エストさんの「FLOWERS -Le volume sur hiver-(冬篇)」の感想

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四季を駆け抜け成長し、蕾から花開いていく少女たちの姿にもうほんと胸がいっぱいである。ミステリとしては正直腑に落ちない点もそれなりにあるのだけど、少女達の成長譚としては言うことないくらい綺麗にまとまっており非常に高い満足感が得られた一作となった。

春編をプレイした当初はミステリ部分のおざなりさにげんなりし、「これシリーズ化して本当に大丈夫か?」なんて思ったりもしてしまったのだが、完結作にあたる冬編をプレイし終えた今ではflowersシリーズが終わってしまったという寂寥感で胸がいっぱいになってしまう程に思い入れの出来た作品となった。
ミステリADVを数多く手がけるInnocent Greyの作品ということもあり百合+ミステリィのイメージが先行しがちな本シリーズだが、その本質は副題に「The tale of the girls who grow with a season」とあるように少女達の成長譚であったと思う。冬編では成長し見違えた彼女たちの姿に何度も胸を打たれ、グランドフィナーレ後に彼女達が勢ぞろいしたスチルを目にした際には、「あぁ、本当によくここまで頑張ったなぁ…」と独り言をつぶやいてしまうくらい何とも言えない感慨で本当に胸がいっぱいになった。
以下登場人物別に思いのたけをつらつらと…

○エリカ&千鳥
夏編で主役を務め冬編でも大活躍だったエリちどコンビ。
エリカは春編では孤独を愛し一匹狼を気取る気質が見られたが、バスキア教諭から無償の愛を与えられ蘇芳という友を得た事もあり夏編では立ち直っていたので、成長という意味合いではやはり千鳥の印象が強い。エリカと同じく他人を拒絶していた千鳥がエリカという探偵役の助手となり多くの人間と関わる中で心を開き、エリカとも心を通じ合わせていく様は非常に百合百合しく、夏編は全シリーズの中で最も好きな作品となっている。
冬編でも白羽一行のブレインとなりながら行動力でも一行をサポートしその有能ぶりを見せつけてくれた。あれだけ夏編で主人公していたこの二人が全力で蘇芳のサポートをしている様を見ていると、最強キャラが仲間になったような高揚感があって非常に楽しませてもらえた。このコンビ本当に大好きなのでFDか何かが欲しいところである。

○譲葉&ネリネ
秋編で主役を務めた2人。
この2人については正直良く分からない。というのも今作で実質停学状態になってまで「真実の女神」サイドについた動機は多く語られないし、バスキア一族が加担したとされる譲葉殴打事件についても詳細は謎のままだ。自己を「心無いブリキ」に例えた譲葉と「臆病なライオン」に例えたネリネは秋編では心を通わせ成長したといって良いのかも知れないけれど、結局彼女たちが為そうとした事が分からないという意味では感動や感慨を抱きづらい立ち位置になってしまったコンビだと思う。シナリオ構成の割を喰わされたという印象が強い。

○沙沙貴苺&林檎
本シリーズでメインとして成長が描かれたのは主人公たる白羽蘇芳だとは思うのだけど、一番成長したのはこの双子ちゃん達だと思う。
家に帰りたいという身勝手な理由から騒動を引き起こし、隠し事を明かした蘇芳に「これで本当の友達だね!」と心無い言葉をかけるなど私の中ではすっかり戦犯イメージが定着していた彼女達だが、冬編では白羽一行のサポートとしてなんと普通に役に立っている(失礼)
持ち前の素直さに人を気遣う思慮深さが見え隠れし、秋編での譲葉との恋愛騒動を経て大人になったというか、本当に成長したんだなぁと感慨もひとしおのコンビであった。

○蘇芳&立花&マユリ
主人公トリオ。
蘇芳については成長が目に見える形で表れており春編の頃の彼女と比べると蘇芳の頑張りが痛いほど感じられる。春編では人間不信気味で常にオドオドしており、推理披露時のハキハキとした彼女と日常の彼女のアンバランスさが気になりもしたが、夏編以降は「マユリを取り戻す」という明確な目標を得て非常に行動的、積極的な性格へと変わっていった。冬編で再び主人公になり周囲を味方につけた後の彼女は本当に強く、仲間達をけん引し立派な探偵役を務めていたと思う。エリカが主人公気質過ぎて冬編では探偵役を喰われないかと心配していたのだが、しっかりと探偵役をこなしてくれた。
立花についても春と比べると成長が感じられる。マユリと蘇芳の仲に一時は嫉妬した彼女だが、冬編では春の頃の彼女の姿は微塵も見られなかった。マユリを取り戻そうとする蘇芳のため惜しみない助力をし、マユリが戻ってきた後も3人で仲睦まじい関係を築けたことに彼女の成長が表れていたと思う。
マユリについては…正直良く分からない。
母に愛されなかった分代償としてバスキア氏の愛情を求めてしまったとの述懐はあるが、それにしたって愛を誓った蘇芳に一言も告げず姿を消した理由はついぞ明かされないし、結局彼女が抱いていた気持ちは謎のままだ。彼女の心情描写が少なすぎるというのもあるが、シナリオ上謎を創り出すために割を喰った第2号という印象を受けた。

●ミステリとしてのFlowers
上で書いてしまった事も多いが正直スッキリしない部分が多くの残されてしまっている。蘇芳を拒絶し続けたマユリや、「真実の女神」に組した譲葉&ネリネの内心、バスキア教諭が真相をひた隠しにした理由といったついぞ真相が明かされなかった事柄のほかにも…
・「真実の女神は2人いる」
・「天に行われるがごとく、地に行われるように」
・「譲葉殴打事件」
・「学園を去らざるをえなかった譲葉&ネリネ」
といった夏~秋編で張られた伏線が事件の真相にさっぱり関わってこないのはミステリとしては構成がマズイとしか言えないだろう。特に「真実の女神は2人いる」に関しては一切説明がないまま終わってしまっている。秋編までで提示された情報が些末な情報に止まり、冬編で明らかにされた新情報が事件の核心のほとんどを占めているのは後出しじゃんけん的なズルさがあると思うのだ。
また推理パートに関しても冬編では春編の悪い癖が再び顔を出してしまっていたように感じた。トナカイの名前や聖書の一遍といった特殊な知識が推理の前提となる推理では、推理パート以前の文章の中にさり気なく前提知識を織り込んでいて然りだと思うのだ。雑学前提の推理はフェアとは言えないと思う。本格ミステリを目指しているわけではないのかも知れないが、夏秋では割とフェアな推理が展開されていただけにこの部分は惜しいと感じた。

●総評
ミステリとして期待していた部分には正直肩透かしをくらったような感覚があるが、最初に書いた通り少女たちの成長譚として本シリーズを見ればかなりの満足度を得られるシリーズだったと思う。丁寧なテキストで描かれる彼女たちの悩みはこちらの身につまされるような深刻さをもって描かれており、それらを乗り越えてエンディングに至った彼女達を心の底から祝福したい気持ちにさせてくれた。本シリーズがこれで終わりだと思うと本当に寂しい気持ちにさせられてしまう。えりチドコンビが大好きなこともありFDがやりたいと思う反面、早く天ノ少女がやりたいと思う気持ちもあり難しいところである。
満足感の割には低めの点数をつけてしまったのはシナリオの都合上無理に「謎」を創り出していると感じられた場面があったから。ジャンル上「謎」を作らなければならない事は分かるが、譲葉・ネリネ・マユリの3人がシナリオに喰われた形となり彼女達の成長を鮮烈に感じられなかったのはやはり残念である。
とはいえ愚痴は書きつつも3年と少しの間本シリーズを追っていられて本当に楽しかったと言えるぐらいにはいい作品であった。シリーズ開始当初はInnocent Greyらしくないなどと思ったりもしたが、終わってみれば「ユリグレ」として素直に受け入れてしまっている自分がいる。次は「KARANOSHOUZYO」シリーズ最終作ということでユーザーの期待も大きいだろうが、今シリーズ同様見事な結びを見せてくれることを期待して待っている。
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