meroronさんの「ひこうき雲の向こう側」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

『恋愛に臆病なアナタ(わたし)』と『恋愛に夢見過ぎなアナタ(わたし)』に向けたメッセージ。
攻略順は いろは → 美奈 → 綾 → 瑛莉 でした。


まず注意書きですが、私は本作の絵柄がとても苦手です。
いわゆるオーソドックスなタイプの萌え絵とでもいいますか。 上手く説明できませんがともかく苦手です。
だから、ビジュアル的な面での悪いフィルターがかかっており、キャラクターへの感情移入が他の人より難しく厳し目な見方をしてしまいました。
多少乱暴な物言いをしてしまうかもしれませんが 「悪いフィルターがかかっている」 ということで見ていただければ幸いです。


さて、そんな私ですが元々本作は一切興味がなくスルーするつもりでした。 絵柄と学園恋愛ADVというジャンルから自分には合わないなと思ったからです。
けれども、批評空間の一言感想で興味引かれるワードがいくつかあって購入することとなりました。


最初に一番共感したのは瑛莉でした。
ロマンチックな恋愛を見てみたい。 試練を乗り越えた恋愛が見たい。 恋を知りたい。
ああ、これって泣きゲーや鬱ゲーを楽しんでいる自分と同じじゃないか。
瑛莉がギャルゲーをやっている光景はまさに我々プレイヤーを投影させるための描写でしょう。
しかしプレイヤーが共感する対象としては康司くんも該当すると思います。

一言感想に『恋愛に臆病なアナタ(わたし)』と『恋愛に夢見過ぎなアナタ(わたし)』と書きましたが、前者が美奈ルート。 そして後者が瑛莉ルートといろはルートにて当てはめられています。

恋愛に臆病なアナタ、というのはまさに主人公の康司くんが体現しています。
血の繋がりはないのに、妹になった美奈に気持ちを伝えられず佐藤さんに「恋をしていない」と両断。
そもそもひこうき雲というのは、この作中で言われていることから考えると「綺麗な飛行機雲 → 大雨 → 晴天」の一連の流れのことを指していると思うのですが「期待膨らむ恋愛 → 恋愛の試練 → その先にある幸せ」という感じに結びついているのだと解釈しました。
つまり、康司くんは結局ひこうき雲をそもそも見ようとしてなかっただけで恋愛のスタートラインにも立っていなかったことになります。
傷つくこと(試練)を恐れて恋愛から逃げるな、というメッセージがこのルートには込められていますが佐藤さんが全部言ってくれちゃってますね。
すごく分かりやすくて良いです。

そしてもうひとつの『恋愛に夢見過ぎなアナタ(わたし)』。
どちらかと言えばこちらのほうが本流であり、なかなかに構成が巧妙だなと思いました。
瑛莉というキャラクターがとても良く出来た引っ掛けとなっています。
彼女は最初、「試練があっても成就するロマンチックな恋を見たい(意訳)」と言っています。
試練のある恋というのは、僕らがいわゆる泣きゲーや鬱ゲーなどで見てきた類のものでしょう。
彼女が病気だったり、家柄の都合で結ばれなかったり………。
ニッチなものになると彼女が寝取られたりレイプされたり。
自分は結構そういうのが好きで、瑛莉と同じ気持だと思っていました。
ロマンチックな出会いなんかも好きで、主人公とヒロインがお互いを思い合う過程が相応のものでないとつまらなく思ってしまいます。

ああ、この瑛莉は自分と一緒だ。


…………と、彼女のルートに入るまではそう思っていました。
これが、思い違いだった。 瑛莉というキャラクターを見誤っていた。
彼女のその物言いは表面的なものであり、ただ素直になっていないだけだった。
だって、康司くんとの付き合い始めからEDへの流れまでごくごく普通なんだもの。
それは特別なものなんかじゃない。 ごくごくありふれた馴れ初めと、恋の過程。
物語の盛り上がり部分はカメラ騒動による天体観測部の部分であり、恋愛には直結していない。
まぁ、それは廃部に対して抵抗する彼女が序盤の姿と異なって『素直になった』ことを表しているのだと思いますが。

最初の瑛莉のように「理想の恋愛」を見たがっていた自分にとってこれは大きな肩透かしを食らう結果となりました。
付き合い始めは酒の勢いから、特に大きな喧嘩も波乱もない。
(ハーレムによる嫉妬はありましたがあんなの試練にもなってません)
瑛莉が康司くんに惚れる要素というのもいまいちピンと来なくて、そこらのなんとなく付き合ってみたカップルと何が違うのかと思った。
この2人の恋愛模様というのはひこうき雲とかけ離れているんじゃないかと思います。
あれ、これって最初の瑛莉が嫌っていた恋愛そのものなんじゃないか? それをなんで彼女は疑いもなく恋愛をしてしまっているんだ? これのどこが面白いんだ?
しかし読み進めていて、エピローグに到達しこの構成の意味を理解する。
意図的に極々ありふれた恋愛を見せることによって、そのありふれたものの大切さを伝えようとしているのではないかと。
瑛莉と康司くんは単に一緒にいたり一緒にセックスするだけで楽しいと思えるような普通のカップルです。
普通でありふれているけどそれはきっと難しいこと。 仕事して、年取って、子供を産んで、そして……死んでゆく。
そうやって小さな幸せ掴むのを「平凡」と切り捨てていいはずがない。
砂糖さんEDのエクストラで瑛莉はわたしたちに向けてメッセージを送ってくれました。
あなた達は理想の恋愛ばかりを見てるけど、小さな幸せを掴みとる普通の恋愛(≒現実の恋愛)に目を向けてみてもいいんじゃないかな? と、そう言われた気がします。

あれ、実はこれって巧妙に仕組まれたメタゲーもどきなの!? と感心。
よく出来た構成だと思いました。


けれど自分の点数が伸び悩んだのはそれ以前の問題がいくつかあったりしたからで……(だいたいは自分の趣向のせいなのですが)
本当に本作が好きな人は以下を見ない方がいいと思います。 価値観の違う人種の戯言でしかないので………。












この作品を最大限に楽しむための前提条件に、このライターが書く日常シーンを面白いと思えることが必要です。
他の感想を見る限り、楽しんでいる人は結構いるようですが自分にとっては何が面白いのか全く分からなかったのです。
絵柄によるフィルターが大きいせいだとは思いたいんですけどね……。
絵柄が苦手 → キャラクター造形が苦手 → キャラに感情移入しにくい → 掛け合いを楽しめない
という流れでの。

特にいろはルートは一番最初にやり慣れていないこともあってずっと苦痛でした。
後半ちょいちょいシリアスになるところは台詞にメッセージ性が込められていて楽しいんですけどそれ以外がことごとく合わないなぁ……って。
またキャラクターの中でも好きなのは綾ちゃんや砂糖さんだったのですが、メインとなる3人のヒロインに魅力を感じず、「別にこの3人とのイチャラブ見てもなぁ……」となりました。
本来ならば「普通の楽しい恋愛を見せることで、普通の良さに気づかせる」のが本作の構成だと思うのですが、自分にとってヒロインが可愛いと思えないから羨ましくもなんともないという状況に陥り、最初の瑛莉のような感覚から何一つ変わらず終わってしまいました。
瑛莉は瑛莉で、最初の毒づいた頃はそれなりに好きかな? と思ったんですがただ素直になれないだけの普通の女の子とわかった時点で興味が無くなりました。

また、物語の描き方にも少々疑問。
『恋愛に臆病なアナタ(わたし)』というのには戸井くんも当てはまると思うのですが、彼に関しては一度深い言及があっただけでそれ以降ただ瑛莉と主人公をくっつける黒子として役立っただけで彼の問題をどうこうするということがなく非常に残念でした。
戸井くんはそこそこ好きなキャラクターだっただけに。

それと、瑛莉ルートが最も気合の入っておりトゥルーのような扱いですが主人公の美奈への気持ちが上手く料理されることもなく普通に瑛莉と結ばれたので肩透かし。
主人公もただ普通の男だった、ってことなのかもしれませんがやはり最初の瑛莉のような期待をしてしまった自分にとっては消化不良です。

さらに、ひこうき雲の向こう側というのは理想の恋愛の先にある現実の恋愛のことを指しているのだと解釈しましたが、現実の恋愛がこうも簡単に上手く行くとも思えません。
陰では旦那の悪口を言ったりする主婦がいたり離婚を考えてたり浮気したりなんやかんやらと。
本作では愛の試練の描き方が生ぬるいんじゃないかなと思いました。 一応、埠島さんが恋愛の自滅的な試練を描くキャラクターとなっているのでしょうが、主人公たちにとって試練と思えるようなものが(個人的には)なかったのがなんとも……。
もっと汚い部分を見せて初めてその先の小さな幸せを掴むことの重みが出てくるんじゃないかなと思っているので、このあっさりした話の運び方には拍子抜けです。
主人公のカップルはたまたま、そんな心配のない組み合わせだったのかもしれませんがもしそういった汚い面に向かい合わなくてはならない組み合わせになった場合はどうするのでしょうか。
自分のようなユーザーにも「そんな傷つくことを恐れて逃げてはいけない」というメッセージが投げかけられているのでしょうがそれは言葉だけであり、受け止められるようなストーリーがなかったと思います。
主人公サイドで傷つく組み合わせが描かれていないとそれは現実の恋愛ではなく都合の良い理想の恋愛となり、作品のテーマに反しているような気もします。

そして何よりも、最後のエピローグ。
この小さな幸せの過程を見せることで本作は完成されるのですが、この部分ちゃんと描いても良かったのでは………?
なんなら、他2つのルートを切り捨てて瑛莉ルートで彼らの人生をじっくり描くだけでも良かったんじゃないかなぁ。
それが商業エロゲーの本流にそぐわないことはわかるし、だらだらやってても飽きるだけだからアレで良いのかもしれませんが、普通の幸せな恋愛を描くことが本作のテーマだったらそれを突き詰めて欲しかったです。
別に熟女になったヒロインやおばあさんになったヒロインとか見たくないよー! って人も多いと思うので、商業的にはこれで正しいのだと思いますが、正直勿体無いなと思いました。



構成や着眼点は良いものの、それ以外の部分で自分には合わない部分が多い作品という印象でした。
それにやっぱり自分は初期瑛莉のような趣向なのよね! 普通じゃない恋愛が見たいのよね!
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