OYOYOさんの「天色*アイルノーツ」の感想

長々書きましたが、句読点コミ5文字以内で要約すると、「微妙。」という感じです。
ゆずソフトの第7弾は、空に浮かぶ島「ライゼルグ」の女子校が舞台。若干のファンタジー要素が加えられているが、背景が練りこまれているわけでも、唐突にバトルになることもなく、獣耳やエルフのようなキャラを出すだけの仕掛けにとどまっている。基本的に、普通に現代学園ものと考えて良い。

クリエイター陣は相変わらずゴージャス。お抱え絵師・こぶいち&むりりんの訴求力のある絵に、人気も実力も兼ね備えた声優陣をキャスティング。SD原画こもわた遙華氏の力も相俟って、キャラの魅力でぐいぐい押してくる。更に今回は、勢いのあるライターを外注で起用。音楽やムービーにも手抜きはなく、熱の入ったキャンペーンなども含め、マーケティング能力の高さは凄いなぁと、素直に感心させられる。

良くも悪くも「ゆずらしさ」を確立しているブランドだが、過去作との目立った違いは、主人公だろう。本作の主人公・鷺ノ森透は、教師。これまでのようにヒロインと同年代の少年ではない。過去のとある事件によって教師を辞めようとしていたところを、恩師の口添えで再び教鞭を執ることを決意するところから物語は始まる。ヒロインたちを「見守る立場」なこともあって、主人公の出番は極力控えめにし、ヒロインの魅力を前面に出して描いている印象だった。

ヒロインに共通するキーコンセプトはおそらく、「初恋」。タイトルの「天色」というのは、美しい空のように澄み切った想い(主人公の「透」という名も示唆的だ)と、「甘い」恋の味わいをかけているのだろう。なんたって、キャッチコピーが「空にウキウキ*あまいろ新生活!」だし……。いや、良いと思いますよオヤジギャグ。なお、「*」は別にアナルの意味ではなかったようで。

ともあれ、「あまい」という通り、基本的にヒロインと主人公がいちゃつく話が展開される。無自覚な恋のはじまりと、そこから相手にのめり込んでいく一途な様子を、シリアスさを抑えてコミカルに切り取った作品である。


さて、現実の教師はサビ残当然、部活や補習で土日も無く、精神疾患による休職者が5000人を超えるという、わりかしブラックな職業なのだが、エロゲーの世界で教師といえば聖職者ならぬ性職者。しかも女子校勤務となれば、ぴちぴちギャル(死語)に囲まれてウハウハの、ロマンあふれるお仕事。

透先生もご多分に漏れず、序盤は女生徒たちにきゃぁきゃぁ騒がれる桃色女子校ライフを満喫。その華やかなシチュエーションには、なかなか心躍るものがある。生徒はいい子揃いだし、同僚にも恵まれ、モンペに絡まれることもない。活き活きとしたヒロイン同士の掛け合いの中に、ラッキースケベがテンポよく挿まれる展開はとても楽しくて、「これは名作の予感!」とウキウキしたのだが……。

そんな気分が続いたのは中盤まで。最終的にはものすごく微妙な印象の作品になってしまった。素材が良いだけになんだか勿体無いというか、素直に残念。いったいどうして、こうなってしまったのか。

私なりに考えてみると、明らかに失敗してるんじゃないかなぁというのは構成面。なので、まずはそれについて書いてみたい。

本作の進行は、だいたい次のような感じだ。まず、ヒロインの問題を主人公が解決しようとする中で二人の距離が縮まっていく。けれど、教師と教え子という関係がネックになって最後の一歩が踏み出せないもどかしい感じが続く。ただ、そのことが透に「教師とは何か」を考えなおすきっかけを与え、透は自分の過去に決着をつける。自信を回復した透とヒロインが手を取り合って困難を乗り越え、二人はいっそう関係を深めて行く……。細かい違いはあるとしても、だいたいこのパターンになっている。

ここから読み取ることのできる基本骨子は、以下に挙げる3つ。

①ヒロインたちの悩み(あるいはヒロインに振りかかるトラブル)
②主人公の抱えるトラウマ
③ヒロインと主人公の関係(教師と教え子というのが恋愛の障害になる)

まぁこんな感じだろう。

多少の違いはあるにしても、これらが絡み合いながら物語が進行する。しかし、序盤でかなりのウエイトが置かれている②について、ヒロインとの交流によって主人公が過去を乗り越えるという形をとってはいるものの、とってつけた感が否めない。

教師という職業を続ける自信を失っていた透が、1人の女の子との恋愛を通じて立ち直る。そのことは、彼の抱えている問題の本質が何で、それがどのように解決されたのかを示さないと説得力を持てない。ご都合主義だったり行き当たりばったりの結果オーライばかりでどうにも諒解感が無いのだ。そのあたりをきちんと処理できていたのは、シャーリィルートだけだったのではないだろうか。

もっとも、透の過去に何があったのかがはっきりとわかるのは、シャーリィルートのみ。その意味では他のルートで②はそんなに重きを置かれていない、ともとれるのだが、それなら共通ルートで過去を強調しすぎである。ゲーム冒頭から意味ありげに昔の「失敗」をにおわせ、教室に入ろうとしただけで気を失いそうになるようなPTSDを発動させる透を描いておいて、「実は大した問題ではありませんでした (・ω<)てへぺろ」と言われても、正直対応に困るというもの。


また、③については、完全に作品の足を引っ張っていると私は思う。同僚であるティア先生を除くほぼ全てのルートで、「教師と教え子」というのは禁断の関係として扱われ、前述のとおりそのことがヒロインとの関係に立ちふさがる障害になるのだが、ハッキリ言って彼らが、騒ぐほどこの関係をタブー視しているようには見えない。存在しない問題を、強引に作っているような無理矢理感があって、いまひとつ話に入り込めなかった。

そりゃあ、「教師が教え子に手を出してはならない」という通俗道徳は理解できる。しかし、それはどうして《いけないこと》なのか。透は、単にそういうルールがあるから鵜呑みにして守っているだけなのか。それとも教師という職業に対する何らかの信念があってそう考えているのか(たとえば、生徒と特別な関係になることで平等性を損なってはならない、とか)。透というキャラクターの人間性にとって、大きな意味を持つはずなのに、きちんと描かれていないのが問題だろう。

もう少し正確に言い直すなら、その道徳を重視することで描きたかった透というキャラの特性と、実際に描かれている透像がズレてしまっているのだ。

職員室の会話などから察するにおそらく、透の真面目さや誠実さを描こうとしたのだろう。しかし、だとすれば完全に逆効果。なぜなら透は、いとも簡単に「教師が教え子に手を出してはいけない」というルールを破り、しかも破ったことにほとんど罪悪感を感じていないからだ。

特に真咲ルートとかヒドくて、透もヒロインも、気にしているのは「バレたら教師をクビになる」ということばかり。要はバレなきゃOK、バレてもクビにならなければ構わないというスタンスでやっている。これだけ見ると透は、外ヅラを異様に気にする人間で、バレなきゃ実は何してもいい主義者。作品が強調する、信念ある教育者としての姿と乖離してしまい、常時ツッコミ待ちみたいになっていた。

余りシリアスな方向に持って行きたくないから、「障害」も深刻にならないように配慮したのかもしれないのだけれど、それならムリに入れなくても良かった気がするし、入れるなら入れるでもうちょっと恋が真剣に盛り上がるものにして欲しかったのだが、贅沢だろうか。


いや、大事なのはそんな枝葉ではない。可愛い女の子を眺めてイチャイチャちゅっちゅ出来れば良いのだ! と言われるだろうか。確かにこれまで書いてきたのはほとんど主人公の話になっていて、肝心のヒロインが魅力的ならそれで良いかな~という部分もあるにはあるのだが、遺憾なことにそちらもいまいち満足できなかった。

決して悪いわけではない。キャラは可愛いし、1つのセリフの中で立ち絵やアイコンの表情がころころ変わるなど、その魅力を伝えるための細かい工夫が施されているのはハッキリわかる。Hに力が入っているのも素晴らしい。各エロCGの破壊力はかなりヤバイ。だが惜しむらくは、そういう表面的な魅力ばかりが強調されてしまったところ。

見た目だけならホームページのキャラ紹介でこと足りる。ゲームをやりながらキャラに愛着を感じるのは、やはり、具体的な言動の中でその娘が「ああ、こんな時、こんなことを言うんだ」という場面に触れる時だ。たとえば、告白でどんなことばを言うかとか、友人と同じ人を好きになった時どんな風に身を引くかとか……。そういうエピソードから伝わってくる内面を見て、私はもっとキャラを好きになるし、キャラの個性というのはそういうところにあらわれるのだと思っている。

シャーリィなら、透に思わずキスしてしまうところとか、真咲であれば「ねてもさめても」透のことを考えているとか、「ああ、恋してるなぁ」と思える良いシーンは確かにある。あるのだけれど、全体として見るとかなり少ない。

そういう一部の「良いシーン」以外は何をやっているかというと、シャーリィが妄想ネタを炸裂させ、真咲がツッコミ、夕音が確信犯的にボケ、愛莉が自爆するというドタバタ劇。間違いなく楽しいのだけれど、金太郎アメのようにどこを切ってもそればかりが続いたのではさすがにしんどい。しかも、ストーリーが進んでいる感じがしないので、だんだんじれったくなってくる。

この辺りは「いつものゆず」のひとことで片づけられるところかもしれないし、ブランドのファンとしてはそういうところに安心感と期待をいだいて買っているのだろうから一概に悪いとも言いづらいのだが、個人的には、もうちょっとメリハリがあって欲しいし、日常を盛り上げるためにも、キャラの内側を掘り下げるような、パンチの効いたシーンが欲しかった。


一応、各ルートについてざっくりと触れておく。

私が一番楽しめたのは、シャーリィ。ゆずお得意の暴走シモネタキャラで、個人的にポイントが高い。また個別に入った後の言動のひとつひとつに、恋の楽しさと切なさがあらわれていて、時々発揮する独占欲やイタズラ心が可愛らしい。透に頼りっぱなしの依存心の高いキャラが多い中、二人で支えあって恋をしようというのも好ましく、同人誌が趣味という「オタクネタ」が気にならないなら、本作で最も正統派のヒロインだろう。透の抱えている問題がきちんと解消されて、ストーリー的にも恵まれている。唯一の不満は、自宅でのキスシーンCGが使い回しだったことくらい。

真咲は、キャラの可愛さだけでいえばシャーリィを凌ぐかもしれない。セリアンスロープ(獣耳)設定や個別ルートの内容は、設定の特殊さに頼った変化球なところが多いのだけれど、甘え上手なキャラとして可愛がりたくなる。そう、ペットのように。あと、ポイント高いのは巨乳。マシュマロのようにやわらかそうな胸をたゆんたゆん揺らしながら、耳と尻尾をフリフリ擦り寄ってくる彼女を見て、理性を抑えられる男がいるだろうか、いやいない(反語)。ただ、ストーリー面で鍵となる仕掛けに若干疑問を覚えた。ネタバレになるので詳細は避けるが、彼女がある本能に振り回されることで、恋愛が「こころ」の問題から、生理現象のように矮小化されてしまった感がある。最初で最後の恋、みたいな情熱は、本作中でもピカ一に良かっただけに残念だ。

夕音は、私の大好きな黒髪美少女。ただ、どうも話を重たくしようとして失敗した感がある。夕音の抱える問題を全力で透が支え、それによって透も成長していくという図式はハッキリしているのだけれど、夕音が「主に仕えたい」と思うようになった理由や、ライゼルグを目指した動機などに、無理やりさが拭えない。クレバーキャラに見えて実は受けに回ると弱いところとか、ギャップを楽しむことは出来たのだが……。ドSぶりを発揮したり、ボケにツッコミにと華麗に立ちまわる共通ルートのほうが輝いて見えたのは、私の気のせいだろうか。

一方愛莉は、ギャグ路線で突っ走ろうとして上滑り。このルートだけ他キャラも含めてテンションが倍くらい跳ね上がっているので、最初は勢いに圧倒された。まあそれが愛莉らしいといえばらしいところなので、成功しているのかもしれない。メールでないと照れて本心が言えないという初期設定や、「大人になりたい」という彼女の望み、あと胸部に仕込んだまな板があらわす通り、とにかく幼いキャラ。真咲のように透に甘えるというよりは、頼る、というニュアンスが強く、庇護欲をガンガン掻き立てられる。彼女の成長する姿を見守るルートになっている。

サブキャラのティアと木乃香は、メインに匹敵するくらいのボリュームがあり、それぞれ楽しめた。正直、どこが「サブ」なのかさっぱりわからない……(CG枚数が倍くら違うので、そこだろうけど)。特にティアは愛莉よりHシーンが多く、キャラも立っていて、話も割りと面白い。最後に彼女がある決断を下すシーンはなかなかぐっとくるものがあって、「初恋」の料理方法として良い味が出ていると思う。なにげにメガネの着脱ができるので、「メガネキャラはちょっと……」という人もご安心あれ。

ルートごとの差は気になる人には気になるだろうレベル。主人公のアダ名やキャラの口癖の頻度が、ルートによって全然違う。ヒロインやサブキャラの印象もそれに伴い余り安定していないので、ちょっと戸惑うことはあるかもしれない。


丁寧に作ってあるし総合的なクオリティーは高い。最後までやるにはやれるんだけど、飽きずに楽しめるかというとそうでもないというところ。後半に行くほど盛り上がり先が気になって「早く終わらせたい」と思う内容ではなくて、とりあえず終わらせないと何となく収まりが悪いから続けるけど、そろそろ次のゲームもやりたいな……みたいな意味で「早く終わらせたい」と思ってしまう感じだった。

総評として、素材の良さを殺さないだけではなく、活かすようなゲームにしようという意気込みは随所に見られる。ただ、ここまで述べてきたように、どうもそれがうまく行っていない感じを受けるのだ。まあこの辺りは、幅広い層のファンを抱えているからこそ生じる「敵を作らない」難しさに由来するのかもしれない。キャラを掘り下げて描けば描くほど、それが制約になって、あわない人・気に入らない人が増えてしまう。悩ましいジレンマである。

そういえば作中、虎倉先生が「女関係でモメてるなら雑誌を仕込んでいけ」みたいなことを言って、『遥かに仰ぎ、麗しの』の暁先生を思い出した。設定で似たところもあるし、女学園教師ものということで多少意識していたのだろうか。よもやああいう方向に舵を切るとは思えないし切る必要も無いとは思うけれど、エロ、ギャグとキャラの表面的な可愛さだけではない引き出しを、何か見せて欲しい。

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