OYOYOさんの「テラべっぴん」の感想

ただのエロパロ系ネタゲーだと油断していたら意表を突かれました。ぶっちゃけ最初にハードル下げていたのはあるかもしれませんが、エロから音楽、演出、シナリオまで全要素がしっかりしていて、相当面白かったです。
幼なじみにして姉弟のように育ってきた橘一樹と神楽京香は、旅行先でにわか雨に降られ、お寺の軒先を借りて雨宿りをする。「呪盤寺」(じゅばんじ)なるその寺で、二人は謎の少女・不動森羅と松平雪に誘われて「呪盤」なるすごろくゲームに誘われる。仮想現実のような空間でやたらリアルな進行をする呪盤。止まったマス目でカードを引くと、書かれた効果が現実になる。そう、たとえそれが、どんなエッチな内容であったとしても! 閉鎖空間の中で、怒濤の「エロゲー」が幕を開けたのだった。

ご存知の方はお解りの通り、どう見ても映画(もとは童話)『ジュマンジ』をパロディ的にアレンジした設定です。ついでに、寝間着である襦袢(じゅばん)とも掛詞になってますね~。だから何だって話ですが。

ちなみに、タイトル『テラべっぴん』はもちろん、1985年創刊のエロ雑誌『デラべっぴん』のもじり。「とても」の意味に加え、舞台がお寺だから「テラ」になっている、と。いやあ我ながら、ギャグをいちいち解説するこの無粋さがたまりません。

本家『ジュマンジ』ではゲームからさまざまな動物が沸いてくるわけですが、本作でもナビゲーターとして豚の「とんかつ」(そんな名前で大丈夫か)、ライオンの「ライオン」(どう見ても花○のマスコット)、アルパカの「パカモトリョウマ」(ノーコメント)という愉快な三匹が随伴します。「こういう動物ネタでは定番のアイツがいないなぁ、さすがのクロックアップさんもひよったかしら」とがっかりしていたら、中盤からネズミの「ウォルト」とかいうのが颯爽と登場したでござる。無茶しやがって……。でも、その勇気に惚れたぜ乾杯!

さて本作、期待していたエロとパロのほうはバッチリ。

まずHシーンですが、かなり充実しています。「カードに書かれた内容が強制的に実現される」という設定を活かし、和姦強姦コスプレ分身なんでもござれ。各ヒロイン約10シーンずつ、相当濃くて長いHが用意されています。また素晴らしいのが声優さん。はっちゃけたテキストを、熱の籠もった艶技でもりあげてくれていました。特に3Pになったときが秀逸で、右と左からステレオ聞こえてくるあえぎ声を聞いているだけで変な気分になってきた。声の力ってスゴイですね。

絵はOHP通り。むなしむじょうさんの描く女の子は素晴らしい……。特にお尻は穴までしっかり描き込んであって相変わらず半端ない。そのこだわりに畏敬の念を抱くほど。くろあぷ本社にお尻を向けて寝られません。もちろんお尻だけじゃなくて、立ち絵・Hシーン問わずコロコロと変わる表情も魅力的。この辺は演出の巧さもあるんでしょう。グラフィック・演出ともに職人魂が感じられます。

何というかエロというのは、ユーザーのニーズにあわせすぎると「こういうので良いんだろ?」的な押しつけがましさが出るし、ユーザー目線を忘れ過ぎると独りよがりになって難しいんですよね。折り合いが重要です。その点本作は、幅広いジャンルをフォローしてユーザーに配慮しつつも、自分たちがこだわる部分をしっかり貫いて、ユーザーを自分たちの土俵に引き込むようなところまで昇華させていて見事。これぞ匠の技といった趣がありました。

次にギャグ。ドタバタしたコントをベースとして、基本的にバカでオゲレツなノリです。やりたい放題と言うか。さすが広報が金ぴかの全身タイツを着込んで街中を練り歩くメーカーさんだけあって、発想が面白いと素直に感心させられます。かと思えば時々知っていれば笑えるようなパロディ(『ジュマンジ』やドラクエなど)や、世相を皮肉ったニヤリと笑える黒いジョークも織り交ぜられていて、笑いのバリエーションは凄く豊富。全く退屈しません。

しかし、どんなにエロがよくてギャグが切れていても、支える土台が貧弱では論外というもの。本作が魅力的なのは、骨格となるストーリーがしっかりしているところでしょう。ギャグが無くても面白いから、あれば尚更、というわけです。

スタートボタンを押すや否や、クリック0回で肌色シーンに突入。事前情報も踏まえて、どう考えたってバカゲーのつもりでプレイしていたのに、その予想はあっという間に裏切られてしまいました。

というのも本作、「謎」の提示が抜群にうまいのです。バカゲーだからと突飛な設定を「ハイハイ」で受け流していると、暫くして「呪盤から脱出できない」、「無理矢理カードイベントをやらされる」といった深刻な要素が顔を覗かせておやおや、となる。加えて、時々差し挟まれる主人公・一樹の思わせぶりな回想ですよ。どうもこの世界と一樹は過去に何か繋がりがあるらしいぞ、と。そうなると俄然、「誰が何のためにこんな世界を造ったのか」という世界への興味が沸いてくる。

そして世界の全貌が明らかになってくるにつれ、キャラクターの印象も変わり始めます。彼女たちは何者かとか、目的は何かとか――。そういう「謎」が、予想を喚起するようなヒント満載で、しかし本当に肝心なところは見えないように目の前にぶら下げられるわけで、そうなると、必死に掴みに行かざるを得ないじゃないですか。これぞストーリーのチラリズム。お尻の穴まで丸見えの、ロコツなHシーンとはえらい違いですな。

つまり、物語と世界への興味を綺麗に地続きにして物語を膨らませ、ユーザーをぐいぐい引っ張る展開になってるんですね。これはもう、良質なサスペンスと言っても差し支えないレベル。

ちなみにルートは5つあるんですが、一樹の過去と関わる京香・憧子ルートと、呪盤の謎に関わる雪・森羅ルート、ハーレム的な乙女ルートに大別されます。ハーレムはまあオマケ的な感じ。んで、一応森羅ですべての内容に綺麗に片が付くようになっています。当然ルートロックがかかっていて、雪は2周目以降でないと攻略不可。森羅は雪攻略後にロックが解除されました。

ストーリー的には、序盤のエロパロ路線から次第にシリアスな方向に流れていきます。それでも最後までおバカなノリではありますが。

途中、私のようなツッコミ体質の人間からすると、「こうすりゃ良いだけなんじゃ……」とか、「あれ? これ矛盾してね?」と思うことが幾つも出て来るのですが、最後までプレイすれば一応だいたいのことに説明はつきました。これを「強引ダナァ」ととるか、「綺麗にまとまった!」ととるかは、人それぞれでしょう。

私的には多少後出しじゃんけんくさいなと思いつつ、違和感を感じていたところには説明してくれたので満足。ポイントは、途中でキャラが語ったことが必ずしも真実であるとは限らないということでしょうか。因みに、なぜ真実を語らない/語れないか、という説明まできっちりされるのが良かった。ああ、作中の説明に矛盾が起きているのは判っていたんだな、と。そう思ってみると、呪盤のシステムや呪盤を出た人間がどうなるかということ、規則(ルール)と原則の説明などについて明かされるクライマックスはなかなか見応えがありました。細かいことが気になる人でも、そこそこ納得できるはず。

伏線とかもちゃんと意外性が考慮されていて、「絶対これ伏線だよなー」と思って待ちかまえていたのが全然来ないから、すっかり気にしなくなった頃に突然戻ってくるとか、そういうのもあってなかなか上手いと思います。たとえば、どうしてお寺に巫女さんなんだよ、と思った人は少なくないと思いますが、これも実はちゃんと理由があります。日本史知らないとキツいかもしれないのですが、ヒントは「神仏習合」。たぶんそういうことですよね。

システムは相変わらずの親切設計で言うことなし。「つぎの選択肢までジャンプ」以外、ほとんど全ての機能は揃っているかと。『おれつま!』で採用された縦書きワイド画面も健在でして、これ最初は微妙に見えていたのですけれど、慣れてみると画面をフルで見られるのが意外と良い気がしてきました。あと嬉しいのは、アイキャッチごとに自動セーブを選択できるおまかせセーブ機能。ストーリーを振り返ったりCG・ルート回収をするには大変便利ですね。この感想書くときにも活用させてもらってます。

嬉しい誤算だったのは、音楽関係。やたらカッコイイメロディラインのOPテーマ『賽苑の花時』は、歌詞も作品と相性抜群です。これホントに良いんで、OHPからでも是非聴いて欲しいところ。個人的には今年プレイしたエロゲーの中でのナンバーワン候補となっています。BGMも雰囲気にマッチしたものが多くて大満足でした。クロックアップさんは音楽関係に毎度力を入れている印象なんですけど、本作は私のような素人目(耳?)にもはっきりとわかるくらい、相当完成度が高いです。

と、ベタ褒めしてきましたが、弱点が無いわけでもありません。

まず、展開がどのルートも似たり寄ったりになるのがちょっと残念。Hシーンで差別化はしているんですが、たどるすごろくのマス目の内容が一緒なので、周回プレイをしているといい加減飽きてきます。こればっかりはどうしようもない。

少々ご都合主義的過ぎるのも問題かもしれません。さっき「後出しじゃんけん」と言いましたが、なんか都合が悪くなると「実はルールがあって」みたいなツギハギでとりつくろってくる感じがする。最後までいけばある程度スッキリはするし、森羅が「問われなければ答えない」という大原則に基づいているのは解るんですが、この辺途中で見せ方を工夫できていたら、もっと面白くなったのになぁと思うんですね。『ライアーゲーム』で、後からどんどんルールが追加されたら萎えるじゃないですか。それと同じで、先にカッチリした全体像を提示しておいて、その枠の中で試行錯誤があれば、ミステリ的な面白さも加わっていただろうな、と。

また、幾つかの伏線や謎が放置されています。たとえば祠の文字は誰がどういう経緯で刻んだのかとか、なぜあんなメッセージになったのかとか。ウォルトの存在も放置気味でしたし……。物語の整合性を厳密に見ると、憧子ルートだけ呪盤の規則と原則がぐらついていたりと穴も多かったです。

エンディングも何というか、ガツンとくる話にはなっていない。正直、ちょっといい話的に小さくまとまって終わるのが残念。この辺は、無理に妙な感動路線に行ってコケるより遥かにマシだし、また日常への回帰というのはこのくらい抑制の効いた内容のほうが相応しいという気もするんですが、呪盤内部で起こったことに対する驚きや深刻さまで一緒に薄れていってしまっている感じがしてしまう。それまでのできごととのバランスを考えると、もう少し余韻があっても良かったかなと思います。

キャラクター的なことを言えば、もうちょっと人間関係や感情の変化があるともっと良かったでしょうか。たとえば、最初は一樹を嫌っているけど呪盤内の活躍を見て好きになるとか……。最初からほぼ全員好感度MAXなので、恋愛ものとして見るとどのルートも起伏に乏しく、物足りなさを感じました。

と、以上がおおまかな全体のまとめになりますが、本作には「深読み」できる部分もあるので、最後にちょこっとだけそんな話をしてみます。

まあ何と言っても呪盤というゲームは深読みしがいのある要素ですよ。たとえば、後半明らかになるこのゲームのシステムはまさに搾取と呼ぶに相応しい構造で、封建制と資本主義がどうたらこうたらとかも言えちゃうかもしれない。ただ個人的に興味深いのは、呪盤という虚構の世界の持つ意味のほうです。たぶん、作品自体としてもそっちのほうに比重がありますし。

一樹たちは、呪盤の世界を都合の良いときだけ仮想現実だと思いこもうとするんですね。かと思えば、最初強制されていたことを、いつの間にか自分が選択した結果であるかのように受け容れたりする。つまり彼らは、呪盤という嘘の世界と現実との区別を不自然なくらい曖昧に受け取っています。これ単なるご都合主義とか説明不足と言っちゃったらおしまいなんですが、たぶんそう言うわけでもなかろうと。もっと私たちにとって当たり前の原理で成り立っている。

この時一樹たちの中に働いているのは、「他の人が信じているから」というロジックです。自らの現実を他人に所属させようとしているとでも言いますか。一般化すれば、「みんなやってるから仕方ないよね」みたいな感じ。一樹が呪盤について疑問を感じるたび、乙女や雪の「まあいいじゃない」的な発言によってすんなり納得させられるのは、ただのご都合主義である以上に、一樹の(あるいは呪盤というゲームの参加者の)行動の選択が、常に自分ではなくて他人に帰属させられているということの、わかりやすい表現なわけです。

実際、パーティーのメンバーはリーダーの判断に、リーダーはメンバーの意向にそれぞれの行動原理を依存しあっています。その行き着く先が、「カードの指示に強制的に従わされる」という、誰か別の人間の意向や目的に、自分の行為のすべてが操られるという状態ですよね。

そして、あるイベントの後に一樹が「サイコロを振らない」と決めた瞬間から、つまり行動の拠り所を他人から自分へと戻し始めた瞬間から、呪盤の世界は緩やかに崩壊を始めます。この物語はだから、自分の行為の一切が他人のために選択されるような世界を抜けだし、自分を取り戻す物語として読める。もちろん、呪盤の世界というのが現実の私たちの世界を皮肉ったものだということは言うまでもないことでしょう。つまり現実の私たちは、何一つ自分で考えて動いてなんていない。この呪盤みたいな世界で動き回っているにすぎないんだぞ、と。そう考えると、ラストシーンの意味もちょっと違って見えてくるでしょう。

もう一つ。呪盤というのは、自分たちだけのルールを普遍であると想定する世界の象徴です。そこでは、ルールに従わない他者は排除されなければならない。しかし、そのように自分たちのルールを普遍化する世界における排除というのは追放ではなく抹殺であり、そんな世界の行き着く先は、自己崩壊、ないしは破滅でしかありえない。そういうある種のメッセージというか洞察みたいなものが、この作品には含まれている。実際にそういう意図で作られたかどうかはともかくとして、そういう風に読むことができるというだけなら、作品内部の構造から十分妥当的にいいうると思います。

『プリーズ・レ○プミー』の時も思ったのですが、このラインの作品はパロディとか皮肉の切れ味が良い。それは、現実を普段見ているのとは違う角度から切り取って、別の側面をデフォルメして見せるのが上手いということです。普段は隠れている当たり前のことを、当たり前ではない形で提示して浮き彫りにし、奇妙な状態なのにニヤリと笑わせる力がある。不思議なことに、一見「そりゃないわ」という部分ほど、じっくり考えればアリな気がしてきます。

手を叩いてげらげら笑いながら眺めていた一樹たちの姿というのが実はユーザーの姿でもあるという、そこが最大の皮肉であり、暗示的な部分になっている。そんなことが見えていなかった多くの人の盲信を同時にわらっているわけです。表面的なエロパロの向こうに、デフォルメされた現実の自分たちの姿を見つけ出すことができる。

だから何というか、もちろんストレートに書かれていることではないし、いやいやそりゃ読みすぎでしょーと言われたらそれまでなのですが、この作品がきりとってデフォルメしている部分に踏み込めば、いましているような話が出てきても全然おかしくない。別にそんな解釈しなくても楽しめるとはいえ、読んでみても面白いと思うんですけど、どんなもんでしょう。私としてはエロパロだけじゃなくて、こういうちょっと角度の違う視点からもお薦めしてみたいところではあります。逆に、これじゃ浅すぎるというならもっと掘り下げた話を聞いてみたくもあります。

と、まあことほど左様にエロゲーとして普通に楽しむには申し分ないし、深読みして勝手に楽しみたい人にとっても満足できる奥行きがあって、いろんな方向から楽しめる良質な作品です。特にどの要素も(音楽・システム・演出・キャラ・シナリオ・グラフィック・エロ)手抜きせず丁寧に頑張っているのが個人的に好印象。エンタメ作品かくあるべし。細かい不満はあるものの、感想書くところまでほぼ一息で走り切れたのは久々のこと。とても満足でした。ありがたやー。

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