えびさんの「戦国の黒百合 ~ふたなり姫と忍ぶ少女達~」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

絵21+文23+音17+他25 待ち焦がれていました。そして、続編も信じて待ち続けます。ありがとう。
(※ロープライス・同人を対象に、他の項目は、最低点をベースアップしています)

あれから五年……。我々が待ち焦がれ続けた時間です。

五年前の二〇一二年とは、どんな一年だったか。
スカイツリーが開業したり、コナミがハドソンを吸収合併したり、牛レバーの提供が
禁止されたり、小沢一郎が民主党と決別して気が狂った名前の政党を立ち上げたり、
オスプレイがやってきたり、国内の原発がすべて稼働停止したり、国内初のLCC『ピ
ーチ』が就航したり、Windows8が発売されたり、『Wii U』が発売されたり、流行語
大賞がスギちゃんだったり、エヴァQが封切りされたり、冬コミで黒バスの出展中止
があったり、アニメはガルパンやら氷菓やらジョジョやら衰退ダンスやら……こうし
て過去の年表などを振り返ってみると、あれも五年前、これも五年前と、思い出され
ます。
私事では、甥と姪が一人ずつ出来ました。あー、歳を取ったはずだ。
長いなぁ、五年。

五年も経てば、絵柄やシナリオがブレたりしないだろうか、流石に不安も抱きました
し、そもそも、本当に続きをプレイすることが出来るのだろうかという気掛かりもあ
りました。
製作者にしてみても、そんな憂慮はあったのではないかと思えるのですが、無事に完
成した今、製作者の作品への熱意や愛の深さを改めて実感するに至り、それを噛み締
めつつ、我慢できずに一気にプレイさせていただきました。

そして、すべての心配は、プレイを初めて、すぐに溶けて消えました。


私は、シリーズを通して描かれているテーマを『変化』であろうと見ています。

本作では、朔姫と同じく、ふたなりになってしまった絹という少女が登場しますが、
まさに絹は、朔姫が恐れた『堕ちてしまった自分の未来』の象徴として描かれます。
前作までのような、強さ、気高さ、あるいはドス黒さは影を潜めてしまった朔姫は、
すっかり弱りきっており、絹に優しく接し救おうとすることで、今の自分を慰め、未
来の自分に訪れようとしている事実から目を背けようとします。

そして、ついに絹の変化は決定的な一線を越え、隣室から姫の名を泣き叫びながら自
らを慰める水音だけを聞かせるというシーンは、作者の演出が憎くなるほどの、すさ
まじい悲痛さで胸が痛みました。
ですが、そんな絹にも救いはありました。
最期には、想いを寄せていた少女・あやめと繋がる事が出来、そしてあやめは後悔の
中でこう思うのです。

>>
お嬢さんは、何も変わっていなかったのに。
<<

それは、例えふたなりになって性欲に溺れるようになってしまっても、絹という少女
の本質は何も変わらず、かつてあやめが大好きだった絹がそこに居ることを、あやめ
自身がやっと悟ったシーンで、それは同時に悲しい離別のシーンでした。
朔姫は、絹の最期を知ることはありませんでしたが、このシーンは変わってしまうこ
とを恐れる朔姫が救われる可能性のひとつを提示したものであったかもしれません。
あるいは、朔姫もまた『何も変わっていない』のかもしれません。
故郷に置いてきた少女なら、きっとそう言いそうです。

しかし、絹に優しく接しながら自らを慰め、救うと言いながら救えず、朔姫にとって
深い心の傷となって、忸怩たる思いだけを残した後味の悪さを抱えたまま、朔姫と二
人の忍の逃避行は続きます。
二人の忍が隠していた事実が露見するなどあって、朔姫は手駒の忍たちにすら懐疑の
目を向け、ますます心が荒み、そしてますます弱っていきます。


後編で描かれるのは、二人の忍の『変化』。
特に、人であることに意味を見出せなかった少女が、人として生きて守り抜きたい者
の存在を自覚した瞬間の鮮烈さは、同時にそれが叶わない現実の残酷さと重なって、
皮肉過ぎる無常に打ち据えられます。


さて、ついに心が折れてしまった朔姫は、果たしてどんな道を辿るのでしょうか。
朔姫を監視し、秘薬を飲ませた忍の、主君とは誰なのか。

朔姫の居なくなった尾張では、これまで表立った行動をしてこなかった濃姫が、朔姫
の替わりを務めようと動き始めました。
前作では、どこか昔の朔姫に似た姿を垣間見せた濃姫は、信長が懸念するように、朔
姫と同じ轍を踏んでしまうのでしょうか。

十兵衛が抱えている秘密とはなにか、それは信長の後悔の原因とも因縁浅からぬよう
に思えます。


相変わらずな、コメディ担当の木下夫妻に安心したりもしつつ、蕗姫も柚々も出番す
くねーよーと机を叩いたり、そろそろお茄子が美味しい季節だなーとか思ったりしな
がら……また、ここからは、続きを待つターンです。

五年経っても『変わらなかった』。
その事実だけで、次を待ち続ける事自体も楽しみになりました。

こんな作品に出会えたことを、本当に嬉しく思います。では、また。

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