エストさんの「千の刃濤、桃花染の皇姫」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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演出、CG、シナリオなどに今までのAUGUSTが培ってきた技術を出し尽くして作られたシリアス路線作品。傑作クラスの突き抜けた感はないですが全体的に高クオリティの一作です。AUGUST流「忠義」をご覧あれ
※多少『穢翼のユースティア』にも触れています

○全般
とにかく優秀作という言葉が似合うのが本作だったと思います。『大図書館の羊飼い』からの背景に立ち絵を置いて加工する演出や、今作から新たに3Dモデリングを使用した演出も使われとにかく演出周りは豪華。夏野イオさんが加わったことで余裕が出来たのか原画絵も多いしCGの塗りも和風な方向で神がかってました。
傑作になれない理由は多分シナリオ。シナリオ周りだけはユースティアを超えたとは言えないかなと思いました。すさまじく丁寧に作られているせいか、読んでいても新鮮な驚きがなく綺麗な予定調和のシナリオを見ている気分でした(詳しくは後述)
といってもシナリオ・テキスト共に出来が悪いわけではなく、各章の季節感と表題に合わせることでメリハリをつけた良い本筋だったと思います。宗仁と朱璃の出会いの春、竜胆作戦からの決起の夏、敗北から状況の打開を探る秋、決着の冬、と話の内容や雰囲気も各季節に合わせガラリと変わり起承転結がはっきりと伝わってきました。
AUGUSTなりのやりたい事も十分伝わってきたので総じて優秀作なのが千桃の特徴なのかと思います。

○テーマ関連
AUGUSTなりのやりたい事の部分。テーマはジャンルにもある通り「忠義」。忠義というと主君のためにえんやこら、お国のためにえんやこら的なさむしんぐをイメージしますが多分本作の忠義は違います。
それが分かるのが共和国人であるエルザが美よしにて宗仁に忠義を尋ねる場面であり、宗仁は次のように語ります。

(忠義を果たすには)「自分の生き様に必死でなくてはならない」
「今この瞬間、自分が忠義を果たせているか不断の問いかけを続ける」

つまり、忠義の対象はお国や主君に限られない。
自分の譲れない、守りたいものや生き方のために、「今、この瞬間を必死に生きる」事を動機付ける強い心持こそ忠義だと言うわけです。
滸は武人としての誇りに、奏海は義兄の幸せに、エルザは自分の中の最低限の高潔さに、古杜音は斎巫女としての使命に、朱璃は皇帝としての責務に、そして宗仁は愛する人に忠義を立てて戦います。各々譲れないものがぶつかりあうわけですから終盤の展開は熱くて良かったですね。
個人的にも現代人の私に昔ながらの忠義とか馴染みが薄いので共感しやすかったです。

※と書くと「忠義」という新しい主題をAUGUSTが作ったみたいですが、ぶっちゃけこの部分はユースティアの焼きまわしだと思います。その場その場でよさげな立ち振る舞いをしてきた後で悩みまくるカイムに、ルキウスがお前は守りたい生き方を選択出来ていないと告げるシーンと言ってることは同じです。その意味では千桃は新『穢翼のユースティア』的な立ち位置なのかもしれません。

○不満点
全体のクオリティが高いがゆえに微妙な部分がより目立ってしまったように感じました。以下、箇条書きで愚痴もいれながら。

・あまりに丁寧で先が見える展開
序盤の段階で小此木が味方だと気付いてしまった人やカハクが出た段階でラスボスがロシェルだと気付いてしまった人はかなりの数いたのではないでしょうか。あまりに随所で伏線が丁寧に強調されるのでバレバレです。
一番残念だったのはラストの宗仁が根の国へ旅立つシーン。ユースティアを経験した我々でさえあまりに描写があっさりしてるものですから、「これ最後に帰ってきてハッピーのやつや!」となりまったく驚きと意外性、そして感動がありません。

・ごっこ感の漂うクーデター
ここは悪いところというより好き嫌いの問題なのでしょうが、本作には学園、アイドル、義妹といった本筋には不必要な設定が割と多いです。必要以上に雰囲気を暗くしないための配慮なのでしょうが、そのせいで本気で殺し合いしてる感が薄いです。
また声優陣の声が戦闘中でもかわいいため、より「ごっこ」っぽくなったのも痛かったかと(特に朱璃)
敵国の軍人と学園でいちゃつくのも違和感ありありでしたし、私が武人なら翡翠帝を学園から電撃作戦でさらって臨時政府作ります。わざわざ帝宮まで行く必要を感じません。
ユースティアが発売当初あまりのダークな雰囲気から八月ユーザー層から非難されたことを考えると必要な配慮なのかもしれませんが私はダークな雰囲気の方が好みです。
エロゲなんだし程度で流してしまいましたが気になる人は気になるだろうし、やはり日和らない作風で傑作を目指して欲しかったです。

・見せかけハッピーエンドな個別
ユースティアと同じ問題が今作も残ってしまっています。ユースティアではノーヴァス・アイテルがごにょごにょなせいでティアエンド以外は凄惨な最後が予想されましたが、今作も朱璃√以外でカハクが残っているため仮初のハッピーエンドになってしまいました。また宗仁もミツルギのままなので不死状態です…

・国の行方
戦争経済への依存を正義の戦争で覆い隠す共和国(というか合衆国)、万世一系の神の子孫・皇帝の支配を掲げる皇国(というか戦前日本)、皇国内からの民主化を主張する翡翠帝、それぞれの思惑が対立し合いどこに着地するのか…
という事を中盤まで期待していたのですが、絶対悪であるカハクの登場で「必殺、全部アイツが悪い!」戦法に。残念でした。

○総評
うだうだ不満点はありつつも確実に完成度は高い本作。非常に楽しめたし満足のいく内容だったと思います。
次は日常路線になるかもですが八月の次回作に大きな期待を寄せて終わりたいと思います。
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