ARTOさんの「しすたぁ☆ボーイ」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

女の子のような主人公が女の園のようなアパートに住むことになる話。随分昔にプレイして随分良かった覚えがあったのですが、あまり話題を聞かない。マイナーなのかな勿体ないなと思ってレビュー数をみたら案の定。なので長文は、多少紹介重視です。
・ 主人公は外見に反して男らしい性格。
・ 女性風という設定はそんなに活かされず。
・ ボイス無し。残念だが時代を考えるとこれは許容範囲。
・ しかしBGMが五つというのは酷い。
・ 別作品がらみのネタがあるが解っても特に良いことは無い。


古き良き、と言って良いか解りませんが奇をてらったところもなく淡々とした日常の中にちょっとしたスパイスが散りばめられている作品。主人公と女の子の関係と心理描写に絞り込まれて行き、最後は綺麗にまとまりました。会話主体の穏やかなテキスト、作品全体の優しい雰囲気が心地良い。バトル展開にならない「とらいあんぐるハート」のような感じです。

両親の転勤でひとり暮らしを始めることになった主人公、御山隼。小柄で見た目は女の子に見間違えられることの多い彼を待ち受けていたのは、女性ばかりのアパートへ入居という、天国か地獄かわからない運命。学園とアパート周辺を舞台に物語は展開します。選択肢で好感度が上下し、シナリオが変化。ちょっと解りにくいのですが単純な分岐というわけではありません。公式の説明を流用すると下のような感じ。

第一部 全キャラクタ共通エピソード。
第二部 好感度により分岐し、特定キャラクタと結ばれるまで。
第三部 恋愛したキャラクタとのその後。好感度により内容が変化。


攻略対象は五人。同級生で男勝りな相良香澄。この娘は背が高くてわがままなんだけど女らしくないという自覚があって、男らしくない主人公の対となっています。最初主人公を女と思いこんでおり、「騙された」と勝手に憤慨。同族嫌悪も手伝ってか主人公を非常に嫌っています。このシナリオでは主人公が香澄に振り向いてもらおうと頑張る展開となります。

次に里原姫乃先輩。おどおど系おのぼりさんです。田舎ものコンプレックスで、何をやっても自分に自身が持てない。そのうえ男性恐怖症。ただし本人が気付いていないけれど人並みはずれた体力と俊足の持ち主(笑)。実は美人だし、こっそりお洒落していたり、細かな気遣いのできる娘なのですが、性格が災いしていろいろうまくいかない。主人公とも距離をとりたがる、このかわいらしくもじれったい先輩をなんとか日の当たる場所にだしてあげたいというのが主人公の密かな野望。

三人目と四人目はセットで。三村小春、小夏姉妹です。双子で、主人公のひとつ下。小春が姉、小夏が妹。小春はほとんど物を話さない代わりに何かと器用で行動的。無言で布団に潜り込んだりする不思議ちゃんというか、たぶん猫のイメージ。人の心がある程度わかってしまうことが彼女の性格に影響を与えていることが解ります。一方小夏は「ひとこと多い」タイプ。口も出るけど手も出る性格で、合気道の腕もなかなか。成績はいまひとつでしっかり者の姉が手綱を握っているように見えますが、実は小夏が小春を支えている部分が多いという微妙なバランス。そこに主人公が入り込んで…というお話。

最後に、アパートの管理人相良雛子さん。残念ながら香澄の母上ではなく従姉です。年上の余裕か、主人公を女扱いしたり目の前で着替えたりとからかって遊んでいます。子供好きで、アパート管理の傍ら「子育て支援サービス」をしています。学生時代保母を目指して断念したことがあり、そこにいつもほほえんでいる雛子さんの秘密があるのですが、はてさて。

あと、雛子さんが預かっている白井知花ちゃんというおしゃまな保育園児が登場します。おん年四歳。さすがに攻略できません。できちゃたらヤバい。でもEDはあります。ユーザーの心を慰めてくれる、とっても良い子。

キャラクタは基本的になにか悩みを抱えていて、それを主人公とのつきあいを通して乗り越えていく、というのが基本。最初から隼に興味をもっている娘がいないので、物語の展開と心理の推移がうまく重ねられた正統派のボーイミーツガールということになるでしょう。ありきたりですが、恋愛ゲームがやりたい、という人にとってはまず外れのないしっかりした構成です。

劇的なことはあまり起こらないのでパンチ力に欠けることは確か。隼くんが女の子に似ているという設定もいまひとつ全体に響いていません。ところどころで顔をのぞかせる程度。また、CGはおっと思うものからそうとう粗が目立つものまで質がまばら。もっともまずいのはBGMの少なさでしょうか。曲数が五つというのはさすがに少なすぎます。グラフィックや音楽といった要素が作品の雰囲気を盛り上げることに、大いに貢献することは今更改めて申し上げるまでもないでしょう。発売が2001年であることを考慮に入れても、物足りないと言わざるを得ません。

しかし、じっくり腰を据えてキャラクタの心理を描写し、物語を組み立てていく手法はやはり秀逸。ライターの無頼寿あさむさんは他にも何作品か拝見しましたが、すごく丁寧な描写をされる方ですね。「憧れの人」がいると公言する香澄を複雑な気持ちで応援する隼。「自分を変えたい」と思い、お弁当を通して隼と心を通わせる姫乃。相手への好意が積み重なり、あるきっかけでそれが恋愛感情にジャンプする。少しもどかしくて、でもどこかほっとする、そんな瑞々しい恋が上手に切り取られていました。

もちろん人間ですから、本来はもっといろいろな感情や自己反省がある。そういうのを細かく描くのが昨今評価される向きであることは理解しているつもりです。しかしことエロゲの恋愛に関して言えば、枝葉を切り落として単純化された感情を追いかけることにも、ひとつの良さはあるでしょう。だって、そうじゃないとロマンが感じられない(笑)。

この作品に人間関係を掘り下げた深さはないかもしれないけれど、恋愛感情の流れとか奥行きみたいなものは存在します。単純化された深みのない話かもしれません。しかし、それは恋の輝いている部分を集めて結晶化したようなものだとは言えないでしょうか。それならきっと、描かれているものを簡単に偽物だとは言い切れないはず。

自分がそうだから余計かもしれませんが、世の男性、とりわけエロゲをやる男性はどこかしらロマンを求めている人が多いものと信じています。というわけで、そんなロマンチストな人なら手軽に楽しめる作品。CV無し等今やると残念なところは恐らくそうとうあります。でもシナリオ自体は手垢の付いた内容だとは思いません。劇的な良さは無いけど、このまま日が当たらないのは少し残念かなと思う良作です。

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