マルセルさんの「VenusBlood -HYPNO-」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

VBD以降のゲーム性デザインの最後となるこのVBHは、残念なことにその有終の美を飾る作品とは言い難い作品で、せいぜい「変異獣バクス」あたりの相応しい作品になってしまった。実際のところ、今作でいちばん良く出来ている部分はVBシリーズらしからぬロウルートのシナリオである。基本的にどの場面においてもアノーラやシルヴィアといった物語の核となる真ヒロインキャラを前面に出したシナリオの御陰で、王道的な「みんなの力で最大の悪をやっつけます」的なシナリオがVBシリーズの中では一番よく書けている。その次に良いのが3PW調教エロでこれはVBGから大いに進歩している。逆に言えばそれ以外はややイマイチである。肝心要のゲーム性は相変わらず部隊編成の戦術バランスは面白いものの、戦略ゲーム性が基本的に多師団を要求しないので食い合わせが悪く、エロも純愛から悪堕ちから狂落ちまで薄く薄く揃えるコンビニの納豆売り場状態で萎え。
(プレイ経過)初回ノーマルカオス→ハードロウ→ベリハカオス(でSS三つのタクティカげっと)→タナトスロウで終了。プレイ時間はだいたい80時間ちょい。


点数評価の便利なところは、些か逆説的に響く言葉かもしれないが、点数とコメント内容を必ずしも一致させる必要がないことだ。なるほど、大まかな意味においては対応させる必要はあるし、またエロ助の作品平均値を何か偏差値のように勘違いしている自らを有象無象の群れとして誇れる皆さんとしては「批判的なコメントなのになんで80点以上もつけているんだよ!」と言いたくなるかもしれない。確かにそのような矛盾を感じるレビューはあるし、そのようなレビューはあまり宜しくないと言うのはその通りであるが、但し「高い点数をつけてはいるし、その点でこの作品をかなり評価しているものの、文句を言いたくなる作品でもある」というケースも世の中にはあり得るわけだ。このVBH……というかここ1~2年くらいの九尾の作品は、僕にとってそのような作品に該当する。

「高い点数をつけているのに文句ばっか」という作品にも色々なケースがあるのだが、大まかに共通する大きな特徴としては「やっている間はかなり楽しいのだが、終わりまたはコンプが近づくにつれて段々つまらなくなっていく」というのはあるだろう。
これは「ラストのオチが酷い」とか「終盤の展開が酷かった」というのは少し違っていて、そういう急落下的な作品は(人によってはそれでも共通ルートは楽しかったからで高得点だろうが)基本的には高い点数はつけられない。それは作品の構成上明らかに問題があると考えられるわけだから。この「段々つまらなくなっていく」は先の急落下とは違って、数字で言えば先のケースが途中の面白度10から一気に1とか3くらいまで下がるのに対し、此方は面白度10がだいたい6~7くらいのところに少しずつ下がっていく感じだ。相対的に見れば3~4つまらなくなっているので、不満は感じるものの、まぁ6~7くらいの面白度は維持されているので一応は最後までちゃんとプレイできるし、この弱点だけで途中までの面白度10を否定するほどは酷くないから低い点数はつけたくない。だけどなにぶん作品クリア後の後味はあまり宜しくないので、不満だけは高まるから文句も言いたくなるわけだ。


枕はこれくらいにして本題に入ろう。このVBHは作者のけーまる氏の言うところの「今までのゲームデザインとしてのVBシリーズのたぶん最終作」と発売前から言っていた作品で、昨日あたりにも九尾ブログでおにー氏がそのような発言を行っていた。

http://blog.ninetail.tk/?p=5784#more-5784


コレについては最後のあたりで触れるするけれども、このように聞くと僕らはつい「VBシリーズの集大成」と言いたくなってしまうわけだが、VBシリーズには集大成よりも醜態性の方が似合うんじゃ無いかと言う人には多少モノ足りなくなっているという半分くらいは正しい言葉遊びは兎も角として、最初に結論を述べるとすれば、この「集大成」になりきれないところがある意味今までのVBシリーズの進化の方向性の限界を示した作品とは言えるだろう。

念のためにお復習いをしておくと、現在のVBシリーズの基礎となっているのは……と書こうと思ってVBシリーズの流れを思いだしてみると、まずいちばん印象に残っているのがVBEでその進化系としてのVBFがあり寄り道的にVBAそしてVBGへと続きどういう経緯か何かわからないままにこのVBHへと続いているみたいな感じを僕は持つ。VBEからVBF、またはVBDからVBEんでVBFという流れは同じ女神悪堕ちモノとしてよくわかるしシステムの進化もわかりやすいのだが、VBFからVBA続きVBGんでVBHと言うのは、毎日九尾ゲーのことを考えているようなヨタは別としても普通のユーザーにはイマイチわかりにくいところがある。コレには色々な理由があると思うので、一つ一つあげていくと、先ずは作品のジャンル的な位置づけとしてVBAが当初は「今回は悪落ちモノじゃなくて出産モノです」みたいな「番外編」みたいに説明されていたのに、しかしVBAの次のVBGも同じ出産シリーズでありVBのジャンル的な位置づけが多少ぼやけたところ。今回のVBHは(確か)けーまる氏の発言によるとVBFの流れを汲むモノらしく、確かに悪堕ちには近いエロ展開にはなっているものの、しかしヒロインは女神では無くて魔族でありあんましヴィーナスではない。VBFからVBHに続いたとしたなら、そこまで細かい突っ込みはしなくてもいいんだけど、VBFからA→Gへと寄り道が続いた次がこのVBHとなると、いったいVBシリーズのジャンルとしての中心点はどこなの?とは疑問に思えてくる。

「いやVBシリーズと言えば触手エロだろ!」と触手マニアの人は言うかもしれないが、まぁこれは「相対的な意味で」つまり「今現在の商業エロゲのなかで触手エロで有名な作品と言えばVBシリーズしかないだろ!」という意味ではそれなりに正しいとは思うが、絶対的な意味でつまり「VBシリーズのなかで触手ってそんなに大事なの?」と言われたらそれは単に「エロシチュの添え物でしかない」と言うしかないだろう。確かにエロシーンにおいて触手を毎回何らかの方法を用いて使っているというのはその通りだとは思うが、例えばVBAに置いて重要なのは出産エロ展開であり、GからHにかけては3Pエロ展開と言ったように、触手はそのエロ展開の為の道具のひとつであり、その道具の頻出度においてもVBF以降はオークさんだの立体キューブだのにお株を奪われている。VBEの触手使い主人公のフリード君は確かに素晴らしかったものの、以降の主人公はあくまで触手は彼のエロアイテムのひとつに過ぎず、べつだん触手を(変な言い方ではあるが)愛しているようには思えない。この点に関しては「VBシリーズは触手エロ」と言うよりも「九尾系列は変態的な道具エロエロシチュが好き」と言ったような広い言い方の方がたぶん正確だろう。尤も、現状の九尾でいちばん有名なのはVBシリーズであるから、九尾=VBシリーズというなんとなくな印象で、九尾系列作品とVBシリーズの区別がつかなくっているというか、メーカーの方もVBシリーズの知名度を使って敢えてごちゃ混ぜにしているところも考えられる。このVBシリーズはあくまで九尾作品の「何かに特化した」シリーズ作品のひとつなのか?それともVBシリーズが「九尾作品の要素を全てを注ぎ込んだ」メーカーの代表作なのか?という混乱や葛藤をなんとなく有耶無耶にするものとして「VBシリーズと言えば触手」があるように思える。

実のところVBシリーズとしての共通要素が多いのは、基本的には分岐を含んだ「物語展開」と「ゲームデザイン」の二点だと思われる。前者の「物語展開」というのは、別にVBシリーズの舞台設定の繋がりがどーこーという話ではない。まぁ正直に言えば、僕はその手のシリーズ世界観の繋がりネタには興味が薄いので、本当はその手のオタからすれば興味深い作品なのかもしれないが(まぁ別にそういう話もあまり聞かないが)、その手のシリーズ舞台設定には疎い僕でも感じるのが基本的なプロットの共通性だろう。まぁ簡単に要約すれば


(1)過去に傷と共に引き替えに世界を変える能力を持った主人公やヒロインが
(2A)傷をつけた帝国みたいなところの部下になり面従腹背で復讐を誓いつつ
(2B)自分の目的の為に直接的に他の女神やヒロイン達と戦いながら
(3)色々あって復讐や目的を達成するところまで逝くが、実は今までの敵とは違う二つ勢力が舞台裏に存在していて
(4)その対処によってロウルートやカオスルートに分岐する


みたいなプロットパターンである。言うまでも無いが、このようなプロットパターンの提示は別にこのVBシリーズを揶揄するつもりで「お約束」をバカにしているわけでは全くなく、単純に○○シリーズみたいな作品の多くはこのようなお約束を踏襲しているわけだし、そのような「お約束」を否定したいのであれば、単純に何とかシリーズを名乗らなければいいだけの話である。さて、このようにざっくり纏めると、VBE系列とVBA系列のプロット展開の違いは(2A)と(2B)の違いであり、他の部分つまり「世界を変える能力と引き替えに傷を抱えて復讐を誓う主人公」と「真の大ボスは2勢力あってその対処によってロウとカオスに分岐」というところはたいてい同じだ。E系列とA系列の差異は主に序盤から中盤(ルート分岐までの物語)の差異であって、ここやエロシチュや(メイン以外の)ヒロインの役割はわりと異なるわけだが「主人公ってたいてい復讐を誓っているよね」と「今回のドナルドじゃなかたドルドナさんは役はだーれ?」みたいなところを考えると、VBシリーズの「お約束プロット」を見出すことはできるだろう。その「お約束プロット」を上手く逝かせているか?とかそのお約束プロットのなかでその「お約束以外の何が語られているか?」というのは別問題としてあるとしても。

最大の共通点はやはり「ゲームデザイン」だと思われる。このゲームデザインもVBEからFではかなり進化したし、F系列とA系列では随分違いがあるとはいえるが、その中で正確に共通要素だけを抜き出せば「戦術レベルのゲーム性」は部分的な進化を遂げながらもFあたりから殆ど変わっていないと思われる。以降の文章において「戦略レベル」と「戦術レベル」という言葉を用いるが、このVBシリーズにおいては基本的に「キャラの個々の能力(スキル)や育成やアイテム装備といった個々の戦闘に関係する要素」を戦術レベルと言い、戦略レベルというのは「個々の戦闘がどのようなゲーム全体ルールによって行われているか?」といったことを指すことにする(この手の作品において何が戦術で何が戦略なのか?を一般的な常識に従って定義するのは面倒くさいのでここでは自分定義を使わせていただく)。んで、この定義で言えば、VBシリーズで作品毎に大幅に変わっているのは「戦略レベル」の差異、つまりエンカウントバトルの追加やタワーディフェンス性への移行や今作のような拠点制圧SLGの以降であって、毎回トレハン部隊は必要だとかカブト割と必殺増加があればたいてい勝つるとかヴァンパイア最強みたいな戦術レベルにおける変化はあまり見られないわけだ。もちろん、言うまでも無いことだが、戦略レベルの変化は戦術レベルの運用にも当然影響を及ぼす。4部隊しか使えないVBEと10部隊以上のエンカウントバトルが必要になるVBFでは、前者が基本4部隊に最強ユニットを集めれば良いだけに対し、後者は10部隊以上が必要になるわけで、最強ユニットを単に集めるだけではなく、各部隊のバランス調整が必要になったり、VBGのように職業枠が限られている場合には能力値だけではないバランス調整も必要になってくる。まぁその進化の果てに「最大で35部隊も作れるが、実質必要となるのは4~6部隊の
最強部隊だけ」という恰もVBEに先祖返りしたようなVBHが生まれてしまったことは、歴史の皮肉と言わざるをえないわけだが。


さてこのVBシリーズの文脈を踏まえて言えば、今作VBHはまず全体的なプロットに関してはVBF系列の(1)→(2A)→(3)→(4)を踏襲しつつ、しかしその中で今までのシリーズの中ではいちばん「メインヒロイン勢のお話」にスポットを当てた作品と言えるだろう。逆に言えば、このVBHはメインヒロインがお話の大半にかなり食い込んでいて、そのメインヒロイン以外を抜かしてしまったり、それとはあまり関係ない部分に関してはVBGと同じくらい妙に薄っぺらい話になっているというか、VBのお約束プロットだけしか残らない感じにはなっている。具体的に言うと、まず前半から中盤にかけての3魔王との闘いにおいて、主人公サイドの描写の中心になるのは主人公とアノーラとシルヴィアとジュデッカの基本4人であり、その中でも主人公とアノーラの純愛信頼関係がたいていの見せ場を作る。きほんVBシリーズはEからAまでは割と長い知能系戦略バトル文章が多かったのだが、Gあたりからテキストは短めになりつつあり、今作はさらにそれが「今回のこうどなじょうほうせんが成功したのはアノーラたんのラブラブパワーの御陰ですよ!」みたいなノリになっているので、余計にヒロインの存在感は高まる。敵魔王ヒロインサイドについても、こちらもVBGからの流れを引き継いでおり、ヒロイン各国の内情の主な乱れをその国のヒロインとサブヒロインにシンボライズして、その感情の葛藤と国内問題をリンクさせるというやり方。此方も味方サイドと同じで、国内問題がヒロインの関係性において語られるのでこれまたヒロインの存在感は高まる。更には中盤になるとロウルートではそれぞれのヒロインの割と長い個別ルートみたいのが存在するし、中盤以降のカオス・ロウルートでも、メインとなる悪役2勢力よりもそれに絡んでくるシルヴィアとアノーラの存在がクローズアップされがちという傾向はある。今までのVBシリーズと比較するなら、良かれ悪しかれ「メインヒロインがいちばん印象に残るといえるVBH」とは言うことはできるだろう。VBEのメインヒロインはワルニトラになってしまったし、VBFの春の女神さんは主人公がマザコンだった癖にやっぱりロリヒロインに敵わねぇぜ!であり、VBAではちん○こ丸女勇者のゼラチンブロックに敗北し、VBGは最後に結局サブロリヒロインに良いところを持っていかれるというメインヒロイン全敗の歴史が続いていたと思うが、ようやくこのVBHにしてメインヒロインを輝かせるお話を書けたとは言えるだろう。カオス・ロウルートで言えば、ロウルートの「ヒロインみんなで力を合わせ頑張ろう」展開には有利であるのに対し、カオスルートでは若干不利に働いてる。ロウルートではシルヴィアもアノーラも見せ場を作るのに対し、カオスはアノーラ救出までレオンハルト君が一人頑張りながら敵役の伏線回収を聴いてるような感じだし、アノーラ救出後はすぐに愉快なイカレポーズを取るブス専堕天使と闘って終わりなので、GやAと比べても妙にカオス臭が薄いなぁと思える内容だ。

これはエロ関係のマイナスとも結構リンクしていると言えなくもない。エロ関係では必ずしも「メインヒロインが輝くお話」にはなっているとは言えないというか、前述のロウルートの純愛シナリオの優遇と今回新たに追加された敗北エチと今までのVBシリーズのハイブリッドが最悪の結果をもたらしている。とはいえ先ずは「良いところ」から上げるなら、今作のW調教ルート自体はなかなかよくかけているとおもう。VBGのW調教は妙にレズっぽいというか、最初から最後までヒロインのレズっぽい感情がメインで、主人公がそこに介入して最終的には二人はレズっぽく仲良くなりましたみたいな、なんだか調教ゲーと言うよりも主人公の恋のというか変態性欲のキューピット役をしているような「これって調教ゲーじゃねぇな」感がアリアリだったのが、今作はたいていの場合において「メインヒロインを落とすのに、まずはサブヒロインから落としていく」みたいな展開になっており、サブの方がメインよりも催眠に掛かりやすく、メインはサブよりも催眠には多少弱いがサブに裏切られると弱いという流れで、次々とヒロインを調教していく流れがスムーズに描かれているとはおもう。「催眠」という今回の特殊エロもそれなりに上手く練り込まれている。主に後述の理由によって各ヒロインの特殊性癖に対応しているとは言い難いが、最初の軽い催眠では割と性的に相手を容易く興奮させることはできるが、魂までも屈服させられず、何度にも及ぶ多重催眠エロの反復とサブヒロインの裏切りによって相手の魂を完膚無きまでに調教するというのは、催眠のちょろお手軽エロ感覚と調教ゲーのエチの繰り返しを上手く調和させているとおもう。W調教後の3Pフェラや3Pエロもストレートに調教ゲーのご主人様だいすーき征服感を満足させてくれて、3P調教ゲースキーとしてはそれなりに満足は出来るのかナーと思わせておきながら……微妙にそれをハズしてくるから最近のVBシリーズはどうにも満足度は低い。

と言うのも、ではある。個人的に今作の最大の不満点が個々なのだが、いったいぜんたい何時からVBシリーズは「エロシチュなら何でも揃えますよゲー」になったのであろうと小一時間問い詰めたいわけだ。確かけーまる氏は今作のエロシーン回数はシリーズ最大数できっと満足できますよ!とか言っていたような気がするが、個人的にはVBGと並んでいちばんエロ満足度が低い作品であったことは否定し難い。その理由はなんといっても「純愛エロから調教エロから狂化エロから3Pエロから2Pエロまでエロ傾向が薄く分散しすぎ!」というところだ。取りあえずエロ分岐が存在する4人の魔王ヒロインで言えば、だいたい「純愛エロが2~3個。調教(反転前)エロが2Pだと4~5個。反転後の調教エロが2Pだと1~2個で3P込みだと1~2個。
狂化エロは3Pオンリーで2個」。魔王サブヒロインは純愛エロが1~3個。調教(反転前)エロが2Pだと2~3個。3Pは先の魔王ヒロインと共通なので、反転後または狂化エロの2Pエロは皆無!」。これ、確かに「全部纏めればひとりあたり12回もあるのでシリーズ中最高数!」と言えるかもしれないが、しかしここで見落としているのは純愛エロから調教エロから狂化エロから3Pエロから2Pエロまで「全部が好きな人間」というのは、そんなに多くは無いという(エロ界隈だとあまり指摘されない話だが)単純な事実である。これは処女厨だとかそういう下らない童貞の中学生が好きそうなヤリチンスキー的なマッチョ議論とはあまり関係なくて「食べられない」ではなく「好きな料理は何か?」みたいな性的満足感の問題である。そのように考えると、このVBHはそれぞれの○○スキーにとってあまり満足感の高い作品ではない。純愛スキーからしてみれば1~3回の純愛エロなぞイチャラブゲー未満であるし、その対極の狂化エロも結局は2回程度しか無いので陵辱ゲー未満であり、その中では反転前の調教エロはシリーズのお約束を守って4~5回と数は確保されているものの、それも2Pと3Pに別れるので特定の○○キャラスキーにとってはモノ足りなくなるし、更には今回痛いのは……というかF以降少しずつ進行していることではあるが、悪堕ち後または調教後のエロシーンである。まぁVBF以降のAやGは純粋な調教ゲーではないという理由はあるが、今作に至ってはメインヒロインは2Pエロだけに限って言えばなんと2回しか無く、サブヒロインに至っては単独の洗脳後のエロがなんとメインとの3P以外は存在しない有様なのだ! この点に限って言えば、VBEやFがだいたい4~5回は確保されていたことを考えると最大の退化であるといってもいい。そりゃワルニトラやリグレットに未だに敵わないのも頷けよう。

これはヒロインのエロの回数だけの問題では無く、ヒロインのエロ以外の各ルートの日常描写にも関係してくる問題だ。今作は大雑把に言うと、基本ロウというか調教無しルートだとエロは発生しない日常イベント選択が基本で先に逝った各ヒロインの個別ルートというのもこの純愛ルートによって発生する。逆に調教ルートだと基本的には調教エロイベントだけが続き、調教後には多少の日常イベントはあるがそれでもエロイベントがメインで先の個別ルートみたいのは発生しない。尤もその調教後のエロイベント自体も先に言ったようにあまり回数は多くないのであるが。つまり基本的に今作は純愛ルートはお話がメインで、調教ルートはエロメインという風にかなり割り切った構造になってしまっており、ある意味では今のイチャラブゲーと比較すると何だか非常に古臭い印象を受け、しかもそれが誰得なのかよくわからない感じになっている。悪堕ちが発生しないVBA系列はさておき、F系列だとどう考えても悪堕ち後のヒロインの方が人気が高いと思われるのだが、その人気の高い悪堕ちヒロインのエロ描写や日常イベントを削るというのは何の魔が差したかわからないお話だ。別に悪堕ち前の描写を拡充させようという判断は良いのだが、それが悪堕ち後のヒロインの描写やエロを削ってまで行うべきかと言われたら、九尾の製作者は滝にでも打たれながらプリキュアを24時間くらい見続け、いったいエロゲに必要な悪堕ち描写とはなにかともう一度考えるべきでは無いだろうか。というか、今作は悪堕ち後のリーゼたんとかジュリアたんとか、すげー良いキャラなのに悪堕ち前の方が出番が多いとか勿体なさ過ぎるところが多すぎるのだ。九尾のゲームはむかしは矢鱈にテキストが長くてイマイチだとか批判されがちであったが、そのダイエットを心掛けすぎた結果、せっかくの良キャラとか良シナリオなのに描写や出番が少なすぎるみたいな結果になってる。今回の3Pエロ調教だと、例えばエレアとテトラの絡みで、尻穴に突っ込まれてフゴフゴ喘いでるエレアを尻目にテトラといちゃつき気味の純愛エロをするとかスゲー良いシーンで、この3P悪堕ちルートには色んな発展のしがいがあったと思うんだけど、そういう作品に限って悪堕ち後の描写は少ないのね。これだけ書けるなら単独でADVで出しても面白いレベルなのにさ。

今回のエロ配分や日常描写配分の結果は「別に悪堕ちを軽視した」という話よりも、九尾というかけーまる氏の美点でもあり欠点でもあるところの「出来るだけ多くのユーザーのニーズを満足させようとした」結果ではあるだろう。そこに抜きゲ界隈の悪癖の一つである「兎に角いろんなエロが沢山あるエロゲが最高にエロくて、エロの好き嫌いを言う奴はお子ちゃま」みたいなマッチョ雰囲気が加わった結果だと言えようか。今回はメインヒロインのエロに新たに主人公敗北エロも加わり、やれアノーラやシルヴィアや寝取られるだの、主人公がM気味に屈服するだのという逆NTRやNTRシチュが新たに加わったり、またサブ武将のエロも一人一回ではあるが新しく加わるなど、確かにけーまる氏が「いろんなユーザーの性癖を満足させようとしている」という善意は否定し難い。とはいえ、一方でこんなカオスルートを楽しみつつも、片一方で「開発者が善意でやっていることを否定するな」というのはある種のダブスタであり、カオスルートを楽しむようなユーザーならば「皆を満足させようとする善意がオレまたはみんなを苦しめることだってあるんだ!」くらいのことは認識すべきだろう。確かに新たなエロシチュの導入に踏み込むこと自体は悪くはないし、ずっとVBFの基本エロシチュを守り続けろと言うつもりは全くないものの、今のVBシリーズはVBシリーズ本来の「調教エロ」が弱体化するなかで、新しく追加されるエロ傾向がどれもメインを張るほどではなくバラバラに色んなエロシチュが「各ユーザーを満足させるためだけに」存在するという、少なくともVBシリーズというシリーズモノの存在意義を半分以上は失っているチーズ蒸しパンのような状態になっているのは否めない。まぁこのような状態で「今までやってきたエロシチュを削減する」というのはけーまる氏の性格や九尾の評判から考える(どうせ今回も相乗り的に色んなエロシチュがあって凄い!みたいな評価になるんだろうし。実際にその人がどのエロシチュが好きかどうかはさておくとして)と難しいと思うので、せめてエロを入れるキャラを少なくして、メインキャラのエロシチュを純愛エロから調教エロから狂落ちエロから2Pから3Pまで敗北エロまで含めた一人頭の合計数を今の2倍くらいにしたほうが良いと思うんだが。サブ武将のエロイッカイズツとか基本いらんわ(まぁこの辺はゲンガーの調整問題なんだろうけど。としぞー&ゲンタ氏以外に常に第一線を張れるゲンガーがあと1~2人以外定着すればなぁ……)


だが、なんといっても今回最大の変更点であり、そして最大の問題点もあるのが、ゲームデザインの大幅な変更であろう。とはいっても、これは先ほども言ったようにも、これはあくまで「戦略レベル」の変化であり「戦術レベル」にはそれほど大きな変化は無いわけだが、戦略レベルの変化が戦術レベルにそれねりには影響している。VBGからの変化という意味では、タワーディフェンスゲーム性から地域侵略型SLGに戻ったということで「VBFに戻った」とは言いたくなるのだが、これは正確には「VBE」に戻ったと言うべきである。「VBE」タイプの地域侵略SLGにそれ以降のVBシリーズのエンカウントバトルやレギオンやらを戦術レベルの進化を組み込んだのが、このVBHというのが一番妥当な言い方だとは思われる。VBEとVBFの違いは何か。それは一言で言えばエンカウントバトルの有無だが、これをもっと正確に言うと「多部隊を運用するか少数部隊を運用するかの違い」であり、エンカウントバトルの有無は実は本質的な問題では無い。VBEの場合、此方の進攻も相手の進攻も基本的に少数部隊によるバトルがメインだったが、VBFの場合こちらの進攻は少数部隊に基本限られるとしても、防衛に関しては「多部隊を運用するエンカウントバトル」であり、イメージとしては此方の進攻は少数部隊で1ターンで一拠点のメインバトルで攻めて、相手の大部隊による進攻を多部隊のエンカウント防衛で守るというものだった。これが今回のVBHでは此方の部隊も「MAPのルートが許す限り」何回でも相手の拠点に侵略できて、基本的に相手も自分と同じ進攻方法で攻めてくるのエンカウントバトルで守ると言うことになっている。あれ?それだけみるとVBFと同じじゃね?だってVBFも自分が責める時はメインバトルで、此方が守るときはエンカウントバトルだったんじゃ?と疑問に思う人は出てくるかもしれない。

ここで鍵になってくるのが、今回新しく導入されたというか、デザイン自体は普通のSLGと同じなので、新しく普通の拠点侵略SLGと同じになったと言うべきかは疑問だが(まぁVBGからの継承と言えるのかもしれないが)「MAP侵略ルートデザイン」の存在である。聞き慣れない言葉であるが、これは単に普通の拠点侵略SLGを意味する言葉であり、A地点とB地点を繋ぐルートが二通りある場合には、その場合には2師団が侵略でき、一通りしかない場合には1師団しか通過できず、基本的にルートが繋がっている拠点しか敵/味方とも攻撃できないみたいなものを連想すれば良い。これがVBFでは「少なくとも防衛側」に関してはルールが異なっていた。此方の攻撃サイドは概ね普通のMAP侵略ルートデザインと同じであるが、防衛の場合は敵の有限部隊がMAP拠点の位置とか関係なく色んなところに多部隊で攻めてくる。それを此方の多部隊がエンカウントバトルで防衛するというものだった。つまり攻める場合にはどの拠点を攻撃するかという判断はあるわけだが、守る場合は
「どの拠点を守るか」を選べず、というか「部隊を拠点に置く」という事が必要なく、自分の残存部隊が勝手に防衛してくれたわけだ。この拠点を勝手に多部隊が防衛してくれる際に、自動的に行われるエンカウントバトルは確かに「一瞬で相手の多部隊を粉砕するから早くて便利とは言える」わけだが、ここで重要なことは「多部隊を使って相手の多部隊と戦い拠点を防衛する」という多部隊の運用であって、その多部隊の防衛バトルの内容がエンカウントバトルであるかメインバトルであるかは、また次の問題である。

さて、ここまで説明してようやっとVBHの拠点侵略SLGの内容と問題点について充分に説明が出来る。このVBHは基本的には普通のMAP侵略ルートゲームデザインと大きな違いは実はあまりない。レギオンバトルやエンカウントバトルといったVBシリーズならでは!と言いたくなる要素も付加されているわけだが、これも結果的には大した違いはないのである。どういうことか。まずレギオンを組めると言っても、正確にはレギオンを組む以外の選択肢はあまりない。最初にA拠点があったとして、
自分には三部隊あり、次のB拠点まで進むルートが一つまたは二つあったとしよう。この場合は三部隊で一師団のレギオンを組んで一つのルートを通る以外の合理的な選択肢(経費節減は別として)ありえないだろう。確かにA拠点だけがあり、そこからB,C、Dと三つの拠点があり、それぞれに一つのルートしかない場合にはレギオンを組まず、1ターンで三つの部隊で三つの師団を作り三拠点を攻めるという場合はあり得るが、そういうMAPは最後の最後以外はほとんど無い。大抵の場合は自分のレギオンと相手のレギオンが相対するようなMAP構成になっており、三部隊×3師団(レギオン)+アルファをちょくちょく動かせば効率的に勝てるようにはなっている。確かに他のSLGと違って「多くの部隊」を使えるというのは正しいが、他のSLGと同じように「結局は3師団くらいしか動かさない」という意味ではあまりレギオンの意味はない。少なくともVBGのようなレギオン調整でガラっと戦略性が変わるような側面はこのVBHにはない。

エンカウントバトルも、実際のところ、これは今回は必要なかったんじゃ無いのか?と思えるレベルである。これは前にも少し述べた通りに、MAP侵略ルートゲームデザインにおける「防衛バトル」が単に「エンカウントバトル」に変わっただけである。
つまり自分がB拠点を押さえていたとしたら、そのB拠点とルートで繋がっているCやらDやらから敵が攻めてきてB拠点を守っている部隊と闘うわけだ。さて、ここで先ほどクドクド説明したVBFとの違いを思いだして欲しい。VBFの場合、B拠点を此方が攻める場合にメインバトルは発生し、その侵攻部隊を自分で決めることは出来る。しかしそのB拠点を落としたあとの、B拠点を守る部隊はB拠点を落とした部隊とは異なり(そもしもB拠点に部隊や師団を置くというルールが無い)基本的に攻撃部隊と防衛部隊は別れているわけだ。とはいえ、このVBHの場合はおおくの場合において攻撃部隊と防衛部隊は重なる。此方が一方的に守っている場合は別だが(そんなケースは数少ないが)基本的に攻撃師団1がBを攻めて落とした場合、次のターンにBにはルートが繋がっているCやらDやら敵の師団が攻めてくる。この場合防衛バトルに参加するのはB地点を落とした先の攻撃師団1が防衛に参加するわけだ。んで先にも言ったように、MAP自体はだいたい此方の3~4師団が(1ターンの間では)敵の同数の師団と闘う事になるので、防衛バトル自体は3~5回くらいしか発生しない。これくらいの回数なら、特にエンカウントバトルは必要なかったんじゃと思えるレベルである。因みに今回はエンカウントバトルでも戦術スキルが使えるようになっているものの、これもさらにエンカウントバトルの必要性を疑わせる内容になっている。まず今回はフォースゲージの保持量が前回までの10に対し今回は5と少ないので、たとえ消費フォース2くらいのものでも、使うタイミングが結構重要になってくるんだが、エンカウントバトルだとその調整が出来ないのだ。ベリハくらいになれば、戦術補助とか士気高揚を上手く使って毎回開幕で速度上げて鈍足のデストライヤー部隊を上手く使うとかできるんだけど、それにしてもメインバトルでやった方は戦術性は遙かに広がったのでは無いかと面輪得る。

ここまで説明すれば、僕が最初に言った「VBEに基本戻ってしまった」という言葉の意味がなんとなくわかってくるだろう。そう、レギオンやらエンカウントバトルやら後述するようなマニアックな部隊編成の面白さというVBE以降の色んなゲーム性を取り入れながらも、結局のところVBEと同じように少数師団を用いる地域侵略SLGだという点は変わっていないのである。確かに「師団」の数は同じでも「部隊」の数は大幅に増えてる。VBEのころはレギオンは無くて6×4=24ユニットが最大であり、今作はたとえメインの突撃師団で使うのが3師団だけであったとしても、1師団は基本3部隊で1レギオンだから18(3部隊×6ユニット)×3(師団数)で54ユニットである。とはいえ、これはVBF以降の数字と比べると遙かに少ない。確かに今作の最大部隊数は35師団であり、実際にMAPのうえで動かせるのは14師団とかなり大きいが、この14師団をフルに動かせるような戦略ゲームデザインは構築されていないのだ。たいていの場合、フルに使ったトしても9師団くらいであり、前線を突破するだけならVBEと同じように3師団の強力部隊を運用すれば勝てるどころか、高難易度になればなるほど1~2の強力なレギオン師団を組まなきゃ勝てないというような難易度にはなってしまっている。まずMAP自体がそれほど広くなく、ルートもわりと一方通行なので多師団を動かす余裕がそもそもないこと。そーなってくると沢山の部隊に戦力を分散させるよりも、とにかくこの拠点を1ターンの間守れる部隊や師団が必要になってくるので、少数精鋭師団に限定されてくるわけだ。広いMAPも大は小を兼ねるのではなく、小は大を兼ねる事のほうが多い。確かにそのような広いMAPの場合は、広いMAPを多師団で制圧した方が一つの師団に対する集中攻撃は防げるわけだが、この場合も基本的には「集中攻撃を受けてもなんとか堪えられる少数精鋭師団」を作った方が効率は遙かに言い訳だ。トレハンとか撃破金運のことを考えてしまうと。

実際このVBHがもの凄く面白いといえるのは、うえのようなゲームデザインの真理に気付くまでのところまで、ゲームで言えば一周目クリアあたりまでだろう。そこまではこのゲームはもの凄く面白いと確信を持って言える。特に序盤のまだユニット数が少なくて、ロクにレギオンも組めないのにMAP的にはフルに3師団が要求されるあたりまでは非常にやりがいがある。もうほとんど部隊編成ゲーと言えるほどの、ユニットの組み合わせの妙は相変わらずで、序盤でこんなに部隊数や師団が必要になるんだったら、後半に掛けて精鋭部隊の他に押さえの低コスト部隊やらが必要になるんじゃ無いかと思って、タクティカの節約のために最初からいる雑魚ゴブリンとかを必死に鍛えていた時がじっさいこのゲームのピークではあるだろう。が、だんだんわかってきてしまうのだ。通常のゲームクリアに必要なのは少数精鋭部隊だけであり、せいぜい10師団マトモに戦える師団があれば充分なことを。一周目にアレコレ部隊編成を悩ませていた自分のプレイ時間がわりと無駄であったことを。このような前半のゲームデザインの可能性に素直に反応して長時間の編成やユニット育成の面白さが、後半ほとんど無駄になってしまうような感覚というのは、少なくとも今までのVBシリーズには体験できなかった失望の味ではある。

かれこれ部隊編成だけで軽く24時間を費やした自分からすると、この作品やや大袈裟に言えば「35師団をフルに使う」という前提でやると、かなり緻密に練られたユニット編成の面白さを味わえるのだが「3師団つまり54ユニットの少数精鋭だけでいいや」とわかってしまうと、そのユニット構成の妙も途端に味気ないものになる。だってさー、攻撃部隊にはしょせんカブト割と必殺増加と特攻を沢山モツクソ高いぶっ壊れ数値のユニットを入れて、速度が遅い場合には先人の誉師団で防衛部隊を組めばたいてい勝てるじゃんあとはトレハンで終了になってしまうのである。54ユニットくらいなら、武将ユニットだけで20ユニットはいるし、残りの30ユニットも廃スペックの狂ユニットは限られるのでそんなに頭を悩ます必要は無くわりと簡単に決まってしまう。今回新たに追加された「陣形」も、大量の師団を作る場合にはなかなか頭を悩ませる面白い縛りではあるが、少数精鋭師団だけで良いなら逆にユニットリーダの陣形の活性スキルを持つユニットを集めれば良いだけなので、逆にユニット編成やスキルの組み合わせの単純化をもたらしているように思える。前回のVBGは職業制限枠の御陰でブレイダーだけみたいな単純化は避けられたわけだが、今回の陣形は特定の職業を合わせる必要が出てきて、さらに職業限定枠も緩いので、先ほどの狂ユニットと特定スキルがいちばん効率的ということも考えると、ある程度簡単に出てしまうのだ。しかも今作はユニット数値のインフレがなかなかに凄まじく、狂ユニットでも割りと普通にSとかAとか狂タクティカをつけられるので、わざわざ雑魚ユニットを雇う必要性は全くない。確かに狂ユニットはコストは高いけど、前述したようにフルに使う師団数は少ないのでコストはあまり問題にならないのだ。一周目でそれなりに長く使ったユニットが、後半になるにつれてほとんど役に叩くなり、愛着の欠片も萌え要素も全くないイノセントなんとかホロウなんとかみたいな狂ユニットに次々と変わっていくサマは、ある意味で敵キャラの言っている「人間とか魔族なんて所詮カスなのでほろんでも良いのだ!」みたいな議論を正当化してしまっているように思え非常に辛い。

まぁ擁護するとしたら、たぶんタナトス以上にまでやり込むならば、このゲームデザインはそこそこ良く回るとは言えるだろう。タナトス以上の一ユニットの一称号さえ無駄にできない厳密なユニット調整の場面になってくると、今回新しく追加された陣形やら豊富なユニットの組み合わせが、わりと緻密に組み立てられていることはわかる。今回僕が珍しくタナトスまでやったのも、まぁ一つにはこれだけ文句を言うくらいならタナトスくらいまではやり込んでないとあまり説得力は無いだろうという意識もあったが、基本的には陣形やユニットの組み合わせ次第で高難易度でも無理ゲー化していないところに好感は持てたからである。また色々と文句は言っているものの、83点を付けるくらいには、少なくとも一周目まではかなり面白く、二周目以降も普通のゲームと同じくらいの面白さは維持されている、まして今のアリスやエウと比べたら……みたいな水準以上の完成度は維持されているのも否定し難い。問題はそれがVBGやVBFの有機的なゲームデザインまでは昇華されていないことであるが、それも基本的なハイレベルな次元の話で、ここまで細かいレベルの批判が成り立つというのは、少なくとも80点以上の作品だと逆に評価はできるとも言えるわけだ。もっともVBデームデザインの最終作としてこれは無いんじゃないの?みたいな不満は当然あるにしても。




>あとはー。
>今回のVBHで、現状の国取り方式(?)のゲームルールは一段落、というのはお伝えしているのですが。
>どうにも、『VBシリーズそのものが終わり』と取られているユーザーさんがチラホラいるようです。

>や、VBのシリーズそのものは続けますヨ?
>ただ、VBDから続いた、ユニット作って戦団組んで……というネタは枯渇したので、次のネタに移ろうかなあ、というだけです。
> 過去にも、初代VBとVBCは『スコアアタック型調教SLG』でしたが、VBDから現状のものに切り替わったワケです。


http://blog.ninetail.tk/?p=5784#more-5784



最初に触れたおにー氏のVBの今後についての発言である。他にもけーまる氏の発言も飲用した方が良いかもしれないが、基本的には「VBは終わらないけどVBD以降のゲームデザインは終わるかもしれないよ?」という発言主旨はあまり変わらないので別に良いだろう。今までのレビュー文を読んでくれた方にはもうお分かりかと思うが、おにー氏やけまー氏がここで「ゲームデザイン」だけの変更点を示唆しているのは、VBシリーズの特徴をよく表しているといえる。VBシリーズのいちばん大きな共通点は先にも書いたように戦術SLG要素にあるわけだが、お約束プロットや悪堕ちだの調教エロだのといった要素もそれなりに共通しているので、ゲーム性デザインだけを変えた新しいVBシリーズというのも九尾とアルファベットが続く限り、長いあいだけることは出来るわけだ。個人的にはドラゴンのDがVBDのデザイアでもう使われてしまっているのが残念でならいので、頭アルファベットは同じだが、次のスペルは異なるってことで「VBD2――ドラゴン」とかやれば無限に続けそうな感じが良いとは思うんだが。

まぁけーまる氏のツイッターコメを見る限り、未だ今まで続いた戦術SLGシステムを廃止するとは決まったわけでは無さそうだが、取りあえず廃止すると仮定した場合、これについては正しい部分と間違った部分がそれなりに存在すると僕は考える。正しいというかまぁいったんクリアにしたほうが良いよねぇというのは、うえのエロ評価で述べたように、今のVBシリーズは「今までのシリーズで御好評だったものを次々と積み重ねていた結果、VBシリーズのコアな部分までもが侵食されている」ような建て増し積み重ね違法建築状態になっていて、これはいったんゼロベースに戻した方が良いんじゃ無いか?ということ。これは先の戦術&戦略SLGについても同じことが言えて、VBEからVBGまで積み重ねてきたものを総合した結果、基本的には少数師団を普通のMAP進攻ゲームのように用いることになってしまい、レギオンやエンカウントバトルや多師団はあまり必要なくなっているのに、編成可能な部隊やユニット数は多いみたいな戦術レベルと戦略レベルが矛盾した内容になってしまっているのも「今までの戦術要素や戦略要素を落とさず引き継ぐ為にはどうしたらいいだろうか?」みたいな建て増しの結果で生まれたものだとおもう。VBGくらいまではその建て増しは比較的上手く言っていた方だと思うが、これもそろそろ限界になってきているのではないか?とおもう。

ただ、この「建て増しが限界に来ている」という話と「今までのVBシリーズはもう進化の仕様がない」というのは、似ているようで決定的に異なるとはおもう。言い方を変えれば今作のVBHがVBD以降の戦略SLGの最高傑作かと言われたら、たぶんそれはないと答える人は多いはずだ。同じVBシリーズの話で言えば、今作はVBAと同じような「新しいゲームデザインに挑戦してちょい失敗した」作品に近いように思える。今回のMAP進攻ゲーム性についても、僕はあまり良い点数をつけられるものではないと思っているが、VBAからVBGへと進化させたように、このMAP進攻ゲーム性を進化させる方法は僕のような素人でもいくらでも思いつく。例えば敵拠点に接続する拠点を制圧すればするほど、此方の能力は上がるとか、防衛戦と攻撃戦をもっと複雑に使い分けるようなMAP構成なりクリア条件なりにするとか、多師団をもっと上手く活用する方法はいくらでも考えつくだろう。この点に至ってこのVBHの少なくとMAP進攻ゲーム性については「完成」どころか「あと2~3作で
完成形に至る」くらいのレベルでしか無い。「ネタは枯渇した」のは本当かもしれないが、それは単に「新しいネタは思い浮かばなくなった」だけを意味しているわけで、既存のネタが完成の域まで近づいたと言うことは意味していないだろう。まぁこれ以上VBD以降の建て増しをやるのは疲れたぜーとか飽きたぜーというのはわかるし、その建て増しをここまで続けたメーカーは滅多にないので、これ以上のゲームデザインの洗煉を求めるのも僕としても気は引けるところはあるのだが……


まぁなにはともあれ、VBシリーズのゲーム性デザインを変えるのであれ、またもうちょっとは続けるのであれ、たぶん九尾の製作者の「このままの建て増し路線は拙いよなぁ」という気持ちがユーザーの目の前に出てくるくらい顕在化しているのは確かなことで、それは多かれ少なかれ九尾の作品作りに影響を与えるとはおもう。それがどのような結果を迎えるかは、今のところ全く予想はつかないし、その鍵となる情報もたぶん殆ど出ていない。今までは「VBF系列の新作を作ってますよー」とか「RPGの新作を作っていますよー」みたいな、何らかの新作アナウンスが出ていた九尾であるが、VBH以降の予定は今のところ全く未定で何の情報も出ていないと思われる。たぶんそこらへんの「次回作がどうなるかわからねぇ」的な不安が「今作で
VBシリーズは最後」という誤った噂に繋がったところはあるだろう。僕は一応前からけーまる氏の発言をチェックしていたので、終わるのが「ゲーム性デザイン」だけと言うことはわかっていたが、じゃあそのゲーム性デザインをいったんゼロクリアにした場合に、九尾に何が残るか?と言われたら全く返答に困るわけだ。

けーまる氏は、まぁこれは軽いコメントなのであまり突っ込むのも良くないとは思うものの、軽くてシンプルなゲーム性の作品が良いみたいな事は言っている。僕としてもいったんVBシリーズの建て増し路線から離れること自体は賛成だし、気分転換にそういう作品を作るのもありかもねーくらいには共感するものの、とはいえ、今現在の九尾の立場とか、或いは同人エロゲまでも含めた商業エロゲのゲーム性重視作品の流れを見るにつれて、シンプルなゲーム性作品で九尾の悪堕ち作品に似ているものとして、例えばこんな作品

http://lunasoft.jp/product/lus004/index.html


があったりする。これのように昨今では「シンプルなゲームデザインにキャラの数だけエロを乗っけるようなゲーム性重視作品」というのは同人エロゲ界隈ではそれなりに数は出ている。もちろん、九尾がそっち方向に舵を切るという選択肢もありえると思うが、そうなってくるとフルプライスのゲーム性重視エロゲの存在意義とは何なのか?という別の問題を生まれてくるわけだ。今作VBHはそういう意味でフルプライスの商業エロゲの良いところ(ちゃんとそれなりに長い物語なり複数の分岐ルートを作ってそれぞれ楽しませる)と悪いところ(お互いに相容れないユーザーサービスを追求した結果、作品内容が分裂気味になってしまう)をある意味典型的に示していた作品であったし、VBシリーズはその両者を何とか結合しようと試行錯誤を続けてきた作品ではあった。VBシリーズ……いや、九尾系列の今後はどうなるかはまったくわからないものの、商業のフルプライスエロゲでしか味わえないようなゲーム性とエロと物語が高度にハイブリッドさせるエロゲ作りとロリを大事にする精神だけは失わずに頑張っていただきたい。

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