imotaさんの「レウキア滞在記 -前編-」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

年齢と共に得た処世術で世の中と折り合いをつけてきた人間にとって、良心にのみ従って行動する人間は眩しくも疎ましい。彼は、国籍や職業という肩書きを取り払った、人物そのものを見る。仕方がないと思考停止せずに、駄目で元々と足掻き続ける。そんな彼の目を通した世界は、ヒロインもサブキャラもモブキャラも分け隔てなく立ち絵があり……やりすぎだよこれ!
世の中、やりたい事とできる事は違っているのが常である。
壮大な作品を創りたい!と思うのは自由だが、時間や人手といった現実的な制限が重くのしかかる。
だから、エロゲでもサブキャラは減らされ、モブキャラは顔のないのが当然になっている。

しかし、本作はそこから逸脱している。
入管の受付、大使館の門番、現地役所の窓口、大学図書館の職員、本屋街の店主たち、石炭売りの親子ect…
ほぼ一期一会の彼らにそれぞれの姿があり、様々な表情があるという、当たり前だが非常に新鮮な存在感。

そして、作りこまれた世界観。
現実の近代を元に、漢字文化で信仰の薄いのオクス王国、表象文字で信仰の篤いレウキア連邦、その異文化の交流を描く。
いや、戦争による支配者と被支配者という構図があるから、事態はもっと複雑だが。
その土地にはその土地の文化、言葉、宗教、法律があって、それをひとつひとつ物語の中で説明する本気っぷり。

白状しよう。自分は本作を甘く見ていた。
レウキアの書物への愛が高じて、無期限の調査団助手に志願する主人公クルさんのイチャラブ珍道中!
という説明で済むような作品ではなかった。そりゃ前編出すのに何年もかかるわけだ。

このクルさん、齢二十半ばにして既に突き抜けた人生観をお持ちの、一筋縄ではいかぬ人物。
ただの本好き事務官と思いきや、天然に女殺しな台詞を吐き、のほほんとしてたはずが、鋭く核心に踏み込む。
本人曰く、本と出会って自己卑下が裏返った結果らしいが、自らの良心のみに従う有り様は他人にとって峻烈にすぎる。

この「有り様」が異なるからこそ、主人公だけでなく人々同士がぶつかり、禍根を残し、事件が起こる。
その「事件」に際して、主人公のマイペースさが活きてくる。ヒロインのルートによって株の浮き沈みは結構ありますが。
そして、ルートによって関わる人物や展開が異なり、向こうでちょい役だったキャラが実は……というのが面白い。

現実では当たり前だが、世界が主人公を中心に動くわけではなく、各人に思惑がある。
だから場合によってはすっきりしない事もあるが、それもまた人生。老兵はただ後編を待つのみじゃて。

ヒロインとのイチャラブについては、前編時点だと告白寸前か直後な進展具合。
モテそうだけどモテたわけでないクルさんゆえ、女心については鈍感というか何というか。まあ等身大っぷりを楽しむが吉。
個人的には、せっかく異国情緒あふれる作品なのに、四人中三人が本国オクス人っぽいのが少々残念。
具体的に言うと、お堅そうな三十路メガネ図書館館長ファーティマさんをヒロインに! 魅力的な年配女性が多いのに!

おっと、少しだけ私情が出てしまった。
でも視察団の面々、大学関係者、大使館の職員、駐屯軍、古本街の住人…と手抜きなく人物を描かれると、
彼らとの様々な「もしも」が浮かんでくるのですよ。えろビッチ踊り子ちゃんと浪漫飛行してもいいと思うのですよ。

ヒロインとの話に戻すと、彼女たちの有り様がクルさんの行動にも大分影響を与えている気がする。
理知的なフィル、情熱的なリザ、箱入りだが芯の強いイオナ、家庭的で嫉妬深いマキ。
事件に際しても、的確につてを探す、向こう見ずに交渉、報告を待ちつつ散策、右往左往しながら犯人へ…という具合。

その前の小事件についても、イオナ編やマキ編でのぼんやりした距離感が何ともリアル。
「人としての有り様」を議論している時のクルさんは輝いてるのに、振るわない時はいかにも平凡なエロゲ主人公だ。
まあプロ選手でも調子の波はあるので、どうせならフィル編で格好良い、マキ編で格好悪いままいてほしい。

リアルといえば、議論でもイチャラブでも言葉を吟味しながら紡いでいくのが、研磨される前の感触が心地良い。
時折爆発して「この小童が!!!」と袈裟斬りし合ってますが。おっさん尽くしの本作でも大人への道のりは険しいのです。
逆に台詞なしで溜息つかれるのも良いですね。特に女性陣に呆れた顔をされるのは得難い経験です。

基本的に未完成はレビューしない方針だったが、思わず筆を取ってしまった。
つまりそれだけの魅力、期待を抱かせる作品なのだ。さすがに点数はつけないけれども。
本作をおすすめしてくれたみなみ氏に感謝しつつ、本稿が別の方へのおすすめになる事をエロゲの神に祈ることにする。
あ、エロゲと言ったけど、前編では足コキひとつだけだよ! エロかったよ!

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