前最初の世界の琥珀(二年次二月)の精神が過去に飛ばされる(存在自体は「過去の結果として」現代にそのまま存在)→個別での琥珀、竜珠により過去へ(この時元々飛ばされてた魂と同一化、肉体は先に過去に飛ばされてた方を基とするため処女膜が復活)→里久により現代へ戻る』となります。

 シナリオ自体は、前半部は個別で一番盛り上がりますね。盛り上がるというか、「お前……死ぬのか……?」的な方向ですが。
 で、面白かったのは間違いないんですが、端的に言ってあるべき構成が逆。里久が過去に取り残されるというあの場面は、やはり個別の後半で持ってきてくれた方が締まりがよかった(意味深)ですね。
 あとその影響を受けてか〆がちょいと尻切れトンボでしたね。え、そこで終わり? とは正直なりました。写真撮ってて琥珀の乳首立って里久がおち●ちん出して終わりってどういうことやねん。ここは似てもいいから晶穂ルートラスト宜しくまとめるための日常パート用意して相違やって〆てほしかったですね。ラストで一枚絵用意しろってわけじゃないんですし。
 個別にバッドエンドがないのも特徴。選択肢を用意して個別途中のバッドもあってもよかったとは正直なりました。まぁそうすると晶穂ルート加弥エンドと近いものにしかならないので、これは似てるが故に除いたというところでしょうか。

 ともあれ、キャラ設定が幼馴染としてありそうなものオンパレード(主人公に朝起こしてもらう、主人公妹がくっつけようと画策する等)でしたが、だけど幼馴染設定ではないのは中々に珍しかったですね。それもひっくるめて好きなヒロインです。
 そうそう、鏡岩を前にした慟哭の場面の演技は本作一番でした。見上げてifに於けるひかりとの自転車二人乗りの場面もですが、時折見せる「感情を基とする」場面はもかちょこさんの十八番とみていいかなと。
 あとあれ、共通での「うぇへへっ」がめちゃ可愛かったです。好きなことにうぇへへっと言いながら没頭する彼女とか欲しいですねぇ!


立花結佳/立花誾千代
 祟り堕ちしてたの誾千代だったけど紐解いて解決したら結佳に移ってたわ! という話。

 キャラ的には、もうちょっと妄想癖を深めてほしかったなと。そもそもの話、シナリオと結佳の妄想癖がうまくかみ合ってなかったので、妄想癖自体を琥珀辺りにさせるべきだったかなとも思いますが。
 先述の通り、キャラ造形がシナリオ構造の犠牲になっているところがありますが、兎角全体を通して結佳と晶穂の絡みがだいぶ少なくなってしまっているところは大きいかなと思います。というのも、里久と結佳の心情というのもそうですが、幼馴染として、結佳と晶穂の女子同士のやり取りというのは里久とのそれ以上に密に行われてるべきというのがありまして。
 で、本作、晶穂がそれをすべきリソースが琥珀に喰われてるんですよね。晶穂としては結佳の里久への気持ちを知ってた可能性が高いでしょうし、そこで里久とくっつくのは琥珀推し、と明確にされると、幼馴染としての長年の付き合いはどこ行った? となるわけです。
 どれも「結佳が誰からも一歩引いてた」という構造に起因するものですが、キャラ設定としてそれこそしわ寄せが来ちゃってたなぁと。こここそ揺らぎを通して歴史修正すべきですよね――というのはともかく。

 本作の始まりは、病床の千羽耶の願いを和重霞が聞き届け、その来世である琥珀が竜珠に触れ過去に飛ばされたことでした。ですので、分霊への責任というわけではないですが、卯実があそこまでする、というのは割と当然な流れにもなるかと。
 というのも、これは琥珀が過去に飛ばされていたことに主に関係しますが、結佳ルート内での過去に飛んで白水城へと歩いている際の里久と晶穂の会話からわかります。
 会話中では、元々あった世界がイニシャルライン、収束させるべき世界をブランチAとしておりますが、ルートロック外三人のルートはそれこそブランチAに収束させたルートになります。で、結佳ルートは「イニシャルライン」に収束させるルートなんですよね。
 そして、結佳ルートでは、誾千代の祟り堕ちが結佳自身の祟り堕ちへと移動していた、ということですが、結佳はその理由を「里久を誾千代に取られると思った」と説明しております。
 あくまでそれ自体はきっかけにすぎませんでしたが、これ自体はそれまでの累積分が大きすぎた、と考えるべきでしょうね。過去を変えても、誾千代の後悔自体が揺らぎにより除去されておらず、そんな中結佳の少しの嫉妬でそれを押してしまいました。

 で、イニシャルラインの前提としては、琥珀が二年次の二月に初めて竜珠を見つけていることからも、卯実の存在自体が発現していません。恐らく隠し神が隠し神として見つけられないままになっていると思われるのですが、誰からも認識されていないという点では消失した状況と同列です。
 ということで、イニシャルラインに収束させるためには、そもそもが卯実の消失まで全て込みとしてのイニシャルラインだったのではないか、その上で、あるべき姿に落ち着いたという点では、やはりこのルートこそが正史であると思うのです。

 ちなみに、湍津姫神が卯実に対し将来的に四女として拾い上げるという記述がありますが、これは誰かとの子供としての四女ということではなく、宗像三女神ではなく、卯実を四人目として認める、謂わば将来的な『宗像四女神』にするというものです。要するに湍津姫神としては現代より先に神話を生み出す気満々ということですね。さらっと日本神話自体がひっくり返るとんでもないことを言っています。
 そもそも、里久に誓(うけい)をやらせた時点で殆ど神話級のそれではあるんですが。うけいというのは、アマテラスとスサノオの誓約を筆頭として、日本神話に於いて重要な場面で行われているものなわけで。すなわち、湍津姫神は里久による結佳/誾千代救済を、日本創世レベルの新たな物語にする気があるという話にもなってくるんですが。
 結佳自身は元々和重霞の分霊、里久は湍津姫神との「うけい」をしているわけですから、里久も神々と同様の性質を持ったと考えるのが妥当でしょう。これがギリシャ神話等なら、亡くなった後の二人を星座にでも上げるのでしょうが、ここでは他ルートのことも考えるに、二人を御筥宮に祀ることになった、が順当であると思われます。
 卯実ルートでは実際に筥崎宮に500年伝わるお祭りである玉せせりを取り上げていますが、この際里久と卯実は縁結びの神様として祀られていました。これが里久と結佳になるだけです。「幼馴染を救うために自身の命を削ってまで救った」というのは正に縁結びにはもってこいですし。

 恐らく、里久が早逝する間際になって初めて、湍津姫神か里久本人からか一万日のことを聞かされるのでしょうね。それでも、晶穂や琥珀、そして里久との子供に支えられながら、結佳は自分の足で立ち続けるのでしょう。
 いやまぁ、誾千代の早逝具合を考えるに結佳自身も平均寿命程とはならなさそうではあるんですけどね……。そして結佳も逝った暁には、湍津姫神により、御筥宮にて、里久と結佳が二人共に祀られることとなるのではないでしょうか。
→それを多少前提にした、結佳ルートアフターで死期を目前にした里久の二次創作を執筆しましたのでこちらからどうぞ。 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13004722


LOST ECHOES(竜泉卯実/阿曇由良和重霞姫命)
 えー、これに関してははっきりと言いますが『蛇足』の一言。個人的には、true然としたところを経由したのだから、もうそれ以上はいらないというのはシンフォニック=レインに於けるフォーニグランドを思い起こさせたのですが。
 いやあっちは伏線回収があったんで必要ではあるんですよ。まぁトルタtrueにまとめろとも思うんですけど。それはともかく、これ(LOST ECHOES)は伏線回収のふの字もないんですよね。
 ちなみにS=Rのそこんとこの不満は、ここでのレビューでは書いてないけどS=Rで書いた小説同人誌には書いたよ! こっから買ってね! 残部少ないよ! https://alice-books.com/item/show/8841-1 とまぁ広告もといガチ蛇足は置いといて。

 何が痛いって、本編各ルートのどことも繋がってないことに尽きますねこれ。せめてノーマルエンドからの流れなら理解できるんですが、そういうわけでもなく。
 卯実が消えた!→お祭りワッショイで復活!→卯実とセッしまくるよ!→終制作著作petit lingeと言われたところでポカーンとしてしまうのは正直なところなんですよね。

 そもそも、ハーレム展開っぽくしておいてでも卯実ルートというのもよくわからない。そういう面についてもどっちつかずなんですよ。
 というか、里久が神となり、神と人とは結ばれないというのなら、ハーレムを築いたところで、少なくとも雛緒と琥珀とは結ばれようがないわけで。そこの説明不足感も甚だしかったですね。先述の通り結佳ルートでは神っぽいとは書きましたが、あれは相手が結佳一人だからいいのであって。
 まぁ正直なとこ言うと、えちシーンが出始めた辺りから会話のキレがなくなってきたので、晶穂ルート後半同様そこからライター別なんだろうなとは思うんですが。

 じゃぁどうすればよかったかって、あくまで他よりはという話ですが、ノーマルエンドを見てることをロック解除のもう一つの条件として設定した上での、ノーマルエンドから続くハーレムルートでしたよね。
 別に無理にえちシーンを設けろって話じゃないですし、単に見たかったのはキャラゲー然としたおまけとしてのこの面子でのわちゃわちゃなんですよね。里久を取り合う結佳と琥珀とか普通に見たかったですよ。そうでなくとも考古学研面子で平和な日常という図式は、あのキャラ群なら絶対楽しめましたし。
 ともあれ、無理に何かをするということではなく、素直にともすれば里久を取り合いになるかもしれない日常を見たかっただけです。先に述べた「シナリオゲーでキャラが立ってる作品はどんなキャラゲー以上にキャラゲーになりうる」が故の欲求ですね。

 ただ、全てを貶すつもりもないです。一つは加弥を別途祀ってると明記して、その理由を晶穂に語らせたこと。
 勿論このルートでなければそういう話はなかったわけですが、加弥が晶穂に謂わば『取り憑く』ことは、こうも祀ることによってまずなかったことは断言できますし、これによって、少なくとも「晶穂の心情が過去に影響されることはない」ことはとても大きいんですよね。
 まぁ要するに晶穂ルートはどう辿ろうとここでは殆どあり得ないということになるんだけどな! ただ、晶穂自体の心理的な負担はだいぶ軽減したと思われます。

 もう一つはお祭りの意義の記してくれたこと。民草の心を一つに、ということを考えた時、古来からずっと続いているものでそれが可能なのはいじめとお祭りぐらいなんですよね。
 「最終的な目的を一つにする」ということに於いて、信仰とそれに伴うお祭りは一番手っ取り早い解決策です。その観点から意義を明記してくれたことは、お祭りの存在の目的をわかりやすく記していてよかったです。

 とまぁ、どうせやるなら、そうしてほしかったなという願望を込めつつ。まぁそれらよりは花蓮ルートが先ですかね。
 正直なこと言うと、それをやったとしても卯実に惹かれる流れにはなりえないとは思うんですけどね……。それだったらまだハーレムとなる方が納得できるという。
 ですが、前世の想いを何らかの形で全て予め解消出来、『現世の徳』だけで里久のハーレムっぽいことが出来るなら、それが一番の祟り堕ちの解消の結果であり、人によってはそれが一番望ましい未来ではなかったのかと、そう思うのです。


総括
 「LOST ECHOES」というタイトル自体は回収はされません。直訳して「反響の消失」という題として考えた時、いつどこで、どのようにして失われたのでしょうか。
 各ルートで考えるとどうでしょうか。雛緒ルートは神として昇華されるべきであった雛緒の天界からの(実質的な)消失、晶穂ルートは加弥を昇華させるため、琥珀ルートは過去からの千羽耶を消すためのもの。
 ですが、やはり結佳ルートの誾千代と卯実の消失こそ、「過去に生きていた痕跡の消失」という観点から、「LOST ECHOES」という本題通りであり、またタイトル通りにあるべき話なのでしょう。それを題す肝心の卯実ルートは……誰も消えてないからな……。
 まぁそもそもタイトルがジョー・R・ランズデールによる同名小説のオマージュとか言われたらどうとも言えなくなりますけどね! 私自身は未読ですが、粗筋読む限り主人公を結佳に、出会う男を卯実に置換すれば割と成り立ちそうでなぁ。

 そもそもの話、本作はバッドエンドを除き、個別エンドの方が寧ろノーマルエンドよりも実は不幸せじゃないかと思う結末ばかりになります。
 雛緒と琥珀はまだ幸せ、晶穂は近親相姦ルートとしては社会通念上一般的な問題に(ちゃんと)ぶち当たる、結佳は里久の寿命が27年以上縮まってる、卯実も里久の方が早逝するのは確定。
 ということで本作、それを踏まえると見方によっては割とメリバな作品です。そもそも正史が実質結佳ルートになりますが、これが一番のメリバであるという。

 本作は「誰かが代償として消えること」が結末を迎えるためのある種前提になっている節があります。幼少期に病没した神代千羽耶を、神になる器であることを放棄した姫崎武緒を、家を守ろうとした筑紫加弥を、結佳に取り込まれることによって結佳を守った立花誾千代を、そして竜泉卯実らの「生きていた証が消えるまでの物語」です。
 先にも述べた「死者は誰からも忘れ去られることによって真の死を迎える」ということを示す作品であり、そういう意味では、本作は忘れ去られた彼女らの追悼のための作品である、そう思うのです。

 それにしても、なんというか、こうも尖った作品は最近の商業じゃ珍しいですよね。個人的に、設定に振り切った桜城先生の作品は間違いなく面白いと断言出来る出来であったと思います。
 だからとにかく真の意味での完成版が見たかった! 本当に見たかった!!! さっきあぁ言ったけどブランドまで消えるんじゃないよ! これ程各方面「次がない」ということが残念な作品もないよ! 成程これが早逝した里久を失った結佳の気持ちか……。
 ひとまず、せめて次回の設定に振り切った桜城先生の作品では、諸々が潤沢な環境で、設定を回収しきれるような態勢で素晴らしいものをお願いしたいと思うばかりです。

 ということで、本作は欠点よりかは多くはない利点が、自身の好みの中に一つでもあればそれのために買うべきというこれ以上なく尖った作品です。ぱっと見で明確にお気に入りキャラがいればそれ目当てでもありかも。特に琥珀と晶穂。
 私個人としてはいつか聖地巡礼したい作品となりました。箱崎・香椎・千早駅72kmポスト・海の中道……湍津姫神的には宗像大社もですか。え、何か混ざったって?
 え、ライターの本作の主張としては「温泉行く!」が一番推したいポイントだって? あぁうん、否定……出来ないねぇ……。

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