buuchanさんの「すみれ」の感想

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92すみれ
劇場公開用映画をも凌ぐ感動。買って本当によかった。だからエロゲはやめられない。
冒頭から、まるで劇場公開用映画を見ているような引き込み。

場所は大都会、東京。汗だくの社会人が炎天下の中、営業に回る。第一級の音楽。流行のエロゲとは真っ向対立するような物語の入り。一瞬で、この作品がタダ者でないことが分かります。冒頭から贅沢な音楽、惜しみないイベントCGの連続。一体、制作費いくらかかってるんだろう...。これまでやった他のエロゲと比べても、すごい大盤振る舞いな気がします。


プレイ時間は本編15時間、みずいろが3時間くらいだったでしょうか。でも、このお話は、何度も読めます。一度じゃもったいない。だから、今後の人生で繰り返し読んでいくことを考慮にいれれば、決して短い作品ではありません。こんなに素敵な作品は、ぜひとも手元において置きたいです。それに、とにかく贅沢な作品ですしね。



『すみれ』は、心の歌。主人公の健ちゃんも、3人のヒロインも、心をとても大切にしています。言いたいことはたくさんあるのですが、まだあまりの感動の大きさに整理しきれないので、後ほど書こうと思います。

エロゲを初めてまだ2年くらいしか経っていないので、ねこねこソフトさんの作品は、『すみれ』が初めてでした。しかし、一発で大ファンになりました。

片岡とも先生のシナリオは、一言一言噛みしめながら読みました。どの一文も味わい深かったです。すみれの心理描写もそうだし、情景描写も素晴らしかった。
ヒナ√の大観覧車からみる夕日のシーンもとても印象に残っています。空へと昇っていく観覧車。夕日と夜、大都会の灯と星。スケールがでっかくて、神秘的で、寂しくて、暖かくて。素晴らしい夕日でした!!


すみれ√では、ネット上の理想の姿と現実。その扱いがとても新鮮で、何度もうなずきながら読みました。古人は仏像を見るとき、西洋人ならマリア像を見るとき、きっと自分の心の最もきれいな部分を投影したことでしょう。ネット上の理想の姿とは? その中には既に本当の自分が兆しているのだろうか。すみれ√(アフター前)のラストシーン。これまで見たアニメ、漫画、映画、小説など含めて、最高に感動した場面の一つになりました。
すみれは現実のHシーンが2回なのですが、あの2回目があって本当によかった。CG的には変化がないともいえるのですが、あの2回目のHがあるからこそ、すみれが日常的に愛されているんだなと伝わってきて安心できました。あれがあるのと無いのでは、全く変わってくると思いました。すみれは、まだ学生で、どちらかといえば地味な女の子ですが、新婚さんのようなムンムンの色気がありますね。


雛姫√も可愛かった。雛がどんどん可愛くなっていくんですよ。秋乃武彦先生の描く女の子て、リアルな表情をしていて、見る方をハラハラさせるような、きわどいバランスの上で生きていて。それが、ふとした拍子に驚きの表情をしたり、笑顔になったりして、すごく可愛いんですよね~(#^.^#)。絵のことは詳しくわからないのですが、秋乃先生の描くヒロイン達は、エロゲ特有の笑顔でなくて、15、6歳の飾らない等身大の女の子のオリジナルな表情をしてると思うんです。

自分は先生の絵をみて、ドラえもんを思い出しました。藤子不二雄先生ご自身が描かれていた頃のドラえもんは、決して「友情が……」とか「友達は素晴らしい……」とか、価値観を押しつけるような台詞など無かった。それでも伝わってきた。今は別の人が描いていて、やたらそういうセリフを多用して説明調になった。でも、藤子不二雄先生の描いていた頃のドラえもんの方が、ずっと面白かったし中身が伝わってきました。今のドラえもんと、藤子先生の頃のドラえもん。評論文と詩の違いがあると思います。つまり、評論文は、紙の上に文字を書きまくって、これでもか、これでもか、と説得に走り、読者の心の壁を外から打ち崩そうとしてくる。しかし、心の壁に阻まれて伝わってこない。一方、詩は、読者に追体験させることで、心の壁をあっさり越えて読者内部から直接感情を発生させる。だから、説得不要。文字量も不要。でも、伝わる情報量は圧倒的に多い。

エロゲの絵にも、評論文のような絵と詩のような絵があるような気がします。テンプレート的な絵は、どうしても説明調になってくるような気がします。制服着てるから学園生ですよ。優しく笑いかけてくれますから、読者の皆さん安心してください、この子は読者さんのこと好きになってくれますよ、といいますか。でも、秋乃先生の絵は、そういうお決まりの説明的な絵ではなくって、もっと詩のような絵だと思います。見ている側も不安になったり、嬉しかったり、心をかき混ぜられてしまう。すみれが眉根を寄せた表情をしていれば、見ている側は「この子、大丈夫かなあ…」と心配になる。そういう感情が心の内部から生じてくる。ささくれている雛姫が不意に笑顔になったら、見ている側もパッと嬉しい感情が湧いてくる。先生の絵は、そういうところがあると思います。だから、先生の絵は大好きです。




そして、あかり√。他人の心の深淵を覗いたような気がします。人は、心の中に別世界を持っているのかもしれない。永遠の牧場の少年少女のような物語を。その牧場は心の中に永遠にあると同時に、もう二度と戻らない……。胸が締め付けられるようでした。子供の頃のあかりが大部分を占めているのですが、生名多聞先生の絵、とても可愛かったですね~。



(以下一段、あかり√についてのネタバレ)

あかり√冒頭の奇妙なSF的物語は、あかりが眠っている間に見ている夢ではないでしょうか。父の死も、何らかの解釈をつけて整合させなければならなかった。自分が眠り続けていることも、体が大人になっていることも、活動時の姿が子供のままであることも解釈しなければならなかった。あれは、子供の頃、健ちゃんと一緒に絵本で想像して作り出した設定。あの物語が、眠り続けるあかりの心の支えにもなっていた。いろいろな人の人生に乗り移って演じて(ネット上の理想の姿もまた同じ)、失敗すれば、何度でも死んでやり直し。そして、あかりは、ずっと健ちゃんが来てくれるのを待っていた……。
とても奇妙で、矛盾して混沌とした、暗い世界は、あかりが眠りながら10年以上も生きてきた、夢の中の世界だったのではないでしょうか。

(ネタバレ終わり)







それから、途中で読める『みずいろ』。これも本当によかったなあ。はじめは1980年代アニメのようなドジで明るいヒロインが出てくるのですが、だんだんと深みが増していって、最後には大きな感動が待っていました。エロゲで泣きそうになったの、これが初めてかも。これが健ちゃんなんですね。すみれ(モエ)と同じ気持ちで見てましたね。


あと、音楽がめっちゃいい!!! 歌も3曲も入ってて、これがまたどれも素晴らしい。驚きだったのは、薬師るりさんが『お兄ちゃんシェアリング』のOP「リンリンシェアリング」を歌われているということです。これは衝撃でした。こんな面白い発見もまた、エロゲの醍醐味ですね。


『すみれ』で何度泣きそうになったことか。冒頭では、劇場公開用映画みたいだと思っていましたが、すべて終わっての感想は「ハリウッド映画なんか見てる場合じゃない!」といったところです。流行のエロゲに真っ向から勝負をかけて、本当に作りたい作品を作ってるんだ、という気持ちがバンバン伝わってきました。こういう作品がある限り、エロゲ業界は不滅だと思います。本当に素晴らしかった!!!


これからも、ねこねこソフトさんをずっと応援していきます。ありがとうございました。『すみれ』は今後の人生で何度も繰り返すだろう大好きな作品になりました。





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