OYOYOさんの「プリーズ・レ○プ・ミー!」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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情交にかかわる男女関係と暴力をテーマとした諧謔の作品として考えてみた。……それはともかく、これだけは突っ込んでおかなくてはいけない。「良識あるおれとしては、せめて他の人間がレイプしている場面を見て我慢しようとしているわけだ」とかのたまってるけど良識あるなら通報しよう。レイプは犯罪です。
主人公・穂坂一平はレンタルビデオ屋で働く大学生。レイプもののAVを見るのが大好きな彼は、「ぜひとも生のレイプ現場を見てみたい!」と夜な夜な公園を徘徊する生活を送っていた。そんなある日、一平は夜の公園で謎の少女サリーと出逢う。彼女はなんと、「犯されたいと望む女」が分かるのだという。一平はサリーに唆されるままに、ヒロインたちに襲いかかるのだった。

序盤からツッコミどころ満載なのだが、本作の(良くも悪くも)面白い部分は、レイプ行為が男女相互の欲求の結果として成立しているというところにある。

作中で描かれているのは《被害者なきレイプ》であり、行われているのは最早単なる恋愛に近い、ある種の合意に基づく性行為だ。そして誰もが思うだろう。「これ、どこがレイプなん?」と。少なくとも「激しく、乱暴に、いやがる相手を力ずくで犯す」という一平自身のレイプ定義に従うならば、一平の行為は強姦ではあるまい。いわば、プレイの一貫としてのレイプ。かつて騒動を引き起こした『レイプレイ』というゲームがあったが、そのタイトルは本作にこそふさわしいのではないかとさえ思う。

タイトルに反してやってることは和姦、内容は軽いバカなノリで、いささか頭の悪い滑稽話を延々と見せられているような気分になるが、それは表面的な話。明るいギャグの裏に、(意図的かそうでないかは別として)現代社会に対する痛烈な皮肉と問題意識が潜む韜晦の作品だ。

良識ある世の女権論者は「女性にレイプ願望がある」というような言説こそが、最も女性を侮辱し凌辱しているのだと言い、思いやりあるカウンセラーはレイプと虐待を結びつけて黄色い救急車の出動を要請するだろう。そのような立場の人々からすれば(そんな人たちはそもそもこのゲームをやらないだろうということはおいといて)、「強姦こそが実は正当な性行為だ」と声高に主張する『プリーズ・レ○プ・ミー!』という本作のタイトルと設定は、喧嘩を売っているとしか思えないような、いわば思想的レイプ(暴力)だと言える。

実際、本作の表現や描写は(仮想敵が都条例なのか何なのかは良くわからないが)ところどころ非常に挑戦的だった。最もはっきりとあらわれるのがバッドエンド。一平が逮捕された後、サリーが「…強姦は親告罪だ。訴え出る者がいなければ、あいつはいずれ釈放されるぞ」と呟くシーンである。ここは、あくまでも自由恋愛の一貫であったはずの行為に対して社会(第三者)が外側から価値を押しつけてくるということに対する、強烈な皮肉になっている。

しかし、本作はここから更にねじれている。というのも、作中で虐げられているのは常に、主人公である一平だからだ。一平は、ヒロインが「望んでいるから」レイプするだけでなく、そもそもサリーの「許可」がなければレイプできない。本作で性行為に至る最終的な決定権を握っているのは、常に女性である。肉体的結合を許すのも拒むのも、一平はその権利を剥奪されている。

言い換えれば一平は、サリーによってヒロインたちの願望を叶える為にいいように操られているだけの道具となってしまっている。本作中、一番自由を侵害され、権利を奪われたのは、「レイプを見るのが好き」だったのが実践するハメになり、しかも自宅に監視役が常駐して強制的にレイプに駆り出されるに至った一平だろう。

たとえば、悠真に正体がバレたときのシーン。ここで一平は「…ごめん…千鳥…今だけでいいから…おれ、普通におまえのこと抱いていいか?」と、「普通に抱く」許可を貰うのである。私はこれを見て、さすがに哀れに感じた。一平はヒロインの欲求(レイプ)を実現する意思無き肉体にすぎず、自身の欲求を自由に表現することは許されていないのだ!

……と真面目ぶって書いてみたが、要はパッケージとしてはヒロインを性暴力の対象として扱うようにみせかけながら、その実内容はヒロインを(ある意味)とても大切に扱っていてむしろ主人公のほうが酷い目に遭っているというねじれた作品。顔を真っ赤にして怒鳴り込んでくるPTAでもいればおちょくって楽しめるのかもしれないが、純粋にゲームとして楽しむのに、あまり必要とは思われない仕掛けであることは確かだ。ゲームとしては、ピンポイントなギャグの切れ味こそが生命線か。

また、構造がいかに斬新でも、いささか強引でお世辞にも良くできたとは言い難い展開と、的を絞り切れていないエロシーンによって、エロゲとしての完成度を欠いているきらいがある。この手の刺激に慣れきったユーザーにとってはさして目新しい要素も無く、肝心の「抜けるか抜けないか」については、大部分をハイレベルな絵と音声とに依存した以上のものではない。

しかし、レイプを単なる肉体的暴力性からではなく、精神的な(つまり性交における結合の最終決定権の所在の)問題として焦点化したのは何となく新しいような気がするし、とりあえず既存の男女関係に対して「レイプとは何ぞや」と問いかけることには成功しているように思う。

妥当性はさておきあるテーマについて何か新鮮な掘り下げ方をしている雰囲気が漂うエロゲというのが時々あって(『Imitation Lover』や『Dear My Friend』などが分かりやすいか)、本作はそういうタイプの中でもとりわけ奇矯なものであったと言える。……そのことを興味深いと考えるか、「誰得?」と捉えるかは好み次第だろうが。

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