NANAKI_Yuさんの「恋×シンアイ彼女」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

星奏以外のルートは複数ライター制の弊害でそれぞれ出来に差はあるもののスタンダードな青春恋愛ものとして素直におすすめできる内容。 また雰囲気作りに関してはCG、背景、BGMともにレベルが高く素晴らしい出来。 賛否両論の星奏ルート&終章も他のルートとはかなり毛色が異なるが個人的にはいつもの新島氏らしい叙情的で切ない内容でなかなか良かったと思う。 長文感想はネタバレ有りで終章の考察、各ルートの感想など。
【星奏ルート&終章】
賛否両論激しいルート。
コンセプト詐欺というのはまぁその通りだし、他ルートと同じノリで読み進めた結果ノーガードでボディブローを食らった方にはご愁傷様でしたという他ない。
こういう類の結末が合わない人がいるというのももちろん分かる。
とはいえ新島作品として見ればいつもの作風だと感じたし(むしろ優しい方じゃね?)、作品コンセプトを抜きにして考えればルートとしての完成度は決して低くはないと思う。
正直せっかく好き勝手できるQoo brandがあるのだからこっちは無難な着地点で良かったのではないかとも思ったが。
(もっともギミックを凝らしたファンタジー要素のある物語が得意な新島氏をわざわざこの作品に起用するくらいだから志水Pにも何か狙いがあったのかもしれない)

星奏についてはいろいろ言及したいことが多かったけどここでは終章のメインキャラの一人である森野精華の役割と星奏の選択に絞って考察していきたいと思う。


・森野精華の役割
終章で唐突に登場する人物(一応映画撮影の際にもちらっと出てきてはいたが)。
明らかに「姫野星奏」を意識した名前で二人とも才能のある表現者。
立場としては「主人公が追う側」と「主人公を追う側」で星奏と対になってはいるが本質的には似た部分があり、役割としては星奏の代弁者という立ち位置ではないかと思う。
元々星奏が心の内を明かす場面は少なく、更に終章はほぼ完全に洸太郎視点の構成なのでそれを補う為であろう。
また森野と関わる中で洸太郎は人のことをちゃんと見るようになり、自身の小説のあるべき形に気付いていく。

第四章の終盤でグロリアスデイズのメンバーとして星奏がステージに立つ場面。
>普段の星奏を少しでも知っている生徒は、いや教師もそろって唖然としていただろう。
>壇上にあがった星奏の顔は真剣で、いつものどこか抜けておだやかな表情は見られない。
>ただ、一心に目の前の何かを見つめる、アーティストの顔だった。

終章で森野の転校後、洸太郎が星奏のその後を調べる場面。
>数少ない記事や噂から垣間見える彼女の姿は、ストイックなクリエイターという感じだった。
>繊細で意固地な姿が想像できる。
>俺の知っている彼女とは、かけ離れていた。

上記はクリエイターとしての星奏の姿を窺い知ることができる場面。
一方、転校直前に森野が洸太郎に本音を漏らす場面。
>「私、先生だけなんです」
>「自然にいられて、自然に笑えて……楽しいの、先生の近くにいるときだけなんです」
>「仕事中だけじゃない。私は、両親の前でも、誰の前でも、別の誰かを演じていて」
>「きっと東京に行ったら、もっとそうしなくちゃだめで。きっと、私が私でなくなる」
>「怖いんです」

恐らく星奏も同様に洸太郎達と過ごしている間だけ自分を取り戻すことができていたのだと思われる。
しかしかといってグロリアスデイズとしての日々が苦痛なだけだったかというとそうではなく、洸太郎と結ばれたにも関わらず「星の音」を聞いた後は再びバンドに戻っている。
終章でグロリアスデイズのリーダーである吉村との会話で洸太郎も
>「彼女が自分で選んだんです」
>「彼女は意思が強い人です。そう言われたって、俺に返事を出したいと思ったら出したでしょう」
>「この町に残りたければ残ったでしょう」
>「それだけ大事だったんです」
>「あなたたちとの時間が」
と答えている。
過ごした期間でいえば御影ヶ丘時代よりグロリアスデイズとしての日々の方が圧倒的に長いだろうし、何より星奏の音楽に対する強い想いは何度も強調されている。
作中でバンド時代の描写がほとんどないため想像になってしまうが、やはりこちらも何物にも代えがたい大切な時間だったのだと思われる。



・星奏の選択について
終章で過去の別れについて洸太郎より音楽を選んだことを認める星奏。
相思相愛で確かにかけがえのない存在であったはずなのになぜ別れを繰り返したのか。
夢を諦めた洸太郎が才能ある者の創作について語る場面がある。
>表現するって、もっと切実なものなんだ。
>そうしなければ生きられない、身の内から正体不明の炎によって焼き尽くされてしまうような。
>そういう人間が、そういうエネルギーを解放するために、創作活動に打ち込むんだ。

結局のところ星奏もそういう種類の人間できっと最初から音楽を選び続けなければ生きてはいけなかったのではないだろうか。
あるいは音楽と恋を両立させるような器用さがなかったせいか(他ルートの洸太郎が恋にかまけて文芸部の活動をおろそかにしてしまっているように)。
一度目の別れも二度目の別れも星奏は洸太郎よりも音楽を選んでいる。
三度目も洸太郎との別れを選ぶのだがしかし決定的に以前と違うのは星奏がもう二度と会わないという意思表示をはっきりしている点。
これがどういう意味合いを持つのか。

一度目、二度目の別れでははっきりとした別れの言葉はなく、心の奥底ではどこかで再会できるという希望があったのかもしれない(実際に御影ヶ丘に再び訪れている)。
どちらも結局最後にはスランプやバンドの解散という壁に突き当たってしまっているもののグロリアスデイズは評価を得ているし作曲家として成功している部分もある。

一方で洸太郎と完全に決別した三度目の別れの後は
>ただ彼女が携わった曲が脚光を浴びることは二度となかった。
>曲そのものに輝きがなかったのか、何らかの力が働いていたのかは分からない。
>手に入れるのさえ苦労したその曲を聴いてみても、俺には、あまり良い物とは思えなかった。
>何かが、空虚でウソ寒かった。
というように作曲家として二度と成功することはなかった様子が窺える。

また凜香ルートのエピローグでも洸太郎と結ばれなかった星奏は一年経っても転校してない、バンドに復帰できていない様子が描かれている。
これらのことから星奏が真に作曲家として成功するには洸太郎の存在(洸太郎との恋)が必要不可欠であることが分かる。
つまり星奏が本当の意味で洸太郎よりも音楽を優先していたのならば「洸太郎との決別」は決して選ばない選択肢である。
負債を負わせたくないという責任感か、これまで利用し続けて来たことへの負い目か、あるいはまた別の理由かは分からないが最後の最後で初めて音楽を犠牲にしてでも選んだ選択肢だったのだと思う。
その選択が決別というのは悲しいとしか言いようがないが洸太郎自身そんな星奏の生き方をどこかで受け入れてしまっている節もある。

第四章終盤、星奏がグロリアスデイズのメンバーだと発覚し、洸太郎が一度目の別れの真相を察した後の場面。
>星奏は……きっとこの町を去る。
>確信のように俺は思っていた。
>それもいいだろう。
>離れていても俺は星奏を応援するし、時に連絡をとりあえばいい。
>だけどなんとなく……星奏は、このままもっと遠い場所へ行ってしまうような気がした。
>俺の言葉も届かないどこかに。
>昨日、俺に何かを言おうとして言えなかったのは、そういうことじゃないかって思った。

終章、星奏と再び結ばれた後、夜の海を見に行く場面。
>星奏は、ちょっとだけ遠くを見ているような気がした。
>月に帰る前のかぐや姫といった具合だった。
>ちょっと綺麗に言い過ぎなのは、惚れた欲目ということで……
>とにかく、俺の中にはある、予感じみた焦燥が、生まれていた。

二度目の別れも三度目の別れも確信に近い予感がありながら洸太郎は結局何の行動も起こしていない。
告白のときのようにあらゆる不安をおしのけて全力で手をのばせばあるいは星奏を失わずに済んだのかもしれないのに最後まで彼女の音楽を止めようとはしなかった。
結局のところそんな全力で駆け抜ける星奏の姿に恋をして、それを止めるのではなく追い駆けることを洸太郎は選んだのだろう。
それを考えると確かに切ない結末ではあったものの、不器用な形でも二人がお互いを真摯に思い合う紛れもない純愛の物語だったのだと思う。



【彩音ルート】
とにかくキャラクター造形が素晴らしくて共通ルート序盤で既に心を持っていかれました。個人的に今年度のツンデレキャラでかなり上位。
ちょろそうに見えて実は一番難解な性格をしている星奏、ツンツンしているけど実は一番主人公にべた惚れでちょろい彩音。
いつだって言葉が足りない星奏、いつだって恥ずかしがりながらも言葉にして気持ちを伝える彩音。
という風に二人の対比がきちんと描かれていたのも印象的(個人的にはゆいと凛香を控えめにして洸太郎と星奏、彩音の三人の物語をもっと主軸に展開した方が面白かったんじゃないかと思う)。
映画撮影の代役、カフェでの間接キス、告白直前の「ばかじゃないの!?」などツボなイベントも多かった。

特に「久しぶり」と一言伝えるシーンが秀逸で個人的にここは100点あげたいくらい。
なかなか素直になれないけど内に秘めている想いは強く、言うべきことはちゃんと言葉に出して伝える彩音の真っ直ぐなキャラクター性がこの短い場面の中で上手く表現されている。
奥手で気持ちを伝えるのが苦手な主人公や星奏と対比になっているのも良い。
あと彩音の告白から洸太郎の返答までの流れもよく出来ていて作中屈指の名シーンだと思う。
告白の台詞回しのセンスもいいし、星奏もきちんと役割を果たしているし、洸太郎の告白もCGの使い方を含めて過去イベントを絡めた上手い演出だった。

服飾科との対立辺りからライター入れ換わったのかと思うくらい絶望的に展開が雑になるけど挿入歌のパワーもありラストの盛り上がりはスカッとして良かった。
青春恋愛ものはやっぱりこういう爽やかな余韻を残す締め方が魅力だと思う。
作品のコンセプトを上手に表現しており、彩音のキャラクターの魅力もあって一番印象に残ったルートでした。



【ゆいルート】
凜香ルートでも書くけど選挙自体が茶番感の強いイベントなので序盤~中盤は正直読み進めるがつらかった。
まずどう考えても勝ち目の薄そうな署名集めの時点で誰も止めようとしないのが引っかかった。
「花壇なんて普通は全然気にかけないからなぁ」と会話した直後だし現実的な彩音あたりは突っ込みいれそうなものだけど。
そしていくらかわいい子がコスプレしてたからといって(着ぐるみの立ち絵やCGがないのはちょっと寂しい)あの短期間で全校生徒の三分の二も署名を集めるのはさすがに説得力に欠けるのでは……。
しかし終盤はゆいの母親への想いや母の優しい人柄が上手く描かれており緩急のある展開で面白かった(やっぱ選挙が足引っ張ってるんじゃね?)。
終始ご都合主義を感じるルートではあったけど終盤の展開は涙腺にくるものがあったしエピローグは落とし所として上手い着地の仕方だったんじゃないかと思う。
あと余談だけどストーカー設定は個性的で面白かったし削らずにもっと盛り込んで欲しかったかな。



【凜香ルート】
個人的には正直一番微妙だと思うルート。
とにかく全体的になんだかいきなりイベントがあってよく分からないままふわっと解決してめでたしめでたしという印象が強い。

問題点は大きく分けて三点あって、まず凜香のキャラクターの掘り下げが甘い。
「からっぽな自分への葛藤」といういかにも面白そうなテーマなのにいつの間にかなぁなぁで解決していて印象的なイベントがなかった。
そもそも言動を見ている限りそのキャラクター性自体にあまり説得力を感じなかったけど。
生徒会の描写が一切ないのも気になる。
凜香が人との関わり方を見つめ直す前後の対比として生徒会との関わり方は描写しておくべきポイントだったのではないだろうか。
付き合った後のポンコツぶり(犬探しに剣道防具一式持ってくるなど)を見る限りどう考えても優秀なサポート役無しには全校生徒の支持を集めて生徒会長を務め続けていたとは思えないし。

もう一点は雑な展開。
イベントがぶつ切りな上に展開が強引すぎて(野球イベント、如月先輩に小説を見せるイベントなど)非常に不自然。
かなりシナリオの為にキャラが動いている印象を受けた。
髪留めのイベントもなぜここにきて唐突にうじうじしだすのか意味不明。
とにかく話に脈絡がないため展開に説得力がないのが気になった。

最後の点はゆいルートにも影響しているけど選挙の必要性について。
それぞれに対する生徒の支持層が全く分からないしポスターや声かけ、野球でそれらが具体的にどうなったのかも分からない。
拳法部のような不真面目な連中が我儘ないちゃもんをつけてきたせいで旧校舎から一旦追い出されるわけだから真っ当に部活をやってた人達からは反発がありそうなものだがなんの描写も無し。
あっと驚かせる奇策で支持を集めるような展開も無し、スピーチはお互いほぼ全カット、主人公の大した活躍も無しでよく分からないまま負けてしまう。
終始何も情勢が分からず感情移入できないまま後味の悪い締め方だった。
選挙イベントのあるエロゲはそんなに珍しくないがここまで雑なのはあまりないと思う。
結果がどうあれ旧校舎の建て替えが覆せないのならばいっそのこと花壇も含めて理事会の決定のせいにして選挙自体なくて良かったのではないか。

それと凜香ルート自体とは別の話だがこのルートの菜子は他のルートと比較してなんか違和感を覚えることが多かった。
特に凜香と初対面のときの行動が顕著で人見知り設定はあるものの基本礼儀正しい菜子がちゃんとした挨拶もせずにあんな対応するかなぁ?
雷が怖くて主人公の部屋に寝に来るイベントもなんでわざわざ入れたのかよく分からない。

その他細かい愚痴&疑問点
・ネットスラング、ポ○モンやらハ○ヒやらのネタで折角秀逸な作品の雰囲気が台無し(ここだけで一気にこのルートの印象が悪くなった)。
・そもそも拳法部を筆頭にギャグが全体的に寒い。
・ラストでゆいルートエピローグのネタバレ入ってるけどいいのか。
・結局凜香に嫌がらせしてたのは誰?



【その他】
・CG
どのキャラも一発で作品世界に引き込まれるものが多く甲乙つけ難い出来で全体的にレベルが高い。
(でも大人の世界や野郎の半裸を用意するくらいなら精華ちゃんのCG描いて下さいお願いします!)
教室や通学路で三人が並ぶシーンは珍しい構図で特に印象に残った。
作品のコンセプトや空気感が上手く描かれている良いCGだと思う。

・BGM
優しかったり、切なかったり、あるいはノスタルジーを感じさせるものだったり恋カケの世界観構築に関して本当にいい仕事をしていると感じた。
「flower」は懐かしくてほっとするような星奏の雰囲気が見事に表現されている。
「alpha:」はCGの効果も合わさって出だし数秒でアルファコロンの世界に引き込まれるインパクトがあった。
「東の空から始まる世界」は晴れ間を感じさせる爽やかな余韻を残すものでED曲としてぴったりのもの。
「GloriousDays」は彩音ルートの使い方が素晴らしくてラストが盛り上がる良い展開になっていた。
あと音楽鑑賞モードは各曲についてコメントがついている珍しい仕様で良いなぁと思った(これ他のブランドも是非やってくれないだろうか)。

・菜子
妹(CV:秋野花)で攻略できないとは何事か!と思ったけど終わってみればこの子はこの立ち位置が一番しっくりくるなと思った。
駄妹や近親相姦上等な好感度マックス妹が氾濫する近年の中、正統派の妹らしい妹キャラで大変癒されました。
他キャラとの絡みが比較的少なめだったのがやや心残り。

・如月先輩
一言で言うと持てあましてるなぁと感じたキャラ。
肝心の小説関係で深く関わってくるかと思いきや大したイベントもなくそもそも彼女の小説自体ほぼ言及がない。
選挙編でもライバルに徹するんだか味方なんだか中途半端な印象を受けた。
個性的でキャラはしっかり立っているので単なる狂言回しではなく魅力的なライバルとしてもっと活躍させることもできたんじゃないだろうか。

・森野精華
あんまりかわいいものだから「え、終章で分岐ルートないの??」と泣いたけど多分付き合っても結局いつか星奏と同じように別れちゃうかもなぁ。
「もし俺が行くなって言っても、森野は行くんだろう」という問いにうなずいているということは彼女もまたそっち側の人間なんだろうし。
だがしかしどう見てもヒロインとして一線を張れるスペックがありながらこの出番は正直本当にもったない。
かといってアペンドで攻略できるようになったら終章がいろいろ台無しな感じもするしという葛藤。

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