asteryukariさんの「木洩れ陽のノスタルジーカ -Raggio di sole nostalgico-」の感想

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ヒューマノイドを題材として扱った温かく、心に染み入る作品。読後はしばらく放心状態になってしまった。刺さるだろうなとは思っていたがこれほどとは...出逢ってくれてありがとう。
ヒューマノイドと人間が共存する世界で、主人公達と旧世代のヒューマノイドが出会い、互いに成長していく。あらすじを見た時点で自分の中で傑作に成り得る可能性を感じた。そしてプレイしてみた感想としては…素晴らしかった。自分が求めていた温かさなんかは勿論、それ以上に作品としてよくできていて、まあ√によってはいまいちに感じるものもなかったわけでもないのだが、それを差し引いても感動が冷めることはなかった。

こんなにも楽しめたのはお話が非常に私好みに仕上がっていたからだろう、スーっと染み込んできた。もともと人工知能、人工生命体等を題材にした作品が好きな私だ、絶対に合うだろうなと確信していたのだが、ここまでハマってくれると流石ににやけてしまう。

ヒューマノイドだけでなく、Qちゃんや秋狐といった魅力的なコンピュータAIが登場するのも嬉しい。地味な存在ではあったが、いつも主人公達の生活をサポートしてくれる、当たり前にして非常に重要な存在であったことを忘れてはならない。個々にサポートするだけでなく、時には協力するのも良い。その後、お礼を言い合う姿なんかはとても微笑ましかった。個人的に秋狐ちゃんのビジュアルが気に入っていたのもあり、ついつい彼らの動向を目で追ってしまう自分がいた。うちにも来てほしいでありんす。

そんな風にして世界観を存分に堪能できるエピソードが詰まっていたのが共通√であり、そのボリュームもかなりのものであった。個別√の1.5個分といったところだろうか、非常に充実していた。こんなにも共通√に比重を置いていたのはやはり世界観を読み手に馴染ませるためだろう。現に私はこの作品にどっぷり浸かってしまった。

また、近未来の様子を描く一方で、過去の映画タイトルを例に挙げてみたり、過去の技術の話もちらほら出てくる。これが最後の最後に効いてくるのだ。読み進めている時はへーくらいの感覚だったのに、まさかあんなにも心を揺さぶられることになるとは…。

共通√で特に良いエピソードは高松さんのお話だ。さらっと入れてきたが胸に響いた。だってあんな言い方しておいて、あんな反応が返ってくるなんて…。FDV-801cの優しさに泣き、それを聞いて泣く高松を見て再度涙を流した。あれだけで個別√のシナリオが描けそう。

そしてそこからお話が派生していく。あまりにも共通√が心地よかったので、どうなることやらと少々不安の方が大きかったのだが、それは杞憂に終わった。良い物語を見せてくれるじゃないか…!

以下個別√ごとの感想になります。

◆朗√
仲良しの義妹ということで、もう初めの時点で既に勝利条件は揃っていたように感じる。そんな状態でありながら、それなりに読後感の良い物語を用意してくれたことには感謝だ。朗の性格上、てっきり愛に塗れたエロエロなストーリーが描かれていると思っていた。

兄妹という枠に止まらず、家族として、ユニークなお母さんも交え素敵な締め方をしてくれたのが嬉しい。しねまの「みなさんとの関連記憶を『仲間で家族』に変更します」という台詞がたまらなく好きだ。

◆カヤ√
共通√でも見られた仲の良い幼なじみ。そんな関係からの「ほんと、こんなことになるなら、告白なんてしなきゃ良かった…」。辛い、辛すぎる。主人公早く応えてやれよと、そう叫びたくなった。まあ、このカヤという女の子は後先考えずに行動に移すことが多いし、その後の落ち込み具合も凄まじい、言ってしまえば面倒な女の子だった。

しねまが倒れた時も私のせいだ、と自分を責め、それが清士郎をイラつかせていた。あそこでキレてくれたのは彼女にとっては辛いが、私としては嬉しかった。別に彼女の事が嫌いなわけではないのだが、あまりにもね…。

結局そこまで凝らずにあっさりと終わったのだが、まあ幸せそうにする彼女を拝むことができたので及第点かなと。

◆一姫√
冷静で鋭い意見を放つ彼女、こんな娘とどんな恋愛ストーリーを描いていくのかなと思っていたが…いきなり来たな。急にポエム刻み始めたと思ったらエッチし始めてポカーンとしてしまった。でもこれは勇気を踏み出した一歩に過ぎなくて、そう後に分かるとそこまで嫌悪感は抱かなかった。あと、「眼鏡、邪魔かな?」と彼女が言った時に出てきた選択肢、お前が一番邪魔なんだよ!

付き合い始めてからの彼女のデレっぷりは凄まじい。声の愛らしさも相俟って実に可愛らしかった。えっちにも積極的だし、その反応も…えっちだ…。

そんな生活とは打って変わって後半は話が一気に展開していく。棟方との一戦なんかは完全に燃えゲーと化していた。でも嫌いになれないんだよなぁ、だって清士郎がとってもかっこいいから。皆の盛り上げ係であった彼がここぞいう場面で男を見せる、やはりこういう流れは熱くて、戦闘BGMもかっこいいしで、なんだかんだ楽しんでしまった。

そして最後のしねまと棟方の会話がとてもとても良い。
「――この星空に、星はいったい、幾つあるんだろうな」
彼女の答えは、人間の脳と無意識の裏に隠された遥かなる迷路の果てにあるものはずの、簡単にして高度なものだった。これを聞けて彼も本望だろう、穏やかな最期だった。

◆フロゥ√
仲間内で唯一のメトセラである彼女は、自身が人間ではないという認識を常にもっていた。それが結構心にくる。周作と揉めるシーンなんかはそれが顕著で、彼の意見を否定しないことに加えて、彼の心配までするのがどこまでも健気で健気で…。

そんな彼女がどのように愛を知っていくのか…ヒロインの中で一番女の子らしかったのではないだろうか笑。主人公の事を意識するようになったエピソードはとても乙女チックなものであったし、付き合い始めてからのくっつきっぷりといったら…。

この√は彼女の√であって、メトセラの√であり、後半はメトセラについて色濃く描かれていた。アゲートとセレスの会話は中々印象的で、回想からも台詞からもアゲートの想いの強さを感じた。対立しながらもフロゥと同じかそれ以上に人を愛する、とても人間らしい女の子だったのだと。彼女の気持ちを考えると中々切ない。そして同時に美しかったなと思う。

そしてフロゥとしねまの会話だ、もう涙が止まらないよ。

「本当に人間のように進化した…そんな子孫を持てて、わたしはそのことをとても「誇り」に思ってます」
「人間のように生きて、人間のように暮らして、人間と恋に落ちる…とても素敵なことだと思います」
「フロゥさん、あなたはわたしにとっての未来です。祖先であるわたしが、メセトラにしてあげられることがあるのはとても嬉しいこと—どうか、その役目をしねまに果たさせて下さい」

このシーンを見て泣かない人などいるのだろうか、しねまの優しさに包まれて、心が満たされた。

エピローグでしねまの記憶が戻った時は首を傾げそうになったが、あれでよかったんだと今は思う。胸を鷲掴みにするシーンがあんなにも感動的に映るのはこの作品ぐらいだろう。

◆ラストエピソード
話としては短いのだが、最後に相応しい素晴らしい締めだった。なぜあれほどまでに過去の文化、歴史に触れるような会話が多かったのか。その意味がここにきてようやくわかる。つまるところ、この作品が最も主張したかったのはこれなのだろうなと思う。過去や遺産にのみ取り憑かれると、欲望ばかり加速して人は理性を失う。しかし未来を拓く為には、振り返る過去、積み重ねが必要なのだと、それをしねまを通じて伝えたかったのだ。


こんなにも素敵な追憶の夢を見させてもらって、今は幸福感でいっぱいだ。エロゲーマーとしても、人としても積み重ねを大事にしていかなければならないなと、そんなことを思わせてくれる。温かくて胸の奥にズシンと響く素晴らしい作品だった。

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