生肉さんの「ISLAND」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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84ISLAND
ネタバレ全開で妄想してみた
■三千界切那について
まず、よく見かける疑問点を列挙しよう。
・最初のコールドスリープ前の三千界切那はどのような人生を送っていたのか。
・END「未来予想図」で娘が煤紋病になったのは何故か。
・万里愛は煤紋病の治療法を模索していたのに、冬編に煤紋病が存在するのは何故か。
・5年前、暴龍島で何があったか。
・「僕を殺す旅」とはなんだったのか。

さて、手始めに三千界切那の正体について考えてみよう。
実はこれは物語の冒頭にヒントがある。

> 二人で並んで歩いた白い砂浜。
> 風鈴の音を聞きながら食べたかき氷。
> 小さなベッドの上で語り合った将来の夢。
> 無限に続くと思っていた暑い夏。

特に重要なのは「風鈴の音を聞きながら食べたかき氷」の一節だ。
前後の文脈から、これは二人で行ったことと考えなければ不自然である。
二人の片割れは語り手である三千界切那であり、
もう一人は、夏であることからリンネではなく凛音だとわかる。

作中で風鈴とかき氷の組み合わせが出てくるのは、竜宮だけである。

ところが、作中でこの二人が竜宮に行ったとき、結局は何も口にしない。
それどころか、1999年にはついぞ竜宮に二人で行かなかったことを、
わざわざED「凛音」で明言している。

一見するとOPとEDという重要個所で矛盾を強調するようなこれらの描写に、
刹那が誰かという問の答えが示されている。

実は、二人で竜宮へ行ったことがある切那と凛音がいるのだ。
御原切那と御原凛音だ。
つまり、引用部は御原切那の記憶なのである。

以上より、三千界切那は始め、御原切那だったと考えられる。


こう言われると、下記のように反論する人がいるだろう。

御原切那は煤紋病であり、三千界切那は普通に日の光の下へ出ても平気だった。
両者は別人としか考えられないと。

あるいはこうか。

三千界切那は鎌倉幕府を1185年に始まったことや、
ピンチアウトによるズーム操作等といった、21世紀を知識の基盤としているように見受けられる。
よってより後の時代の人間のはずだと。

一見するともっともだ。
しかし、これらの事実と、最初に提示した他の疑問を合わせて考えてみると、
上記の結論と一つの線に繋がるのだ。

取り敢えず、最初に挙げた2つ目の疑問点を思い出して欲しい。
三千界切那と御原凛音の娘は煤紋病となってしまう。
御原凛音は煤紋病の遺伝子を持っていないと明言されている。
そして煤紋病は伴性不完全優性遺伝、
つまるところ、三千界切那は御原切那と同様に、煤紋病の遺伝子を持っているのだ。

一方で、三千界切那と御原玖音の娘である御原凛音は、煤紋病ではない。
御原玖音は煤紋病ではないから、条件は上記と同じはずである。
遺伝の性質だけを考えるなら、これらは確実に矛盾している。

さらに、先に述べたように三千界切那に煤紋病に症状が見受けられない。
厳密に言えば、症状が全く出ていないわけではないかもしれない。
本人が火傷の跡と捉えているのがそれだ。
これが煤紋病の影響であるかどうかははっきりしないが
いずれにせよ、男であるのに明らかに進行性のそれとは症状のレベルが異なる。

これについては、3つ目の疑問が答えになる。
万里愛が治したのだ。
ただし、凛音は煤紋病ではなく娘は煤紋病となっていることから、当人は治りはするものの、
子孫は煤紋病に確率的になってしまうといった、生殖細胞に対しては不完全な治療だったと考えられる。
故に2万年後、あるいは繰り返しの世の先まで残ってしまったのだろう。
いや、考えようによっては、遺伝子保有者が死ななくなったことで、
逆に淘汰されなくなりアイランドでは浦島よりも蔓延していると考えた方が自然かもしれない。

ここでこんな疑問が湧き上がった人はいるだろうか。
どんなに早くとも、切那が20歳前後となるまでには煤紋病の治療法が確立されなかったはずであり、
娘の時代にだって煤紋病が治せるような雰囲気ではなかったと。

そんな人は、重要なことをお忘れだ。
この世界には、コールドスリープマシンがある。

今を捨ててでも未来へ行きたい、それはどんな場合が考えられるだろう
いくつも考えられるが、作中では不自然なまでに描写がないメジャーな理由が一つある。
現在の医療水準では不治の病だ。
煤紋病はまさにそれにあたる。

御原切那はコールドスリープマシンに触れる機会があっただろうか。
あった。
彼は暴龍島に漂着している。
そこで一つの『舟』を見つけたのだ。

周回前の暴龍島で何があったのか、
それについてはあまりに情報が不足しており、わからない。

しかし、一つ確かなことがある。
御原切那がコールドスリープをするということは、
凛音は神隠しにすら遭わず、助かることはない。

御原切那は数十年のコールドスリープ後、
発見され、目覚めてから煤紋病の治療を受け、21世紀の知識を得た。
そして、凛音のことを知る。
ここから三千界切那としての長い旅が始まったのではないだろうか。

ではそれは、キャッチフレーズの「僕を殺す旅」と言えるだろうか。

切那は2つのことを結びつけて自身の旅の目的を
「せつな」を殺すことだと勘違いをする。

1つは
> 切那は、死ななければならない
と書かれた紙を見付けたこと。

もう1つは冬編の最後にセツナを殺すと自身で言った記憶を夢に見たことだ。

これらは時代が異なり、全く事情も異なる。

1つ目はおそらく御原典正が書いた物であり、
御原切那が煤紋病であることが理由であると思われる。

2つ目はリンネによりタイマーを2万年に変えられたことや、
そもそもタイムマシンとしては完成していなかった為、
結局の所未遂に終わる。

では、Bad Endでの自殺以外で切那は切那を殺していないのだろうか。
そもそも、切那が別の切那に接触したことはあるだろうか。

あるはずだ。
それが周回後の暴龍島だ。

凛音と共に遭難してしまった御原切那は、洞窟に行き記憶を混乱させて戻ってくる。
ここには、上記の周回前とは全く異なる事情がある。
彼は洞窟の奥で見付けたはずだ。
オーパーツである空のコールドスリープマシンだけでなく、
周回前にはなかった三千界切那の眠るリンネの作ったマシンを。

だからこそ、オーパーツ側も同様の使い道であることを悟り、
そしてもう1人の自分が凛音を守ると信じて、
凛音を眠らせるという形で護ることが出来たのかもしれない。

こうして、三千界切那が旅に出ることにより、
その時期の自分といえる御原切那を結果的に殺すこととなったのだ。





■御原玖音について
・玖音が三千界切那に自身の知っていることを話さなかったのは何故か。
・玖音は何故近親婚を止めなかったのか。

御原玖音は一見すると理解し難い行動が多い。
彼女を知るためには、まず前提として、
リンネの大切な人達に対する関わり方を思い出さなければならない。

彼女がパンを巡ったジャンケンを行うとき、
ネハン・オハラにわざと負けようとした。
彼女はこういった自己犠牲を厭わない人だ。

冬編の終わり、それが特に顕著に表れる。
リンネはタイムマシンだと思っていたタイマーを、2万年にあわせてしまう。
自身は十分に幸せだと嘯き、三千界切那の幸せの為に。

その後についても確認しておこう。
彼女は凍り付いたセツナを見て、自身の勘違いに気付いたことだろう。
そこでオーパーツの方のマシンを修理し、自身も眠りにつく。

なお、ここで電池の問題はない。
充電にのみ使っており、電池そのものを移植したわけではないからだ。

夏がくる。
彼女は目覚める。
2万年のコールドスリープで、目覚めたばかりの彼女は記憶を失っている。
それ故、近くで眠っていたはずの大切な者に気付かず、
暴龍島を出てしまったのだろう。

時が経ち、セツナとの娘である凛音が行方不明となる。
5年の歳月を掛け、彼女は暴龍島を探し当てた。

そこで見付けた物は、オーパーツで眠る凛音だけではない。
既に記憶が戻っているであろう彼女もまた見付けたはずだ。
自身が作ったマシンで眠っていた三千界切那を。

ここがOPだ。
彼女の台詞の全文を記載しよう。

> ――やっと、あえたね
> 知ってるよ、長い旅を続けてきたんだよね
> いいんだよ、無理して思い出さなくても
> 生きてるといろんなことがあるよね
> 楽しいことだけじゃない。辛いことも、悲しいことも、いっぱい
> わかるよ、わたしもそうだったから
> だけどね、もう、全部忘れていいんだよ
> だって、この島は楽園だから
> だから、ここで生きて、そして死んで
> そうすれば、辛いことも、悲しいこともないから
> お帰りなさい――せつな

玖音は、自身のことや、冬編のこと、暴龍島の遺跡のことを切那や他の人に伝えなかった。
その理由は、上記を見れば明らかに「せつな」の幸せの為だ。
作中では母として子を守る為と言われているように、
勿論それも理由の一つだが、この二つの理由はセットで考える必要がある。

玖音は3つことを知っている。
一つ、切那が愛していた凛音を失ったこと。
一つ、凛音が御原切那を失い、近親愛の末に自ら命を絶った伝承に引きずられていること。
一つ、凛音が切那と自身の娘であること。

また、凛音ルートで凛音死亡後にこう語っている。

> ……嫌でも伝承と同じ結末を想像してしまいます

彼女は恐れていたのだ。
近親の悲恋による、凛音の死を。

では彼女の望みはなんだったのか。
切那と凛音が結ばれることによって2人が幸せとなることだ。

切那と名を娘に譲ることによって生まれた
玖音は近親婚を止めなかったのではない。
逆にそれこそが2人の幸せだと盲信しているのだ。

一方で、彼女の想いは消えたわけではない。

筆談時のハート、セツナやリンネといった名を冬編とも取れるカタカナで書くこと、
凛音死亡後も切那を家族として家に引き留めようとしたこと等、
上げれば枚挙に暇が無い。

それでも彼女は全てを娘に譲ったのだ。



玖音とのやり取りは、ほぼ全てが伏線となっている。
わかりやすい物もあれば、少し捻った物もある。

例えば、浦島太郎が玉手箱を開けて過去に戻ったという解釈について話すとき、
玖音は目を伏せてこう話す。
> それは――乙姫にとっては耐えがたいことだったんです
これは、冬編の終わり際にタイムマシンで
セツネとリンネの出会いを無かったことにしようとしたことに擬えてある。

もし再プレイする気がある人は、是非彼女の言葉をかみしめてプレイして欲しい。



最後に、そうした彼女の言葉の中に、
極めて重要と思われる一節があるので紹介しておこう。
上記のように、この物語における玖音の言葉は大きな役割を果たしているが、
完全に同じ文章が2回も出てくるのだ。

再プレイで初めて経験に裏打ちされていたことがわかる、
この作品で最も勇気づけられた、彼女の言葉がこちらだ。

> シングルサイズでも大丈夫ですよ♥

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