Accord4312さんの「シロガネオトメ」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

形容しがたい物語。
女の子主人公と男の娘ヒロインという、過去に例を見ない(かどうかは不明)な斬新なエロゲということもありつつも、並み居る5月の強敵の中でひっそりと発売されたこの作品。

それは、女の子・男の娘というか、いろいろなものを越えたような越えていないような、如何とも形容しがたい作品になっていたように思う。

物語は5章構成で、1章1ヒロインメインといった感じで物語が進行する。
ヒロインの数5人に対し、5章しかないあたりで察してもらえるといいのであるが、このゲームにはヒロインの個別√という概念はない。
ルートとして存在するのはメインヒロインとして物語で主人公と対のような存在として君臨する男の娘、灰羽翼のルートと、全員仲良く結ばれるというハーレムエンドの二種類のみである。

この構成については、この話を聞いただけのユーザーからすれば、事前告知もなくこのようなゲームとなれば「何だよこのゲーム、ksじゃねぇか」とでも言いたくなる状況ではあるが、物語の設定やまとめ方の観点など、あくまでゲームを終えた時点でのプレイヤーから見れば、「これでよかった」と言えると思う。

ネタバレにならない範囲の設定を利用して説明するなら、これはひとえに主人公の「麻嶺夕希」とメインヒロインの「灰羽翼」の絆の深さからなのだろう。
彼女と彼は、他のヒロインたちとは異なり、その今までの人生ほぼすべてをともに生きてきているのである。それも、他のゲームに現れるような「幼馴染」というキャラクターの比にもならないほどの依存度で、である。そして、この状況であることを「他ヒロイン全員が認め、全員が『選ばれるのが翼ならば仕方ない』とというレベルまでに認めてしまっている」ことである。
この状況から個別√を各々に作ってしまうことは、かえって作品の崩壊につながったといえるのではないだろうか?
(ヒロインのルートを作るかどうかを考えるのが先か、設定を深く練りこむことを考えるのが先か、という問題はさておきとして)

また、分量であるが、一章一章はそれなりに長めに作られており、総じてちょうど良い長さであったように思う。
ただ、先にこのサイトにレビューを上げている人もおっしゃっているように、ネタの使いまわしが笑いを露骨に求めようとしない日常部分にも多く、この部分を私は「いかにも普通の学生の日常会話らしいじゃないか」と評価したい部分ではあるのだが、その好みは千差万別と言えるだろう。

シナリオの内容について。
この部分に関するコメントは、いくらネタバレタグをつけているとは言えど、個人的にはぜひやったうえでわかってほしいという部分が多くあるため、あまり多くは語らないことにしたい。
ただ、以下の二点だけは言える部分であるので、注意してみるといいかもしれない。

・「百合ゲーなのか、男の娘ゲーなのか?」といった発売前の本作における疑問点は、明後日の方向で解決したと言わざるを得ない点
・物語としては非常に先が読みやすいものであったため、先行版、体験版でおおよそ先を予測したプレイヤーにとって、ほとんど予想通りの結末にたどり着くのではないかという点

CGについて
前作「現在もいつかもふぁるなルナ」の綺麗な絵を見ていると、同じ絵師であるのにどうしても劣化している印象が否めない。特に横を向いているCGなどは明らかにバランスが崩れており、そういう意味では低評価を付けざるを得ない。
ただ、概ねの不満は「前作の綺麗すぎたCGと比べて」という主観が入ってしまう面が原因であり、総じてそこまで大きく平均以下といった絵にはなっていないであろう。

Hシーンについて
正直言って、百合であることを差し引いてもほとんど使えないシーンが多い。
一方で、嗜好さえ合ってしまえば宝のように重宝するであろうシーンも散見し、結局のところは力の入れ方を少し間違えたのではないかという感想である。
これだけの独特な設定をくみ上げられるのならば、もう少し力の入れ方をうまくすれば、天下をとれるほどになると私は考える。
また、シナリオ全体におけるシーンが入る場面のバランスがいささか悪いのではないか。

曲、BGMについて
問題なし。
曲については前作でも思ったのであるが、ボーカルアルバムが非常に欲しくなる良曲ぞろいである。

システムについて。
スキップが比較的に遅いのが問題点であるが、それ以外の面では及第点と言える。
立ち絵がセリフの途中でも細々と動くのもかわいらしい、が、通常プレイ時はその立ち絵の変更でワンクリックを要してしまうため、不快に思う人もいるかもしれない。

総評
前作で「コンセプトはよいがそれを生かし切れていない」というのが主な反省点となったが、今作で多少の改善は見られたものの、結局は前記の反省点がそのまま残っているゲームであったように見受けられる。

それならばいくら評価の甘い私でもここまでの高評価はしないのであるが、評価を上げる点は以下の点である。
・シナリオが単純明快で分かりやすく、理屈もしっかりととおして無理なく仕上がっていたこと
・ゲームのコンセプトが思いもよらぬ形で私の理想にジャストフィットしていたこと
・不快に感じるキャラクターがおらず、いつまでもこの空間にいたいという思いを強く抱けたこと

逆に、マイナス評価となるのは以下の点である。
・Hシーンがあまり使えない
・全体的にどの層へ向けたゲームなのかがわからず中途半端である
・一部部分でのCGの崩れ

以上より、今回の評価とさせていただきたい。
MANATSU8の作品は過去2作品とも「性倒錯」を扱おうとしており、今作は前作では主人公の設定程度であったそれをメインにまで上げるなどして重視しているように見受けられる。
このジャンルはエロ漫画やAV、エロの世界を飛び出し純文学などではすでに多くのクリエイターが挑戦したジャンルであり、全体で見れば必ずしも小さな勢力ではないながらも、ことエロゲーに限ればまだまだ極小の勢力であることは否めない。
この勢力の一員としては、今後も同メーカーが同じ路線でエロゲ界に作品を送り出し、この勢力の発展に貢献してくれるブランドとなることを強く願いたい。
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