ぱぴぷ~ぺんさんの「アステリズム -Astraythem-」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

長文感想が非常に長い文章になってしまいましたが、レビューらしいレビューは最初の1割程度です。残りは、このゲームで用いられた時間移動についての「設定」と各時空の考察・感想と疑問点について書きました。このゲームのシナリオは超傑作と呼べるものと信じていますが、時間移動についての設定が理解できていないと正しい評価は難しいと思います。その問題を少しでも解決して、1人でも多くの人にこのゲームのシナリオの本当の素晴らしさを再認識していただくためにこの長文を書きました。レビューが見たい方は最初の部分だけ、このゲームが好きだけど謎が残っている…といった方は最後まで、目を通していただけると嬉しいです。
※「通常のレビュー」と「時空考察と感想」の2つのパートがあります。
※いわゆる、ESの長文感想に書くような内容は、このレビューの最初の数%だけ、「通常のレビュー」の部分です。
※大部分を占める残りの部分、[時空考察と感想]は、このゲームのシナリオを完全に味わうために必要であろう、時間移動・分岐・融合といった設定の説明と、各時空での出来事の詳細と感想、プレーしていて疑問に思いがちな点についての解説などについて(あくまで私の個人的な理解が)書かれています。

<たとえば…>
最初の「通常のレビュー」には、たとえば…
「第3章で主人公が自らの命と引き換えに博士を助けたことの最大の意味(意義・効果…)は?」
「震災で生き残った博士は入院中に何を考えたのか?」
「このゲームが『あの晴れわたる空より高く』に与えたと思われる大きな影響は?」(勝手な個人的な思い込みに過ぎませんが…汗)
そんな質問への答も書かれています。
(ちなみに…最初の質問の答えは当然「名月を助けられるようになった」ですね)

そしてその後の超長文の「時空考察と感想」には、「通常のレビュー」に書いたようなことに加えて…
「タイムマシンの完成時期はいつ?」
「黄色のバンダナを巻いたのはどの時空の主人公?」
「第2章の冒頭で謎の老人(=博士)が九十九に語った言葉『もっとも、君の”若さゆえの過ち”を私がこころよく思っていないのも確かだがね』の『若さゆえの過ち』って何のこと?」
「このゲームの決めゼリフの1つ『私(俺)の答えは、あの日からもう決まってる』を最初に言ったのは名月?白雲?」
といった疑問点に対する考察も書かれています。
(ちなみに…この最後の疑問の答えは…名月か白雲かと問われれば「白雲」…と個人的には確信しています)

<「はじめに」の前に:「タイムトラベル」と「タイムリープ」>
・最初に、個人的に非常に気になっている些細なことを書きます。
厳密にはこの作品で前提とされる時間移動は「タイムトラベル」と呼ぶべきものですが、結構な割合でそれを「タイムリープ」と表現している方がいらっしゃいます。しかしそれは、うるさいことを言えば誤りです。
・「タイムリープ(時間跳躍)」という言葉は、50年以上前に筒井康隆が「時をかける少女」の中で使った言葉で、人の意志だけが時間移動して、移動先の自分に乗り移る現象のことです。身体は時間移動できず、また移動できる先は自分が存在している時空に限られ、移動した瞬間にそこにいる自分の身体に入り込み、その時代の自分と別の時代から来た自分の両方の記憶を持つことになります。これによって、同じ時空に元々同じ個体だった2人の人間が同時に存在することを回避できます。
・このゲームはその「同時に存在」を許していることが特徴であり、シナリオの重要な部分を支えています。また一方では、このタイムリープという考え方が「融合」というユニークな前提のヒントになっていたのかも知れません。
(以前「同じ人間が2人存在するという時点で科学的におかしい」などというレビューを何箇所かで目にしたことがあり、大笑いしてしまいました。目くそ鼻くそと言いますか…。「時間移動してもタイムリープして同じ人間が1人だけ存在している状態が『科学的に正しい』」と言いたいのでしょうか……?)

===<通常のレビュー>===

<はじめに> 
・時間移動もののERGの傑作。非常に複雑だがよく練られた感動的なシナリオです。
・ですが、それが制作スタッフの意図通りに読まれることがなく、結果として正しく評価されていないことが残念でなりません。
(実際にはシナリオの中に、理解に必要なことはほとんど全て書かれているのですが…)

<あまりにも不遇な作品>
・ある意味非常に不遇な作品でした。最初の不運は、このゲームの開発が相当進んだところで東日本大震災が起こるという、ゲームの世界でしかありえないような偶然。この時の制作スタッフの心境を思うと心が激しく痛みます。(それでも勇気を振り絞ってこの作品を世に送り出してくれたことには深く感謝しています。本当に素晴らしいシナリオでした)
・そしてもう1つの不運は…いや、これは不運と言うべきではないかも知れません。制作側のミスだったわけですから。それは、プレーした人の中のこのゲームの「前提」を理解できている割合が非常に低かったということでした。
簡単に言えば「説明不足」だったのです。このシナリオを正しく理解する上で、時間移動についての「前提」を理解することは不可欠です。
しかしそれが大変に難しいのです。

・私はこのゲームを発売直後にプレーしました。かなりやりこんだのですが、理解できない点が非常に多く残りました。解説を書いてくれているレビューページを探しましたが、自分が疑問に思っていた点に答えてくれるレベルの記事は発見できませんでした。
それどころか、その過程で目にしたレビューの多くが、明らかにこの「前提」について理解できていませんでした。当時の疑問点をたくさん抱えた私が読んでも、何を勘違いしているのだろうと呆れてしまうものがいくつかありました。すでに記憶が曖昧ですが印象に残っている酷いレビューは例えば…
「第3章のテキストは酷い。何も回収されていない。ない方がマシ」…かなり回収されるし、胸を打つ会話も多いのですが…
「主人公バカすぎ。第3章で美々の名前聞いて何で反応しないの?第1章のこともう忘れたの?」…第3章の主人公は美々が生存する時空・時代を知りませんし、そもそも第1章の主人公とは別個体なんですが…涙
同じような意味ですが「登場人物が皆、重要で忘れるはずのないことを忘れたり、知り得ないことを覚えていたりする。ご都合主義のカタマリ」…普通にテキスト追っていれば、1周目プレーするだけでもそんなふうに考えるはずないと思うのですが…汗
そしてこのような方々に限って、理解できてもいないだろうに厳しいコメントを残していました。
ですが、そういう方々は責められません。厳しい言い方になりますがそれは制作スタッフの責任です。それが1人2人の感想ではなく、プレーをしたうちのかなり多くの方々がこういった感想を持っていました。明らかに「説明不足」だったのです。

・おそらく制作スタッフは、ゲーム発売後あちこちのレビューを見て衝撃を受けたのではないかと思います。
「ここまで理解してもらえないものだったのか…」と。もっと説明しなければダメだったのかと。
そしてその反省が…この後発売される「晴れたか」の、あの壮絶丁寧な「解説」につながった…と私は信じて疑いません。

・高校生の時、文化祭でオリジナル脚本の演劇を上演しましたが、絶対に受けると思った場面で沈黙ができてしまったり、予期せぬ場面で爆笑が入ったり涙を流すお客さんがいたりと、全く予想と違う反応に驚きました。そんな素人集団と比較するのは申し訳ない限りですが、長い期間制作にあたってきたスタッフは、客観的な視点で見ることが難しくなっているものでしょう。この作品でもそれは同じで、「これ位はさすがに説明しなくてもわかってくれるだろう」とスタッフが考えていた「前提」の多くの部分を、私たちプレーヤーはよく理解できていなかったのです。

・その結果として…理解できず疑問点が多く残ったまま⇒最後に解説があると期待⇒しかしエピローグでもほとんど解説がない+歴史を書き換えて元の日時に戻って名月と感動の再会を果たしたのに「おかえり」「ただいま」だけで終わり…というエンディングを迎えたとき、プレーした人の多くが感じた印象は「意味不明」「説明不足」「ご都合主義」「尻切れ(最後に主人公と名月のイチャラブシーンがないのは理解できない)」

・結論を言ってしまえば、このシナリオにはほとんど矛盾と言える矛盾はありません。テキストをよく読めばほぼ完全に、スタッフ側が準備した「前提」とそれを元に書き上げられた「シナリオ」を、スタッフが意図した通りに理解することができます。しかしそれは非常に難しいことです。相当読み込む必要があります。そこまでこのゲームを理解できた人は、おそらくこのゲームをプレーした人の1%にも満たないのではないかと想像します。理解できれば本当に素晴らしいシナリオであるだけに、本当に不遇な作品だったと言わざるを得ません。

<この長文を書こうと思ったきっかけ>
・今書いたように、発売直後にプレーした私は、疑問点だらけでしたがかなり感動しました。疑問点がクリアになったら、その評価は一層上がりそうだ…とは感じていましたが、自力ではなかなか解決できず、一方外部に助けを求めようにも解説してくれる記事もありませんでした。これ以上周回を重ねても理解できそうもなかったので、結局そのまま疑問点は放置してしまいました。

・時代は流れ…今年になって突然、タイムマシンから抜け出したかのように「アステリズム」は私のPCに帰還しました(未来への移動なので時空は分岐しませんでした笑)。少し時間に余裕ができたので、過去にプレーして気に入っていたゲームのレビューを書き始めようと思ったからです。
・正直この作品については、レビューを書きたいという気持ちは強かったのですが、書く自信はありませんでした。上に書いたように、よく理解できずにレビューなど書こうものなら、非常に恥ずかしい内容のものになってしまうことをいくつかの例を見て痛感していたからです。
・そこで、疑問点がある程度解決したらという条件付きで、レビューをESにUPしようと決め、メモを取りながら再度このゲームの周回を開始しました。
・文章に表し始めたことがよかったのか、疑問点が少しずつ解決し、そしてある時を境に、急に理解が加速し始めました。その契機となったのは「タイムマシンの完成時期」について、つまり「震災で妻を失った教授は1999年にタイムマシンを実質完成させていたが、絶対に失敗は許されない状況だったので慎重に検証を重ねているうちに2012年に至った」と理解できたことでした。(博士は一刻も早く妻の救出に向かいたいので、タイムマシンが完成したらとっとと過去に時間移動してしまうはず…という先入観にトラップされていました)
・この点を理解できたことで多くの疑問点がしっくりするようになったことは確かです。でもそれよりもっと重要な発見がありました。
「主人公以外の登場人物、特に博士の立場になって考えることで理解が進み、多くの疑問点が解決する」
ということに気づいたのです。普通は主人公の立場でしかストーリーを追わないのでそんなことはしないのですが、このゲームではそれが非常に重要でした。このゲームでは、同じ名前の(=元々は同一個体だったが時空分岐などで別の存在となった)登場人物でも、時空・時代によって記憶や状況が大きく異なるということが頻繁に起こります。それをよく認識せずシナリオを読んでも、よく理解できないことが多くなるのは当然のことでした。
・そうやって、主人公以外の登場人物、特に加々見教授=鏡一郎=博士の立場に立ってシナリオを読み直すという作業を進めていくと、このゲームのシナリオの深さ、細部までこだわり計算され尽くしたストーリーへの評価が急激に上がっていきました。特に博士と主人公の友情、そして博士という人間の凄さを理解できた時の感動は強烈でした。

・最終的には、すでに書いたように、実はこの作品の「前提」や、最初にプレーしたときに感じる疑問点は、テキストを読めばほとんど回収できることに気づきました。そして今は、制作スタッフが意図した前提をほぼ理解できて、さらにシナリオに込められた思いもほとんど受け止めることができたのではないかと感じています。
・ということで、ある程度このゲームを理解できたと感じた時点でレビューを書き始めようとしたのですが…。
「そもそも、ここまで理解されていないゲームのレビューなんか書いてもほとんど意味がないのでは?」という疑問が浮かんできました。

・ここまで理解するために私は、このゲームを何周くらいプレーしたのでしょうか………。きっとプレーヤーの私は、C4どころかX8時空くらいまで跳んでいたのではないでしょうか爆。私は正直言って頭がよくないと思うので、他の方が私と同じ熱意を持って臨めばおそらくM3時空くらいで理解できるのではないかと思ったりもしますが汗……それにしても「難解」であることに変わりはありません。

・多くのプレーヤーも以前の自分と(程度の差こそあれ)同じようにプレー後に多くの疑問点が残ったままだったと思います。ですが、もの好きで暇人な私のように、何とかこのゲームの面白さをもっと理解するために自力でなんとか疑問点を解決したいという人はほとんどいないでしょう。そしてそのために、このゲームの素晴らしさは正当に評価されていないのではないか…。そう考えた私は、もはやチュアブルはなくなってしまい、完全に時期を逸した感は否めませんが、この作品の本当の素晴らしさを1人でも多くの方が理解できるように、「前提」や「時空考察」に関する自分の理解を書き残しておこうと考えました。
それがこのレビューの大半を占める[時空考察と感想](「**********」以下の部分)です。
以前の私のように、このゲームは嫌いではないけれどよく理解できない点が…と思っている方々のうち何人かが、これを読んで疑問点を解決してくれたり、このゲームを再プレーしてくれたりするようなことがあればとても嬉しいです。

<「主人公と義姉・名月の物語」以外の要素:「主人公と博士の世代・時空を超えた友情の物語」>
・このゲームは表面的には、そして広報的にも「ヒロイン名月義姉さんとの3世代に渡る純愛の物語」ということになっています。
それにまさに正しく、そしてこの点に関しては、おそらく大半のプレーヤーが満喫することができたでしょう。各章でしっかり3世代の名月と結ばれてHシーンがありますし、最後はきれいなハッピーエンドを迎えるわけですから。
・ですがこのゲームにはもう1つの重要な要素があります。それは「主人公(桜塚白雲=凪九十九)と博士(加々見利通=凪鏡一郎)の世代・時空を超えた友情の物語」というものです。このもう1つの要素が、このゲームのシナリオを一層感動的にします。
しかし大半のプレーヤーはそのことには気づいていない、というか興味を持たなかったと想像します。それはある意味当然かも知れません。ERGですから。そんなものには興味がないという人も多いでしょう。そんなことを考えなくてもこのゲームをプレーした最低限の目的(全てのイベントを見てすべてのCGを回収すること)は果たされているので。
本当にもったいないというか、多くの人にこのシナリオの本当の素晴らしさ、制作側の苦労が伝わらなかったのが残念でなりません。
このシナリオは、コンシューマー展開しても通用するレベルに感動的なものだと思うのですが…

・「博士の立場」に立って考えることで気づいた博士という人間の凄さの例ですが…
※第3章で、再三の失敗の後ようやく震災から妻音々を救出することに成功した博士が、震災での右足負傷のために入院している時、何を考え、何をしたのかを想像してみた時、その壮大さに驚かされました。(そんなこと普通の人はしませんよね…)
彼は、「この後2012年に急死することがほぼ確定している名月を、この時空の、その時点ではまだ1歳くらいの(第1章第2章に登場する)まだ会ってもいない主人公・白雲に(タイムマシンを使って)助けさせる」ことに、自分の余生の全てを賭けようと決意したのです。
ただそのためだけに数十億円以上をかけて(まあ未来を知っているということを利用してある意味不正に稼いだ金ですが)その計画を実行に移します。
プライムビルの最上階を買い取り、たった3回だけ、それも他人を乗せて使用するためだけの目的でタイムマシンを製作。
名月が通う学校を調べ多額の寄付をしてわがままな要求でも何でも通るようにした上で、養子にした九厘を名月の同級生として入学させ、主人公が2012年から移動して来たら直ちに名月たちと同じクラスに編入できるように準備します。
これは博士がした準備のほんの一部に過ぎません。彼の「準備」と「覚悟」について考えると背筋がぞくぞくしてきます。何しろこの彼の計画が完了するのは、それからなんと16年後の2012年なのです。
(この点については後ほどのレビューの中で詳しくまとめました)
博士がここまでしようと考えたのは、震災の時亡くなった九十九への「恩」に報いるためでした…。それに気づいてから改めて第3章を読み返すと、新たな発見がたくさんありました。特に1996年に主人公が跳ぶ前の2人の会話には胸を打たれました。(その時の博士は主人公が1996年の震災前に出会った博士とは異なる個体でしたが、移動前の時空でほとんど同じ経験をしているはずなのでその点は無視してもよいでしょう)

<時間移動・時空についての理解の重要性>
このゲームのシナリオは時空についての非常に細かい考察の上に成り立っており、おそらくほとんど矛盾はありません。そして至るところに伏線が用意され、周回を重ねることでそれらはほとんど回収されていきます。この作業を繰り返すことでプレーヤーの時空についての理解が深まり、それまでは見逃していた、シナリオの深い部分が見えてきて感動が深まっていくように作られていると言えます。とても1周や2周ではこのシナリオに込めた制作スタッフの意図は拾いきれません。

※例えば第3章の震災直後、九十九(=お兄ちゃん)は倒壊した建物の下敷きとなって絶望的な状況の博士を、博士の指示もあって一旦は見捨て、救出した妻の安全を確保するためにその場を去ろうとします。しかしその直後に激しい目まいに襲われて死期が迫っていることを再認識した彼は、思い直して博士を救出することにします。この彼の勇敢な行動によって博士は救出されますが、身代わりに九十九は建物の下敷きとなりそこで最期を迎えます。
これは普通に読んでも感動的で、博士が九十九=白雲に大きな恩を感じる要因となったイベントでした。
※しかし実はこのイベントには、気づきにくいのですが、それよりももっと非常に大きな意味があったのです。それは、もしこの時彼が考えを変えずにその場を去って博士が死んでいたら、その場にいる名月は、2012年に急死することが確定してしまう! ということです。
妻が震災の危機を乗り越えて生き延びたことから、その後のこの時空の展開は第1章と全く同様に流れていきます。この後の加々見教授はタイムマシンを完成させることはできないでしょう。一方「博士」もこの世を去っている…つまりその時空にはもう、タイムマシンを作れる人がいないのです。2012年に名月が急死した主人公を時間移動させる手段がなく、そのままに終わってしまうのです。
「お兄ちゃん」はあの震災直後のギリギリの判断によって、自分の命と引き換えに、博士を助けただけではなく、同時に名月のことも助けていたのです。
※もちろん、1996年の「お兄ちゃん」が名月に残した青いバンダナのおかげで、主人公は1999年に戻った時に名月を救出した上で自分も助かることができました。それは普通に読めば理解できることです。しかし時間移動や時空についての理解が進んでくると、実はその背景に深いものが潜んでいたことに気づかされるのです。
※こういうことはこの場面に限らず、(特に第3章に非常に多いのですが)シナリオ中の随所に見られます。最初の頃は周回を重ねるたびに「これって、そういうことだったのか!」という発見が毎回ありました。当然ながらこのシナリオは、そういうことまで考え、計算して書かれているのでしょう。しかし多くの人はそれに気づくことができないままこのゲームを終えてしまっているのです。

<ストーリーの面白さ>
※このゲームの魅力をまとめてみました。
①3つの時代のヒロインとの恋物語
魅力的なヒロインと、現時点の年上の義姉としての関係に留まらず、時間移動によって同級生、年下の少女としても恋愛して結ばれる設定。
性格の書き分けもCVの演じ分けも見事です。そしてどの時代に行っても主人公と名月は愛し合い、結ばれます。時空・時間を超えた純愛物語でした。(深く考えずに、色々な時代に跳んでその時代その時代の若かった義姉さんとポカポカ仲良くなってHするゲーム…など期待してプレーすると大変な目に遭いますが汗)

②時間移動をテーマに掲げたことで生み出された複雑だが感動的なシナリオ
非常に複雑なストーリーであることに加えてゲームの進行が時系列ではないため難解な部分もありますが、最後は絡み合った糸がほぐれていくような展開でハッピーエンドを迎えます。主人公と義姉・名月、そして加々見教授(=凪鏡一郎)の3人の劇的で壮大な、時間・時空を超えた運命的な関係が強い感動を呼びます。
※…と、それが制作側の準備したストーリーでありシナリオだったわけですが、非常に残念なことに、時間移動についての「前提」が複雑で難解なことに加えて、十分に説明されていなかったために、十分に糸がほぐれなかった人がかなり多かったと想像します。また、主人公と名月の関係やゲーム中の様々な場面での心理などはプレーしたほとんどの人に伝わっていると思うのですが、加々見教授の心理やシナリオに書かれていない部分での行動や心理については、ほとんどプレーする人に伝わっていなかったと想像できるということは上にも書いた通りです。

※また時間移動については「過去に跳んだら時空は分岐する」という前提になっています。また「融合」という現象があることも前提の1つです。これらのことがこのことがストーリーを新鮮で面白いものにしています。
博士は「分岐」という現象を利用して、ある程度自分の身の回りに起こる未来のことを予想できました。1996年に送り込まれた主人公が会った時、博士はこう口にします。
「考えられることは……この先”私”はまた失敗した、ということか」
これによりこの博士は、今自分が計画している妻の救出作戦では失敗に終わることを認識し、別の新たな手段を考え始めます。そしてそれは、この時空で妻の救出に成功した最大の理由の1つでした。
「融合」という現象も、このゲームのストーリーを支える重要なポイントであるばかりではなく、ハッピーエンドを迎える上で不可欠なものでした。

③ヒロイン・サブヒロイン・サブキャラの魅力
これは次に詳しく書きますが、ある程度深く関わるキャラはマイナスイメージだけで終わることはありません(蒲生とかは除く…ということです)。これもゲームを終了した時の満足感の理由の1つでもあり、(これはチュアブルのゲームに共通して言えることでもあって)私が個人的にこのブランドが好きな理由の1つなのかな…と感じている理由の1つなのでしょうね、きっと。

<ヒロインとサブキャラ>
◎名月
・十数歳離れた義姉名月は、元祖にして史上最強のレベルの姉キャラであるすずねえ(「秋桜の空に」のヒロインの1人で姉キャラブームを作った1人と言われる。実際には隣に住む年上の幼馴染)には及びませんが、かなりのダダ甘姉さんで主人公のこともずっと幼少の頃から大好き。学園で眼鏡をかけた雰囲気と、自宅での裸眼でスキだらけの雰囲気とのギャップも素晴らしいです。知的で冷静で優しくて人当たりもよく、美人で巨乳。嫌いになる人がいたらおかしいようなキャラ。その一方、憧れの加々見教授と会う日のスーパーハイテンションな様子や、主人公と美々が保志・春日森とダブルデートする時のバカ姉っぷりなど、かわいさも満載。こういったゲームのヒロインとして完璧過ぎるくらい完璧です。
・1999年に時間移動した時の同級生としての名月は、「お兄ちゃん」と勘違いするという強烈な前提はありましたが、様々な試練をその明るさと「恋」に向けるひたむきさで乗り越えていく芯の強さが本当に魅力的です。「姉ゲー」に期待してこのゲームに臨んだ一部の人を除けば、3世代のうちこの時の名月が一番好きという人が多かったのではないかと推測します。私はかなりの「姉好き」ですが、それでもこのゲームでは、この名月にダントツで惹かれました。
・1996年震災前の年下の名月もまた非常に魅力的でした。自分はロリより年上の子に魅力を感じますし、恥ずかしながら実生活でもそうでした汗恥。でも同じ浜辺のシーンで、第1章の義姉・名月のビキニ姿と第3章の名月のスク水姿を比較すると………うむ、とりあえずノーコメントということにしておきましょう汗。(いずれにせよ第2章の同級生名月との浜辺のHシーンは別格ですけど滝汗)
…そ、それはさておき汗。純真無垢で、「恋」も「嫉妬」も知らずにこの時それを初めて経験する…そういう初々しさが随所で感じられてとてもよかったと思います。まぁそれはいわゆる「定番」というヤツであって、主人公と名月の恋物語の描写については、設定を決めシナリオを各段階で大きな苦労はなかったと思います。むしろニヤニヤしながら定番中の定番のテキストを書いていたのではないでしょうか笑。
それでいて、1999年や現代の名月につながる芯の強さや一途さも感じられて、本当にうまく書かれていたと思います。
残念なのは、何しろ5日間だけの恋物語。告白して結ばれるのは震災の前日ということで、日程的にも余裕がなかったことはよくわかりますが、それでも何とか頑張ってもう少し2人の時間、会話、Hシーンを入れて欲しかったですね…涙。

◎九厘
・頭脳明晰で性格も非常にクール。「イケメン」という言葉がぴったり。震災で記憶を失っていますが、まるで暗い過去の記憶に自分でベールをかぶせてしまったかのようです。(ヤンデレと評する人もいますが、この「ベール」のおかげもあって、病んではいないと思います。)
・性的な行為に対して非常にオープン、自由な考え方を持っています。(きっと養父である博士も頭を痛めていたことでしょう汗)
・サブヒロインなのでうっかりしがちですが、これまでプレーした数百本の汗ERGの中でもベスト10に入りそうな強烈に印象に残る、魅力的な「ツンデレ」キャラでした。それも真性(つまりツンデレという言葉が認知され始めた頃の本来の意味での「ツンデレ」)です。第2章の最後で「この世界に残る」を選択した後のほんのわずかな九厘ルートは、もう激萌えというほかありません。これぞツンデレ、王道のツンデレです。(そもそも「秋桜の空に」のはるぴーも「君望」のあゆも、サブヒロイン中のサブヒロインですから、九厘だってそこに並べて全く問題ないですよね?……でもまぁ冷静に考えてベスト10を作ったら結局丸戸さんが書いたキャラとかが並んでランク入りは困難かな…汗)
・第2章の冒頭、彼女にとって絶望的な時空であるC3で、親友であり自分にとってのアイドルだった名月を失った後の九厘が、同じく抜け殻のようになった主人公に声をかけて、自分についてくるよう促して博士の元に連れていく雨の中のシーンは迫力があります。九厘の立場になってあの場面を味わうと涙が出そうになります。(博士は2012年に名月が死ぬことを最初から知っているのに黙っていて、死んだ後になって悲しみに暮れる九厘に「実は自分は以前からそうなることは知っていたが、ある計画のために教えていなかった」と話し、タイムマシンやそれまでの経緯を話した後、「主人公を自分の元に連れてきて欲しい」と命じていたのでしょうから…涙)
・九厘ルートは賛否が分かれるかも知れませんがあくまでサブルートであって、このゲームの評価を大きく変えるようなものではないでしょう。それにしても彼女のキャラはとても魅力的でした。

◎美々
・けなげで純真な少女。やろうと思えばなんでもできる能力を持っていますが、何をやってもずっと続くものは少なく中途半端。自分に自信が持てないタイプですが、性格も良くてかわいく、振ってしまうのも気が引けるキャラです。
・加々見教授も気づいていましたが、最初から最後までずっと、白雲が自分の方ではなく遠い誰かを見ているように感じていて、そのうちそれが名月と気づきます。全てを捧げてもそれは変わらず、悲しみの中、白雲を諦める…というのがメインのストーリーです。七夕飾りの言葉には、白雲本人でない私もちょっとウルっとしました。
・九厘とは違ってきっとしばらくすると新しい恋を見つけてくれるのではないかと思いますが…
・チュアブルのゲームの定番中の定番、「料理ド下手少女」です。シュガスパのジジ、晴れたかの夏帆、他にもゾロゾロいますよね…。おそらくは、「料理ド下手属性」を持ったスタッフの方がいらっしゃるのかと思います笑。まぁボイスドラマではその後、母音々の指導を受けて急激に料理が上手くなっていましたが笑
・基本的にはゲーム進行上重要なキャラであって、それをついでに攻略できるようにした…という感じでしょうか。
第3章の最後のシーンは産声ですが彼女の声でした。また第1章では、主人公と美々が付き合い始めたおかげで主人公と名月は加々見教授のラボを訪れて、決して完成しないタイムマシンを見ることができました。この日の教授と名月、主人公の会話は伏線だらけでした。

※思えば…美々も九厘も博士にとっては「娘」なんですよね…爆死。白雲(九十九)ってヤツは…いやぁ~、罪深いですね。そして…博士は絶対に全てを知っています。いやはや…本当に博士は「生き仏」と呼ぶにふさわしいです…

・サブキャラも全員が魅力的で、印象に残る、時には重要な言葉を残してくれました。
何と言っても博士(=加々見教授=鏡一郎)です。彼を「サブキャラ」と呼ぶのはいかがなものか…と思わずにいられませんが。本当に凄まじいほど強烈で、そして感動的なキャラでした。詳しくは後ほど。(初期設定は日比谷教授…だったのかな?)
その他にも名月と九十九の両親、第1章の加々見教授、音々、保志、春日森、高島、希、友梨香、とまり木のマスター、沼淵兄弟…と数多くの素晴らしいサブキャラがこのゲームを盛り上げてくれます。

<ゲームの構成>「回想:このゲームを最初にプレーした自分が1周目に思ったこと」
※自分が発売直後に最初にプレーした時の状況を思い出しながら書いてみたものです。それはおそらくこのゲームをプレーした他の多くの方と似たようなものでしょう。そして改めてこれを書いてみると、このゲームの素晴らしい点と残念な点がはっきりしてきます。これがそのまま「レビュー」になると思います。

・とりあえずエントランス画面で「第1章」を選んで進みます。義姉の名月はフワフワベタベタの魅力的キャラ。しかも主人公の白雲を避ける理由はどうやら「義理とは言え弟だから」というありきたりのものではなく、昔名月の前に現れて恋仲になり、再会の約束をしてから長い間現れない「お兄ちゃん」という男のことを引きずっている模様。
途中分岐はありますがとりあえずメインルートっぽい選択肢を拾っていくと、いくつかの困難を乗り越えてようやく白雲は義姉・名月と結ばれます。
この後どう言う展開になるのかな…などと期待が膨らんでいくところで、事態は急展開します。
何とそのわずかその5日後に名月は急死してしまいます。13年前の橋の崩落事故で当時幼少だった白雲を助けた際の負傷による化学物質汚染が遠因でした。
時間移動ものらしいなどといった事前情報から、過去に遡って若かった頃のいろいろな年齢のお義姉ちゃんとHなことをしまくるゲームなのかな、などと軽い気持ちで臨むとさすがにショックを受けます。「え、マジ? マジかよ…?」

・エントランス画面に戻されると新たに「第2章」が選択できるようになっています。気持ちの整理はできておらずまだショックを引きずっていますがとりあえず選択してみると…
冒頭のシーン、いきなり主人公はタイムマシンを降りたという状況らしい。「え?何?何が起こったの?」
白雲もプレーしている私同様信じられない様子でしたが、タイムマシンのあるプライムビルの最上階から、ゲームの舞台である千関市を眺めると、そこには自分のいた時代と全く異なる景色が広がっていました。その場にいた見知らぬ初老の紳士は言います。「1999年へ、ようこそ」

※構成・演出が非常に巧みでした…。すぐに第2章をプレーするかどうか迷っていたのです。第1章の最後のショックを自分なりに整理してから臨みたかったというのが本音でした。でもちょっとだけ見てみようかな…そこにこの場面を見せられたら、どうしたって先が気になります。

・すぐに状況の説明がなされます。名月の死から1ヶ月近く経ったある日、悲しみで抜け殻のようになった白雲に見知らぬ長身の女性が声をかけ、見知らぬ老人、鏡一郎(=博士)の元に連れて行きます。彼はなぜか白雲の周りに起こった出来事を全て知っており、その上でタイムマシンを使って過去に向かって歴史を書き換えるという選択肢を白雲に与えたのでした。当然白雲はそれを希望して、橋の崩落事故から名月を守るべくタイムマシンに乗って13年前に旅立ち、この冒頭のシーンにつながるのでした。

・予期せぬ早い展開にクリックが止まらず読み進めると、なぜか跳んだ過去で準備が何もかも整っていて、翌日には(時間移動する前に通っていた)七帯学園の生徒として学校に通えることになります。そして朝、校門をくぐったばかりというところで、目の前に現れるのは○校生の名月。彼にとって故人だった名月に再会して感動する九十九②でしたが、もっと驚いたことに、名月は「お兄ちゃん」と勘違いして九十九②と抱きついてくるのです。この日は夜まで名月と一緒に過ごし、告白されます。帰宅後は博士と会話して今日あったことを伝え、アドバイスを受けます。この1日の密度が非常に濃くて、一気にゲームに引き込まれていきました。

※引き続いてこのあたりの構成も絶妙でした。第1章の終わりから第2章の初めの部分が本当に非常にうまく作られていました。第1章の名月の急死でショックを受けたすぐ後に、過去に跳んでいきなりその名月と会いますが、名月は「人違い」ではありましたが主人公にベタ惚れ。再会した初日にいきなり告白されます。その猛烈な攻勢に主人公がいつまで耐えられるかという明るい学園物の展開に一転します。第1章のショックを引きずる暇もないのです。疑問点も多く、先の展開や追加の解説に期待が高まります。またこの時代に移動してきた主人公の目的である「歴史書き換え」イベントが起こるはずのXデー(名月を橋の崩落事故から助ける台風の日のことです)もいつなのかわかりません。「気持ちの整理」などしているまもなく、どんどんゲームを進めずにはいられなくなります。さらにこの急展開を支えた重要な要素の1つが、名月のCV、小春原映花さん(=アグミオン)の名演だったことは間違いありません。暗く重い第1章の最後から、明るく若い第2章へと、演じ分けは素晴らしかったです。
※この時代の名月は「まっすぐで一途な、恋する乙女」でした。「お兄ちゃん」を3年間待ち続け、ようやく再会できたと思ったら彼は記憶を失っていました(あくまで名月視点での理解です。実際は「人違い」のようでした)。その時のショックはどれほどのものだったでしょう。でも彼女は気持ちを切り替えて前向きに、自分との記憶はなくても、そこにいる主人公を好きであり続けようと決心します。そして結局主人公と結ばれるのですが、その時主人公は名月に「すぐにこの場を去らなくてはならず、すぐにまた別れの時が来てしまう」「でもいつか必ず帰ってくるから待っていて欲しい」と告げ、彼女はまたショックを受けます。それでも彼女は迷わず、そうなっても自分は待ち続ける、そしてこの一緒にいられる時間を目一杯楽しみたいと答えます。非常に魅力的なキャラでした。(主人公は詳しいことは話せない状況ですが、実は別れてからまた再び会うまでに13年もの間彼女を待たせてしまうことが分かっています。主人公としても辛い状況でした)

・結局名月は思い出の中の「お兄ちゃん」ではなく、今目の前にいる主人公が好きだと告白され、ここでも紆余曲折ありましたが最後は主人公もそれを受け入れて2人は結ばれます。そして最後はギリギリの展開になりますが、「お兄ちゃん」の思い出の品であり名月が肌身離さず身につけていた青いバンダナのおかげで、崩落事故から名月を守ることに成功します。また選択肢がありますがここでもメインルートに入りそうな選択肢を選ぶと、タイムマシンで13年後に送られるシーンで第2章のエンディングを迎えます。

※この時点で、ゲームのシナリオ的には終わっているように思えました。後は元の時代に戻ってめでたしめでたし…となるとしか考えられません。ただ、第2章をプレーしていて、理解できないことや不思議なことがあまりに多く残っていました。そして最大の謎は、重要なCGが埋まっていないことでした笑。現代と1999年の名月のCGは埋まるのですが、それ以外にどうやら「1996年の名月」のCGがあるようです。パケ絵にもそれらしい女の子のCGはありましたし。しかし、どう考えてもこのままではその魅力的な(笑)少女とは会えそうな気がしません。現代に戻ったらハッピーエンドでおしまい…でしょうし。

・エントランス画面には新たに「第3章」が追加されています。何が飛び出てくるのか全くわからないまま選択すると、いきなり意味不明な、時間移動後の1999年の回想シーンが展開されます。それは第2章と似た設定ですが展開は微妙に異なるようです。その後も終始、謎を増やし続けながらのままストーリーは展開して主人公?は2012年に戻り、さらに1996年の震災前に移動することになります。謎は山のようにありますが、とりあえずこれで1996年の名月に会える展開になって納得します。

※もちろん納得できたことはそれだけではありません。どうやら第3章の博士は震災で妻を亡くした時空の加々見教授で、妻を救うためにタイムマシンを開発したこと、この章の主人公は第1章第2章の主人公ではないこと、第2章の博士は加々見教授らしいこと、さらに青いバンダナを巻いたことから、彼が名月にとっての「お兄ちゃん」だったのではないか…。第1章第2章での最大の謎は、名月の心を縛り付けていた「お兄ちゃん」が一体何者なのかということだったので、この情報は非常に重要でした。この推測を元に第1章第2章を思い返してみると確かに納得できることばかりです。ですが一方、新たな謎もたくさん生まれてきます。

・しかしそれ以上にゲームの進行上重大な、悲しいことが判明します。それは2012年に戻ったこの章の主人公を待っていた非常に悲しい運命でした。名月が助かるよう歴史を書き換えたのに、戻ってみれば名月の隣には元々この世界にいた白雲がいるため自分の居場所もなく、加えて1999年に名月を助ける際に自分が身代わりになって川に転落して化学物質に汚染して発症したため、あと数日しか生きられない状態になっていました。この状況で名月に会うこともできず話をすることもできずすぐに命が尽きてしまうとは何と残酷なことでしょう。博士との会話、偶然出会って共に不良と戦ったこの時代の白雲との会話…よく理解できないことだらけですがこの章の主人公の思いは強く伝わってきて感動させられました。そしてあと何日生きられるかわからないのですがその人生最後の時間をかけて、博士の妻救出作戦を手伝うために1996年の震災前に時間移動することを決意します。

※まだ展開は全く読めません。おそらくですが、博士はこの章の主人公の助けを借りて震災から妻を救出することができそうです。ですが、主人公はどうなってしまうのでしょう。すぐにも死にそうです。かえって「お兄ちゃん」の正体がわかったことで増えた謎もいくつかありました。いろいろなことが気になり、マウスクリックが止まらなくなっていきました。

・1996年の震災5日前に移動した主人公は街中で博士と出会います。しかし彼は主人公を2012年からここに送り出してくれた博士とは違うと口にします。一方主人公のことは、ここに至る経緯も含めてほとんど知っているようでした。主人公も私も???でした。宿泊中のホテルに戻って博士は状況を説明してくれましたが、わかったようなわからないような微妙なところ。疑問点はたくさん残っているものの、とりあえず博士は主人公のことを知っているようですし、送り出してくれた博士と同じように接しても問題なさそうです。
・予想通り主人公はすぐにこの時代の名月と出会います。予想通り名月は主人公を「お兄ちゃん」と呼びました。
・そして物語は、博士の出産日が間近な妻音々を救出するための作戦の進行、名月との恋物語、そして主人公の病気の進行という3つの要素がからまって、緊張感あふれる中、テンポ良く進みます。
・主人公と名月の関係は切れそうで切れず、あっという間に親しくなり、名月は主人公に強い好意を持つようになります。ですが…時間がありません。震災の日は目の前に迫っており、また主人公の命もいつ尽きるとも知れません。にもかかわらず震災の前々日に2人はもう2度と会わないと覚悟を決めて別れます。この後無事2人は結ばれるのでしょうか? さすがに不安になります。
※おそらくは展開上、震災が起こるまでに主人公が死んでしまうことはなく、博士の妻は助け出されるのではないか…という希望的観測は可能ですが、でも先の展開は全く読めません。唯一の希望は、エントランスから行ける「オマケ」に、この時代の名月のまだ見ていないCGがあることだけ…という状況でした笑。あのCGページは本当に心強い「支え」でした…爆。主人公の病気については、奇跡的に治って生き延びられればベストなのでしょうが、この時点ではその奇跡が起こる雰囲気は全く感じられません。やはりこのまま…なのでしょうか?

・震災前日、七夕まつりの初日に話は急展開します。いくつかの事件の後、主人公と名月は帆船の上で、花火が上がり始めたタイミングで再び出会います。これが「恋」というものだと初めて知った無垢な名月は主人公に告白し、悩んだ末、彼も名月が好きと答えます。
・その後2人は主人公が泊まるホテルの一室に向かい、そこで2人は結ばれます。そして震災の日もずっと一緒にいようと約束します。

・震災当日、博士の作戦が奏功して七夕まつりは途中で中断されます。しかし彼の妻は不運な事情も重なり震災発生直前に(津波の被害を受けることがわかっている)自宅で破水してしまい、自力では動けない状態になっていました。博士は彼女の救出に向かいます。主人公と名月も危険を覚悟で博士を手助けに彼の家に行くと、博士は妻を救い出しましたが倒壊した建物の下敷きになっていました。博士は自分を置いて妻と安全なところに避難するよう指示します。初めは博士の言う通りにしようとした主人公でしたがその時強い目まいを感じ、病気であとわずかな命と再認識した主人公は考え直します。「嘘の約束」で名月を強引にその場から去らせて博士の元に向かい救出に成功しますが、今度は自分が建物の下敷きになり、死を覚悟します。主人公が義姉・名月を思い出すシーンで暗転し、産声で第3章の幕が閉じます。
※最後はハラハラする展開でしたが、結局主人公はこのまま死んでしまったとしか考えられません。でももしかすると何かが起こるかも…そんな期待も捨てたくありませんでした。
※1つはっきり理解できたことは、第1章第2章の名月は、この名月が成長したものらしいということでした。最後の主人公の「嘘の約束」…青いバンダナを渡し、必ず取りに戻るから帆船の上で待っていてくれ…それはその場から名月を去らせるために主人公がとっさに考えた、絶対に果たせないとわかっていてついた嘘だったのです。これで名月がその後、「お兄ちゃん」に心とらわれ、青いバンダナを肌身離さず身につけている理由が完全に明らかになりました。

※進行が速くドキドキしながら読み進められましたが、「解決」しない疑問がたくさん残されたままでした。この震災の後どうなるのかも気になります。ということで「第4章」に期待したのですが…エントランス画面に新たに現れたのは「第4章」ではなく「エピローグ」でした。
もしやこれで終わり? ちょっと待って下さい…ストーリー的にも気になることがたくさんあるし…謎も全然解決していないんですけど…?
「オマケ」の「CG・イベント」のところを見ても、CGはほぼ埋まっています。
おそらくエピローグは第2章の続きでしょう。1999年に戻って歴史を書き換え、無事に名月を取り戻した主人公が2012年に帰還するところから物語が始まるはずです。しかし、それがエピローグということは、帰ってきただけで終わってしまうということなのでしょうか?
※不安がよぎりましたが、できることは「エピローグ」に入ることだけです。クリックすると…

※不安は的中しました。ほとんど新たな説明も加えられず、唯一「帰還した主人公と元々この時空にいた白雲が融合して互いの記憶を兼ね備えながら1つの個体になった」ということが新たに分かりました。確かにこれはハッピーエンドには不可欠なことで、「融合」という珍しい前提を上手く活かしたと感心しました。これで第3章の主人公の辛い状況が回避されました。
※しかしその他の説明はほとんどありません。さらに決定的にショックだったのは、最後、必死の思いで義姉・名月を取り戻すために時間移動して、ようやく念願かなって「姉さん」に再会できた主人公と名月の会話が「おかえり」「ただいま、姉さん」…それだけだったことでした。
エンディングのムービーの後に何か少し会話やイベントがあるのではないか…という期待も虚しくエントランス画面に戻されます。追加のシナリオや時間移動についての解説ページができていることに期待しましたがそれもなさそうです。様々な意味で「これで終わりなの!?」と思わずにいられませんでした。

※そこで私が考えたことは、「ストーリーをよく理解できていないところを何とかちゃんと理解したい」ということでした。そしてその翌日には2周目に向かっていました。(それはまるで、妻を助けるために震災前に戻った博士のようでした。そして彼が何度も救出作戦に失敗するように、私も何度も周回を重ねました…)
※しかし、多くの人はそれをしなかったと予想します。煮え切らない中途半端な気分だったとは思います…でも、もうそれを解決するためにもう1周…する気にはなれない人が多かったでしょう。その最大の理由は………

※ここで改めて、なぜこのような「素晴らしいシナリオが正しく理解されない」悲劇が起こってしまったのかを考えてみました。
理由はある意味、非常にシンプルです。一言で表せば「制作スタッフの勘違い」です。私たちはそんなに賢くはないのです。加々見教授や笑、長期間に渡って開発に取り組んでいたスタッフの方々にとっては当然と思えることが、ほとんど理解できていないのです。
まだ私のように「ストーリーの不明な点を理解したいので周回を重ねよう」と思う人間は次第にそれなりに理解が進んでいき、少しずつシナリオの素晴らしさに気づいていくでしょう。しかし残念ながらそれをした人はごく少数だったのではないかと想像します。
※その大きな原因は2つあると思います。
①(何度も書いているように)時間移動や時空などについてのこのゲームにおける「前提」が難しくて理解しづらい。
②1周で全てのイベントを見ることができ、全てのCGが回収できてしまうというゲームの設計。
※周回を重ねるほど、「前提」の理解が進み、シナリオの中に新たな発見があります。しかしERGの宿命で「CGコンプ=ゲームの終了」と考える人が大半でしょう。(シュガスパや好き好きは、1周すればほぼ理解できるシナリオにも関わらず、イベント・CGコンプのために多くのプレーヤーが周回を重ねたでしょう…何と言いますか、う~ん…涙)
※ということでこのレビューの最後の最後の方に、今さら手遅れでしょうが汗、「このゲーム、このように改善すればよかったのでは?」という全くもって余計なお世話的改善案をまとめてあります。

<CG・音楽など>
・当時は非常に綺麗なCGに感動したものでした。2012年のゲームとしては最高レベルだったのではないかと思います。立ち絵からして非常に美しく、確かにこの作品と比較すると「晴れたか」の立ち絵に不満を感じる人が多いこともうなずけます。立ち絵がイベントCGレベル。さすがはぎん太さんです。オマケ画面に、立ち絵をズラッと眺められる機能が欲しかったと切実に感じています。
・ボーカル曲は佳曲を揃えたなぁという印象です。単体で聞くと「君のために」が他を一歩リードする名曲だと思います。歌詞もよくゲームに合っています。一方ムービーのバックで流れると、OPの「どうか、もう少しだけ」とグランドEDの「永遠の宇宙の下で」の評価もぐっと上がります。EDムービーはただ回想シーンを繋いだだけではありますが、とにかく複雑でいろいろなことが起こるシナリオだけに胸を打たれます。
・BGM担当のManackさんは、前世紀からこの世界に入り浸っている私には強く印象に残っている方の1人です。名前を知った作品は”わたしのありか”でした。「わたしのありか」「Shooting Star」の2曲はERGボーカル曲の個人的all-timeランキングを作ってもかなり上位に入ってくることは間違いありません。その後”Snow Memoria”、”月陽炎”で大ファンになりました…懐かしい時代です汗。当時の彼の個人的な印象は、OdiakeSさんと並んで叙情的で琴線に触れる曲を数多く書かれる素晴らしいクリエーターさん…でした。このゲームは基本的に情に訴えるシーンが多くManackさんの得意分野?ということもあって、BGMは印象に残る美しいメロディーの曲が多かったです。
印象的な会話シーンで度々使われている”Alphecca(かんむり座α)”, 第1章最後の悲しみのシーンに流れる“Alfard(うみへび座α)” の2曲は本当に大好きです。名月と「出会う」シーン(1999年に戻って最初の校門をくぐった直後の「再会」シーンや、1996年の膝枕のシーンなど)で多く流れる“Sadalachbia(みずがめ座γ)”, “Adhara(おおいぬ座ε)”, ケンカシーンの“Sirius”も好きな曲です。ただ、ゲームの性格上仕方がないのですが、明るい曲が少ないのはちょっとだけ残念でしたが。
※(こうやって気に入った曲のタイトルを眺めると、よく知られた1等星の名前は少なく、あまり有名でない星の名前が並んでいるのが面白いですね。調べてみると、気に入った曲のタイトルに使われている星には、連星や二重星が多かったですが、これは偶然なのかそれとも狙っていたのか…ちょっと興味を持ちました。「連星」とか、このゲームのシナリオを考えるといかにもじゃないですか…)
※第3章で震災前日に主人公から告白を受け入れられた後、彼が泊まるホテルの一室に、そんなつもりもなく(汗)一緒にやってきた無垢な○学生の名月は、話がそういう方面に進んだ時…「わたし、お兄ちゃんとなら……いいよ」と口にします。こ、これは…あのManackさんのあの名曲に挿入されている「語り」のセリフと同じでは?! などと反応してしまいました(ほ~かごのたいくそ~こに~♪)。初めは狙っているのかと思いましたけどさすがにそんなことないですよね汗笑。それによく考えたらあちらは「わたし、お兄ちゃん『だったら』……いいよ」でした。(あの曲はイロモノの印象が強すぎるので正しく評価されているとは思い難いですが、実はメロディーが本当にきれいで名曲と呼べるものと信じています…しかしまぁこのゲームとは何も関係ありませんね(汗)失礼いたしました)

<他の時空、自分が過去に移動した後の時空>
ゲームのシナリオは、この上ないハッピーエンドを迎えるようになっています。ただ、他の時空のことを考えるとかなり気分が滅入ってきます。ゲームを理解する上では、他の時空のことを考えることは重要になるでしょう。しかしそれは、ハッピーエンドを迎えた時空以外の多くの悲劇があってこそのものです。「悲惨な他の時空のこと」「自分が過去に移動した後のその時空のこと」などを考えた時に(まあ時間移動もののゲームの宿命、仕方のないことと言えるのでしょうが…)もやもや欝々とした気持ちが残ることは否定できません。
またこのことが、ゲームを終えた時にわずかに残る「完全には爽やかになれない気持ち」の最大の理由になっていると思います。
しかしそれを言ってはいけませんよね。時間移動ものなのですから。「他の時空のことは必要以上に考えない」それが基本です。

<タイトル>
広く語られ、知られているように、”ASTERISM”(星団:星座を超えた星のかたまり)と「彷徨える(さまよえる)彼ら」を表すのであろう造語”A-stray-them”をかけて、”アステリズム -Astraythem-”とした…と理解しています。”stray sheep”という言葉はよく使われますし、”Stray Cat”というロックグループも有名です。”them”に修飾させたり不定冠詞をつけてしまうのはどうかという気がしなくもありませんがそういうことを言うのは空気を読まない手合いでしょう笑。
個人的には「白雲=九十九」と「名月」と「加々見教授=鏡一郎」の3つの巨星の複雑な物語…と理解したいのですが、「星のゆりかご」で草壁さんは美々や九厘を交えた「三角関係」を恋の大三角形と称しているので、まぁそういうことなのかと納得しています。それがないと一歩踏み出すことができない主人公…という設定ですからね。
でもきれいなタイトルだと思います。説明的なタイトルにするとこのゲームの魅力が台無しになってしまいそうです…

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※ここから先は、このゲームの自分なりの理解に従った「解説」になります。

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[時空考察と感想]
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[時空考察と感想:目次]

※はじめに

1.このゲームにおける「時間移動」の前提
1.1 時間移動と分岐
1.2 タイムマシンの場所と基本的な動作
<タイムマシンの場所>
<タイムマシンの基本動作と完成する条件>
<タイムマシンの完成時期>
<1996年に移動し妻の救出に失敗した鏡一郎が再度1996年に向かうのに使ったタイムマシンは?>
1.3 融合
<タイムマシンの設置位置と融合について>
1.4 時空の名称(ゲーム内のchartに示された時空の名称であるA1B1…やC1C2…の意味)
1.5 各時空の概要
<バンダナの色>
1.6 タイムマシンの完成時期についての考察

2.加々見利通教授=凪鏡一郎の性格・基本的な考え方・行動
2.1 性格
2.2 タイムマシンの製作・時間移動に対する責任感・倫理観
<1996年に時間移動した鏡一郎とその時空に元々いた加々見教授の接触>
2.3 融合されたC1(~C4)の鏡一郎について
2.4 2012年から過去に向かうにあたっての加々見教授の「準備」

3.時空考察と各時空の詳細・感想
3.1 C1
3.2 C2
<九十九の「1996年に向かって加々見教授の妻救出作戦を手伝う」という決断>
<浜辺で蒲生の一団に襲われた白雲と共に戦う九十九>
3.3 C2~C3時空あたりの疑問点
<A2B2C2時空の2012年から1996年に移動した九十九はなぜ融合しなかったのか>
<九十九が感染からすぐに発症して死に至ったことについて>
<1996年に時間移動した九十九は、B3時空では鏡一郎に会えなかったのになぜC3では会えたのか>
3.4 C3(1) 震災で加々見教授の妻と鏡一郎が生き残るまで
<手紙>
<歴史の書き換えと運命の「復元力」>
<このゲームの決めゼリフの1つ「答えは、あの日からもう決まってる」を最初に言ったのは名月?白雲?>
3.5 C3時空で震災から妻を救出することに成功し自分も生き残った鏡一郎が考えたこと・したこと
<1996年に音々を震災から救い出すという歴史の書き換えに成功し自らも生き残った鏡一郎が考えたこと>
<なぜ鏡一郎はその後の人生を九十九のために生きようとしたのか>
<1996年の震災を乗り越え「九十九の願いを叶える」ために残りの人生を捧げることにした鏡一郎がしたこと>
3.6 C3(2) 震災後
<C3時空での義姉・名月を失った白雲への鏡一郎の接触>
<美々エンドと鏡一郎>
3.7 C4(1) 1999年夏
<C4時空で2012年から移動してきた白雲⇒九十九②を鏡一郎が1999年に受け入れた時の言葉についての疑問>
<他時空の自分の経験の夢>
<白雲と九厘の関係>
3.8 C4(2) 2012年夏:エピローグ
<鏡一郎からすべてを聞いた名月>

4.まだ残っている疑問点のまとめ

5.老婆心的改良案

6.最後に

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※はじめに
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〇このゲーム、そして素晴らしいそのシナリオを理解する上では、時空の考察が正しくできていることが重要です。
ですが、それが非常に難しいのです。
そして、詳しい時空考察を書いているレビュー(具体的に言えば、発売当時に私が感じていたこのゲームのシナリオについての疑問に答えてくれるレベルの解説)は、少なくともすぐには発見できませんでした。
であれば…この素晴らしいゲームのためにも、それをできる限り理解して書き残しておかねばならない…そう思ってこれを書くことにしました。本当に感動的なこのゲーム、シナリオを制作されたスタッフの皆さんへの感謝の気持ちを込めて…。

※これはあくまでも私自身がこのシナリオを矛盾なく受け入れるための「理解」の1つでしかありません。
これが正解とは全く思っていませんし、そもそも正解はないのかも知れません。
このゲームで示される難しい「前提(仮定)」を自分なりに理解し、相当考えてみましたが、まだ様々な見落としがあるでしょう。
そもそも、ゲーム制作スタッフにも何か見落としがあった可能性も否定できません汗
それでも何とか自分なりに、これなら大きな矛盾はほとんどないだろうと納得できる形で理解がまとまりました。それを書いただけです。

※要するに「制作スタッフが意図したシナリオでは全く矛盾がなく(何も見落としなどしておらず)、またゲーム中に示されたchartも絶対的に正しく矛盾がない」ということを前提にして、それが成立するために各時空で何が起こっていたのかを想像したもの…ということです。

※その時空に元々存在しており時間移動をしていない加々見教授を「加々見教授」、別時空からタイムマシンで飛んできた加々見教授を「鏡一郎」と書くことにします。また、その時空に元々存在しており時間移動をしていない白雲を「白雲」、時間移動を経験した白雲を「九十九」と書いています。また第2章(C4時空)に登場する2012年から1999年に移動してきた白雲のみ「九十九②」と表しています。

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1.このゲームにおける「時間移動」の前提
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1.1 時間移動と分岐

〇未来への移動も過去への移動も瞬間的。身体状態などもそのまま。(ただし後述する「融合」の際どうなるのかは不明)
したがって、例えば第3章の九十九のように台風の日に川に転落して汚染されてしまうと、その後はどうなっても「川に転落して汚染した経験がある」限り、どんなに時間移動を繰り返してもその影響で、発症したら数日以内に病死することが確定する。
(この点についても「融合」が起こるとどうなるかは不明です)
〇過去に移動した際、その時点で時空の分岐が起こり、移動してきた人間は新たに分岐した時空に入る。移動後、元いた時空からは消える
〇「ある人間が未来からやってくることによって時空は分岐するが、一般的にはその個人が歴史を書き換えられる範囲は非常に限定的なので、ほとんどの歴史は書き換えられず、分岐以前と同様に進行する」ということが大原則。
(詳しくは3.4の<歴史の書き換えと運命の「復元力」>に書きました)
〇未来への時間移動では時空の分岐は起こらない。移動する人が一瞬で未来へ飛ぶ。移動する人間以外から見れば、移動する人間が突然消え、一定時間経過後に、その人間だけが全く年を取っていない移動前の状態で再び現れることになる。

1.2 タイムマシンの場所と完成時期、基本的な動作

<タイムマシンの場所>
〇鏡一郎が震災時に妻の救出に成功するまではずっと、タイムマシンは加々見家の離れの「ラボ」にある(第1章で白雲と名月が訪問した際、完成していなかったが中に入ったアレです。ほぼ間違いなくその時空のあのタイムマシンは完成しません)。加々見教授の妻が震災で亡くなった時空では、その後加々見教授は必ずタイムマシンを完成させます。
○1996年の震災前に時間移動したが妻の救出に失敗した鏡一郎が再度震災前に時間移動したタイムマシン…場所不明(加々見教授の家のタイムマシンをこっそり無断で借用した可能性もある)
※このタイムマシンについては2つの考え方があります。
①その時空の加々見教授が完成させるタイムマシンをこっそり気づかれないように使った
②鏡一郎が自ら別の場所にタイムマシンを作った
これはどちらも考えられると思います。ただ、鏡一郎は本編中で2度ほど「救出失敗後はタイムマシンを作って再び1996年に戻った」と語っていますので、それを素直に受け止めれば②が正しいということになります。その場合、鏡一郎がどこにタイムマシンを作ったのかは本編中に何も示されていません。
私も当初は②が正しいと考えていました。しかし今はどちらかと言えば①よりに考えています。詳しくはこの章の最後「1996年に移動し妻の救出に失敗した鏡一郎が再度1996年に向かうのに使ったタイムマシンは?」に書きます。

〇鏡一郎が妻の救出に成功した後、鏡一郎はただただ九十九のためだけにタイムマシンを作ることを決意するが、すでに加々見家には(決して完成されない)タイムマシンが鎮座していて作れないので、設置場所を新居であるプライムビルの最上階に変えた。

<タイムマシンの基本動作と完成する条件>
○震災前、加々見教授はタイムマシンの開発を行っており、一部の機能を備えた不完全な「試作品」を、震災の15日前くらいに完成させた。
○「一部の機能」とはタイムマシンの「出口」を作ることであり、他の時代からこのタイムマシンで送り出されたものを受け入れることは可能になった。
「出口」の設定には、安定して可動するこの装置によって「時空の記録」をする必要がある。最初に時空の記録を行ったのが、震災の約15日前の1996/7/23前後(ゲーム中に詳細には示されておらず、次に「時空の記録」を行った震災5日前のさらに「10日ほど前」とのみ記述がある)であり、2回目の記録を行ったのが震災5日前の1996/8/2だった。
○タイムマシンとして動作するためには当然ながら「入口」、すなわち過去ないし未来へと送り出す機能が必要。そしてその技術的なハードルは天才鬼才の加々見教授にとっても極めて高かった。
○1996/8/7、震災で妻とまもなく生まれてくるはずだった娘を失った加々見教授は、全てを捨てて自らのラボにこもり、タイムマシンの開発に没頭する。その結果、わずか3年以内、少なくとも1999年の夏前には加々見教授はタイムマシンを完成させる。
※タイムマシンの「出口」を震災の15日前に設置したという「偶然」が彼を強烈に後押ししてくれたのは間違いありません。タイムマシンを完成させることができれば、震災前に跳ぶことができ、妻を震災から救出できるはず…その強い思いがあって初めて、非常に高かった技術的なハードルを超えることができたのです。

○鏡一郎と九十九の活躍によって歴史が書き換えられ、加々見教授の妻と娘が存在している時空(このゲームの第1章の世界)では、加々見教授は職務に多忙な日々が続くことになるが、そのような「片手間」な取り組みではとてもタイムマシンは完成できなかったと推測される。タイムマシンを完成させた鏡一郎も同じように考えていた。
※第2章冒頭で鏡一郎が九十九に、タイムマシンで過去に移動して歴史を書き換えることが可能と説明をする場面で、鏡一郎のタイムマシンを見せられた九十九と鏡一郎の会話です。
===
九十九「加々見教授のタイムマシンと同じだ…」
鏡一郎「そう、これは彼のタイムマシンと同じコンセプトで作られている。類似する理論にもとづいて設計されたものだ」
九十九「どうしてあんたが教授のタイムマシンを知ってる?」
鏡一郎「どうして? そう言う君こそ、なぜ知っている?」
九十九「それは…」(教授が見せてくれたからだ)
九十九「加々見教授は『まだ試作段階だ』って言ってたけど」
鏡一郎「彼の物は、な」
(「自分の物はちがう」とじいさんは暗に言う。)
===
鏡一郎にとって加々見教授は元はと言えば同じ個体ですから、置かれている状況や性格・能力は完全に理解できていたでしょう。そして、妻が生存しているこの時空では、決してタイムマシンを完成させることできないだろうと断定しているのです。
○つまり「タイムマシンが完成させられるのは震災で妻を失った加々見教授だけ」ということです。

○時間移動する場合、入口も出口も同じくそのタイムマシンの場所である。タイムマシン自体が動くタイプもアニメなどでよく見かけるが、それとは異なり、タイムマシンは動かず、入口と出口の場所も同じ。日時だけが変化する。
※これは実は本編中に記載されておらず、単なる「推測」に過ぎません。しかもこの仮定に基づくと矛盾が生じるので、おそらく制作スタッフが意図したものとは違う可能性が高いです(ここに書いた個人的な「推測」の中で、制作スタッフ側の意図に反しそうなものはおそらくこれだけです)。
このあたりの詳細は次の「再度鏡一郎が1996年に向かったタイムマシン」についての考察に書きますが、あえて制作スタッフ側の意図に反しそうな「入口も出口も同じタイムマシン。時間的には移動するが空間的には移動しない」という推測をした理由は、第1章で美々と名月と白雲と一緒にとまり木で食事をしながら(震災前に「出口」だけは作れたものの)その時空では完成できそうもないタイムマシンについての加々見教授の発言の中にありました。
「私の理論では、マシンの内部にエネルギーを加え、時間の進みの異なる空間をつくりだしている」
「その”場”を記録して、制御できるようになれば……過去への移動も夢ではなくなるかもしれない」
「エネルギーを加えてその”場”を記録する部分までは、かなり前から作ってあるんだよ」
「ただね、それをコントロールして物体を送りこむところまでは至っていない。その部分の解を、私はまだ持っていないんだ」
これを私は、「マシンの内部」を時間の進みが異なる空間にして、そこに送り出し、あらかじめ設けておいた別の時間の「マシンの内部」に送りこむ、と理解しました。時間の進みが異なる空間は「マシンの内部」だけなので、必然的に「入口」と「出口」の場所は同じでなければならない…そう考えたのです。私の低レベルの頭脳では、この加々見教授の言葉から、同じタイムマシンの中で時間的に移動することは何となくイメージできたのですが、空間的な移動はイメージできませんでした。
※ですが(後で詳しく書きますが)おそらく制作スタッフは、「別の場所に作ったタイムマシンからも、このタイムマシンが作った『出口』に移動することができる」ということを前提としているように思えます。上の加々見教授の話にしても、そう理解できなくはありません。
また、後になって気づいたのですが、加々見教授が震災直前に2つの「出口」を作った後、震災と津波でタイムマシンは破壊されたことが分かっています。津波で流されたと考えた方が自然でしょう。そしてタイムマシンは作り直されました。おそらく場所は元の加々見教授の家の敷地内の同じ場所でしょうが、場所は厳密に同じかといえば同じではなく、そもそもマシンも全く新たに作り直されているわけです。場所も微妙に違うかも知れません。すると「入口と出口は空間的に移動せず同じ場所」という前提はかなり怪しくなってきます。う~ん、やはり制作スタッフの意図した通りなのでしょうか…。

※どちらであってもストーリー展開には大きな影響を与えないので、気にしなくてよいと言えばそれまでなのですが汗。
でもとりあえずこの後の記載では、タイムマシンの「入口」と「出口」は空間的には同じ場所…という前提で書き進めます。

○未来への移動の際の出口についてはおそらく、タイムマシンで未来に送り出す際に自動的に出口日時に「時空の記録を付ける」ように設定しておくことで容易に解決すると思われるので、実質的に好きな日時に跳べるはず。
(※ただし、未来に出口を設定して誰かが移動している最中にこのタイムマシンが壊れたらどうなるのか…とか考えると恐ろしいのであまり深く考えない方がよさそうですね怖。ただ、壊れても同じ場所に作り直せば大丈夫であることはわかっています。震災前に2つの出口を作った加々見教授でしたが、震災で壊れて作り直した…と第1章で語っていましたから)

<タイムマシンの完成時期>
〇タイムマシンは1999年8月以前には完成しており、加々見教授もこの時点でほぼ完成を「確信」していた。
〇しかし絶対に失敗はできないので、2012年になってもなお、加々見教授はマウス実験などを慎重に繰り返していた。
〇加々見教授は1999年に2012年の自分が人体実験の被験者として送り込んだ九十九と会い、九十九が歴史を書き換える行動をとった後、彼を2012年に帰還させる。その後の様子を観察した後、2012年に九十九が(身体的には)無事帰還して歴史が書き変わっていることを確認。これによってこのタイムマシンによって時間移動が可能であることが「確証」されたと判断し、自身もいよいよ、最大にして唯一の目的である「震災からの妻救出」のため、1996年に向かって時間移動することを決意する。

※これは賛否両論あるかも知れません。とりあえずここでは私としての結論を示すにとどめ、この後1.6で完成時期についての考察を詳しく書きます。

<1996年に移動し妻の救出に失敗した鏡一郎が再度1996年に向かうのに使ったタイムマシンは?>
※妻を震災から救うべく1996年に跳んだ鏡一郎は、救出に失敗した後、再度の救出作戦のためまた1996年に向かいます。
しかしこの時に使ったタイムマシンは、誰がどこに作ったものなのでしょう? その答えとして2つ想定できます。
①元々その時空にいた加々見教授が1999年に完成させるタイムマシン
②鏡一郎が記憶していたタイムマシンの製造方法を元に、加々見教授のラボ以外の場所に1996年から3年かけて製作したタイムマシン

※結論を先に言えば、私は(個人的な見解として)①だったと考えることにしました。その時空にいた加々見教授がタイムマシンを完成させるのを待ち、完成しているだろう時期に(おそらく1999年夏前のどこかで)加々見教授の隙を見て、気づかれないようにこっそり1人でタイムマシンを使わせてもらって1996年に再度向かった…という理解です。その理由ですが…

※①について。その時空に元々いた加々見教授も、妻の死を受けて1999年の夏前にはタイムマシンを完成させたと確信するに至ります。(そしておそらく、確証を得るために2012年までマウス実験などの検証を続けるでしょう)
一方鏡一郎は、「この時空でもほぼ間違いなく加々見教授がタイムマシンを1999年夏前に完成させることができる」と推測できています。さらに、その後10年以上も検証を続ける必要もなく、その時点でタイムマシンが実は理論通りに動作して時間移動が可能であることも、自らの経験からわかっています。ですから、完成したであろう時期に、加々見教授が不在の隙を見計らってラボを訪れ、こっそり1996年に向かう…ということは可能だったでしょう。
※この仮説の問題点は、「他の人がこのタイムマシンをこっそり使った」ということに加々見教授が気づかないとは考えづらいことです。時空を記録することによってタイムマシンの出口が設定されるような装置を他の人間が使って移動したりすれば、当然それも記録に残るのではないでしょうか。また第1章の加々見教授が(白雲と名月をラボに招いて、その時空では完成しそうにないタイムマシンを見せた時)「誰も未来からこの部屋にやってこないところを見ると、この方法ではうまく行かないのかもしれない」と語っていますが、タイムマシンの完成を確信した加々見教授は常に、「未来の時空の自分によって誰かがここに送り込まれてくるかもしれない」とは想定していたでしょう。それを考えれば、加々見教授に気づかれないようにタイムマシンを使うことは難しそうです。
※ただし、鏡一郎は加々見教授の性格やこのタイムマシンについて熟知しています。ですから、この疑問点はさまざまな「こじつけ(笑)」によって解消されうると考えています。例えば「過去への移動は記録に残らない」システムだった…とか、「このタイムマシンを使ってこっそり過去へ移動する際、その記録が残らないように設定した」とか、あるいは「(この頃の自分は)未来から誰かが送り込まれるかは気にしていたが、現時点で誰かがこっそりこれを使うとは想像もしていなかったので全く気づかないはず…と鏡一郎は考えた」とか。そもそもここにタイムマシンがあることは加々見教授だけしか知らないはずですし…。
(確かに時間移動を経験していない加々見教授には、同じ時空に過去から移動してきたもう1人の自分(=鏡一郎)が存在しているとは全く想像できていなかったでしょう。だから誰かが気づかないうちにこっそりこのタイムマシンを使うとは夢にも思っていなかったはずです。一方この時の鏡一郎は「もしかすると自分がタイムマシンの完成を確信した1999年にはすでに別の時空から跳んできた鏡一郎がいて、自分が知らないうちにタイムマシンを使って1996年に移動していたかも知れないな汗笑」などと思っていたかも知れません。誰でも自分はオリジナル、つまり時空が分岐する前の最初の自分だと思っていますが、一度でも時間移動をすると、自分は実はオリジナルの自分ではなく分岐の結果生まれた新たな時空に存在する、何番目かの自分に過ぎないのかも知れない…と思えるようになりますよね)

※次に②について。私は当初、これが正しいと考えていました。その最大の理由はおそらく…第3章で1996年に移動した鏡一郎が(自分とは別の時空から跳んできた)九十九と会った時に語った言葉だったと思います。
「私は、少なくともこれまで2回は過去へ跳躍している。何度かタイムトラベルを繰りかえして、やや記憶が混乱しているがね。最初にこの1996年にやってきた時……そして妻を救うのに失敗し、タイムマシンをもう一度つくって1996年へきた時……。おそらく、この2回は間違いない」
ここではっきり鏡一郎は「タイムマシンをもう一度つくった」と言っています。
ですがもしそうだとすると、解決が難しい矛盾が生じてしまいます。それは、「震災前に出口が作れない」ということです。
※すでに書いたように彼のタイムマシンの基本は「タイムマシンの中で時間のゆがみを作って、他の日時にタイムマシンの中のものを送り込む」というものです。従って別の場所に、オリジナルとは別のもう一台のタイムマシンを作っても、作り始める時点ですでに震災後なのですから、震災以前の日時には戻ることはできません。震災前の「出口」は、加々見教授の家のラボにあるタイムマシンでしか作られていないのです。震災前の日時に戻るにはそのタイムマシンを使うしかないのです。
※この矛盾は既に書いたように、タイムマシンの基本動作のルールとして「入口と出口は空間的に離れていてもよい。タイムマシンから送り出されたものが、時間移動した後に別のタイムマシンで作られた出口から出ることも可能」という前提にすれば解消されます。そしてそれが、制作スタッフの考えた「前提」だったのではないかと想像します。

※最終的に私は(あくまで個人的な見解に過ぎませんが)上に挙げた鏡一郎の言葉の中の「タイムマシンをもう一度作って」の主語が、「鏡一郎」ではなく「(その時空の)加々見教授」と理解することにして、①が正しいと理解することにしました。
※ということで、最終的に至ったのがこの節の最初に書いた結論です。しかし、どちらであってもストーリー展開にはそれほど大きく影響してこないので、どちらでもよいと言えばそれまでの話です汗。

1.3 融合

〇「融合の原理」…別の時空から元々は同じ個体だった存在が同じ日時にタイムトラベルすると、それら複数の個体が身体・記憶共に融合して1つになること。
C3時空で鏡一郎が発見し、そこから分岐した時空でも当然鏡一郎はそれを知っている。
C3時空で鏡一郎が九十九と会い、自分が彼と初めて会ったのがいつかを考えているうちに発想を得て、「彼のバンダナの色として私の記憶の中で少なくとも3種類が確認できる」と気づくことでほぼ確信に至った。1996年に現れた九十九と鏡一郎が出会うことで鏡一郎はこの原理に気づくことができたと言える。
〇博士はタイムマシンで1996年に戻るたびに、分岐した新しい時空を作るとともに「融合」によって記憶や経験が増えていく。

※記憶を「融合」させることは問題ないと思いますが、身体や性格を融合させるのはかなり???です。どちらの身体がベースになるのでしょう? 例えばC2の九十九のように、化学物質を体内に取り込んで余命いくばくもない個体と健全な個体が融合したら、その融合個体はいつまで生きられるのでしょう? 元々は同じ個体の若者と老人が融合したら? 個人的にこれは「融合」という設定の1つのキズだと考えています。
ただしこのゲームの制作スタッフもこの点を気にしていたこともよくわかります。エピローグで鏡一郎は、1999年から帰還した九十九と元々この時空にいた白雲が、想定通り無事融合したのを見て、融合した白雲に話します。
「同じ信念をもつ者同士の融合であれば、違和感はそんなに大きくないのではないか? 以前の私がそうであったようにな」
確かに、近い年齢で信念も同じであれば、問題は起こらないでしょう。ということで個人的には、この疑問には目をつぶることにします。このタイムマシンで移動したのは加々見教授=鏡一郎と白雲=九十九だけでしたし、両方ともに同じ「信念」を持った者同士の融合だったわけですから。
※「融合」という前提についてちょっぴりケチをつけてしまいました。しかしその一方「融合」によって別の時空を生きた個体の記憶を併せ備えることは、様々なことを可能にし、それがこのシナリオを非常に面白いものにしてくれていることも否定できません。その最たるものが「未来予知」です。C3時空の鏡一郎が妻の救出作戦にようやく成功できたのは、「記憶の融合」と「分岐の概念の理解」のおかげでした。この「融合」という想定がシナリオを非常に深く、面白いものにしているのは間違いありません。

<タイムマシンの設置位置と融合について>
○C3時空の白雲は義姉・名月が死んでしまった歴史を書き換えようと、2012年から1999年に時間移動する(第2章)。一方、C1時空でも白雲も同じ目的で2012年から1999年に移動する(第3章冒頭「相違点ダイジェスト」)。しかしこの2人の白雲が融合しなかったことは、第2章の九十九②を見れば明らか。融合しなかった理由としては、出口の日時が違った…可能性もあるが、自然な推測は「出口が空間的(=場所的)に異なっていれば融合は起きない」だろう。たとえ同じ時間に時間移動してきても、出口の場所が違えば、当然2人は別々の場所に2つの個体として出現するので、融合するには無理がある。
ということで、「同じ場所に同じ日時に送られてきた2つ以上の『元々は同一だった複数の個体』は融合し、融合前の複数人の記憶を全て持つ。一方別の場所にあるタイムマシンの出口に送られた『元々は同一だった複数の個体』は、同じ日時に送り込まれても融合しない」と理解することにする。

1.4 時空の名称(ゲーム内のchartに示された時空の名称であるA1B1…やC1C2…の意味)

※理解のスタートラインというか前提は、ゲーム内で示される「chart」です。ここではAやDの時空は分岐していないかのように書かれていますが、様々な考察によって、これらの時空も分岐していなければならないと推測されます。AやDの時空も分岐していたのですが、このゲームには直接関係していないので分岐するように書かれていないと理解します
※時空の名称は、アルファベット1文字と数字を組み合わせて表します。
※このゲームで時間移動するのは、「元々の個体」で考えると「加々見利通=凪鏡一郎」と「桜塚白雲=凪九十九」の2人(2つ?)です。
※ある時空である人間が過去に時間移動すると、その時空のその後の世界からその人間はいなくなります。過去に移動した人間は、移動の瞬間に元の時空から新たに分岐して作られた時空に入りこみます。この後、この時空には元々は同じ個体だった人間が2人別々に存在することになります。(この2人は分岐以前の記憶は共通して持っていることになります)

○「加々見利通=凪鏡一郎」が過去に移動することによる分岐
※「加々見利通=凪鏡一郎」が時間移動する時は必ず最も古い出口である震災15日前に跳びます。それによって分岐する時空は、アルファベットを変えて表します。
※A1A2…等にいた「加々見利通=凪鏡一郎」は融合してB1時空に入ります。ここで融合された鏡一郎はA1A2…の記憶を持っています。
同じようにB1B2…等にいた「加々見利通=凪鏡一郎」は融合してC1時空に入り、A1A2B1B2の記憶を持っています。
C1C2…等にいた「加々見利通=凪鏡一郎」は融合してD1時空に入ります。
※妻を震災から救うため1996年に移動した鏡一郎は、移動から15日後に震災を迎えます。そして鏡一郎の努力も空しく、救出は失敗します。救出に失敗した鏡一郎は1999年にその時空の加々見教授が妻を失った悲しみを力に変えてタイムマシンを完成させるまでじっと待ちます。完成すると加々見教授に気づかれないようにタイムマシンを使って1996年に再度移動することを繰り返します。失敗するたびにA1⇒B1⇒C1⇒D1⇒…と分岐によって時空を増やしていきます涙。
(鏡一郎は、震災時の妻の救出に成功すると自身はタイムマシンによる時間移動を行わないので、妻の救出に成功した記憶を持つ鏡一郎は融合しません。他の時空の鏡一郎は救出に失敗するたびに再度1996年に戻って融合を繰り返し、膨大な時空の経験を全て備えた人間になっているはずですが、その全ては妻の救出に失敗した記憶のみを持っていることになります…涙)
※タイムマシンによる時間移動が行われる前の元史がA1です。A1A2から加々見教授が1996年に向かうことによって分岐した時空がB1ですが、その時空の加々見教授は未来から移動してきた鏡一郎と全く接触しないので、その周囲に起こることはA1とほぼ全く同じと考えられます。従って、(非常に小さな点を除いて)B1はA1と同じ「タイムマシンによる時間移動が行われる前の元史」とほぼ同じ考えてよいわけです。これはC1、D1等も同様です。

◎「桜塚白雲=凪九十九」が過去に移動することによる分岐
「桜塚白雲=凪九十九」が過去に移動することにより分岐した時空は、アルファベットは変えずに後ろの数字を変えて表します。
白雲(九十九)の時間移動には3つのパターンがあります。
①2012⇒1999 名月が急死して抜け殻のようになった白雲が加々見教授のタイムマシンの話を聞いて、名月を救うために時間移動する。
②1999⇒2012 1999年に戻り、後に名月が急死する原因となった事故から彼女を守って歴史を書き換えた後、2012年に戻る。
③2012⇒1996 ②の直後に1999年に名月を助ける代わりに負った傷が原因で余命がほとんどない状況と知った九十九が、残されたわずかな時間を有意義に使うべく、加々見教授の妻救出作戦を助けるために1996年に向かう。
※①は元史(ないしそれとほぼ同じ)であるA1B1C1…で起こり、この移動によって分岐したA2B2C2…という時空に白雲(⇒九十九)は跳びます。
②はA2B2C2…時空で起こりますが、未来への時間移動なので分岐は起こらず同じ時空の未来である2012年に跳びます。
③はA2B2C2…時空で起こり、九十九はこの移動によって分岐したA3B3C3…に分岐した時空に九十九は跳びます。
※C3時空(第1章の世界)のみ、再度白雲は①の時間移動を行い、分岐したC4時空に跳びます。

1.5 各時空の概要(個人的な「推測」に基づく部分も多いです。特にA1A2A3B1B2B3はすべて推測)

※繰り返しになりますが、「推測」の前提はゲーム内で示される「chart」に誤りがないこと、そしてシナリオ・テキストにも矛盾がなく、制作スタッフに何ら見落としはないということです。Chartを見る限り、A系列(A1)とD系列(D1)の時空は分岐しておらず、B系列はB3まで、C系列はC4まで分岐しています。
A1とD1そしてB3については人物の顔が塗りつぶされており、「観測不可能」かつ「ゲーム本編に影響を与えない」ために詳細が省略されていると理解されます。
考察を重ねることで、A1の時空も(おそらくはD1も)分岐していたと考える方が自然であるという結論に至りました。そこでchartについて「実際はA1時空も過去への時間移動によって分岐が起きているが、観測不可能で本編に影響がないため省略されている」と理解することにしました。
※もう1つの前提は、「分岐しても大きな変化がなければ大半の出来事は影響を受けず、分岐前と同じ歴史を繰り返す」ということです。

※ゲームの章立てと時空の関係、時空の概要は次の通りです。
[章立て]
◎第1章 C3時空の2012年7月~8/12
◎第2章 C3時空の2012年9月とC4時空の1999/7/11~8/12
◎第3章 C1時空の2012年9月まで、C2時空の1999年夏と2012年夏、C3時空の1996/8/2~8/7
◎エピローグ C4時空の2012/8/7~8/12

[時空]
◎A1…タイムマシンによる時間移動が行われる前の「元史」
○1996/7/23, 8/2…加々見教授、タイムマシンは完全には完成していなかったものの「出口」を設置することはできた。その後すぐ海外出張に出発。(震災時は海外にいた)
○1996/8/7…震災発生。加々見教授の妻死亡。帰国後加々見教授は妻を震災から救出するため全てを捨ててタイムマシンの開発に没頭する。
○1999年夏…これまでに(遅くとも8月上旬までに)加々見教授、タイムマシンの試作機が完成したことを確信するも、その後(少なくとも2012年夏までは)、マウス実験を何度も繰り返すなど慎重に検証を重ねる。
○1999/8/1…桜塚家(名月とその両親一家)に白雲が養子として引き取られる。当時3~4歳。
○1999/8/10…台風で避難中の学園から当時幼少の白雲が抜け出す。名月は白雲を帯結橋で発見するがその時橋は崩落して2人は転落、白雲をかばった名月は大ケガをして、川の水に含まれている化学物質で汚染される。(白雲の最古の記憶の1つ)
○2012/8/12…名月は転落事故での汚染が原因でこの10日ほど前に突然発症しこの日に急死。白雲は悲しみで抜け殻のようになる。
○2012/9/4…保志からタイムマシンを開発している科学者(=加々見教授)の話を耳にした白雲、彼の元を訪れ、名月を助けたいと1999年への移動を希望する。加々見教授は人体実験の願ってもない機会と判断し、白雲を1999年に送り込む(⇒A2)。
○その後、適当な時期に加々見教授も(検証を切り上げて)1996年に向かう(⇒融合B1)。

◎A2…2012年から白雲(⇒九十九)が時間移動することにより1999/7/11頃(推測)にA2から分岐してできた時空
○1999/7/11頃…突然九十九が加々見教授宅のラボにあるタイムマシンから現れる。ここでA1と分岐する。(それ以前はA1と全く同じ)
○詳細は不明だが、とりあえずタイムマシンから隣室に出てきたところに加々見教授がいたと仮定する。加々見教授は非常に驚くが、九十九から事情を聞いて「2012年にはタイムマシンが予想通り動作している」こと、そして2012年の(未来の)自分は九十九を2012年に送り返すことを前提に送り込んできたと考えられることから、2012年の自分は1999年にもタイムマシンが予想通り動作することを確信していたと推測し、「この1999年の時点で実はタイムマシンは完成していた」と確信する。
○加々見教授は白雲を自宅に寝泊まりさせてサポートする。
○九十九は次第に名月と親しくなり最終的には名月の告白を受け入れて結ばれる。
○1999/8/10…台風の日、九十九は帯結橋の崩落の際に転落しそうな名月と白雲を助けるが、代わりに転落して負傷し汚染され、入院する。
○病院から抜け出した九十九は加々見教授の元に戻り、2012年へと移動する。

○加々見教授は九十九が帰還するまでずっと、彼が1999年に歴史を書き換えた影響を観察し続ける。これによって、過去への時間移動によって時空が分岐することもほぼ確信できた。(「時間移動」についての理論面での理解が進んだ)
○2012/9/5…2012年に戻った九十九がタイムマシンから出てくるとそこに加々見教授がいた(A1で2012年に白雲を1999年に送り出した教授ではなくA2で1999年に九十九を2012年に送り出した教授)。
※この時九十九は傷を隠すために額にバンダナを巻きます。このバンダナについてはB2C2のところに詳しく書きます。
○九十九が1999年に送り出した直後の状態で、身体も記憶も特に変化がないことを確認した加々見教授は、このタイムマシンによって過去への移動も未来への移動も可能であることが確証されたと判断した。白雲(⇒九十九)の人体実験は「加々見教授としては」大成功だった。
○九十九、この時空では名月が無事生きていることを確認し、目的を果たせたことを喜ぶ。一方この時空の現在に自分以外にもう1人「白雲」がいて義姉・名月と生活している様子を見てショックを受け、加々見教授の説明を聞いてこの時空には自分の居場所がないことを理解する。
○さらに九十九は1999年に名月たちを助けた際の転落・負傷による汚染が原因で、元史で名月の命を奪ったものと同じ病気を発症し、余命いくばくもないことを知る。
○残り少ない日々をせめて有効に使うため、九十九は加々見教授と共に1996年に向かい、彼のサポートをしたいと志願する。
○2012/9/7…加々見教授はこれを受け入れ、タイムマシンでの移動は1度に1人が原則なのでまず九十九を1996/8/2に送り(⇒A3)、その後自分は1996/7/23に移動する(⇒融合B1)

※名月は2012年に急死することなく、おそらくその後まもなくこの時空の白雲と結ばれることになるでしょう。(この時空には美々も九厘も登場しないので…笑。まぁ春日森とちょっと怪しい雰囲気になるかもしれませんが…)

◎A3…2012年からの九十九の時間移動により、1996/8/2にA2から分岐した時空
○九十九、震災前に時間移動する。しかし時空は上書きでなく分岐したため、この時空には過去から移動してくる加々見教授⇒鏡一郎はおらず、おそらく何もできないまま無念で孤独な最期を迎えたと推測される。(目に見えない強い絆のようなもので結ばれているので、名月には会えた可能性は高い)
○九十九はおそらく何もできなかったのでその後はA1同様。(名月は台風の日にケガをして2012年に急死する可能性が極めて高い。しかしこの時空の白雲がこの時空の加々見教授を見つけて再び1999年に戻ってA4時空に入る可能性もある。この展開はおそらく何回やっても進展せず、A1A2のセットをA3A4、A5A6…と無限に繰り返すような気も…涙怖)

◎B1C1…A1A2B1B2…の加々見教授または鏡一郎が1996年の震災前に時間移動したため分岐した時空(A1A2…⇒B1、B1B2…⇒C1)
※A1とほぼ同じ。唯一の大きな違いは、2012年から移動してきた加々見教授(⇒鏡一郎)が震災直前から1999年まで存在していること。
○1996/7/23…2012年から加々見教授(⇒鏡一郎)が移動、時空が分岐する(A1からの移動であればB1、B1からの移動であればC1に)。
○1996/8/7…鏡一郎、震災から妻を救出することに失敗。その後3年近く隠遁生活を送って加々見教授がタイムマシンを完成させるのを待つ。(自分も3年以内に完成できたので鏡一郎も完成できるはずと確信していた。しかも今回はすでに時間移動が可能とわかっているので、待つ必要はなく完成後直ちに移動して問題はない。一方この時空の加々見教授は確証を得るため検証を2012年まで続ける)
※なお、1.6のところにも書いたように、鏡一郎が別に独自にタイムマシンを製作して完成させ、そのタイムマシンで震災前に戻って妻の救出作戦に再度臨んだ可能性もあります。C1などでも同様ですが、これ以降はこのことは省略します。

○1999年夏前…鏡一郎、タイムマシン完成後速やかに、加々見教授に気づかれないようにタイムマシンに乗り込み、1996年の震災前に再度移動する。(B1なら⇒融合C1、C1なら⇒融合D1)
※鏡一郎は加々見教授と全く接触せず密かに行動するので、加々見教授のタイムマシン完成などに影響を与えません。よって「1996~99年に鏡一郎がこの時空に存在していた」という点以外は、A1と全く同じだったと考えられます。よってこの後はA1と全く同じ展開になります。

◎B2C2…C2は第3章前半
○1999年夏に、2012年から九十九が移動することによって分岐するが、それ以前に鏡一郎は、妻救出に再度挑むために1996年に向けて時間移動しており分岐後の時空には現れないので、A2とほぼ同じ展開になる。
○1999年に移動した九十九は台風の日に名月と白雲を橋の崩落事故から守ることに成功するが、代わりに自分が転落・負傷し川の化学物質で汚染される。
○その後2012年に帰還した九十九は、加々見教授の目の前で、負傷による額の傷を隠すため、額にバンダナをまく。

<バンダナの色>
※C3時空の九十九は青いバンダナを巻きました。この後この九十九が1996年に跳んだC3時空で出会う(加々見教授⇒)鏡一郎は、記憶をたどり、九十九が黄色や緑のバンダナを巻いていたこともあることを思い出します。これは鏡一郎が「融合」という現象があることを確信する上で重要なことでした。第3章、1996年に九十九と会った後の鏡一郎の考えたことですが…
「私がつくもを1996年に送りだしたとき、彼のバンダナが緑色だったのを覚えている。しかし、落ちついて記憶をたどってみると、黄色いバンダナをしている彼の姿も確認できる。」
融合したとき、どの時空から来た個体の記憶が強く残るか…といった細かい話にまで踏み込むと泥沼にはまりそうなので汗そこは軽く考えることにしますが、おそらくこの鏡一郎はB2時空の出身でしょう。C系列の時空にいるという時点でB系列から跳んできたことは明らかですし、1996年に九十九を送り込んだ記憶が強く残っているという時点で、B1ではなくB3と考えることが自然でしょう。そう考えると、B2時空の九十九は2012年に帰還後緑色のバンダナを巻き、A2時空の九十九は黄色いバンダナを巻いたと考えるのが自然でしょう。
※これはまた、A1時空がA2に分岐したことを示す大きな理由の1つでもあります。
※ただ…A2B2C2で九十九が持っていたバンダナの色が異なるものである必然性は全くありません。むしろ、なぜ同じでないのかが不思議です。言ってみれば「ご都合主義」なのかも知れません。でもまぁ深く追求しないことにします。あまりにも些細な問題なので。
(ちなみにバンダナの色が違うことについても「こじつけ」で納得することはいくらでも可能です。例えば…バンダナは白雲が時間移動する前に自分の意志で買ったものでしょう。A2で黄色のバンダナを額に巻きつけた九十九が1996年に向かった際、加々見教授の妻の救出には何も貢献できなかったと思いますが、その時代の名月と会った可能性はあります。というかそうなった可能性は高いでしょう。そこでもしかすると九十九は名月にその黄色のバンダナを渡したかも知れません。そうすると名月がその後ずっとその黄色のバンダナを大切にするという展開になり、その時空の白雲が黄色のバンダナを避けて緑色のバンダナを買うことは自然な流れです…)

○最終的には、2012年に九十九が1996/8/2に移動(B2⇒B3、C2⇒C3)。その後加々見教授が1996/7/23に移動(B2⇒融合C1、C2⇒融合D1)

◎B3…B2の九十九が2012より移動したため1996/8/2にB1=B2から分岐した時空(1996年にB1とB2は分岐していなかった)
○B1時空には、1996/8/2時点で、A1やA2から1996/7/23に送られて融合した鏡一郎が存在していたはずだが、九十九とこの鏡一郎は会えなかったので、結局はA3同様の結末を迎える。
○鏡一郎は震災でまたも妻を救出できず、B1同様の展開となって最終的には1999年にまた1996年に向けて時間移動したと推測できる(⇒融合C1)。しかしゲーム内のchartには何も書かれていないので、何かが起こって違う結果になった可能性は否定できない。
※実は最近になって、C3同様の展開になる可能性も否定できないような気がしてきました。詳しくは3.3で書きます。

◎C3…C2の九十九が2012年より移動したため1996/8/2にC1=C2から分岐した時空(それ以前、C2はまだC1から分岐していなかった)
((1996年夏)) 第3章後半
○1996/8/2に移動した九十九、街中で(B系列、おそらくB2時空から跳んできた)鏡一郎と会う。(B3との決定的な違い。まさに「運命の出会い」。融合された鏡一郎だったが、1996年に九十九に会うのはこれが初めてだったので、B3時空で九十九と会えなかったことは確実。(…とずっと思ってはいたのですが、最近そうでない可能性があることに気づきました。B3のところにも書きましたが、3.3でこのことについて取り上げます)
○鏡一郎、九十九が過去から移動してきたことにより、分岐前の時空では(=現時点で自分が考えている救出方法では)また妻の救出に失敗することを理解し、作戦の見直しを行う。(これが最大の成功の要因)
○鏡一郎、九十九の言葉からヒントを得て妻の救出作戦のための新しいアイデアを得る。(これも結果的に非常に有効だった)
○鏡一郎、九十九のことを考えるうちに「融合」の原理に気づく。(これはこのゲームのハッピーエンドに不可欠な知見だった)
○九十九、学園2年生の名月と偶然会い、好意を持たれる。葛藤しながらも最終的には告白を受け入れて結ばれる。
○九十九は鏡一郎のサポートを務め、作戦成功に大きく貢献する活躍をする。
○最終的に作戦の変更や九十九の働きによって鏡一郎は震災直後に妻を救出することに成功する。しかし自分が代わりに倒壊した建物の下敷きとなり、目的達成の満足感の中、死を覚悟する。そこに現れた九十九と名月に、妻を連れて安全な場所に移動するよう託す。
○初めは鏡一郎をその場に置き、彼の妻を連れて避難しようとした九十九だが、直後に激しいめまいが起こり、自分の命がまもなく尽きることを再認識して、急遽考えを変えて鏡一郎を救出することを決意する。普通の説得では名月がその場を離れず危険と判断した九十九はとっさに額の青いバンダナを外して名月に渡し、絶対生きて再会するからそれまでバンダナを持っているように、帆船の上で待つようにと(絶対に果たすことができないとわかっていながら)嘘の約束をする。名月は加々見教授の妻を連れて避難する。
○九十九は偶然その場にかけつけた(因縁のケンカ相手である)沼淵兄の協力も得て鏡一郎を助け出すが、身代わりに自分が建物の下敷きになる。病気で残された命が少ないと知る九十九は覚悟を決めて、鏡一郎を沼淵兄に託し早く避難するよう告げ、沼淵兄はそれに従う。九十九は、津波の到来が速かったのか病気の進行が速かったのかは不明だがいずれにしても…

((~1999年夏))
○救出された加々見教授の妻音々、無事美々を出産。
○その時空の加々見教授が帰国。壊れたタイムマシンの修復は行うが、タイムマシンはその後完成できなかった(と考えてほぼ間違いない)。
○鏡一郎、病院で入院生活を送りながら、余生を、九十九の願いを叶えること、具体的には(この時空では2012年に急死すると予想される)名月を救出するために生きることを決意して準備を始める。
○同時期、鏡一郎は震災で受傷して記憶喪失となり入院していた少女を養子に迎え、九厘と名付ける。
○プライムビル完成後はその最上階に隠れ住み、1999年夏までにそこにタイムマシンを完成させる。

((1999年8月~2012年)) 第1章(名月急死までの経緯はA1B1C1とほぼ同じ。ただし名月が1996年に九十九と出会ったこと、彼と恋に落ち、震災直後に九十九から青いバンダナを受け取り、再会の約束を交わしていることだけが相違点)
○1999/8/10 台風の日、橋の崩落事故で白雲をかばった名月、大ケガをして化学物質に汚染される
○2012年1月頃 白雲、自分が養子と知る。以降実姉ではなく義姉と知った名月への気持ちが次第に恋愛感情に変わり始める。
○その後白雲は名月に告白し、名月は1996年の九十九への思いに引きずられ一旦は断るが、最終的にはそれを受けいれて2人は結ばれる。
○2012/8/12 名月が急死。(2人が結ばれてからわずか5日後だった涙)
(ここから第2章)
○2012/9/6頃 悲しみで抜け殻のようになった白雲の前に九厘が現れ、鏡一郎のところに連れて行く。鏡一郎からタイムマシンの話を聞いた九十九は1999年への移動を希望し、時間移動する(⇒C4)。(この時空の白雲にとっては九厘も鏡一郎も初対面)

◎C4…C3の白雲(⇒九十九②)が2012年より移動したため1999/7/11にC3から分岐した時空。
((1999年7~8月))第2章
○分岐以前はC3と全く同じ。名月は1996年の九十九との約束を信じて青いバンダナを肌身離さず身に付け、毎日のように約束場所の帆船を訪れる日々を送っていた涙。
○1999/7/11 白雲が2012年から移動してくる(以降九十九②と書く)。すでに鏡一郎によって準備が万全に整えられており、翌日から七帯学園(2012年に白雲が通っていた学校)に通学する。九厘と名月もクラスメートだった。鏡一郎から、この世界では九十九②は自分の息子であり、震災の負傷により記憶喪失になったという設定の元で、タイムマシンについて誰にも口外せずに行動するよう指示される。
○九十九②を1996年の九十九と勘違いした名月は猛烈に九十九②にアタックをかける。九十九②は、
①名月が好きなのは自分ではなく1996年の九十九。(九十九②は、九十九が元は自分と同一個体であることを知らない)
②この時代に名月と親しくなると歴史が書き換わって2012年に戻った時にその影響が出るのではないかという心配。
③自分は台風の日の名月の転落事故を防いで歴史を書き換えたらこの時代から消えて2012年に戻るので、あまり親しくなると2012年まで10年以上もの間、名月に寂しい思いをさせることになる。
④自分が好きなのは2012年の義姉・名月であって、この時代の同級生・名月ではない。
などの理由から(…というか、無理やりその理由を盾にして)、必死に名月の攻撃を避けようとするが、結局(九厘との予期せぬ情事の影響や当時同級生だった高島の活躍により)名月の告白を受け入れ、2人は結ばれる。
○1999/8/10 台風の日、間一髪のところで名月を橋の崩落から救い、自分も危ないところだったが、名月が腕に巻いていた(1996年に九十九からもらった)青いバンダナのおかげで転落を免れる(青いバンダナの存在がA2B2C2時空との最大の相違点だった)。これによって遂に、2012年以降も九十九②と名月が共に生き続けられる時空となることが確定。
○その後九十九②は病院に入院するが、意識を取り戻した時、看病疲れから彼の病室で眠っていた名月に後ろ髪を引かれながら声をかけず、2012年に直ちに戻ることを決意して鏡一郎の元に帰る。
○鏡一郎は九十九②に、普通に2012年に戻るとそこには今は幼少の白雲が名月と一緒に生活(つまり九十九②がこの時代に跳ぶ前の位置に存在)しているはずなので、普通に戻っても居場所がなくなると伝える。さらに「それを解決するための唯一の方法として、この時空の白雲に全ての事情を話し、2012年に九十九②が帰還する数日前にタイムマシンに乗ってもらって、数日後の九十九②と同じ時間に移動させる。そうすれば(ほぼ間違いなく)九十九②と白雲は融合して双方の記憶を持ったまま1つの身体になり、結果的に九十九②が希望した通り、歴史を書き換えて名月と共に2012年以降も生きられることになる」と伝えられた九十九②は(おそらくよく理解できなかっただろうと推測されるが汗笑)それに合意する。

((2012年8月)) エピローグ
○2012/8/7 白雲、鏡一郎に呼び出され、タイムマシンの話、ここに至るまでの経緯、融合の原理などについて説明された上で、九十九②との融合のため、タイムマシンに乗って8/12に移動することを勧められる。白雲もそれに合意してタイムマシンに乗る。
○2012/8/7 名月、帆船の上で九厘に会い、鏡一郎のところに連れて行かれる。鏡一郎はタイムマシンの話、ここに至るまでの経緯、融合の原理などについて説明し、その事実を受けいれられるのであれば、九十九②と白雲が融合した人間との待ち合わせのために翌日帆船のところで待つよう伝える。
○2012/8/12 1999年から九十九②が帰還し、白雲と融合する。特に異常がないことを確認した鏡一郎は彼に、名月が「思い出の場所」で待っていることを告げて送り出す。帆船の上で2人は再会する。「おかえり」………
(※endingとしてきれい過ぎます…素晴らしいです)

1.6 タイムマシンの完成時期についての考察
※1.4に書いたように、タイムマシンは1999年の夏前には完成していました。これは私個人の推測でしかありませんが、制作スタッフのシナリオに矛盾がないとするならばこれ以外には考えられません。

※発売当時にこのゲームをプレーした時、次に示す白雲と加々見教授の会話を見て、1999年時点ではタイムマシンは完成していなかった…と
思い込んでしまったのです。その理由は2つありました。
①1999年に完成していたならその後10年以上も経過した2012年にまだマウス実験云々をしているはずがない
②加々見教授は一刻も早く妻を震災から救いたいはずだから、1999年に完成していたならすぐにも1996年に時間移動するはず。

※第3章で初めて白雲と会った加々見教授は、白雲から「タイムマシンは完成しているのか?」と質問されてこう答えています。
「あの機械はとっくにできあがっているはずだ。ただ、マウスで何度も実験しているが、きちんと動作しているのかまだ確証が得られていないところでね」
これが誤解の始まりでした。確かにこの言葉を聞くと、上に書いたような誤解をしてしまうのも無理はなかったと思います。
この後白雲は最初のタイムマシンによる時間移動の人体実験の被験者となり、1999年に移動します。この時点でタイムマシンは完成していました。ですが、先ほどの加々見教授の言葉から受ける印象からは「つい最近になってようやく完成した」としか思えませんでした。
※しかしそうなると1つ矛盾が生じます。この後、九十九は1999年からどうやって2012年に帰ってきたのか…ということです。まだ完成していないのに。(第3章ではこのあたりの様子がほとんど書かれておらず、ただ単に病院を抜け出してタイムマシンに乗るだけです。第3章の1999年には加々見教授は全く登場せず、ただ「博士の家で寝泊まりしつつ、姉さんを見守りつづけることにした」と書かれていただけです。情報が少なすぎるのです…涙)
当時、この点がよく理解できていませんでした。当時はいろいろ考えたあげく、1999年から2012年に九十九を送り出したのは加々見教授ではなく鏡一郎だった…と、全く見当違いの結論を出して納得していました。そのためにまた新たな矛盾が起こりましたが、1つずついろいろ無理にこじつけて納得していました。

※このレビューの冒頭にも書いたように、それから9年後の今年、このゲームのレビューを書きたくなった私は疑問点を解決するために何度かプレーを繰り返しました。元々出来の悪い頭ですが、レビューを書く準備を兼ねて疑問点やそれに対する考察を文章にして整理していくうちに、次第に疑問点がクリアになっていきました。そしてついに最大の謎だったタイムマシンの完成時期についても自分なりに理解することができました。つまり「タイムマシンは1999年には実質的に完成していた」「その後長い時間をかけて、絶対に失敗できない加々見教授が慎重に慎重に検証を行っているところに2012年になってたまたま白雲が現れて過去に跳ばしてくれと依頼した」ということでした。
盲点でした。変な先入観にトラップされていました。「加々見教授は一刻も早く妻を震災から救出したいだろうから、タイムマシンが完成したと確信できたら直ちに1996年の震災前に時間移動するはずだ」と思い込んでいたのです。でもそれは誤解でした。
1999年の夏前にほぼタイムマシンが加々見教授は完成しても、一刻も早く震災から妻を救出したい…とは思っていなかったのです。
それよりも重要なことは「失敗しないこと」だったのです。それに気づくきっかけとなったのは第3章で、1999年から帰還した九十九と、彼の帰還でタイムマシンによる時間移動が可能と確信して1996年に向かうことを決意した加々見教授の会話です。
===
「君にはつらい話かもしれないが、君によってこの機械でタイムトラベルができることは証明された。私はしばらくしたら震災前の世界へ跳ぶことにする。私の家族を……この世界では亡くなってしまった妻と、彼女が身ごもっていた我が子を救う!」
「けど、どうするつもりだ?俺が証明したように、あんたが過去に戻っても、そこには別の博士がいるんだろ?」
「そうだな。それは認識している」
「奥さんを助けるのはいいとして……その後、あんたはどうなる?」
「そこで今の私の目的は終了する。あとは、そこからまた別の人生が始まるだけだ」
(九十九の内心:「別の人生」だって? それってつまり、家族を救うことができればいいってことか? その先は望まないってのか? 「自分の人生をやりなおすつもりはない」と、平然と言ってのけるのか、この人は…!?)
===
時間移動によって分岐が起こるので1996年に遡って妻を助けても、その時空には別の…というか元々の加々見教授が存在していて、自分はそこに割り込むことはできず、その後の加々見家の幸せな様子を観察することしかできないと、加々見教授は覚悟していたのでしょう。たとえ妻と、まもなく生まれてくる娘を救えたとしても、彼女たちとの家族3人での生活は諦めていたのです。
だから急ぐ意味はなかったのです。それよりは、絶対に失敗しないことが重要だったのです。上の会話の直後に加々見教授は、人体実験の被験者となってくれた九十九に対する感謝の気持ちを伝える中で…
「礼には及ばん。君という証人がいるからこそ、私は過去に跳ぶことができる。それは、私にとっては非常に価値のあることだ。……失敗は、許されないからな」
「絶対に失敗は許されず、確実に震災前に移動するためであればどんなに長い時間をかけて検証しても構わない」という加々見教授の気持ちが確認できるとともに、1999年夏前にはタイムマシンが完成していたことをも主張する一言でした。もちろん1周目はそんなことに気づかずただ読み進めていました。というか、タイムマシンの完成時期を理解するまでそうでした。でも理解した後はこの場面に来ると思わずうなずいてしまいます。

※そしてまた、1999年に移動して歴史を書き換えた九十九を再度2012年に送り返した加々見教授も同様でした。2012年から九十九が移動してきた時点で、タイムマシンが理論通りに動作することはほとんど明らかだったでしょう。しかし加々見教授は2012年に九十九が帰還するまで13年間待つのです。これも以前は理解できないことの1つでした。しかし今は、それが加々見教授にとって自然な判断だったと理解できます。
※タイムマシンによる時間移動が確証されるのは、実際に時間移動した人間がタイムマシンから出てきて、身体と記憶に異常がないことを確認できた時です。タイムマシンから出てきたら死んでいたとか、非常に歳を取っていたとかその逆に非常に若返っていたとか…あるいは記憶を失っていたとかいう状態であれば、1996年に跳んでも無駄に終わる可能性が高くなります。加々見教授は絶対に失敗できなかったわけですから、何年待っても、九十九が無事帰還して、送り出した直前の状態が継続していることを確認したかったのです。
※そして最も重要なことは、「時間移動によって本当に歴史は書き変わる」ことの確認でした。過去への時間移動に伴い「分岐」という現象が発生する可能性が高いと考えていた加々見教授にとってそれはほぼ確実なことではあったでしょう。しかし九十九の帰還を13年待てば、この点についても確証を得ることができるでしょう。
※もちろん13年後とかではなく、3日後とか、せめて1年後くらいであればもっとよかったのでしょうが、でもそれは無理な話。命がけでタイムマシンに乗ってくれる人が現れたことに感謝しなければならない。そのためであれば13年位は平気で待とう…それが1999年の加々見教授の考えだったのでしょう。とにかく加々見教授はすごい人間でした。
「もしかしてこのオヤジ、とりあえず完成した時点から10年以上も検証を続けていたのか!」これで最大の疑問が解決しました。

※シナリオを加々見教授と鏡一郎の立場になって読むことが重要でした。頭の悪い自分にはそれができていませんでした。
それまでは「完成したと思ったら一刻も早く1996年に跳ぶはず」という先入観から抜けられませんでした。
思えばプレーしているときずっと白雲と九十九の立場でテキストを追っていました。それはまぁ誰でもそうでしょう。でもそれでは気づきにくいですよね…。(一度気づいてしまうと不思議なもので「あの会話を読んでもタイムマシンの完成は2012年と思い込んでいた自分」が信じられなくなります)
「あの機械はとっくにできあがっているはずだ」の「とっくに」という言葉について落ち着いて考えてみればすぐにわかることでした。
※その後もう一度通してプレーしてみましたが、かなりそれまでと違った印象を受けました。疑問点がほとんど解決していきました。
それに加えて、主人公だけでなく様々な視点から考えることによってシナリオの評価が格段に上がりました。
特にC3時空で、妻の救出に成功した後のことを鏡一郎の立場で考えてみたとき、数多くの発見があり強く胸を打たれました。
このシナリオは、こんなに深く感動的なものだったのだのかと初めて気がつきました。(詳しくは時空ごとの考察のC3のところに書きます)

※登場人物の立場に立ってテキストを読むことがこんなに重要、かつ難しい作品も珍しいでしょう。同じ作中キャラでも存在する時空が違えば、記憶も違うし、その後に歩む未来も異なってくるのです。それをよく理解してから読むと、様々な場面で新たな発見と感動がありました。
※ということで、自分としてはタイムマシンの完成時期について感じていた疑問はほぼ解決したと考えています。

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2.加々見利通教授=凪鏡一郎の性格・基本的な考え方・行動
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2.1 性格
〇元々の(震災で妻を失うまでの)加々見教授
・鏡一郎が妻を震災から守ることで書き換えた時空である第1章に書かれていることからその性格が伺える。
・頭脳明晰だがかなり変人、タイムマシンの研究開発が1つのライフワークであり、マッドサイエンティストっぽい要素も備えた科学者。その一方マスコミへの登場や(学術専門書ではない)一般向けの著作も多く、言ってみれば目立ちたがり…というか、大衆の目に触れることが嫌いではない。そのため、非常に多忙な日々を送っている。
・家族を溺愛し、かなりの親バカ。娘と親しくなった男性(主に白雲)を警戒し嫉妬してしまう一方、あまり過干渉もよくない、本人の判断に任せなければいけないという意識も強い。人間の好き嫌いが激しい。名月は言うまでもないが、おそらく白雲も気に入られていたはず。

〇妻を失いタイムマシンを完成させて妻を震災から救出するまでの加々見教授
・異常と言ってよいような「意志の人」「執念の人」というのがまず思い浮かぶ性格。
妻と、まもなく生まれてくるはずだった娘を震災から取り戻すため、タイムマシンの開発に残された人生の全てを賭ける。そのためには全てを、自分の命までも犠牲にする覚悟だった。おそらく大学を退職し、一切の仕事を断ってラボにこもりっきりだったと思われる。
(※何とかして最初のタイムマシンの出口、震災の15日前に戻りたい…その一心で研究を続けたのでしょう)
・タイムマシンでの時間移動の原理の推測により、もし震災から妻を救えてもその時空にはもう1人の加々見教授がいるので、自分は妻やすぐに産まれて来る娘と一緒に生活できないことをほぼ認識できていた。それでも何とか、妻と娘が無事存在する時空を作り、その中で余生を過ごすことができればよい…と覚悟はできていた。
・また、タイムマシン完成後、時間移動による妻の救出作戦を開始してからは、何度失敗してもそのたびに立ち上がり再度挑戦する。
(※失敗した時の胸が張り裂けそうな記憶を何度も何度も夢に見ますが、それでも諦めませんでした)
・その一方(これもまた異常と言えるレベルで)「冷静・沈着」でありまた「慎重」。
妻の救出は万が一にも失敗できないという思いから、1999年には自分では完成したと確信していたタイムマシンの検証のためじっくり10年以上の年月をかける。時間移動にあたっては、様々なことに関連して非常に周到な準備を進める。
(※それがどれほど用意周到なものであったかはC2時空の解説のところでまとめます)
・妻を救出するためであれば多少の反社会的な行動をしても止むを得ないと思っているが、基本的には「倫理観」「科学者としての責任感」は強いと思われる。(次の2.2にまとめます)
・人前に出ることはなくなり、第3者から見れば完全にマッドサイエンティストと見えるような風貌・性格・生活ぶり。
(※たとえば食生活について。とまり木のエビアボカドボウルのアドバイスからも伺えるように結構味覚も肥えていると思いますが、研究に没頭している時は食べる時間も惜しくなり、バランス栄養食品を食べているような性格でした。九厘とは実の親子のようですな…笑)

〇妻を救出した後、九十九の夢、希望を叶えるために残りの人生の全てを捧げた鏡一郎
・一言で表せば「生き神」であってかつ「生き仏」
元々震災から妻を救出するためであれば自分の命も捨てる覚悟だった彼は、実際妻の救出に成功した後、震災で倒壊した建物の下敷きになり、目的を達成した満足感と共に、静かに死を覚悟していた。しかしその場に現れた九十九が自分の命と引き換えに、彼の命を救ってくれた。
こうして与えられた「余生」を、死んだ九十九の願いを叶えるために捧げることを決意する。
・それは非常に強い意志と周到な準備が必要な、気の遠くなるような目的であったが、それは元々彼が持っていた性格によって克服される。
周囲の人間(九十九、名月、九厘)に対する愛情も非常に強く、表にはあまり出さないが様々な場面でそれが強く感じられる。妻を救出する以前と比較して情に脆くなっており、感極まって涙ぐむ場面もある。
・物静かで無表情、それでいて何でも知っており、九十九②の相談にも適切で鋭いアドバイスを送る。
分岐・融合によって未来を知っていることもまた、神のような印象を与える理由の1つ。
最後に九十九②を2012年に送り出す時の「では、ゆくがいい、つくも。もとの時代に帰り、見届けるがいい、君が変えた運命を」という言葉もすさまじい迫力で、まさに神の言葉と言うにふさわしい。

※完全にオマケ的なものになりますが、2012年に帰還した九十九に、自分はまもなく震災の直前に時間移動すると伝える時の加々見教授と九十九の会話です。タイムマシンの出口が最初に作れたのが偶然震災の15日ほど前で、そこがタイムマシンで移動できる最も古い日時であると説明した後…
===
教授「本当は、もっと以前へ移動できれば、震災に備える時間も多くとれるのだろうが。……今は、地震の起こる前に稼働させることができたことを、神に感謝している」
九十九「へぇ、意外だな。博士が神様を信じてるなんて」
教授「いや、信じていない」
九十九「へっ? なんだソレ?」
教授「そ、それだけ、幸福だと感じているという表現だ。気にするな」
(博士、微妙に照れてたりするのか? ……照れるポイントがよく判らないな)
===
神様を信じているということは絶対にないと思いますが、震災直前にタイムマシンの出口を完成させることができたという偶然には非常に感謝していたと思います。そこに妻を救出できるという可能性が残されたので。誰に感謝するということでもなく、その偶然に感謝する…そういう気持ちだったはずです。神様など信じてはいないけれど、とっさに口から出てしまった表現で、指摘されて恥ずかしくなったのでしょう。何しろ自分は時間移動という神をも恐れぬことをしようとしています。神様どころではありません。でもちょっとかわいい加々見教授でした。

2.2 タイムマシンの製作・時間移動と責任感・倫理観
〇震災前からタイムマシンの研究開発は加々見教授のライフワークの1つだった。
しかしそれは研究対象としてのみの興味であって、もし完成したらどうなるのか…といった細かい部分までは考えていなかったと推測できる。
言ってみれば、本気でタイムマシンが完成できるとは思っていなかったのではないか。
〇一方、震災で妻を失った加々見教授にとって、タイムマシンは完成させねばならない対象に変わった。そしてほぼ完成したと言う確信を持った時(あるいは完成にメドが立った時点で、かも知れないが)、冷静に、タイムマシンによる時間移動に関する倫理的な面や開発者としての責任について考え始めたことは間違いない。
〇そして彼が、タイムマシンは自分が妻を救うことだけに使うと決めたことも確実。私利私欲は全くなく、ただ妻を救出することだけが残された人生の全てだった人間なので、目的を果たした後には、タイムマシンを破壊してこの世に存在しなかったことにするつもりだったはず。
タイムマシンはいくらでも悪用することが可能であり、社会を大混乱させるものであることは確か。存在が明らかになれば、使わせて欲しいという人が殺到するはずで、それは何としても避けたかった。
妻と自分の歴史を書き換えるためだけに使う…それが彼にとっての大原則。元々、「時間移動して歴史を書き換えることなど、人間には本来許されてはいない」と考えていたのではないか。(※あくまで個人的な推測ですが)
時間移動して歴史を書き換えることは許されざる禁忌である。しかし妻のためにあえて自分はその禁忌を侵す…それが科学者として、そして人間としての彼の気持ちであり覚悟だった。第3章で2012年に戻ってきた九十九に語った言葉を…
「例えば、私は自分の家族を最優先する。そのためには『神への冒涜だ』と言う者がいても、かまわずタイムマシンを作りつづけた。この機械は、今回の君のように他人に、そしてこの世の中になんらかの悪影響を及ぼすかもしれない。それでも私は、過去にさかのぼって家族を助けるために研究を続けてきた」

〇科学者であれば誰でも「自分の研究に対する責任」という意識は持っているが、その意識が強い人と弱い人がいることも事実。
(※マンハッタン計画などでははっきりその強弱が分かれました…科学者もいろいろです)
加々見教授は責任感が非常に強かったとのではないか。最初に九十九に謝罪の念を抱いたのは、B2やC2の時空で1999年から2012年に九十九が戻ってくるにあたり、白雲も存在していて九十九の居場所がないことが確実になった時ではないか(事前にある程度予測はできていたと思うが…)。さらに九十九は時間移動中に感染した病気のために余命がほとんどない状態であることが判明する。九十九にとっては絶望的な展開だが、自分の計画が、タイムマシンが他の人を不幸にしてしまったことには加々見教授も強い責任を感じていた。第3章で九十九が1999年から帰ってきた後の様々な場面でそれは伺える。
・歴史を書き換えて戻ってきたが、元からこの時空にいる白雲が自分とは別に名月の義弟として存在しているのを見て、この時空の現在に自分の居場所がないことを理解した九十九に対して「……私のタイムマシンは、結果的に君を不幸にしてしまうのかもしれないな」
・1999年に名月の代わりに川に転落したことが原因で、歴史を書き換える前に名月を急死させた病気に自分も感染し、余命がほとんどない状況であることを知った九十九に対して、1996年への移動は1分1秒を争うものではないので、君にできる限りのことはしたい、あと数日で命を落とすなら最期を看取ってからにしようと思うと伝える。
九十九「どうして俺のためにそこまで気を使ってくれるんだ?」
鏡一郎「……君の死は、私の機械が招いた悲劇だ。私は……私の機械は、『家族を救う』という目的のためにこれからも悲劇を繰り返すかもしれない。それは私にとって”仕方のないこと”だが、それをちゃんと見届けて認識してから行ったほうが良いと思ってな」
(※口にはしていませんが、鏡一郎も内心は同情の気持ちも少なからずあったはずです。そして、タイムマシンを開発した者としての責任を強く感じていたことは明らかでしょう)

<1996年に時間移動した鏡一郎とその時空に元々いた加々見教授の接触>
※ゲーム内の記述から、震災が発生した1996/8/7には加々見教授は海外出張中で日本にいないことがわかります。さらに詳しく言えば、第3章での8/3の鏡一郎と九十九の会話から、8/3にはすでに加々見教授が海外に居ることがわかります。
※タイムマシンは加々見教授の自宅のラボにありました。1996年時点では出口としての機能しか持っていませんでしたが。
よって未来から1996年に移動してきた鏡一郎が到着した「場所」は、加々見教授の自宅のラボということになります。
※その日1996/7/23に加々見教授はまだ日本にいたと考えられます。この日が「(出口の機能しか持たないが)タイムマシンが安定に起動した最初の日」であり、その時「時空の記録」を行うことによって「出口」を作っているからです。そしてその10日後の1996/8/2にももう1つの「出口」を作っており、その直後(8/2に出口を作ってすぐ、ないしは8/3の早い時間)に(タイムマシンを起動したまま)海外出張に出発しました。
・しかしその後の展開を考えると、加々見教授は鏡一郎と会っていないはずです。後の2012年に白雲を1999年に送り込むことが、加々見教授が人間を時間移動させる初めての試みでなければならないので。
・よって鏡一郎が1996年に帰還した1996/7/23に加々見教授は日本にはいましたがこの時たまたまラボにはおらず、鏡一郎はこっそりタイムマシンの「出口」が置かれているラボから抜け出したのでしょう。

※1996年の震災15日前に跳んだ鏡一郎は妻の救出作戦を展開しますが失敗します。
その後の鏡一郎の行動についての個人的見解は1.2に書いたとおりです。「この時空の加々見教授とは別に自分でもタイムマシンを作ろうとした」のではなく、じっとどこかに潜んで「1999年夏以前にその時空の加々見教授がタイムマシンを完成させるのを待った」ものと想像しています。そして完成後にタイミングを見計らって、加々見教授に知られないようにこっそりそのタイムマシンを借用し、1996年に戻って再度妻の救出作戦を実行したのでしょう。
ただしこれも1.2に書いたように、制作スタッフの想定していた「前提」はおそらくそうではなく、妻の救出に失敗した鏡一郎は自らその時空の加々見教授とは別の場所にタイムマシンを作って、それに乗って移動したというものでしょう。それであれば全く鏡一郎と加々見教授は接触もニアミスもすることはなかったでしょう。

※震災後の鏡一郎には、この時空に元々存在していた加々見教授と接触するという選択肢がありました。他の人に事情を話しても頭がおかしい人間としか思われないかも知れませんが、加々見教授なら、事情を話せば間違いなくすぐに受け入れられたことは確実です。事情を話して協力してもらえば再度妻の救出を行う際に、成功する確率は高くなったでしょうから。
※しかし彼はそれをしませんでした。その理由はよくわかりませんが、これも鏡一郎の性格によるものだったということで理解しようと思います。失敗を繰り返してもその度に奮起して再挑戦するという過程で、(元は同じ個体であり、心中に同じ思いを持つ人間ではありましたが)鏡一郎にとっては「他人」だったのでしょう。(それに、何となく…ですが、元々同一個体だった別人、つまり「別の自分」と親しくなることって…何となく何となく…気持ち悪そうな気もします汗)
ただ、何度も何度も失敗を繰り返した後、G2時空くらい?で1996年に跳んでG3時空に入った鏡一郎…とかになると、あまりにうまくいかないのでこのあたりで作戦を変えて加々見教授と協力してみようかと思うことがあってもおかしくはないでしょう汗。
※(はっきりと「分岐」や「融合」について理解できていればという条件は必要ですが)またも妻の救出に失敗したD3時空くらいの加々見教授なら、次は2番目に古い出口である1996/8/2に跳ぶ方がよいのでは…と気づいた可能性は高いです。その後直ちにあのホテルに行けば融合は起こっていないのでその時空に10日前に跳んでいった自分と合流することができ、2人で協力して行動できるので妻を救出できる確率は格段に高くなるでしょう。(C3で九十九②と会った鏡一郎のように、もう1人の自分がこの時空にやってきたということは、分岐前の時空では…つまり今自分が考えている救出計画のままではまた失敗することを示しています。必然的に作戦は変更されるでしょうから。)
ただし、「融合」という現象の発見には九十九の存在が大きく寄与しているので、いずれにしても1996年の震災前に九十九と会わない限り、その行動は取れなかったでしょう。救出作戦の準備のための「時間」が欲しいという意識が強かったでしょうから、最も古い出口に跳ぶこと以外は考えていなかったでしょう。

2.3 融合されたC1(~C4)の鏡一郎について
※この統合されたC1の鏡一郎が移動する前の時空は、大きく3つに分けられます。
①A1B1の加々見教授…2012年に初めて白雲と会い、1999年に送った後の適当な時期に、検証を切り上げて自身も1996年に向かった
②A2B2の加々見教授…1999年に未来から送られた九十九と初めて会い、彼を再度2012年に送り出して再会した後、1996年に向かった
③A2B1B2(B3)の鏡一郎…1996年に移動して妻の救出作戦に失敗した後、1999年のタイムマシンの完成後直ちに再度1996年に向かった
C1で融合された鏡一郎はこれら全ての記憶を持っています。(最低でも7つ汗。そして少なくとも3回は妻の救出に失敗しています涙)
C3で1996年に戻った際、「融合」に気づいた鏡一郎の独白です。
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「私は、いったい何人分の”私”の記憶を保有しているんだ…?」
自分は何者なのだ? ”複数の人間”が融合してしまった存在など、もはや「人間」と呼んでいいのかどうかさえ疑わしい!
「……ふっ………くっくっくっくっ…!!」
「この私は、これまで音々を失ったすべての”私”の執念が集積された存在というわけか!」
「それは、苦しみもする! 毎晩、うなされもするだろう!」
しかし……ここまでだ! この呪縛、今回で断ちきってみせる!
この”私”は、もう二度とタイムトラベルをおこなわない…!!
もう二度と、音々を死なせなどない。妻と、もうすぐ産まれてくる我が子を命に代えても守ってみせる…!!
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胸を打つものがあります……

※話を戻しますが、この時空の鏡一郎の1996年震災前の設定は、以上の全ての記憶を持つことであって
①白雲を2012⇒1999、九十九を1999⇒2012、2012⇒1996に送り込んだ記憶を全て持っている
②従って九十九が時間移動を希望した経緯・理由とその後歴史を書き換えたこと、現在は余命いくばくもないことをも理解している。
ということになりますが、これに加えて…
③それ以前に1996年に九十九と会ったことがない
ということが重要です。これはC3時空の第3章の九十九との会話で明かされます。
「私は、1996年時点で”君”と行動を共にするのは初めてだ」
様々な理由から、1996年の震災前に鏡一郎が九十九と会うことは、妻の救出にとって不可欠な要因だったと思われます。
ここで初めて鏡一郎と九十九が会うことによって、壮大な歴史書き換えドラマがハッピーエンドに向かったのです。
第3章(C3)での1996年、二人が会った時の会話です。
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鏡一郎「……そうだな。1999年の君の事例では、過去は変わった。それを見て、私も過去へ跳んだのだ」
鏡一郎「それに、今回は私ひとりではない。今までとは違う。この時空は、成功する時空なのかもしれない」
九十九「いいぞ、その意気だ!」
===

2.4 2012年から過去に向かうにあたっての加々見教授の「準備」
※タイムマシンがとりあえず1999年に完成した後10年以上も慎重に自分の理論の妥当性を検証していたくらいですから、非常に慎重で、万事にわたって綿密に準備をしていたことは間違いありません。
ちょっと考えただけでも…
①1996年に移動した後の活動資金を得るためのもの(実際C4では大変な大金持ちになっていますよね…)を考えて準備する。
「2012年には非常に安価で入手できるが1999年には高価で、かつすぐに処分できるもの(う~ん、具体的には思いつかないなぁ…)」
「その後2012年までの「(1996年時点では)未来」の出来事を知っていることを利用して金策できるもの(宝くじ、公営ギャンブル、株、先物取引…などでしょうか)」
(とりあえずは到着したその日に、公営ギャンブルで数百万円ほど稼いだのではないかと推測します。特にIDを必要としませんし。C3では1996年に跳んでから10日ほど後には億を越える現金を持っていたわけですが、このような大きなお金を得るにはいろいろ段取りが必要だったと思います)
②1996年の活動に必要な道具を準備する。
・なによりもまず「数々の情報」が重要でしょう。当時から現代に至るまでの新聞の電子版などを持って行ったのではないかと推測したのですが、だとすると1999年に台風が来る日をあらかじめ知ることができるはずですよね…。金策に関係ありそうな株・先物取引・公営ギャンブル系の情報に限定したのかな…
・1996年には入手できない高性能機器や日用品その他、例えば作中にも登場するPC、携帯電話、トランシーバー、デジカメ、音々の居場所を知るための発信機と受信機その他。
③1996年に生活するための氏名と素性(自分がなりすます「他人」の名前)
※鏡一郎は1996年では、震災で行方不明になる「凪鏡一郎」という人間になりすまします。
そして後に1996年に送り込まれてくるだろう主人公には、やはり震災で行方不明になる「凪鏡一郎」の息子の名前だった「凪九十九」を名乗らせています。
第3章で鏡一郎が九十九に語ったところによれば、2012年に最初の時間移動を行って1996年に飛ぶ前に調べて、この2人の名前を使うことを決めていたようです。実際には、この上なく慎重な加々見教授のことですから、他にもいくつかの候補を準備していたでしょう。
震災の行方不明者で身寄りがない人物を調べ(そんなことできるなかな…という気もしますが、タイムマシンを完成してしまうほどの人ですから、それくらいは朝飯前だったのかもしれません)、リストアップしていたことは容易に想像できます。
※上にも書いたように、統合されたC1の鏡一郎の移動元には3種類ありました。このうち、2012年に白雲を1999年に送り出した教授と1999年から再度1996年に向かった鏡一郎は、1996年に九十九もやってくるとは夢にも思っていなかったはずです。しかし、九十九が1999年から帰還した2012年に彼と再会して、彼を1996年に送り込んだ(B2の)鏡一郎だけは、1996年に九十九が現れることを予測できていました。この時の教授が、九十九のことも考えて、親子2人だけで生活し、他に身寄りがなく、震災で行方不明になる「凪鏡一郎」「凪九十九」という名前を見つけてから1996年に旅立った可能性は高いと思います。

※「九十九」の名が「白雲」と呼び名が同じ「つくも」であるのは、単なる偶然…ですよね?………。何か引っかかるのですが。まぁ気をきかせて白雲と同じ名前を加々見教授が選んだ…という可能性も否定できませんが。

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3.時空考察と各時空の概要・感想
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※繰り返しになりますが、別時空からタイムマシンで飛んできた加々見教授を「鏡一郎」、白雲を「九十九」と書いています。また第2章(C4時空)に登場する2012年から1999年に移動してきた白雲のみ「九十九②」と表しています。
※A1B1はC1とほぼ同じ、A2B2はC2とほぼ同じなので、それぞれC1とC2に併せて書いています。
※A3B3は本編にほとんど影響がないので書きませんが、「1996年に送られた九十九は鏡一郎と会えず目的は果たせなかった」が「おそらく名月とは会って結ばれ」その後に「名月の前から消えて震災または病気により死亡」し、名月は「彼への思いを引きずりながら生きていく」が「1999年の台風の日に怪我をしたことが遠因となって2012年に急死」、白雲は「加々見教授の元を訪れて1999年に跳んでA4B4に分岐」…という「果てしない物語」へと続いていくものと予想できます。
※タイムマシンで遡れる最古の日時は1996/7/23頃です。時空の分岐が起こる最も古い日時です。従ってその前までの歴史は全ての時空において共通しています。

3.1 C1:本編第3章冒頭「相違点ダイジェスト」の前半:タイムマシン分岐が起こる前の元史A1やB1とほぼ同じ
○B1B2などから加々見教授と鏡一郎が移動してきて鏡一郎となる際に分岐して作られた時空。この際、この同じ日時に移動してきた全ての加々見教授(鏡一郎)の記憶は融合するので、B1B2だけでなくA1A2の記憶も持っている。(ゲーム進行上はB1B2の記憶だけで十分)

※多くの部分は推測によるものです。
※C3と共通する部分も多いので大まかな流れのみを示し、共通する部分、特に白雲と名月についての詳細はC3に示しています。

[1996年7月~1999年夏]
<加々見教授>
・1996/7/23…タイムマシン開発中の加々見教授は震災直前時点で「出口」の機能を持つところまで完成。初めて安定稼動に成功して時空の記録を行い、これによって震災15日前のこの日に(このタイムマシンで到達できる最も古い日時にあたる)「出口」を作りあげる。
・1996/8/2…震災5日前のこの日も時空の記録を行い「出口」を作る。この日または翌日、海外出張に向かう。
・1996/8/7…震災発生。海外にいたため被災を免れるが、妻音々は死亡。タイムマシンは帰国時には壊れていた。

※タイムマシンがある加々見教授の自宅は震災により大きな被害を受けます。第1章で白雲と名月が美々と加々見教授と一緒にとまり木で食事をしているとき、加々見教授は震災でタイムマシンが壊れてしまったと口にしていました。(それでも震災前までは存在していたので、未来からの移動の「震災前」出口としては常に機能します)
海外出張で日本から離れている時に発生した震災で妻を失った加々見教授が、震災後に海外から自宅に戻った時の気持ちを考えると胸が締め付けられる思いですが、絶望的な気持ちの中、まずは壊れてしまったタイムマシンを直していくところから前に進み始めたのでしょう…

・その後、妻を救いたい一心でタイムマシンの開発に心血を注ぐ。1999年夏前にはとりあえず完成を確信するが、絶対に失敗できないことに加え、一刻を争うという状況でもないので、慎重にタイムマシンの動作検証を進める。(その検証は2012年になっても続いていた)

<鏡一郎>
・1996/7/23…(おそらく)B2時空から移動、時空が分岐してC1時空に入る。この際「融合」によりA1A2B1などの記憶も得る。シティホテルに宿泊しながら妻を震災から救うための準備をする。
・1996/8/7…震災で救出に失敗し音々死亡。その後も含めて加々見教授とは一切接触しない。(おそらくシティホテルで)3年間の隠匿生活を送りながら、再度の妻の救出のための作戦を練り、準備を進める。
・1999年夏前に、加々見教授が完成させたタイムマシンを彼に気づかれないようにこっそり使って(あるいは自身で製作して)、妻救出作戦のため再度1996年に向かう(⇒統合D1)。
※B1時空はA1A2から跳んできた鏡一郎によって分岐が起きた時空(B1の鏡一郎は同様に1999年に再度震災前に時間移動します:B1⇒統合C1)。A1時空は元史なので、鏡一郎は存在しません。

<白雲&名月>
・1996/8/6…震災前日、七夕まつりの会場である海浜公園で、名月は捨てられた小さい男の子を見つけて警察に届ける。後の白雲。
・1999/8/7…震災当日。震災発生時、名月は入院していた高島の見舞いで、高台にある病院にいたため難を逃れた。
・名月は1996年にも1999年にも九十九に会っていない。よってC3C4時空のように彼らに対する引きずられる思いもなく、バンダナもしていない。

[1999年夏~2012年9月]
<白雲&名月>
・1999/8/1…震災前日に名月が見つけた小さな男の子は家族が現れず施設で保護されていたが、この日、桜塚家(要するに名月の家)に養子として引き取られる。名前は白雲。
・1999/8/10…台風の日、白雲は橋の崩落事故に巻き込まれ、義姉・名月に助けられるが名月は負傷して化学物質に汚染してしまう。(白雲の最も古い記憶の1つ)
・以降白雲は、名月を守れる強い男になろうと決意し日々鍛錬する。
・2012年、自分が養子で名月は血のつながりがない義理の姉と知り、名月への想いが恋愛感情に変わっていく。
・この頃白雲は名月から、震災の数日前のささやかな事件について話を聞く。高島が街でチンピラに絡まれていた男の子を助けに入って逆にやられてしまい、病院に入院することになったが、震災の時自分は高島の見舞いで病院に来ていたので被災せずに済んだとのこと。
・沼淵弟たちに捕まり襲われかけた春日森を助け好意を持たれるようになる。これを名月から指摘された時に勢いで名月に告白してしまう。
・名月から一旦は断られるが様々な葛藤の後、再度告白して受け入れられ結ばれる。(本編第1章と同様、この時の名月は処女だったことが第3章C3の九十九の回想でわかる)
・その直後、名月の体調が急変する。症状はめまいや喀血など。
・2012/8/12…名月が急死。(その直前に白雲は名月と学生時代同級生で親しかった高島医師から、1999年の転落事故での負傷で化学物質に汚染されたことが原因である可能性が強いという話を聞く)

[2012年9月]
・失意の白雲は親友の保志経由でタイムマシン開発中の加々見教授の噂を聞きつけラボを訪れ、時間移動を希望する。
・加々見教授は人体実験も兼ねて白雲の時間移動の希望に合意し、彼を1999年に送り込む(⇒C2)。(A1⇒A2、B1⇒B2)
・その後自分もどこかのタイミングで検証を打ち切り1996年に向かう(⇒統合D1)。(A1⇒統合B1、B1⇒統合C1)
※九十九を1999年に送り込んだ加々見教授ですが、この時空ではいくら待っていても九十九を過去に送り込んだ人体実験の結果を観察することはできません(それは分岐した時空で展開されることなので)。よってどこかで自分も1996年に移動したことは確実です。

3.2 C2:本編第3章冒頭「相違点ダイジェスト」の後半~第3章「ただ去りゆくのみ」まで:A2B2とほぼ同じ
○1999/7/11前後にC1から白雲が送られてきために分岐した時空。当然ながらそれ以前はC1と全く同じ。
○A2B2もほぼ同様でA1B1の白雲が1999年に送られてきたことで分岐した時空。

※多くの部分は推測によるものです。
※A1B1C1から送られてきた白雲は「融合」して、分岐した時空に入る際にそれらの記憶は統合しています。しかし、A1B1C1の白雲が生まれてから移動直前の2012年に至る歴史はほとんど同じで記憶もほぼ同一ですから、自身は融合していることに気づきませんし、融合の有無はシナリオにはほとんど無関係です。(バンダナについてのみ、わずかに怪しい部分もありますが…)
(一方C3から1999年に移動してC4に分岐する時空に入る白雲はA1B1C1から送られてくる白雲とは融合しません。C3からの移動に使われたタイムマシンはプライムビルの最上階にあり当然ながらその「出口」は、A1B1C1からの移動に使われた加々見教授宅のラボにあるタイムマシンの「出口」とは場所が違ったために融合しなかったと考えられます)

[1999/7/11以前の分岐前(C1と全く同じ)] (A2はA1、B2はB1と完全に同一で、A1A2B1B2C1C2すべてほとんど同じになります)
・2012年から1996年にタイムトラベルした鏡一郎、震災で救出作戦に失敗し音々は死亡。
・一方加々見教授も妻を震災で失いタイムマシンの開発に心血を注ぎ、1999年夏前に完成を確信し、慎重に検証を進める。
・鏡一郎、1999年夏前に加々見教授が完成させるタイムマシンをこっそり借りて再度1996年に向かう(⇒統合D1)。
・震災前日七夕まつりの会場の海浜公園で、名月は後に養子として引き取られ義弟・白雲となる小さな男の子が捨てられているのを発見して警察に届ける。
・名月は1996年に九十九には会っておらず、青いバンダナも持っていない。第1章の名月の心の中の大きな部分を占める「お兄ちゃん」という存在は彼女の中にはない。

[分岐する1999/7/11頃~1999/8/12]
・1999/7/11頃…C1の九十九、2012年から時間移動することによりこの時空が分岐する。
おそらく九十九は移動後直ちに加々見教授と接触したと思われる。タイムマシンから出てきたところに鏡一郎がいた…と考えるのが自然か。以下はそれを前提とする。(完全に推測だが)九十九、驚く加々見教授に、2012年に事情を伝えた上で加々見教授に依頼して彼のタイムマシンの実験台(時間移動する人間の第1号)となることを承知でここに送り込んでもらったことを説明。加えて自分の置かれた状況、1999年に来た理由・目的、2012年の加々見教授のことなど様々な情報を伝える。
※この時の加々見教授が、九十九から事情を言いた後、2012年の自分が九十九をここに送り込んできた以上、「歴史を書き換えた時点で2012年に再度送り返すことが前提」=「2012年の自分はこの時期(1999年夏)にはタイムマシンが完成していたと確信していた」と判断したことは間違いありません。

・鏡一郎は九十九を自身の時間移動に関する検証の協力者として、自分の家に寝泊まりさせて生活させる。
・名月は当初は見知らぬ九十九を不審者・ストーカー視するが、ある雨の日に学園近くで(おそらく自分を待ち伏せしている間のことだろうと気づいてはいたが)足にケガをした黒猫に気をかけてかまっている九十九の様子を見て、悪い人ではないかも知れないと直感して話しかけ、名前を尋ねる。驚いた九十九はとっさに名前だけ「つくも」と答える。その後次第に2人は親しくなり、一緒に過ごす時間も増える。ついには帆船の上で名月は九十九に告白し、九十九は2012年で待っている名月への想いとの間で葛藤するが、結局自分も名月が好きと答えて2人は結ばれる。(おそらく九十九は、遠いところに行かねばならない身の上で、夏の間しか一緒にいることができずすぐに別れが来るが、いつかきっとまた君の目の前に現れる…という約束を名月にしていたと推測される)
・1999/8/1…白雲、桜塚家に引き取られ養子になる。(名月の義弟になる)
・1999/8/10…台風の日、九十九は帯結橋の崩落事故から名月と幼少だった白雲を守る。しかし代わりに九十九は(名月が必死に助けようとしたものの力及ばず)川に転落して負傷、化学物質に汚染される(歴史が書き換えられ、名月は2012年以降も生存できるようになった。が、代わりに九十九が感染してしまう)。その後名月は意識を失った九十九と共に病院に行き徹夜で看病するが、疲れて眠っている間に九十九は病院から…
・1999/8/12…九十九は転落事故後病院に運ばれて入院するがこの日になって意識を取り戻し、付き添って看病をしてくれていたが眠ってしまった名月に後ろ髪を引かれながらも、その思いを振り切って加々見教授のラボに向かい、目的を果たせたことを加々見教授に感謝しつつタイムマシンで2012年に移動する。
・名月はその後、九十九をいくら探しても見つからなかったことから、これが彼の言っていた「別れ」であると認識し、その後彼への想いを引きずり、再会に期待して生きていくことになる。
・白雲は自分たちを助けてくれた九十九に憧れの気持ちを持つようになり、九十九のような強い男になろうと日々研鑽を重ねる。

[1999年夏~2012/9/5]
・加々見教授、1999年に九十九を2012年に送り出した後、彼を待つ間白雲と名月の様子を観察する。九十九が帰還したとき、「桜塚白雲」が2人(九十九と白雲)存在する状況になると予測する(実際にそれは正しかった)。
・白雲は2012年になって名月とは血のつながりがないと知り、女性として好きになり始める。しかし名月の心の中には1999年の九十九への想いが強く残っていた。白雲は九十九がいつになっても帰ってこないので、自己研鑽の目的が、九十九より強くなり何があっても名月を守れるようになって、彼女を(九十九から)自分の方に振りむかせることに次第にシフトしていく。

((2012/9/5))
・1999年から送られた九十九が帰還する。(未来への移動なので分岐は起きない)
・九十九が帰還した場に(1999年から2012年に九十九を送り出した)加々見教授もいる。彼は九十九が無事、身体も記憶も移動直前の状態で帰還したことから、人体実験は成功し、タイムマシンでの時間移動は可能との確証を得る。
・九十九、1999年の川への転落で受けた傷痕を隠すために青いバンダナを額に巻く。(A2では黄色、B2では緑色だったと推測される)
・白雲も存在している状況を見て、この時空での自分の居場所がなくなったことを認識してパニックに陥った九十九に、加々見教授が状況を説明する。そして最初のタイムマシンによる時間移動の言わば実験台となってくれた彼に感謝の気持ちを伝えると共に、結果的には不幸にしてしまったと詫びる。
・一方、九十九の時間移動のおかげで自らの時間移動の理論が正しかったという確信に至り、近々1996年に向かい妻を助けることを決意して九十九に伝える。
・九十九、加々見教授と別れた後、アーケード街で保志と会ってとまり木に行く。保志は九十九を元々この時空にいる白雲と勘違いする。話を合わせるため、ケガをして頭を打ったせいで記憶がはっきりしていないことにする。保志の話では「今晩白雲が名月に告白することになっている」「白雲は『昔の男の影』を振り払ってやると意気込んでいた」とのことで、九十九はその昔の男が自分であること、自分への想いを名月が10年以上も引きずり、その心を縛っていることを知り思い悩む。
・九十九がその後記念公園の帆船のところに行くと名月と白雲がおり、その様子からは、告白するために呼び出した白雲だが結局目的が果たせなかったように見えた。その後急にめまいを感じて意識を失う。

((2012/9/6))
・気づくと九十九は千関総合病院のベッドで寝ていた。(前夜、気を失った九十九を目つきが悪い男が病院まで連れてきてくれたとのことで、後にそれが沼淵弟だったことがわかる)
・夢の中で九十九は、自分がこの時空に元からいた白雲になり、名月と一緒にいるところへ1999年から帰還した九十九がやってきて、自分(白雲)に、自分の方が名月への想いが強いと主張する夢を見る(その時の現実とは全く逆の状況)。実際の自分は白雲の気持ちが非常によくわかるだけに、この後どのようにすればよいのか非常に悩むことになる。
・担当の高島医師が現れ、前夜からの状況を教えてくれた。「意識不明で高熱があり検査をしたが原因は不明」「外傷が原因ではない」「身体全体の制御が上手く出来ていない印象」「ホルモンバランスが崩れている」「弱い不整脈」「現在は熱も下がって大きな問題はない」「経過の観察は必要だがとりあえず退院してよい」とのこと。
・病院を出て加々見教授のラボに帰る途中、九十九は自分の症状が、歴史を書き換える前の時空で名月の命を奪ったものと似ていることに気づき、1999年に自分が身代わりに川に転落した際に化学物質に汚染されて同じ病気にかかった可能性が高いことに気づいてショックを受ける。
・加々見教授のラボに戻った九十九は、この時空で自分がどうするべきなのかを彼に相談するが、結論は得られなかった。
・加々見教授と別れた直後に九十九は喀血、分岐前の時空の名月と同じ病気に感染していることを確信、余命いくばくもないことを認識する。
・ラボを飛び出した九十九は兄が3年前にバイク事故で死んだ場所に花束を置きにやってきた沼淵弟と会い、「いなくなった人間への思い」について考えさせられ、自分のせいで思いを引きずることになった結果、名月を不幸にしてしまったと気づきショックを受ける。
・その帰り、九十九は残された人生がわずかしかない自分は名月に会うべきではないという結論に達するが、名月の自分への想いを断ちたいという気持ちが強まり、またこの時空の名月と全く接触がないまま死んでいくことに耐え切れず、名月に手紙を書く事を思いつく。
・ゴミ箱の中の血まみれのティッシュを見て九十九が体調を崩していると察知した加々見教授はラボに帰ってきた九十九にそのことを尋ねる。九十九は素直に自分の体調について説明し、名月と同じ病気に感染して発症し、まもなく命が尽きるものと覚悟していることを伝える。鏡一郎は、残念で非常に申し訳なく感じるがその推測は正しいだろうと話す。そして…

<九十九の「1996年に向かって加々見教授の妻救出作戦を手伝う」という決断>
※ゲームを何回も周回して理解が深まってくるに連れてどんどん「好きな場面」になっていくのがこのシーンです。九十九と加々見教授という2人の人間の魅力が満載で、2人の間に世代、時空を超えた友情が生まれるきっかけとなった感動的な場面でもあります。

===
九十九「博士はいつ出発するんだ? 『数日後』って話だったけど」
鏡一郎「君のさっきの話を聞いて、早めようか遅らせようか、考えている」
九十九「? なんで俺の話があんたに影響するんだ?」
鏡一郎「もともと、過去に跳ぶまで数日あけたのは、この世界に残る君へ色々なモノを引きつがせるためだった。もし君がこの先長く生きられないなら、引きつがせるのはこの屋敷と多少の金銭だけで十分だ。予定を早めることができる。ただ……もし君があと数日で命を落とすなら、それを見届けてからでも遅くはないかもしれない」
九十九「っ!? それは………ありがたい。どうして俺のためにそこまで気をつかってくれるんだ?」
鏡一郎「……君の死は、私の機械が招いた悲劇だ。私は……私の機械は、『家族を救う』という目的のためにこれからも悲劇を繰りかえすかもしれない。それは私にとっては”仕方のないこと”だが、それをちゃんと見届けて認識してから行ったほうが良いと思ってな」
(なるほど……”白雲(おれ)があまりにもかわいそうだから”とかいうわけじゃなく、博士なりのケジメとして俺の最後を見届けようってわけか。博士らしくてある意味、安心した。ただ……そんなんでいいんだろうか? 俺も博士も、なんだか時間の使い方がもったいないような気がする。ただ静かに死を待つだけの最期でいいのか? そんな終わり方で俺は納得できるのか? ――できるわけないだろっ!! 俺の命はまだ尽きてない。俺はまだ生きてる。まだやれることが、そのための時間が、俺には残されてるんだ…!! 残り少ない命だからこそ、有意義に使いたい。だから、)
九十九「博士、震災前の世界に旅立つのはやっぱり早めにしよう」
鏡一郎「君は、ここで独りで死ぬことを選択するのかね?」
九十九「いいや、そうじゃない。気が変わった。おとなしく死ぬのは、やめる!」
鏡一郎「……どういうことだ?」
九十九「震災前の世界に、俺も行く!」
鏡一郎「なに…?」
九十九「俺もあんたを手伝う。あんたの奥さんを――大切な人を守るために、力になりたい。まぁ、ポンコツな体だから大して役に立てないかもしれないけど……少なくとも足は引っぱらないようにする。もし調子が悪くなって、あんたの足を引っぱりそうになったら、すぐ切りすててくれて構わない。その時はおとなしく病院に入院するさ」
鏡一郎「さっきの君と同じ質問をしよう。どうして、私のためにそこまでしようと思うのかね?」
九十九「どうして? 決まってるだろ、俺はあんたに大きな……借りがある」
鏡一郎「私にとって君はこの機械の実験台でしかないぞ? そしてその結果、今の君はかなり悪い状況にある」
九十九「俺を実験台にしてくれて構わない――そういう約束でタイムマシンを使わせてもらったんだ、この運命、甘んじて受けるさ。ひきかえに俺は大切な人を守ることができた。そのチャンスをくれたのは、あんただ。俺はあんたに借りがある。そしてその借りは今を逃したら二度と返せなくなっちまうんだ。だから俺はあんたに付いていく。この借り、きっちり返させてもらう。今度はあんたの大切な人を守る番だ」
鏡一郎「わかった」
===
※鏡一郎はいろいろな意味で非常に驚いたと思います。自分のタイムマシンのせいで、人体実験の被験者になったせいで、九十九という人間の人生をめちゃめちゃにしてしまったという責任感は非常に強かったはずです(加々見教授らしく、口から発せられた言葉は冷たいと捉えられそうなものでしたが)。しかし九十九はそれに対して加々見教授を責めるどころか、それを運命と受け入れて、名月を救えたことを心から感謝してくれた上で、さらに自分に協力してくれると言っているのです。九十九の人間性に強く惹かれたことでしょう。
2人の間に世代を超えた信頼関係と友情が芽生えたのが、九十九が自分も1996年に跳んで加々見教授を手伝いたいと決意した時、この会話が行われた時だったのです。
※この後、この2人は別の時空に跳ぶので会うことはできません。しかしA2やB2でもこれと同じやりとりが行われていたのです。この後九十九はB2の記憶も持ってC1で融合した加々見教授⇒鏡一郎と会うことになりますが、その鏡一郎もこのやりとりを経験していますから、九十九に対する気持ちも同じだったはずです。

・その後、加々見教授は今後の予定について九十九に伝える。その内容は
①転送実績があるのは一度に1人(要するに九十九の人体実験だけですから)、2人以上はリスクがある。また送り出す時間をずらしたとしても同じ日時の「出口」に2人を送り込んだときに何が起こるかは全く予測不可能なので、「まず九十九を2番目に古い『出口』の1996/8/2に送りこむ」「次に自分が最も古い『出口』の1996/7/23に移動する」という手順で進める。
②過去への時間移動によって時空がどうなるかということについては「分岐する」「上書きされる」という2つの仮説がある。もし「上書き」されるなら自分と九十九は1996年に再会できるが、「分岐」されるのであれば会うことはできない。そしてそのどちらが正しいかは、実際に移動してみなければわからない。
③「分岐」していて自分とは会えなかった場合の九十九の行動について。
この時の2人の会話から…
===
教授「この場合は、ひとりで私の家族を救おうとしてくれなくてもいい。そこまで無理強いはできない。さっき私が言った『私の邪魔をするな』という条件も自動的に消滅する。そこで君は残りの人生を好きに生きるがいい」
九十九「そう言われてもな。あいにく俺には、震災前の世界でやりたいことが他にないんだ。ひとりであんたの奥さんを守ってみせるさ」
教授「そうか……」
(中略)
教授「そして地震のとき妻は……正確なことは判らないが、妊娠していることを考えると、おそらく家にいた。家は震災後津波で流された。そこで、たぶん逃げ遅れて犠牲になってしまったのだろう……」
(博士が言葉を詰まらせる。珍しく感情的になってるみたいだ。それだけ奥さんを大切に想ってるんだろう。そんな大切な人だから、地位や名誉を捨ててでも「守りたい」と思うんだろう。そして、そんな一途な想いがあるからこそ、タイムマシンだなんていう非現実的な物を作りあげることができたんだろう。)
教授「……もしよかったら、救ってやってほしい」
(こんな博士は……初めて見る。)
九十九「任せとけ」
(俺は力強くうなずいてみせた。)
===
※極言すれば加々見教授は一種の「ツンデレ」キャラで滝汗、普通は感情を外に出しません。だからこそ、このように感情が表れる場面は胸を打つものがあります。そして九十九は、加々見教授と同じような想いを名月に対して抱いていたわけですから、その胸中は誰よりもよく理解できていいました。男の友情です…シミジミ
※この時の加々見教授は、過去への時間移動によって、時空は上書きされるのではなく分岐することをほぼ確信していたのだと思います。だからこれから送り出す九十九はほぼ自分と会えないと予測してはずです。ただ、それを強く言ってしまえば、せっかく残りわずかな時間を自分の妻の救出に費やそうと決心した九十九の気持ちに水を注ぐことになってしまう…そんな感情も見え隠れしているように思えます。

※しかし…さすがの加々見教授も、大きな誤解をしていました。それは「自分は元史から白雲が過去に移動したことによって分岐した時空にいる」という思い込みです。ゲーム内で示されるchartの(そしてこの文章内で使われる)時空表現を使えば、自分はA2時空にいると思い込んでいたのです。ですが実際はB2やC2にいる可能性もあったのです。実際ゲームの第3章の、1996年に移動する直前の加々見教授がいた時空はC2でした。でもおそらくA2にいるという思い込みがあったのでしょう。
これは無理もないことです。タイムマシンによる時間移動や分岐の原理を理解していたとしても、「自分はオリジナルの自分」と思いたくなるものでしょう。しかし実際には、この時空の1996年の震災直前から1999年夏頃までの間、時間移動してきた鏡一郎が存在しており、そもそもこの時空は彼の時間移動によって分岐したものだったのです。つまりこの加々見教授が1999年夏前にタイムマシンを完成させてから1999/7/11に突然九十九が未来から送り込まれてくるまでの間に、1996年の震災前に時間移動したが妻の救出に失敗した鏡一郎が、自分が気づかぬうちにタイムマシンを借りてこっそり再度1996年に戻って行ったのです。しかし鏡一郎はまったくこの時空の加々見教授とは接触がないので、当然ながら加々見教授はそれに気づくことはなかったのです。
※九十九を1996年に送り出す前、すぐ上に挙げた2人の会話の前に、加々見教授は時空の分岐の説明をしますが、その説明のスタートは現在の時空でした。しかし、九十九がこの後1996年の震災前に出会う別の時空からやってきた鏡一郎が似たような説明を九十九に行う時には、現在の時空以前の時空についても考えられていました。これは実際に時間移動で過去に跳んでいれば当然のことでしょうし、さらに言えば記憶が融合していることも大きく影響しているでしょう。
ですが、まだその経験がなくこれから最初の時間移動をしようとしている加々見教授には、これから送り出そうとしている九十九が、現在の時空の震災以前に時間移動によってやってきた自分以外の鏡一郎に会えるとは、想像もできていなかったのでしょう。

④九十九が震災前に移動して分岐した時空ではまた新たな歴史が刻まれる。そうすると名月は再度台風の日に負傷して、2012年に急死する可能性がある。
===
教授「つまり、その新しい世界ではまた、君の姉の悲劇が繰りかえされる可能性もある。時空が上書きされた場合は、君の努力が”なかったこと”になる可能性がある。時空が分岐する場合には、新たに”君の姉が死ぬ可能性のある世界”ができることになるだろう」
教授「新しい歴史が刻まれるからだ。同じように君の姉は負傷するかもしれない。歴史が変わって事故は起こらないかもしれない。それは、なんとも言いようがない」
九十九「それじゃ……俺の努力は無駄になるかもしれないのか? けっきょく姉さんに明るい未来はないのか? ……いや、もし歴史が繰り返されるんなら、姉さんが死んだあと、また別の”白雲(おれ)”が過去に戻って姉さんを守るかもしれない」
教授「たしかに、その可能性も否定はできない」
===
※2周目以降にこの会話を読むと、非常に面白いと気づきます。加々見教授もこの先のことがよくわかっていなかったのに、時間移動と時空の関係について今ひとつよく理解できていない九十九が、非常に正確にこの後の展開を予測できていたからです。

・加々見教授、タイムマシンの調整が完了するのは明日の夜になるのでそれまでに準備をしておくようにと九十九に伝える。
・九十九、名月への手紙を書きながら寝落ちする。

((2012/9/7))
・九十九、手紙の内容について加々見教授に相談する。手紙の内容を伝えるように言われた九十九は恥を忍んでそれを加々見教授に伝える。
(手紙を書く目的は、この時点で1999年に自分が消えてから10年以上もの間残っている自分への想いを、名月に断ち切って欲しい…と訴えることだった)
===
「――俺はもう姉さんとは会えない。この先も会うことはない。姉さんの傍には俺と同じように姉さんのことを想ってる白雲がいる。もし姉さんにその気があるんなら、これからは白雲を見てやってほしい。あいつと幸せになってほしい――」
===
加々見教授にどうやって手紙を渡すつもりかと尋ねられた九十九は、家のポストに入れておくと答える。加々見教授は九十九に自分の考えを伝える。
===
教授「(前略)…切手も消印もないことから、『相手が近くにいるだろう』と予想する。すると、なぜ直接自分に会いにこず去ろうとしているのか、疑問に感じる。その理由は、手紙の内容で解決できるか?」
九十九「いや……そこまでは書いてない」
教授「では、疑問はずっと残る。君がどうしたいか、意思は伝わったとしてもなぜそうしたいのか、理由がわからない。仮に、君の命がこの先短いことを理由として伝えたとして、相手はそれを会わない理由として納得できるだろうか? むしろ、それなら逆に、『すぐにでも会いたい』と思うのではないだろうか?」
九十九「……………」
(博士の言うとおりかもしれない。この手紙を受けとっても、姉さんには疑問が残っちまう。手紙の内容を書きかえたってダメだ。姉さんが過去に心とらわれてる以上、どんな文面にしたって「彼(おれ)に会いたい」って気持ちが残っちまう。)
九十九「博士、すごいな……なんでそんなことが判るんだ?」
教授「自分の経験をベースに、条件に対する結果を順を追って考察しただけだ」
九十九「……そ、そうか」
教授「最初に言ったとおり、私の話は仮説のひとつだ。”かならず正しい”というものではない」
九十九「けど、説得力はあったよ」
教授「”時が解決してくれる”という可能性はあるかもしれないな」
九十九「もう十年以上たってるのに、まだ解決してないんだぞ?」
教授「だからといって、今後、解決しないことが確定したわけではないだろう」
九十九「そりゃそうだけどさ……」
===
※そう言って九十九は、手紙を名月に渡すことを断念して無意識のうちにその手紙を折りたたんでポケットに入れ、加々見教授のラボを出ます。(「手紙」についてはC3時空のところで詳しく取り上げます)

・ラボを出た九十九、コンビニで買ったおにぎりを食べながら、お気に入りの場所の1つである海辺へ向かう。
※その時の九十九が考えていたことです…
===
(前略……そして、俺は大切な人を守りきった。長い道のりを越えて、目指していた場所にたどりつけたんだ。……だから、ここで満足してもいいんだ。姉さんのことが心残りではあるけど、俺の想いが裏目に出てしまうくらいなら、俺が姉さんに手紙を出すことで姉さんの心をまた縛ってしまうくらいなら、このまま何もせずひっそりと消えるのが、俺にできる事のなかで一番マシなのかもしれない。それは、とてもとても寂しいことだけど――)
===
・その時九十九は、浜辺で蒲生という男が率いる不良グループに絡まれる名月と白雲を見つけ、白雲と共に戦って不良グループを倒す。
・その後の白雲との会話で、白雲は1999年に姉と自分を助けた九十九に憧れ、自分も強くなりたいと自己研鑽していることを知るが、加えて、1999年の九十九の存在と彼がその後名月と白雲の前に現れないことが2人にとって大きな束縛となって残っていることを知る。

<浜辺で蒲生の一団に襲われた白雲と共に戦う九十九>
※白雲と共に蒲生の一団を倒した後、九十九の頭に1つの疑問が浮かびます。
一緒に戦っている時は、白雲は自分同様に日々研鑽に努めているから強いのも当然と考えていました。しかしよく考えてみると、自分は台風の日に名月に守られたことで「いつでも、何があっても名月を守れるようになりたい」と強く決意したことが日々の研鑽の目的でしたが、この時空の白雲は「名月に助けられた」経験はないはずです。ではなぜこの白雲はこんなに強いのだろう…という疑問でした。九十九がそれとなくその事情を白雲から聞き出そうと研鑽の理由を尋ねると、白雲は素直に語り始めます。
===
白雲「俺が子供のころ……姉さんと俺が大ケガをしそうになったとき、身を挺してかばってくれた人がいたんだ」
(っ!? それって……ひょっとして俺のことか…!?)
白雲「あの人は強かった。そして、自分が傷つくのも構わず俺たちを救おうとした。あの後、『俺もあんな人になりたい』ってそう思ったんだ。」
(そうだったのか……姉さんが傷ついたことによってじゃなく、俺の背中を見たことによって、結果的に白雲もまた俺と同じ想いを抱くようになったのか…!! 1999年での俺の努力が、姉さんだけじゃなく、白雲にも強い決意を植えつけてたなんて…!! 自分の想いがこの世界の自分に受けつがれてると思うと、誇らしい気持ちになってくる。)
白雲「べ、べつに、その人への憧れだけで強くなろうとしたわけじゃない」
(うれしさのあまりつい口元がゆるんでしまった。それを「笑われてる」とでも思ったのか、白雲が照れたように、ぶっきらぼうに言った)

※夜の浜辺は薄暗く、バンダナを巻いていたこともあって、白雲には九十九の顔ははっきりとは見えていませんでした。(その男が自分に瓜二つ…と気づくことはできなかったわけです)

白雲「その人はその後どっかに消えちまった。姉さんはそれからずっとその人のことを想ってた。姉さんの中には何年経ってもあの人がいる。けど、あの人は帰ってこない」
(白雲の言葉に胸が締めつけられる。保志から話を聞いていたものの、あらためて白雲の口から聞かされると、姉さんに酷い仕打ちをしちまったと後悔の念が湧きあがってくる。)
白雲「だから、俺は『あの人を超えよう』と思った。俺が強くなって、姉さんを守って……姉さんが俺を見てくれるようになればいい。あの人がいなくても俺が姉さんを幸せにする――そう思ってた」
(こいつ、ひょっとして……いつまでも姿を現さない俺の代わりをつとめようとしていたのか!? ……そうか、そうだよな。この世界の姉さんを昔から見つめつづけ、ずっと好きだったのは、この白雲だ。この世界じゃ、姉さんの隣にいるべきなのはこいつなのかもしれない。姉さんを過去(おれ)から解放してやれるヤツがいるとしたら、それは過去(おれ)自身なんかじゃなくてこいなのかもしれない……。……俺が姉さんにしてやれることは、もう何もないのかもしれない。)
白雲「俺は姉さんに幸せになってほしいんだ。ただ……。……姉さんの中には、まだあの人がいる」
(それは俺にとって喜びであり、同時に大きな苦しみでもある。俺だって、この手で姉さんを幸せにしたい! けど、それはできない相談なんだ…!!)
白雲「まあ……忘れろってのは、無理だよな。俺は、その気持ちもわかる。なにしろ俺だって、こうやって今でもあの人の影響を受けてるんだから」
(あぁ、すまない、白雲! 俺は姉さんだけじゃなくおまえまで縛ってるのか…!!)
白雲「なんで、あの人は急にいなくなっちまったんだろうな。ずっといてくれりゃ、少なくともこんな思いはしなくて済んだのかもしれない」
白雲「って、なんでおれ、おまえにグチってるんだ!? こんな話、するつもりじゃなかったんだけど……。話しすぎた。忘れてくれ」
===
※こうして、この時空で1999年以降名月と共に生き、名月への非常に強い想いを持つ白雲を見て、改めて九十九はこの時空には自分の居場所がない事を強く感じ、さらに名月と白雲を(自分が与えてしまった)束縛から解放しなければいけないと考えて、最後に、胸の痛みに耐えながら白雲に言葉を残します。
=====
「――思いがけないことは突然、前触れもなくやってくる」
「世の中、納得いかないこともある。自分の力じゃどうしようもないことも起こる」
(思いがけないこと?どうしようもないこと? ――白々しい! 姉さんの心を縛ったその口で、何を抜かしてやがるんだ、俺はっ!!)
「それを乗り越えていく力が、人には必要だ」
(話しながら、胸を片手で押さえつける。この痛みは甘んじて受けいれなければならない。そして、)
「ただ、独りの力じゃどうしても乗りこえられない時がある。だから――」
(この痛みを受けながら俺は、姉さんと白くもの心を過去という「くびき」から解きはなたなきゃならない!)
「――だから、おまえが傍にいてやってくれ…!! 二人で力を合わせ、一緒に乗り越えてくれ!」
白雲「『いてやってくれ』って、姉さんの話か? なんでおまえ、そんなことを……」
「俺は一緒にいてやれない。ここから先には進めない」
「俺にはもう命が残されてない。けど、おまえは違う。おまえには、未来に進む命がある!」
(腹の底から湧きあがるままに言葉を吐きだす)
「踏みだせ! 思いきれ! 彼女と手をとりあえ! 過去を振りきれ! 未来に進め…!!」
(そうしながら、かたわらで眠っている姉さんを見つめる。本当は俺だって、もっともっと姉さんと一緒にいたい。二人で、今度は恋人同士で思い出の場所に何度も足を運びたかった。夜空を見上げたかった。秋が来て、春が来て……めぐる季節の空を、二人で……もっと一緒にいたかった! もっと生きていたかった! けど……だけど…!!)
白雲「ひょっとして……おまえ、まさか――」
「――頼んだぞっ!!」
(最後にその言葉だけを喉から搾りだすと、俺は身をひるがえして走りだした! 博士の家への道を走る。ふらつきながら走る。視界が涙でぼやけてやがる。手の甲でぐいっと目をぬぐう。泣くな、俺! 悲しいことなんて何もない。俺は白雲に姉さんを、未来を託したんだ。あいつならきっとやってくれる。俺の代わりに姉さんを守りつづけてくれる。あいつになら任せられる。おれの役目はここまでだ。あとは、ただこの世界から去りゆくのみ。旅立とう、震災前の世界へ……最期の日々へ! 姉さんに伝えたくて、けど伝えられなかった想いを胸に秘めて――)
===
※凄いシーンです。説明は不要です。逆に、あまり九十九に感情移入しない方がよいくらいでしょう汗

※そしてよく考えると、このシーン、この時空の九十九は、鏡一郎と非常によく似ていることに気づきます。
その時空に居場所がなくなっても、歴史を書き換える目的を果たして満足する…
C3で九十九が最後助けてくれなければ、鏡一郎は妻を救ったという満足感の中で津波に飲まれていたでしょう。一瞬鏡一郎はそれを覚悟したと思います。その時の気持ちはこの時の九十九と通じるものがあります。
最初?に2人が出会った2012年、名月を失った白雲が加々見教授のラボを訪れてタイムマシンで1999年に送って欲しいと依頼し、加々見教授が事情を聞いた時から、この2人の間には共有できる感情と、共通する強い意志がありました。そのおかげで、九十九は命懸けで音々と鏡一郎を救い、鏡一郎も自分のために命をかけてまで尽力してくれた九十九に報いるために、その後、常識では到底考えられないような壮大で感動的なサポートをすることになるのです。

※さらに無粋なことを言えば、この時九十九は、自分が1999年に名月と親しくなった結果、名月と白雲の心を縛ってしまったことに対して、心からの謝罪の念を抱きます。それは本当に心からの、偽りのない気持ちでした。なのですが………、
はい、皆さんももうおわかりでしょう。なんと彼は、1996年にもう一度それを繰り返してしまうのです………(ここは「笑」と書くべきなのでしょうか。それとも「涙」と書くべきなのでしょうか?)
=====
・九十九、1996/8/2に向かう(⇒C3)
・加々見教授、1996/7/23に向かう(⇒融合D1)

※その後の名月と白雲との関係は不明ですが、個人的には、この時空の名月は第1章より攻略(汗)は厄介だったのではないかと推測します。
(C3つまり第1章の名月が想いを寄せていたのは1999年の九十九ではなく1996年の九十九。この時空の名月にとって1999年の九十九は、自分と弟を助けてくれた上に、その直後に何も言わず消えました。C3の名月の心を縛っていた九十九とは1996年に5日間だけの接触でしたたが、この時空の名月にとっての九十九は、最初はストーカー扱いだったかも知れませんが1か月間一緒にいる期間がありました。そして最後には自分たちを身を挺して救ってくれたまま突然いなくなってしまったので、想いは相当強く残っているはずです)
※白雲はおそらく、この浜辺で一緒に戦った男が自分たちを1999年に助けてくれた九十九であることに気づいたでしょう。
それを白雲が、いつ名月に話すのか…も考えてみると面白い問題です。すぐ…かも知れませんし、告白して、それを受け止めてもらってから…という可能性もあるでしょう。アペンドが作られたなら取り上げて欲しかったポイントです。何しろここは、珍しい「名月が2012年以降も生き残る時空」であり「名月と白雲がハッピーエンドを迎えそうな時空」でもあるわけですから。(美々も九厘もいませんし…)

3.3 C2~C3時空あたりの疑問点
<A2B2C2時空の2012年から1996年に移動した九十九はなぜ融合しなかったのか>
※これは今でも残っている疑問点の1つです。
※残っている疑問点の中には、制作スタッフも承知の上でゴリ押しによって通してしまっている印象があるものと、見落としだったのではないかと思いたくなるものの2種類あります。前者の代表的なものは、後で書きますが、1999年に戻って名月の身代わりになって川に転落した九十九が、2012年に帰還した後すぐに発症したことです。名月の発症までには13年かかったのに…。そしてここで取り上げようとしている疑問は、後者のような気がするのですが…。

※1996年に移動してきた九十九は、普通に考えるとA2、B2から送られてきた九十九と融合します。しかし九十九が融合しているとすると矛盾が生じます。
※1996年に跳んで鏡一郎と会った九十九は、時間移動による時空の分岐についての説明を受けます。鏡一郎から、自分は君を2012年から送りだした鏡一郎ではない…と言われた九十九がなぜそんなことがわかるのかと尋ねると、鏡一郎は「私の送りだした”君”のつけていたバンダナは、緑色だった」と答えます。それを聞いた九十九は驚き、心の中でつぶやきます。
(いま俺のひたいに巻かれているバンダナは、紺色だ! 俺は緑色のバンダナなんて持ってない。ってことは……)
そして、時空が分岐していることを彼なりに理解できたのです。
この場面で、もし九十九がA2やB2の記憶を持っていれば、反応は全く違ったものだったでしょう。これはつまり、C2からC3に移動した九十九が、A2やB2の記憶を持っていないことを意味しています。つまり、C2から1996年に移動した九十九は、A2B2から移動した九十九と融合していないのです。
※シナリオの進行にはあまり大きな影響のない、言ってみれば小さな矛盾かも知れませんが、これを回避するために「何らかの事情でA2B2の九十九はこの日のさらに10日前の最も古い『出口』に送られ、C2の九十九のみ8/2に送られてきた」と仮定するのも無理があります。第3章で加々見教授が言っていた、同じ日時に別々の人間を送り込むことは危険という考えと矛盾するので。
加々見教授は最も古い出口に移動⇒(必然的に)九十九は2番目に古い出口に移動…という流れは不可避でしょう。
確実に九十九はA2B2C2の記憶を持って融合しますから、上に書いた九十九の心中のつぶやきと矛盾してしまいます。
ということで、制作スタッフに何かの見落としがあった可能性が高いのではないか…と思っています。
※ただ、「送り出す時間をずらして2人を同じ『出口』に送りこむリスク」を承知で、別の時空の加々見教授が九十九を自分と同じ最も古い出口に送り込んだ可能性は否定できません。そもそも震災での妻の救出に失敗した鏡一郎は3年後に再度1996年の震災前、最も古い出口に跳びますが、その行為自体「同じ出口に2人の異なる個体を送りこむ」ことにあたります。やむを得ずそれを選択しなければならなかったとは言え、そのリスクには目をつぶりました、同じことを九十九を送り出す時に考えてもおかしくはないでしょう。
(ちなみにこのリスクに目をつぶったおかげで、鏡一郎「融合」という現象に気づくことになります…)

※最近になって気づいたのですが…そもそもA2B2C2から過去の同じ日時に九十九が移動しても「融合」しないメカニズムだったのかも知れません。
例えば、A1A2とB1B2とC1C2の時空が分岐したのは1999/7/23で、教授はその日の「出口」に跳ぶたびに身体と記憶が融合しました。
一方九十九は、A2とB2とC2が分岐した後の1999/8/2に跳びました。それはすでに分岐後だったので、A2、B2、C2それぞれの出身の九十九は「融合」の観点からは別の個体と認識されて、「融合」には至らなかった…という可能性はあります。
つまり「過去への時間移動で分岐した別々の時空に存在する元々同一個体だった複数の個体が、分岐時またはそれ以前の過去の同じ日時に時間移動すると『融合』が起こるが、分岐時より後の過去に移動しても『融合』は起こらない」ということです。(もちろん「同一時空内」の元々同じ個体だった2つの個体が同じ日時に移動する時は、問題なく融合が起こるでしょう。エピローグの九十九②と白雲のように)
そうなってくるともう少し「融合」の条件を深く考え直してみる必要が出てくるので、これ以上深く考えるのは避けようと思います。

※A1B1C1時空で、2012年から1999年に移動してきた九十九でも同じことが言えます。ただし、こちらは「融合していたけれどそれに気づいていなかった」と考えることが可能だと思います。A1B1C1時空で白雲が時空移動前に経験してきたことはほとんど同じで、当然持っている記憶もほぼ同じものだったわけですから、融合したけれど単にそれに気づいていなかっただけと考えて矛盾はないように思えます。ただ、よく考えると、彼らが融合していれば、別の色のバンダナを持っていた自分のことを覚えている可能性が高く、矛盾が生じてしまうかも知れません。とするとやはり上に書いたように、A1B1C1から1999年に移動してきた九十九や、A2B2C2から1996年に移動してきた九十九は、(私がよく理解できていない)「融合」のメカニズムの関係上、融合しなかった…と考える方が正しいのかも知れません。

<九十九が感染からすぐに発症して死に至ったことについて>
・第1章のC3時空などで、名月は1999年の台風の日に川に転落した際に大怪我をした上に傷口から工場廃液を体内吸収したことが原因で病気に感染し、10年以上経った後に発症しました。そして発症後はあっけないくらいすぐに死んでしまいました。
一方C2時空などの九十九は、1999年に他時空の名月同様に川に転落して負傷・汚染しますが、彼は数日のうちに発症してしまいます。
この点は最初にプレーした時から疑問に感じていましたが、今でもよく理解できていません。
:この一見矛盾に思える点を解決するために最初に考えつくのは、この九十九は川に転落するのが2度目だということです。
よく知られた例を挙げるのであれば、RH抗体がわかりやすいかも知れません。
RH-の血液型の人がRH+の血液を輸血や妊娠などで取り込むと、RH抗体というものができます。その正体はRH+の血液などを破壊する科学的物質で、基本的には、異物が体内に混入した際にそれから守るための自然の摂理に叶った機能と言えます。しかし実際にはRH抗体がある人の体内にさらにRH+の血液などが入り込むと重篤な副作用が起きて死に至ることもあります。
九十九は幼少期に川に転落した際に名月に助けられ負傷はしませんでした。しかしほぼ間違いなく口から汚染物質を摂取していたでしょう。その際に抗体ができて、時間移動で再度1999年に名月と白雲を救う代わりに川に転落してその化学物質を体内摂取してしまい、すぐに発病してしまった…。(C3などの名月も実は、汚染した時に抗体ができて、その後2012年になって何かのはずみでその物質を再度体内摂取してしまって発病したのかも知れません)
もしそうだったとしても、C4の展開では誰も川に転落していないので、九十九も名月も何も心配せず余生を送ることができます。
・他に考えられる「こじつけ(汗)」としては…
①九十九が2012年に帰還した直後に博士から提供されたインスタントコーヒー、または保志と一緒にとまり木に入ったとき飲んだトマトジュースの中にたまたま、発症を促進する物質が含まれていた。
②青いバンダナの染料に発症を促進する物質が含まれていた。(第1章の名月も危ない!笑)
③名月と九十九の性差
④受傷部の違い(額はヤバかった…ということです)
⑤2012年に世に現れた新商品に含まれる化学物質の中にたまたま発症を促進するものがあり、名月・九十九共にそれを摂取してしまった(メッツコーラ?マルちゃん正麺?笑)
⑥時間移動が化学物質あるいは生化学反応に与える微妙な影響
…う~ん、何と言いましょうか…全て文末に「汗」と一文字書き加えたくなりますね…汗。まぁ強いて選ぶなら最初に書いた「抗体説」か④ならまぁ有り得なくもないでしょうか…。
ということで、これは今でもしっくりきていない「still謎」の1つです。

※ただ、この点については制作スタッフも十分に認識していました。
第3章で1999年から2012年に戻った九十九の体調がすぐれず病院に運ばれ、退院して博士のラボに戻る途中の心中ですが…
===
これって、ひょっとして……姉さんが入院したときの症状と同じか…!? 高島さんから「外傷以外」って言われたからつい考えから外してしまったけど、1999年の橋の崩落事故でおったケガが原因で倒れちまった可能性は十分考えられる。俺は姉さんの身代わりになってあの川に落ち、ケガをした。だとするなら、姉さんがそうだったように今度は俺が、傷口から体内へ有毒なモノを入れちまったのかもしれない……
「まさか、な……」
姉さんの病気はけっきょく病院でも対処できず、姉さんは発症からわずか数日で死んでしまった。もし仮に、俺が姉さんと同じ病気にかかってるとするなら、俺もまたろくな治療をうけられないまま、わずか数日で死――
「―――っ!!」
ゾクッ――背筋を悪寒がつらぬく。死ぬ…? あと何日かで死ぬかも知れないってのか? この俺がっ!? い、いや……落ちつけ。まだそうと決まったわけじゃない。たまたま状況が似てるだけかもしれない。だって……どう考えたって早すぎるだろ? 姉さんが川でケガして病気を発症するまで十年以上の潜伏期間があった。俺の場合は、タイムトラベルによってその期間をすっ飛ばしてる。ケガをしてからまだ何日も経ってない。だから、この症状があの病気によるものだって考えるのは気が早いと思うんだ。
===
…ということで、制作スタッフも、わかってはいたけれどゴリ押しで通したということなのでしょう。ならばそれに従うしかないですよね…笑

<1996年に時間移動した九十九は、B3時空では鏡一郎に会えなかったのになぜC3では会えたのか>
※A2で再度2012年に戻ってきたA1出身の九十九は、1996年に移動してもA3時空に鏡一郎がいないので無念の結果となったでしょう。
B2から移動した九十九とC2から移動した九十九は、ほぼ同じ状況だったにもかかわらず、B3では鏡一郎と会えなかったのに、C3では会うことができました。これも1つの疑問点ではあります。
※なぜ、ゲーム中に何も示されていないB3時空で九十九が鏡一郎と会えなかったとわかるのか…というと、B3時空で再び妻の救出に失敗した鏡一郎は再度1999年にタイムマシンで1996年の震災前に移動したからです。B系列のB1B2B3…の時空の鏡一郎または加々見教授が1996年の最も古い出口に移動すると、彼らは全て融合してC1時空に入ります。白雲=九十九の過去への時間移動によって分岐したC3時空の鏡一郎、つまり本編の第3章で九十九と震災前に出会った鏡一郎は、融合してC1に入った鏡一郎であり、このB系列の加々見教授と鏡一郎の全てを持っているのです。しかしこの鏡一郎はゲーム中で、1996年に九十九に会ったのは初めてと語っていました。これはB3時空では震災前に鏡一郎と九十九が会えなかったことを示しています。
※ただ、非常に微妙な「歴史の書き換え」が起こった影響でこのような差が生じたと考えても不思議ではないレベルでしょう。
※1996/8/2に時間移動してB2時空から分岐したB3時空に向かった九十九は、元々B1からの分岐なのでそこに鏡一郎は存在していましたが、何らかの事情で震災までに会えなかったのでしょう。鏡一郎はホテルに滞在していましたから、九十九は加々見教授の自宅などを必死に探したけれど発見できなかった…と推測され、こちらの九十九も無念の結果に終わったのは間違いありません。
※一方同じ日にC2時空に移動してきた(本当にほんのわずかな差だったのでしょう。九十九がタッチの差でタクシーを逃したとか…他の時空では出会えなかった鏡一郎と九十九がこの時空でだけは偶然出会い、それが歴史を大きく変えたのですね。そんなふうに考えると本当にこの世の全ては偶然で出来ている…と改めて認識できますシミジミ)
いずれにしても1996年に向かった九十九は川への転落・汚染を経験しているので寿命がまもなく尽きる運命であったことは確かで、様々な意味で不幸な境遇にあります。唯一C2~C3の九十九だけが、その活躍が自身の死後非常に大きな素晴らしい影響を残します。
(まぁ彼だけが3世代の名月とHできたわけですし汗、名月と音々を救ったという思いを胸に最期を迎えられたということは、不幸中の幸いだったと思います。実際にはこの後のC3時空では名月は2012年に急死してしまうのですが…)

※と、ここまで書いてしばらくしてから気づいたのですが………
実は「B3時空でも鏡一郎と九十九は会っていた」という可能性も十分にありました。B3時空でも、本編のC3時空と全く同じように九十九と鏡一郎は震災前に出会っていたと仮定すると、C3時空の鏡一郎の発言からわかるように、この時の鏡一郎は1996年の最も古い出口に向かわなかったので融合しなかった…ということになります。もしそうだったとして、理由はいくつか考えられます。
①C3時空同様、妻の救出作戦が成功した…この場合は確かにもう戻る必要はありませんね。
②震災で鏡一郎が死んだか、あるいは非常に重い障害を抱えることになった…例えばC3と同じ展開になって最後に九十九が鏡一郎を助けなかったとか。(この展開は悲惨な結末を生みます。この後、名月が2012年に急死することが確定してしまいます。タイムマシンを作れる人がこの世にいなくなるからです)
③あまりに救出失敗が続いて嫌になった鏡一郎が、意外にこちらの方が、と考え、初めて2番目に古い出口に移動してみた…これはさすがに「こじつけ」感満載ですね。
ということで、①の可能性はありそうです。というか、それが自然なのかも知れません。B3とC3に決定的な差はありませんから。
※このゲームの登場人物は皆そうですが、誰でも自分のいる時空を特別のものと考えたくなるものでしょう。でも実はそうではなかった。他の時空は「サブ」ではなく「パラレル」なんですね…。何の疑いも持たずB3時空でも鏡一郎の妻救出作戦は失敗したと思い込んでいた自分もまた然り。こういうところに「勘違い」が潜んでいます。ほとんどの疑問は解決したと思っていますが、実はまだまだたくさん勘違いしていること、気づいていないことがありそうです。そして…制作スタッフが勘違いすることがあったとしてもそれは仕方がないことなのかな…と思ったりもしています。

3.4 C3(1) 震災で加々見教授の妻と鏡一郎が生き残るまで:本編第3章「パラレルワールド」以降
※C2の2012年の九十九が1996/8/2(震災の5日前)に移動してきたために分岐した時空
※この時空は大変に劇的な展開を見せます。このまま2012年まで進んだのが第1章の世界になります。そして…加々見教授の妻こそ救われますが、このゲームの主要人物たちのほとんどにとっては、本当に救われない、絶望的な展開を迎える最悪の時空とも言えます。
そして…この時空での1996年の九十九の行動とその後の鏡一郎の取った判断は、本当に感動的としか言いようがありません。

[1996/8/2~8/7](ここに登場する名月と鏡一郎がそのまま後に第1章、第2章の名月と鏡一郎になることを忘れてはいけません)
・1996年に移動した九十九だが、出口であるラボには加々見教授はいない。
※ここでもちょっとした疑問点があります。タイムマシンから出て隣の部屋に来た九十九は、部屋の様子がほとんど変わっていないことに気づき、最初は時間移動に失敗したのかと疑問を持ちます(そりゃあそうですよね…CG使い回してますから爆。壁にかけられた作業服やバックパック、何気なく置かれた軍手などが全く同じ位置というのも汗。それはさておき…)。よく見るとPCのモニタが古臭いブラウン管タイプになっているなど、様々な相違点を発見した九十九は、やはりここは1996年のようだと判断しました。
※さて、疑問はここからです。震災での加々見教授の自宅の被災状況ですが…
まず第1章で加々見教授は、美々・名月・白雲と一緒にとまり木で食事中にタイムマシンについて「もっとも、当時動かしていたモノは震災で壊れてしまったんだがね。数々の貴重なデータが失われてしまった…」と言っています。また第3章で、死が迫り残された時間が少ない九十九が2012年から1996年の震災前に向かって加々見教授の妻の救出を手伝いたいと申し出た時の会話で加々見教授は「そして地震のとき妻は……正確なことは判らないが、妊娠していることを考えると、おそらく家にいた。家は震災後の津波で流された。そこで、たぶん逃げ遅れて犠牲になってしまったのだろう……」と語っています。
津波で流されてしまったら、部屋の様子がここまで震災前後で全く同じ…というのは不自然ではないでしょうか?
※この疑問に大した問題ではありません。壊れても建て直すときに敢えて全く同じ内装にした、と考えればよいだけなので。あるいは「家」は流されたけれど家の敷地内にある「ラボ」は高い耐震性を持っていて津波にも耐えた…う~ん、これはさすがに無理がありますかね。

・移動後九十九は、2012年から送り出してくれたC2の加々見教授に会えなかった場合に千関大学の毛利助教授に渡すようにと預かっていたMOを届けるため、毛利助教授の元に向かおうとするが、その途中繁華街で鏡一郎と出会う。
・分岐の概念をよく理解できていない九十九、親しげに鏡一郎に話しかける。しかし鏡一郎は自分が九十九を1996年に送り込んだ加々見教授ではないと語り、現在の状況(=自分が九十九を送り出した加々見教授ではないこと)を九十九に伝える。
※(分岐のシステムが理解できていればすぐにわかることですが…)この鏡一郎はC2(=C1)に1999年以前に存在していた鏡一郎で、A1A2B1B2などから来た鏡一郎の記憶が統合されていました(厳密にはこの鏡一郎の出身時空がB1なのかB2なのかそれ以外のどれかなのかは不明ですが、記憶さえ同じであれば同じ人間なのでそれは気にしなくてよいでしょう。ただ様々な記述よりB2出身と推測されますが)。C1やC2では妻の救助に失敗して1999年に再び1996年に向かい別のD時空に向かっていたはず。しかしこの時空ではここで九十九と会うことによりその後の展開が劇的に変化します。

((時間移動直後))
・鏡一郎は商店街の一角のシティホテルに滞在していた。九十九もこのホテルに滞在することになる。
・2人は鏡一郎がホテルで宿泊している部屋に行き会話する。鏡一郎は自分がこの世界で「凪鏡一郎」と名乗っていて、九十九は「凪九十九」と名乗るよう促す。この2人は震災で行方不明になる親子とのこと。ホテルのチェックイン用にその名前と住所の書かれたメモを鏡一郎から受け取ったメモをポーチに入れようとして、その中に入っている2つの、彼にとって不要なものを発見する。1つは移動前の鏡一郎から毛利助教授に渡すようにと依頼されていたMO、もう1つは移動前に名月に書いたが渡せなかった手紙だった。MOを鏡一郎に渡した九十九は、彼がPC作業に熱中する隙を見て手紙をゴミ箱に捨てた。しかし鏡一郎はしっかりその様子を見ており、九十九に突っ込む。
===
鏡一郎「何だ、それは?」
俺「ただの紙くずだ」
そう答えて、胸がズキッと痛んだ。これは紙くずなんかじゃない。俺の想いがつづられたモノだ! だからこそ、少しでも早く捨ててしまいたかった。そうしなきゃ、前に進めない気がしたから。
===

<手紙>
※この手紙に書いてあった内容は、C2時空からの移動直前、九十九が手紙について加々見教授に相談した時に内容を教えるようにと言われて口にしたところによれば…
「――俺はもう姉さんとは会えない。この先も会うことはない。姉さんの傍には俺と同じように姉さんのことを想ってる白雲がいる。もし姉さんにその気があるんなら、これからは白雲を見てやってほしい。あいつと幸せになってほしい――」
そんな内容でした。

※この手紙は…彼がこの世に残すたった2つの「遺品」の1つになります。もう1つはそう、青いバンダナでした。
もちろん彼は他にももっと多くの重要なものを残しました。直接的には音々と美々、そして鏡一郎の命を。そして彼の行動が鏡一郎の心を動かしたおかげで、最終的にこの時空の九十九は名月と共に、台風の日の川への転落事故を免れて2012年以降も生きていくことができました。しかし、彼の想いが「言葉」という形になって残ったのはこの手紙だけでした。
エピローグで全ての事情を説明され、この手紙を受け取った名月が中身に目にした時に何を感じたかを想像すると目頭が熱くなります。それはまさに、名月が愛した1996年の九十九が書いたものだったのです。(ただしその手紙は、受け取った名月以外の名月に向けて書かれたものではありましたが…)
名月を助けたもののその後会って話をすることもできない状況の中、名月を縛り付けていた「自分への想い」から解き放ちたいと必死の思いでこの手紙を書き、しかし手渡すことができなかった九十九の無念がようやく晴らされた瞬間でもありました。
※ここからは想像になりますが…気になった鏡一郎がゴミ箱をあさるとそこにあった封筒には「姉さんへ」と書かれていました。融合した鏡一郎ですから、それが死を覚悟した九十九が2012年に書き、名月に渡せずにうっかり持ってきてしまい、ここに捨てて行ったということはすぐ理解できたでしょう。鏡一郎はこの九十九の出身時空にはいませんでした。そしてこの時空から分岐したC4時空の2012年、エピローグのところで、鏡一郎はこの手紙に何が書かれているのかは知らないと九厘に話しています。なぜ名月に渡さなかったのか少し不思議に感じたとは思います。何気ない気持ちでその手紙をゴミ箱から取り出して、ホテルの引き出しの中にでもしまったのでしょう。
※本当に鏡一郎はこれをよくこの手紙を保管しておいたものです。感心します。震災後にこの手紙を発見したとき、それは九十九の「形見」だったわけで、彼への感謝の気持ちからそれをずっと保管していたのでしょう。そしてある日急に、これは時空が書き変わった後で名月に渡すべき…と気づいたのでしょう)しかしいずれにしても、この手紙を捨てずに、しかも開けずにずっと15年間保管し続けた鏡一郎の判断は素晴らしかったと思います。
※この「手紙」という言ってみれば小道具を、制作スタッフがよく考えついたものだと感心せずにいられません。プレー1周目のこの時点では、手紙が何のために登場してきたのかよくわからなかったのですが、最後の最後になって……。「そうくるか~!」と思わず声が出てしまいました。

・鏡一郎、九十九と会った瞬間、この時空では妻の救出に失敗したことを知る。(救出に成功していれば九十九が1996年に来る理由はない。失敗したからこそ後に、この時空にいる加々見教授が2012年に1996年に戻る必要があり、九十九もそれに同行することを希望する)
・このため、この時点で考えていた妻救出のための作戦を見直す必要があると気づく。
※このことが、この時空の鏡一郎が遂に妻の救出に成功するに至った最大の要因でした。
この部分は、タイムトラベルものでもあまり見かけない面白い点だと思います。「分岐」というシステムを理解する鏡一郎は、「融合」の力も借りて、この時点でこの時空の先に起こることが予測できたのです。九十九が送られてくる元となる時空では、この時点で自分が考えている救出作戦が失敗に終わったと知ることができたのです。これによって作戦を見直すことができたのです。
実際にはこれに加えて、九十九から得た影響が非常に大きかったことも見逃せません。この後の九十九との会話の中で新しい救出計画のアイデアを得ていますし、何より最後の最後に彼は、妻を瓦礫の下から救い出した上に、自らの命と引き換えに鏡一郎の命も救ってくれます。
加えて鏡一郎が「融合」という概念に気づく上でも、九十九の存在はほぼ不可欠だったと思います。

・鏡一郎はこれまでは九十九と1996年で出会った記憶がなかった。よってこの時空はこれまでと全く異なるものであり、妻の救出に成功する時空かも知れないという希望を抱く。
・九十九に時空の分岐について説明した後、1人になって寝付いた際、これまで何度も見てきた震災時に妻を救出できなかったシーンをまた夢に見る。目覚めた後に改めて分岐について考えるが、自分が九十九に初めて会ったのがいつなのか、1999年なのか2012年なのか…と考えるうちに、「自分は何度かのタイムトラベルを繰り返しているが、他の時空にいた鏡一郎・加々見教授の記憶も備えている」ことに気づく。これを元に「同じ時空の同じ日時にタイムトラベルしてくる複数の『元々は同一』の人物がいる場合、それらは身体・記憶が融合した1つの存在となる」という「融合の原理」に気づく。

[鏡一郎の行動]
・鏡一郎、救出計画の見直しを行いながら準備を進める。
・鏡一郎は震災の数日前、出産直前の妻の前に加々見教授の(実際にはすでに死んでいる)叔父と名乗って会いに行き、震災発生の際に被害を受けなかった病院に入院することを強く勧める。
===
それにしたって、叔父をよそおって愛する奥さんと対面するのは、辛いだろうな。みごと彼女を守りぬくことができたとしても、その後は他人として生きていかなきゃならないんだ。その気持ちが俺には痛いほどよく判る。

※この話を鏡一郎から聞いた時に九十九が感じたことです。2人は同じ思いを持ち共感し合うことができました…
===
・鏡一郎、地質データを毛利助教授に送って地震が数日以内に起こる可能性が非常に大きいことを伝え、「大きな被害が出ると予想されるので(おそらく元史A1では妻が津波に巻き込まれて会場で亡くなった)七夕まつりを中止するように」と、毛利助教授を通じて働きかけてもらうことにする。(この際のやりとりは、海外出張中の加々見教授を装ってその勤務上のメアドを使って行い、さらに加々見教授に気づかれないようそのやりとりのメールは自動的に消去されるように設定していた)
※この部分にも小さな疑問がありました。ゲーム中で描写されているように、鏡一郎は妻の救出に失敗した時の記憶を再三夢に見ます。その時の妻音々は自宅の倒壊した建物の下敷きになっており、また、C2時空から九十九を送り出す時に加々見教授は九十九に、おそらく妻は自宅にいたと思うと言っていました。もしそうなら、七夕まつりが開催されるかどうかは音々にあまり関係ないことにならないだろうか…そういう疑問でした。
※でもこれはよく考えれば納得できることでした。この時の鏡一郎は音々を、高台にあって安全な病院に入院させるつもりでしたし、実際に音々は入院してくれました。入院さえしてくれれば音々を震災から守れる可能性は非常に高くなります。残された不安要素は、なぜか震災直前に音々が病院から抜け出して危険な場所に行ってしまうことだけです。その危険な場所とは、「七夕まつりの会場」か「自宅」くらいでしょう。なぜか「七夕まつり」に出かけて震災発生時も海浜公園にいる…という事態を避けるために、鏡一郎は念のため、七夕まつりそのものを中止しようと考えた…そう考えれば、彼の行動は自然なものと理解できます。
※念には念を入れた作戦…のつもりでしたが、音々に取り付いていた運命の死神は執拗でした。慎重に慎重を重ねて鏡一郎が準備したいくつもの計画、それをすり抜けるように、この後の彼女はひたすら被災する方向へと進み続けるのです。(こういう本当に不運な人って、現実にもいると思います。短くない自分の人生を振り返ってみても、確かにそういう知人はいました…シミジミ涙。)
「世にも奇妙な物語」の「昨日公園」なんかも思い出してしまいますね…

<歴史の書き換えと運命の「復元力」>
※と、音々のことについてここまで書いてきて思ったのですが、これもこのゲームにおける「前提」の1つなのでしょう。
冒頭の1.1に「ある人間が未来からやってくることによって時空は分岐するが、一般的にはその個人が歴史を書き換えられる範囲は非常に限定的なので、ほとんどの歴史は書き換えられず、分岐以前と同様に進行する」ということがこのゲームにおける時間移動・歴史の書き換えについての「前提」であると書きましたが、この点についてはもう少し強烈なものが存在していると考えてよさそうです。
それは「時間移動による歴史の書き換えが発生しても、元史にできるだけ近い形に戻してその影響を打ち消そうとする強い力が働く」というものです。つまり、タイムマシンによる過去への時間移動によって歴史を書き換えても、書き換える前の歴史に戻ろうとする非常に強い「復元力」が働くことがこのゲームの大きな「前提」の1つだということです。
※鏡一郎の今回の音々救出作戦は、何度も失敗を繰り返した末の3~4回目の挑戦でした。最初の計画がダメなら2つめ、それがダメなら3つめ…と、手を替え品を替え周到に準備した様々な手段を繰り出しますが、その度に音々は震災で被災するような選択をし続けました。そして最後は九十九の命を犠牲にしてようやく救出に成功しました。
※これはこのゲームの随所で感じられることです。例えば2012年に白雲と名月の関係を進展させるために不可欠な九十九の「告白」というイベント。白雲はずっと名月に思いを告白したいと強く思っていましたが、一方それをしてしまうと現在の名月との関係に亀裂が生じてしまう可能性が高いと考えてそれを我慢していました。しかし第1章では美々が白雲に告白するシーンを見ていた名月にそのことを指摘された白雲が、衝動的に告白してしまいます。美々が白雲に惹かれたのは、沼淵弟達に美々が襲われる場所にたまたま白雲が現れて彼女を助け出したからでした。この時空はC1が書き換えられたものでしたが、C1では美々の位置に春日森がいて、春日森が沼淵弟に襲われることで同じ流れに入ります。この時もなぜか名月は春日森が白雲に手作りクッキーを渡すところを見ていました。
※第2章でも九十九は歴史の書き換えに大変な苦労をしました。沼淵兄が九十九②を1996年の九十九と勘違いして戦いを挑んだ結果、九十九②は入院して数日間意識不明、目を覚ました時は橋の崩落事故の直前でした。これはC3時空ですが、おそらくはC1時空でも同じようなことが起こっていたと推測できます。名月は非常に強い「運命」とも呼んでよい力で事故に遭うように導かれていたと考えることができそうです。
※第3章でC2時空の九十九が1996年に向かうことを決意したことも、名月が崩落事故に遭うという元史に引き戻そうとする力が作用した…と考えることもできそうです。この時間移動によって新たに分岐する時空では、再び名月は崩落事故に遭うことになるので。
※もちろんこれはあくまで制作側の定めた「前提」です。元々科学的な根拠はない世界ですから、「前提」の中で矛盾が起こらなければそれでよいのです。ある意味ご都合主義と呼べるものかも知れません。しかしこの前提がこのゲームのストーリーを大きく盛り上げることになったこともまた事実でしょう。
※何というか、「歴史=時間の流れ」の持つ大きな力を感じました。「そのように時間が流れたことには必然性があった」ということです。
「もしあの時○○だったら歴史は変わっていた!」みたいなTV特番をたまに目にしますし、超個人的なレベルでも「あの時ああしていればよかったかな…」といった後悔をする場面は、誰にでもよくあるのではないかと思います。でも何となく(このゲームをプレーした後では特に汗笑)感じることですが…何をやっていても結果は同じだったんだろうな、と割り切って、意味のない後悔をやめて現実を素直に受け止めることが肝要なのでしょうね。

[九十九と名月]
・九十九、夕飯の買出しに行った際に、小さな男の子がチンピラにからまれている現場に遭遇、割って入って戦う。ザコチンピラだったので軽くあしらい、トドメを刺そうというところで発作に見舞われ形勢逆転してピンチに陥るが、その場に少女が現れ、警察を呼んだと伝えて不良を退散させる。九十九はすぐにそれが若い頃の名月と認識する。2人はお互い名乗ることもなくそのまま別れるが、名月は九十九に好意を持つ。
・九十九は偶然翌日も海浜公園で名月と会うが互いに作業があったためすぐ分かれる。
・その後、公園の帆船上で小さな男の子を抱く、この時空の名月よりちょっと上くらいの女の子に出会う(後の九厘であることは確実)。
※このシーンで、小さい男の子を抱く女の子(~九厘)は、全く気配を感じさせず知らない間に九十九の前に現れた…と書かれています。そういうことに敏感な「ゴルゴ九十九」が人の気配に気づかないのはめったにないことです。九厘が気配もなく現れるシーンはその後何回もこのゲーム中に出現します。何かの伏線なのかな…とも思いますが、個人的には回収できていません。どこかで回収されるているのかなぁ…?

・その少女が去ったところで発作を起こした九十九は義姉・名月の夢を見る。誰かの泣き声で目を覚ますと、この時空の年下の名月の膝枕で眠っていた。九十九が泣きながら寝ていたので感情移入して名月も泣いてしまったのだった。彼は名月に、自分は病気持ちであることを軽く話し、体調が戻ったことを伝える。名月から昨日の約束通り付き合って欲しいとせがまれて、海でカナヅチの名月に水泳を教えることになる。別れ際、九十九は自分の死期が迫っていることもあり、ここで名月と親しくなっても結局彼女を悲しませるだけという配慮と、名月が自分と過度に親しくなると後々の彼女の人生に影響を与えかねないという心配から、会うのはこれで最後にしようと決心する。(この日、九十九は名月の名を知るが…というか元々知っているけど汗、名月には教えずこの日以降別れる時まで「お兄ちゃん」と呼ばれる。なお初対面の日、名月は九十九を「お兄さん」と呼んでいた)
・九十九はその後病院で、鏡一郎の勧めに従って入院してきた音々と会話してこの女性とお腹の中の子供を守るという決意を一層強める。彼女との会話の途中で、自分が(チンピラに絡まれた男の子を救ったことで)歴史を変えてしまい、このままでは名月の身に危険が降りかかると気づく。(元々は名月が男の子を助けに入り、チンピラに絡まれたところに助けに入った高島が殴られて入院、震災の瞬間高島の見舞いで安全な場所だった病院に来ていた名月は難を逃れた)
・翌日(震災の前々日。七夕祭りが始まる前日)、九十九は書き換えてしまった歴史の影響を打ち消すため、前日の決意を取り消して海浜公園に名月を探しに行く。発見した名月に会い震災発生時には安全なところにいるよう伝えるが抵抗を感じている様子だったので、その肩に手を置き、彼女をじっと見つめて訴えるように再度明後日の夜は絶対に安全な場所にいるよう伝える。
===
「俺は、名月にずっと生きててほしい。傷ついたり苦しんだりしてほしくない。名月を辛い目に遭わせたくないんだ!」
「名月には、震災を無事に乗りきって、ずっと元気に過ごしていってほしい」
===
名月は素直にそれに従ってくれることになったが、一方その九十九の必死さがますます名月の彼に対する好感を高めることになる。
その後また海で名月に水泳を教えている時、名月は海であおむけになって浮かびながら九十九に語りかける。
===
「……お、お兄ちゃん。っ……あのね?」
「お兄ちゃん……さっき地震の話したとき、わたしに『生きていてほしい』って言ってくれたよね?」
「会ったばかりのわたしにそこまで言ってくれるのは……どうして、かな?」
「『つらい目に遭ってほしくない』とか……」
九十九「言葉のままだ。名月に生きててほしいし、つらい思いやイヤな目に遭ってほしくない。そう思ったんだ。……それじゃ、答にならないかな?」
「っ……どうして、そう思ったのかな?」
九十九「そりゃ名月のことが――」
九十九「――なんでもない。忘れてくれ」
「……そっか、そうなんだ………」
(しまった……最後まで言わなかったものの、俺が言わんとしたことは雰囲気で何となく伝わってしまったかもしれない。名月は頬を赤らめて口をつぐんでしまった。)
===
※このシーンの名月は本当にかわいいです。スク水で海にプカプカ浮きながらの会話ですし笑。CVも素晴らしい。さすがアグミオン…
※でも何と言うかその…そりゃぁそうですよね…(笑)。九十九のこのシーンの前の言葉は、失敗と言えば失敗でした。まあ九十九がこの世で最も大切にする存在ですから、それはきっと、本当に心のこもった説得だったと思いますし、名月の心を動かしたのは当然のことでした。でもこれで名月の恋心に完全に火がついてしまいました。必死の行動でどんどん自分が窮地に追い込まれることになる…(これはまぁ、嬉しい窮地でしたけれど笑)。このあたりが九十九=白雲という人間の愛すべき点なのでしょう。とてもよいシーンでした。
(なぜ1996年の名月が九十九を好きになったのか理由がよくわからないとか、チンピラに絡まれている男の子を助けようとしただけで好きになってしまうのは理由が薄すぎるといったコメントをレビューの中で見かけることがありますが…う~ん…理由は十分すぎるくらいあるのになぁ…って思わずにいられません。それと1996年の名月とのHシーンが少ないというレビューもよく見かけますが………うん、これは同意せざるを得ないです汗。時間がもう、告白して恋人になって震災まで24時間しかありませんし、震災の日は10時過ぎからずっと事件でしたから仕方ないとは理解できますが…せめて震災の日の朝、なぜか朝7時ごろにはもう名月が九十九のホテルの部屋に来てしまう…とかいう展開にして無理矢理もう1シーン入れて…笑。まぁ設定上?後ろしか使えないのでバリエーションは乏しいでしょうけど汗)
※エピローグで鏡一郎から全てを聞いた名月は、九十九と白雲が帰還するまでの5日間、こういうシーンを1つ1つ思い返していったのでしょうね…。(そういう回顧シーンを少しくらい本編に入れてもよかった…というか、入れるべきだったのではないかと強く感じます)

・名月との別れ際、地震が起きた後どうするのかを尋ねられた九十九は、何も考えていなかったこともあり動揺するが、すぐに寿命が尽きることがわかっていたので、これ以上名月を縛り付けてはいけない、自分がその後の彼女の人生に与える影響をできるだけ小さくしたい、と考え、
「地震のあと、俺は遠いところに行かなきゃならないんだ」と話し、明日も忙しいので会えない、会うのは今日が最後と伝える。名月は別れ際に九十九の頬にキスをする。
「――お別れのキス。わたし、子供だから……べつに、こういうことしてもいいよね?」
「あとは『また会えるといいな』って……わたしの、おまじない!」
名月がバスに乗ろうとする時、つくもは心を鬼にして一言「さようなら、名月」。
名月は悲しそうに諦めたようにかすかにうなずいて、バスのドアが閉まる直前に「――またねっ!!」と叫ぶ。
一人バスの中で涙があふれてくる自分の気持ちに?になる名月だった。なぜ3日前に会ったばかりの人との別れがこんなにも…?

[~震災前夜(七夕まつり初日夜)]
・九十九と鏡一郎、とまり木で夕食をとる。その後喀血し病院に運ばれる。(第2章で出てきたとまり木のマスターの回顧の中の、エビアボガドのマヨネーズソースライスの試食とアドバイスを送るシーン)
・震災前々日、市が翌日から始まる七夕まつりの予定通りの開催を決定。鏡一郎、万一に備えて次の手段(偽装テロ作戦)の実行準備を開始。
(毛利教授を通じて七夕まつりの開催にプレッシャーをかけたり、この後偽装テロを行ったりしたのは、鏡一郎がこの時空で九十九が会えたからでした。想定していた作戦で失敗することが事前にわかったことと、1人でも多くの人を助けたいという九十九の言葉を聞いたことがその背景にありました。鏡一郎が思った通り、「成功する時空」だったのです)
・震災前日の夜、九十九は鏡一郎の指示に従って七夕まつり会場である海浜公園のあちこち20箇所ほどに簡易爆弾を仕掛ける作業を行う。
・その頃名月は海浜公園で捨て子を見つけ (捨てたのは九厘、その子が後の白雲であることは確実…ということは…)、直後に沼淵兄の集団に襲われる。作業中偶然その場に遭遇した九十九が集団を制する隙に名月はその場から逃げ出し、捨て子を届けた後、海浜公園を走り回り九十九を必死に探す。なかなか発見できない名月は最後の期待を込めて帆船に向かう。
・九十九は沼淵と決着をつけるよりその場から逃げ出す方を選択し成功、作業を続ける。途中喀血するも、最後の1個を帆船内に設置完了。
・直後の帆船の上、花火が上がり始めたタイミングで九十九と名月は出会う。名月はこの時初めてこれが男の人を好きになることなんだと気づき、九十九が好きだと告白する。九十九も悩んだ挙句自分も好きだと答える。

※まもなく尽きる命、これ以上親しくなるとお互い別れが辛くなるだけ…と考えて名月を拒否しようとする九十九でしたが、残された時間が短いならその時間を無駄にせずずっと一緒にいたいという名月の訴えについに心を動かされ、それを受け入れます。
抵抗していた理由の1つは、この時彼が口にした「たがいに好きになって、深く付き合えば付き合うほど、その後に辛く悲しくなってしまうんだ」という言葉の中によく表れています。しかしそれを聞いた名月は…
===
「そんなの……わかんないよ! どんなに辛くなるのかなんて知らないし、辛くなったって構わない!」
「でもお兄ちゃんがもうすぐ遠くに行っちゃうのに、もう会うのをやめたら、わたしはすごく後悔する!」
「今ここに一緒にいるのに、『もう時間がないから』って別れるの、変だよ!」
「ひどいよ……そのほうが、つらいよ……」
===
と訴えかけます。そして最後は鏡一郎の「君は”君の時間”を過ごせ。それは君だけのものだ」という言葉を思い出して、自分も好きだと答えます。
===
「好きだよ。俺も名月のことが、好きだ」
「正直に言おう。俺の答えは、あの日からもう決まってる。……名月と出会ったあの日から。」
「俺も、名月のことが好きだ。残された時間は少ないけど……俺と一緒にいてくれ、名月!」

「もう訂正は効かないぞ。あとでどんなに悲しくなったって知らないからなっ」
名月「うん!お兄ちゃんがいなくなったら、いっぱい悲しむ! いっぱい泣く! でも……ぜったい、絶対、後悔なんかしないんだから!」
「っ……ありがとう……ありがとう、名月ッ…」
(悲しんで、泣いて……けど後悔しない――その言葉にどんなに救われただろう! 最後の日々に名月とめぐりあえて……そして心を通わせることができて、本当によかった…!!)
===
そして2人は抱きしめ合い、キスします。そして一緒に震災までずっと一緒にいることにします。

<このゲームの決めゼリフの1つ「答えは、あの日からもう決まってる」を最初に言ったのは名月?白雲?>
※こうやって考えてみると、ゲーム中何度も登場する決めゼリフ「答えは、あの日からもう決まってる」を最初に口にしたのが果たして、名月だったのか白雲=九十九だったのか…は、かなり難しい問題ですね。でも私はこの時の九十九の言葉が最初だったのではないかと確信しています。この九十九が時間移動前のC1時空で、白雲として一緒に過ごした義姉・名月は、1996年にも1999年にも九十九に会っていません。彼らとも「約束」はしておらず、心を囚われるものは何もなかったはずですから、この言葉を口にすることもなかったと思います。つまり白雲=九十九もこの言葉をこの時までに聞いたことはなかったはずです。
※よってこの言葉は、C3時空の白雲がこの時考えたものだったと推測できます。一方この時この言葉を九十九から聞いた名月は、それ以降(C3時空の第1章において)この言葉をよく使うようになり、それを聞いた白雲や九十九もまたこの言葉を使うようになったのでしょう。

・その後名月を連れてホテルに戻り、名月の希望もあってHすることになる。九十九は2012年に義姉・名月と結ばれた時に名月が処女だったことを思い出し、それ(要するに前(汗))はこの時空の白雪に任せることにして、後ろを使うことにする汗アセ。
※タイムパラドックス?を気にした?九十九のギリギリの判断でしたね…汗笑

[震災当日]
・震災当日の朝9時、鏡一郎は万一の状況に備えて海浜公園に向かいそこに待機する。
・一方名月は、母からの後押しの一言もあり(※まぁそんなのなくても絶対そうするよなぁ…)、震災時に九十九と一緒にいることを決意し、九十九も(計画が予定通り進み、震災発生時に音々が病院でおとなしくしていることが確実な状況が確認されたら)震災の発生を名月と完全な場所であるホテルで待つことにする。九十九は名月に、「自分のミッションは、ある病院に入院している、非常に世話になっている人の親戚(要するに加々見教授の妻音々だが鏡一郎の親戚ということにしてあった)の身の安全を監視すること」であると伝える。
・午前10時前、約束通り名月は九十九のホテルの部屋を訪れる。すぐ一緒に病院に向かうがすでに音々は外出許可をもらい夜までの予定で外出していた。受信機によって海浜公園に向かっていることが判明。鏡一郎は九十九に、音々を探して病院に戻る説得をするよう依頼し、必要ならばいつでも偽装爆弾テロを起こせるよう準備して待機する。
・名月が音々を発見する。友人とここに来ていた音々は、昔この日8/7の夜に加々見教授からプロポーズされたので、震災の危険は理解できるがそれでも今日の夜だけはこの場所にいたいと、外出した理由を語る。九十九からこれを伝えられた鏡一郎は、何回も救出に失敗した1つの理由がそれだったと気づきショックを受けるが、九十九の励ましに気を取り直し、偽装爆破テロ計画を実行に移す。
・偽装爆破テロ計画は成功し七夕まつりはその時点で中断、音々も友人の車に乗る。しかしすぐに病院には向かわず友人とその子供たちと共に自宅に向かう。夕方友人が帰宅することになり病院まで連れて行くことを提案するが申し訳ないのですぐタクシーで行くと伝えて友人を先に返す直後に破水して動けなくなる。
※気持ちはわからなくもないのですが、本当に世話が焼ける女性でした…汗。もちろん彼女を責めてはいけません。き彼女は天災の被害者であって、普通なら何の問題もなかったでしょうから…と、ここまで書いていて思ったのですが、自宅に戻って破水で動けなくなって何もできない状態になっていたら、実は地震が来なくてもヤバい状況ではないでしょうか…?汗汗。
※詳しくはすでに<歴史の書き換えと運命の「復元力」>に書いたとおりです。鏡一郎が何度救出を試みても、歴史を書き換えようとしても、彼女はそれを巧みに?すり抜けて命が尽きる方に向かって行ってしまう運命でした。つまり「書き換えても元に戻ろうとする強い『復元力』が働いてしまうのです。そしてようやくこの時空で歴史は書き換えられました。九十九の命と引き換えに、彼女は震災の悪夢を乗り越えたのです。

・夕方にようやく病院に帰った九十九と名月、音々が戻ってきていないことに気づく。受信機を見て音々は自宅にいると分かり鏡一郎に連絡。
・鏡一郎は自宅に向かい、震災発生直前に音々を発見、倒壊するとわかっていた建物から音々を引きずり出したところで震災が発生して、音々は無事だったが鏡一郎は倒壊した家屋の下敷きになって身動きがとれず、救出も難しそうな状況。右足はひどい骨折をしたが他は傷ついていない状態。そこに九十九と名月到着。
・鏡一郎、自分は見捨てて音々を安全な場所に運ぶよう九十九に指示。街中に向かう道はその時点でも渋滞が続いており津波から逃げ切れない状況だったが、この事態をこれまでの失敗から事前に知り準備していた鏡一郎は、逆に海側に向かい津波が来ても奇跡的に無事に陸上に運ばれることがわかっている海浜公園の帆船の上に音々を連れて避難指示するよう伝える。
※すごいです!さすがは鏡一郎!と思わずにいられません。これも「融合」の効果でしょう。思えば数日前に鏡一郎が見た夢の中では、鏡一郎は自宅の瓦礫の下にいる音々を助け出せませんでした。失敗の中でも最悪の結末で、夢に何度も出てくるのも無理はなかったでしょう。こういった経験から思いついたアイデアだったのでしょう。ただ、現実的にはいろいろな意味で非常に怖い行動であり、冷静に考えると羽生・音々・名月も3人はよく言うことを聞いて海に向かい、帆船に乗ったものだと感心します。鏡一郎と九十九のことを心から信じていなければとてもできるものではありません。津波に流されてどんどん陸上に上がっていくときも生きた心地はしなかったことでしょう。

===
九十九の独白:あんたを見捨てて置き去りにするなんて、できることなら、したくない。けど、あんたを助けようと時間を費やせば費やすほど、音々さんのリスクが増大してしまうのは確かだ。あんたがこの時のために頑張ってきたことを、大切な人を守るため他のすべてを犠牲にしてきたことを、俺はよく知ってる。俺があんたと同じ立場だったら、まちがいなく、ためらいなく、同じ決断をする! だから……俺は、あんたを見捨てる!!
「――後は任せろ。音々さんは、かならず俺が守ってみせる」
「ああ……よろしく、頼む」
博士は安心したように、ほほえんでくれた。
===
・鏡一郎、車の鍵を九十九に渡すが、九十九は運転ができなかった。偶然、車の運転ができる沼淵と連れの羽生がやってきて運転を変わってくれることになった。九十九は音々と名月と一緒に乗り込む前に、鏡一郎に礼を言いに戻る。
===
「あんたのおかげで、俺はこの最後の日々を有意義に過ごすことができた。これで俺は思いのこすことなくなく逝けそうだ。だから、ありがとう」
「その言葉は……私が、君に言うべきだ。……感謝しても、しきれない。本当に、ありがとう」

※鏡一郎の九十九への感謝は、死を覚悟した上での、嘘偽りない気持ちだったでしょう…
===
・車に戻ろうとした九十九は強烈なめまいに襲われ自分の病状を思い出す。改めて残された時間が非常に少ないことを認識して気持ちが変化、可能性がある限り鏡一郎を助けようと決断する。ただし名月をこの場に残らせるのは危険なので、名月をその場から遠ざけて避難させるため、絶対に守れない嘘の約束をする。
===
九十九「大丈夫だ。何も心配いらない。俺はかならず生きて帰る。名月とまた巡りあうために」
名月「……ほんとに? ほんとに……ほんとに、ちゃんと帰ってくる?」
九十九「ああ。言ったろ、おれは博士を助けたいんだ。博士を助けようと思ったら、まずは俺自身が助からなきゃならない。俺に博士と心中するつもりはない」
名月「……………」
九十九「俺はかならず名月に会いに戻ってくる。約束する。その証に、名月にこれを預けとく」
名月「お兄ちゃん……その、ひたい……」
九十九「そういえば、名月の前でバンダナとるの初めてだっけ。これはナツキを助けたときにできた傷痕だ」
名月「え、わたしを?……昨日の夜のこと?」
九十九「いや、もっと前の……”もっと先の”かな?」
名月「…………?」
九十九「とにかく、この傷痕を隠すためにそのバンダナは必要だ。かならず、とりに行く。だから、それまで名月に預かっててほしい」

九十九「名月が心配しているように、たしかにこの場では離ればなれになっちまう。けど、互いに生きていれば必ずまた会える。そして、俺は生きのびてみせる! あの帆船で再会しよう。あの帆船の甲板で待っていてくれるか、名月?」
名月「っ…わかった……わかった……待ってる、待ってるからぁ…。だから、かならず…………かならず…とりに、来てよ?」
九十九「あぁ、かならず行く。約束する」

※これは…何年でも待ち続けるなぁ汗涙
===
・沼淵もその場に残り、九十九と協力して鏡一郎を瓦礫の下から引き出すが、代わりに九十九が瓦礫の下敷きとなる。その時九十九が喀血し、沼淵に、震災などなくても病気でまもなく死ぬ状況であることを伝えて、自分を置いて鏡一郎と安全なところに行くよう指示する。
===
「つくも……君とってはこんな結果になってしまって、大変申し訳ない。謝罪のしようもない。」
「そう思うんなら、せいぜい長生きしてくれよ。そうしてこそ俺は報われるんだからな」
「本当に世話になった。……ありがとう」
あの博士がこんな感傷的な顔をするなんてな。思わず苦笑がこぼれてくる。
「さよなら、博士。――さぁ、行け! 後は自分たちのことだけ考えろ! 生きのびることだけ考えろ…!!」
===
・沼淵は九十九の言葉に従い、バイクに鏡一郎を載せて安全な場所へと向かう。
・残された九十九。最後に義姉・名月を思い出すシーン。そして…津波の到来が早かったのか病気の進行が早かったのかは不明だが…
・赤ちゃんの泣き声。無事音々が美々を出産。

※こうして九十九はこの世を去り、鏡一郎は右足を粉砕骨折するものの生き延びることができました。音々は震災を乗り越えて生存し無事美々を出産。そして名月は九十九からもらったバンダナを肌身離さず身につけて、九十九を待つ日々を送ることになります。
※この時空で、1996年の震災で亡くなった九十九を知る者(1996年にいた6日間に彼と接触があった人)はごくごくわずかでした。
鏡一郎、名月、音々、九厘(震災で記憶喪失になり九十九のことは覚えていない)、白雲(記憶には残っていないでしょう)、沼淵兄、羽生、とまり木のマスター、九十九が助けた男の子…。

※九十九は何も考えていなかったと思いますが、自分の命と引き換えに鏡一郎を助けたことには、非常に重要な意味がありました。
もしこの時九十九が鏡一郎を助けなければ、名月はほぼ間違いなく1999年に川に転落して2012年に急死する運命から逃れられません。
音々を失った加々見教授がそれを人生のすべての目的にして心血を注ぐことでタイムマシンは完成しました。音々を失わなかったこの時空の加々見教授はタイムマシンを完成できないのです。タイムマシンを作れる人がいない、時間移動ができない時空になってしまうのです。
九十九が自分の命と引き換えに鏡一郎を助けたその行為が、まさにその名月を救ったのです。

※そして…このゲームのシナリオにおいて非常に重要なことは、音々の救出に成功し、自らも九十九が身代わりになったおかげで生き延びることができた鏡一郎が、この時に何を考えたのかということです。次の章で詳しく書きます。

3.5 C3時空で震災から妻を救出することに成功し自分も生き残った鏡一郎が考えたこと・したこと

<1996年に音々を震災から救い出すという歴史の書き換えに成功し自らも生き残った鏡一郎が考えたこと>
※最初の方でも取り上げましたが、自らが最初の時間移動を行う直前の2012年の九十九と加々見教授の会話です。
「奥さんを助けるのはいいとして……その後、あんたはどうなる?」
「そこで今の私の目的は終了する。あとは、そこからまた別の人生が始まるだけだ」
この時の加々見教授は、もし作戦がうまくいって妻音々を救う時空を作り出しても、そこに自分の居場所はなく、自分が音々の妻として、美々の父として生活することはできないことを認識し、覚悟していました。それでも、音々が生き残り美々もこの世に生を受ける時空を作りたい一心でタイムマシンを製作したのです。当然その時空で自分も生きて遠巻きに幸せな加々見一家を見ることができればそれに越したことはないが、状況によっては自分の命も投げうつ覚悟だったでしょう。

※しかし1つだけ、加々見教授の予期せぬことが起こったというか、判明したのです。それは「融合」という現象でした。
1996年に音々を救出した加々見教授は、この時点で「融合」の原理を知っていました。
加々見教授に事情を伝えて、後にエピローグで九十九と白雲を融合した時と同じことをしてもらえば、記憶を持ったまま、音々の妻、美々の父としての生活を取り戻せるのです。ずっと諦めていた最善の結末を迎えられるのです。
当然鏡一郎はそれがわかっていたはずです。ではなぜそうしなかったのでしょう?
(自分のことだけを考えるのであれば間違いなくそうするでしょう)
元々諦めていたから?年齢が大きく違っているのでうまく融合できるかわからないから?…これは理由としては弱そうです。
九十九や鏡一郎のように同じ想いを共有する者同士ではないので、うまく融合できるかどうかわからないから?…これは少し理解できますが…
でもそれらは対した理由ではなかったのです。

※妻を失った加々見教授(その後鏡一郎になる)は、タイムマシンは自分が妻を救うことだけに使うと決めていたのです。だから目的を果たした後には、破壊してこの世に存在しなかったことにしてしまうつもりでした。いくらでも悪用することが可能であり、社会を大混乱させるものであることは確か。存在が明らかになれば、使わせて欲しいという人が殺到するでしょう。それは何としても避けたかった事態でした。
タイムマシンは妻と自分の歴史を書き換えるためだけに使う…それが彼にとっての大原則だったはずです。
「時間移動して歴史を書き換えることは許されざる禁忌である。しかし妻のためにあえて自分はその禁忌を侵す。」それが科学者として、そして人間としての彼の気持ちであり覚悟だったのです。妻を救うという目的を果たしたら、2度とタイムマシンを作らないと決めていたのは間違いありません。
この時点で妻が生存し妻子と共に生活する加々見教授が自力でタイムマシンを完成させることはほぼありません。このまま融合しなければ、彼のタイムマシンは永遠にこの世から消えてなくなります。それが彼の希望でした。これが「融合」の原理に気づいても、別の存在である加々見教授とは融合しなかった大きな理由の1つでしょう。

※しかし…想定外のことが起こり、それが彼の心の中に1つだけ問題を残しました。言うまでもなく九十九のことでした。
※タイムマシンの動作検証のためとは言え、最初の人体実験として白雲をタイムマシンに乗せたことが間違っていたのかも知れません。彼のおかげでタイムマシンの人体実験は(鏡一郎にとっては)成功に終わりました。しかしその実験が原因で、九十九は命を奪われました。タイムマシンが自分以外の人間の歴史にも影響を与えてしまい、結果的には彼は時間移動が原因で命を落とし、さらにこの時空ではおそらく九十九の命懸けの努力と行動も虚しく、名月は2012年に急死するでしょう。このことに彼は非常に大きな責任を感じていたはずです。
※それだけではなく、何回もの失敗を繰り返した後にようやく妻を救うことができた背景に、九十九の大変な尽力があったことも事実でした。
さらに最後に九十九は、自分の命と引き換えに鏡一郎を救ってくれました。
その恩に報いるためにも、助けられたこの命、残された人生の全てをかけて、九十九の遺志に応えなければならない…
※融合しても九十九の願いを叶えるための活動を行うことはできたでしょう。しかし、そのために何をせねばならないかを考えたとき、加々見教授としての仕事や家族と過ごす時間などと両立させることは不可能と判断した…ということも理由の1つだったのかも知れません。

<なぜ鏡一郎はその後の人生を九十九のために生きようとしたのか>
理由は次のようなものでしょう。
①九十九への謝罪の思い
自分が妻を助けるために完成させたタイムマシンが、結果的に九十九を不幸にしてしまったことに対する謝罪の念。
加々見教授は震災で妻を失ったあと、全てを捨ててタイムマシンを完成させて妻を救い出すという願いのためだけに人生を捧げました。
その目的のためであれば、自身が多少の反社会的な行動をすることがあってもやむを得ないと考えていました。
しかし加々見教授は、2.2にも書いたように自分の研究に対する責任感が強い方だったと思います。
九十九は時間移動で名月は救えたものの、元の時代に戻ってみればそこに自分の居場所がなくなっていただけでなく、名月救出時の負傷・感染により自分が身代わりになる形でまもなく命が尽きる状況に陥ってしまいました。九十九にとって絶望的な展開でした。それに対して加々見教授は強い責任を感じていました。自分の計画が、つまりタイムマシンが結果的に他の人を不幸にしてしまったと。
(しかし九十九はそんな鏡一郎を恨むこともなく、感謝の気持ちを伝えてくれました。)

②九十九への感謝の思い
命に代えて妻と自分を震災から救ってくれ、自分の長年にわたる願いが叶えられた。振り返って考えてみると、九十九がいなければ絶対に妻は助けられなかったでしょう。また彼は時間移動の最初の人体実験に協力してくれた人物であり、彼のことを考えることで「融合」という現象を理解することができました。さらに1996年の震災前の期間では、九十九との会話の中で妻の救出作戦について新しいたくさんのアイデア(偽装爆破テロなど)を得ることができ、それも救出作戦が成功した大きな要因でした。いくら感謝しても感謝しきれない…その思いは非常に強かったはずです。
※震災発生直後、倒壊した建物の下敷きとなり、死を覚悟した九十九に鏡一郎がかけた最後の感謝の言葉です。
「本当に世話になった。……ありがとう」(あの博士がこんな感傷的な顔をするなんてな。思わず苦笑がこぼれてくる)……涙

③九十九の願いを叶える
※自分は願いが叶えられましたが、九十九は叶えられませんでした。彼の願いは義姉・名月を取り戻した生活を送ることでした。
そして名月が病気にかからず生き残ることが最低限の願いでした。そのためなら自分の命を犠牲にしてもよいとさえ思っていました。
最初の願いは果たせませんでしたが、自分では名月を救ったという最低限の達成感を胸に、九十九はこの世を去りました。
鏡一郎対してはずっと感謝の気持ちを持っていました。
※しかし…この時の鏡一郎にはわかっていました。この時空ではこのままでは名月は2012年に若くして急死する。それを救うにはこの後、2012年に白雲を1999年に向けて時間移動させねばならないことを。
(名月を救うだけなら時間移動を使わない方法もあるでしょう。事前に事故を防ぐ方策を取ることは難しいことではありません。でも鏡一郎という人間はそれを認めません。歴史の書き換えは、それを希望する者自身が行わなければならない、そうでなければ意味がない…)
そして、九十九がその命と引き換えに自分を救ってくれたことでそれは可能になりました。ならば…彼のすべきことは決まっていました。
※この時の鏡一郎は以前、2012年から1999年に移動してきた(今は亡き)九十九と会って歴史を書き換える様子を(おそらくB2時空で)見ていました。
あの時の鏡一郎と九十九は2つの失敗をしました。
①九十九は名月を助けたが代わりに自分が川に転落してその後すぐに死ぬことになってしまった。
②九十九が2012年に帰った時、その時空に元々存在していた白雲が名月のそばにいたため、自分の居場所がなくなってしまった。結局名月とは言葉もかわせず、また名月に自分の存在を知らせることもできずに1996年に向かわねばならなかった。
今回はこの2つの失敗を繰り返さないことが重要になります。
②の方についてはすぐに解決策を見出していたと思います。「融合」の利用です。
①については、最終的には1999年にやってくる九十九②に任せることになりますが、成功する確率が少しでも上がるよう全面的にサポートしようという決意があったことは間違いありません。

※1996年の震災直後、右足の複雑骨折で入院する中、病院で鏡一郎はそんなことを考えたのでしょう。
こういう言い方も何ですが、鏡一郎は、もし震災からの妻の救出に成功したら、その後の余生で何をするのか…については全く考えていなかったと思います。妻の救出だけに全てを賭けていて、そんなことを考えている余裕はなかったでしょうから。
そして実際に妻を救った後ようやく、病床でゆっくり、これから何をすべきかを落ち着いて考えることができました。
※すぐに結論が出たのではないかと思います。九十九が命をかけて妻と自分にしてくれたしてくれたことに報いよう、彼の夢を叶えようと。もちろんここでいう「九十九」はすでにこの世から去っています。ですから具体的な目的は「名月(と白雲)を台風の日の転落事故から防ぎ、2012年以降も、この時空の白雲と一緒に幸せな生活を送ってもらう」ということになります。
名月の話は九十九からたくさん聞いていますし、震災発生直後に自分を助けに来てくれた時に会っています。そしておそらく2012年に急死するだろうことも。

※第2章で1999年に移動した翌日、九十九②は自分がここに来るにあたって万全の準備をしてくれていた鏡一郎に尋ねます。
九十九②「博士、俺とは会ったことないよな…? なのに、どうしてここまでしてくれるんだ?」
鏡一郎「君の姉が救われることが君の救いになり、ひいては私の救いとなるからだよ」
今では理解できますが1周目でここに来た時は、何言ってるんだこのオヤジ…状態でした
※さらに第2章の1999年で、鏡一郎は誕生パーティーのために九厘と九十九が自宅に呼んだ名月と会って初めて会話をしますが、その際に感極まって何もできなくなります。様々な思いが胸をよぎったのでしょう。
九十九は死んでしまいましたが、ここにいる名月は九十九のことを覚えています。そしてこの後、この時空の白雲との間で、九十九と同じような経験をすることになります。そして自分の目的はその彼女を救うこと…。この時空の名月は、九十九と白雲をつなぐ重要な存在なのです。名月の救出は1996年以降の鏡一郎の人生の意味そのものでした。

※第2章で鏡一郎が2012年から1999年にやってきた別の九十九②に、名月が「お兄ちゃん」と呼ぶ人間(=その時空で1996年に音々と鏡一郎を助けてこの世を去った九十九)について語るシーンです。
「…言うならば彼は――。――彼は、私の友人だった。世代を超えた友人であり、そして恩人だった」
その顔はとても悲しそうで、その言葉は過去形で語られていて、だから、やっぱり彼はこの世にいないんだなってことを実感せずにはいられなかった。
(時間移動について、そしてシナリオについての理解が深まってくると、こういう鏡一郎の言葉1つ1つが感動的になります…)

<1996年の震災を乗り越え「九十九の願いを叶える」ために残りの人生を捧げることにした鏡一郎がしたこと>
※1周目を終えたところではほとんど気がつきませんでしたが、この時空で1996年以降に鏡一郎のしたことについて考えていくうちに、あまりの壮絶さ壮大さに驚き、感動が止まらなくなりました。

[1] 加々見家とは直接的な接触は断ち、凪鏡一郎として生きていくことを決意する。

[2] 1999年7月までにタイムマシンを完成させる。
※簡単に言うようですがこれは非常に大変なことだったと思います。おそらく右足複雑骨折による入院は数ヶ月に及んだでしょう。その後も、協力者の力添えが全くなく右足が機能しない状況で、たった1人でタイムマシンを作らねばならなかったのですから。あの大きな機械を、どうやって右足を使わずに作り上げたのでしょう…。まぁ最終的な組立などでは外注業者を入れたかも知れませんが…
入院中に改めて設計図を書き直したり、必要な部品を発注したりしたのではないでしょうか。
※名月が川に転落する台風の日(8月頃だったということは記憶にあったでしょうから…)の少なくとも1か月ほど前には「出口」を作らねばならず、またその1か月後にはまた九十九②を2012年に送り返さなくてはならないので、入口の機能も持ったタイムマシンの完成品もそれまでには完成しなければなりません。
※そして、忘れてはいけないのは…鏡一郎はそのタイムマシンを3回しか使うつもりはなかったということです(まぁ計画が失敗したらさらに使用回数は増えたのでしょうが…)。使うのは3回だけ。使う日時もはっきり決まっていました。しかも自分が乗るわけではありませんでした。ただそれだけのためにプライムビルの最上階を買い取り、タイムマシンを製作したのです!

※この時空では加々見教授が妻子と自宅で幸せな日々を送るので、タイムマシンをこれまでのようにあの加々見家のラボに作ることはできません。従って別の場所で製作することになりますが、その製作活動は絶対に他の人に知られてはなりませんでした。そんな噂が広まって加々見教授の耳に入ったりすれば実に面倒なことになってしまいます。そういう意味でも、誰も存在すら気づかないであろうプライムビルの最上階は都合のよい場所でした。
※しかし、全く誰にも知られずタイムマシンを製作する…という言わば「歴史の書き換え」は、この時空のその後の歴史に1つ、無視することのできない変化をもたらします。つまり、C3時空でC1時空からの書き換えが起こるのです。(ちょっと気づきにくいことです…私の頭の中でも最後の方まで残っていた「謎」の1つと関連しています)
それが何かは、この後、3.5 C3(2)の<C4時空での鏡一郎の義姉・名月を失った白雲への接触>のところで触れます。

[3] 金策
これについては2.4でも触れましたが、入院中からできることとして、携帯電話やインターネットでできる金策行為を行っていたのでしょう。彼が想定する目的達成計画には、最低でも数十~数百億円はかかったはずですから。

[4] 住居
第1章に書かれていますが、プライムビルは震災後の復興で建てられました。第2章の鏡一郎はプライムビルの最上階に住み、その一室には完成したタイムマシンがありました。プライムビルは震災後1999年までに建てられていなければならず、おそらく1998年の夏~冬頃に完成していた考えられます。
おそらく鏡一郎は、プライムビルの建設計画を知り、建設前にビルのオーナー会社に大金(どう考えても数十億…でしょうが)を払って、特別に、一般の人からは隔離された状態で最上階を自由に使う権利を買っていたのだと思われます(単に分譲されていたのを購入しただけだったら、エレベーターに特別の機能を加えて普通の人がそのフロアには行けないようにするのは無理でしょう)。もしかすると1996年に2012年や1999年から移動する際、事前にその計画を立てていたのかも知れません。とにかく金だけはいくらでもある状況でした。

[5] ID(要するに1996年での「氏名」など)
すでに1996年の震災前に鏡一郎は「凪鏡一郎」と名乗り、九十九には「凪九十九」を名乗らせました。これらの名前は、震災で行方不明になる人間の名で、2012年の加々見教授が1996年に移動する前に考えていたいくつかの候補のうちの1つだったと思います。震災で行方不明になる、他に身寄りのない人間…そんなものを2012年に調べられるかどうかは疑問ですが、結果的には問題なく彼らはこの名前を名乗って生活することができました。
震災後のどさくさに紛れて鏡一郎はこの「凪鏡一郎」になりすまし、また、後に再度1999年に現れるであろう九十九は息子の「凪九十九」に、さらに九十九は震災で被災したため現在療養中ということにします。
IDが入手できれば金策活動にも幅が出たことでしょう。

[6] 家族
・入院中、鏡一郎は「家族」がいてもよい…というか、いた方がよいと考えるに至りました。(だから九厘を養子にしたのです)
・そこには様々な理由があったでしょう。自分に残された人生の全てと言える名月救出計画には16年かかります。さすがの鏡一郎も、その間ずっとたった一人で生きていくよりは家族と呼べる存在と一緒に生きていく方が心が休まると思ったのは確かでしょう。
(2012年に白雲を実験台に最初の時間移動の実験を行うまでは、加々見教授は完全にほとんど1人で生活していましたが、それは大きな、全てを捨てて立ち向かえる目的があったからです。この時の鏡一郎もそれに近い決意ではあったのでしょうが、やはり以前とは違ったと思います。近くで生きている音々や美々のことを思えば…覚悟していたはずでも寂しさに襲われることはたびたびあったでしょうし…)
・また非常に慎重な鏡一郎のことですから、自分が2012年までに死んでしまった場合のことも想定していたはずです。この時空は融合を重ねてきた彼にとっても初めての、右足が使えない時空になります。予期せぬところで交通事故に遭うかも知れませんし、タイムマシンを作っている時に大ケガをするかも知れません。何より、前回(というか「初めて」というか)1996~2012年を経験したときと比べて、自分の年齢は16歳上です。健康面にも十分に配慮する必要があったでしょう。それでも病気などで寿命が尽きてしまう可能性は否定できません。信頼できる存在を自分の隣に置き、必要な時には自分の役割を引き継げるようにしておいた方がよいと考えていたでしょう。
しかし再婚する相手を探すのは無理です。タイムマシンを作ってこれだけのことをする位、妻を愛していたのですから。
・そんな中で鏡一郎は病院に入院している九厘に出会います。震災で記憶を失い、引き取り手もいない少女でした。年齢は名月と同じか少し上だったしょうか。九厘は非常に無口で、記憶には残っていませんが過去の経験がトラウマとなっていて、他人に心を開かず、特に男性を強く嫌っていました。しかしおそらく、もちろん推測に過ぎませんが、何度か会って話をするうちになぜか九厘は少しずつ鏡一郎に心を開き、また鏡一郎は九厘の頭の良さに気づき、興味を持ったのではないかと思います。そして最終的には、九厘を養子に迎えることにしました。
もちろん、家族でありまた将来的には可能であれば自分が目的を果たすためのパートナーにしようと考えての行動だったと思います。
そして、名月と同じような年齢ということも、自分の計画を実行する上で都合がよいのではないか…という考えも、(何しろあの鏡一郎のことですから…)あったのではないかと推測します。記憶喪失であることも何かに使えるかも知れません。
(九厘が実は白雲と何やら密接な関係にあったことは、さすがの鏡一郎も知らなかったとは思うのですが…本当に単なる偶然なのでしょうか? 後ほど少しだけ、白雲と九厘の関係について考えるパートで取り上げたいと思います)

[7] 1999年に九十九②が時間移動してきた時のための準備
・自分が1996年に向かった時と同じで、万が一にも失敗しないよう万全の準備をしたことは間違いありません。それは第2章の様々な場面でも伺えます。
・以前1999年に戻ってきた(今は亡き)九十九を受け入れた時、鏡一郎は自分のラボに寝泊りさせるくらいしかしてあげられず、結局九十九は、名月と白雲を助けたものの自分が代わりに川に転落して感染しあと数日しか生きられない状況に陥ってしまいました。
鏡一郎の基本的な考え方は、「歴史を変えることは、変えたいと願う本人のみに許される行為」ということです。最終的にそれがうまくいくかどうかは今度1999年にやってくる九十九②の行動にかかっています。しかし、それを全面的にサポートして、少しでも成功確率が上がるように準備することは自分の役割であると考えたのだと思います。
・具体的な「準備」ですが、例えば…
①名月と後にこの家に引き取られてくる白雲(要するに桜塚家)を観察する
②名月が通っている学園(七帯(なおび)学園:このとき名月は2年生)を調べ、その学園の巨額寄付者となって様々な「わがまま」を通せる立場に就く
③九厘をこの学校に入学させて名月のクラスメートにする(九厘からも名月の様子を聞いて参考にしていたと思われます)
④同時にその時点では存在していない九十九②も手続き上入学させて手続き上休学させる。九十九②用の制服なども準備する。
(この時代に九十九②が現れたら、学校に連絡を入れれば九厘・名月と同じクラスに復学?できるようにしておく)
⑤九十九②が送り込まれてきたときの彼に与える必要最低限の注意事項(記憶喪失の設定など)をあらかじめ決めておく。
⑥その他必要になるかもしれないもの(携帯電話、自転車…)の準備。
といったところでしょうか。

[8] 白雲へのアプローチ
・そして…これも凄いと言えば本当に凄いことなのですが…
まず、この時空にいる人間からではなく、我々のように外部からこの時空を眺めたとして考えましょう。(それがこのゲームをプレーする普通の視点ですが…)
非常にわかりやすくC3とC4を説明できます。
まずC3があり、1999年に名月が川に転落して怪我をして感染、2012年に急死。打ちひしがれる白雲の前に九厘が現れ鏡一郎のところに連れて行って白雲はタイムマシンに乗って1999年に向かう。
白雲が1999年に時間移動して分岐して九十九②となるC4では、1999年に九十九②が名月と白雲を助け自分も負傷を免れて、その後2012年に戻り、その時空の白雲と融合してハッピーエンドを迎える。
と、それだけのこと…のように思えます。でもこれはあくまで第3者視点なのです。実際にこの時空にいる鏡一郎にとってはどのように時空が見えているのでしょうか。

結論を先に言ってしまえば、この時の鏡一郎は自分がC3時空にいるのかC4時空にいるのかわからないのです!
それが明らかになるのは1999/7/11頃です。この日が彼にとって運命の日になります。
とりあえずまず1999/7/11に、2012年から移動してくる九十九②のためにタイムマシンの出口を作ります。これをしなければそもそも分岐が起こりません。

①もしその日(というかその「時」?)、2012年から送り出された白雲=九十九②がやって来なければ、自分の存在する時空がC3にいることがほぼ確定します。
(例外は…震災時の歴史の書き換えなど何かの原因で名月が転落事故に遭わなかったか、美々エンドになった場合(汗涙)です)
その瞬間、彼の残されたミッションはたった1つだけになります。そのまま2012年まで待って、名月を失った白雲に声をかけ、タイムマシンに乗せて1999年に送り込む…それだけです。
これは言ってみれば「ハズレ」の時空です。この時空は本当に救われない時空です。
まず、事前に白雲が送り込まれてくる前提でした準備は、この時空では全て無駄になります。しかしそんなことは大したことではありません。
鏡一郎は分岐したC4を観察することができません。残りの人生をかけて行った九十九の願いを叶えるための様々な準備と尽力が功を奏したのかどうかを確認することもできません。名月は死に、白雲もいなくなった世界で、何の目的もなく余生を送らねばなりません。
途中、名月が転落する事故が起こり、名月が死ぬことがわかっていても手を出しません。じっと見守るだけです。
そして…名月が死んだ時点で、悲しむ九厘に伝えるのです。自分には名月が死ぬことが分かっていた…と。
(さすがに鏡一郎も、いかに九厘が自分に従順だとは言え、事前に九厘に、名月がまもなく急死するが何も手出しをしないように…とは伝えられないでしょう)
当然九厘は涙ながらに反発するでしょう。なぜ助けなかったのか。なぜそれを教えてくれなかったのか。そこで当然ながら彼は、タイムマシンのこと、白雲と九十九のことを彼女に語るでしょう。そして彼女に深々と頭を下げるでしょう。そして彼女に、白雲を連れてくるように命じるのです。
(このシーンは第2章の冒頭に実際に出現します。この時の九厘の気持ちを思うとまた涙腺が…。白雲は時間移動によって1999年に向かい、おそらく名月を助けてくれるでしょう。しかしそれを、この目の前にいる白雲は経験できますが、自分はそれを観察することができないのです。自分はもう2度と名月に会えないのです)
九厘が1999年に九十九②と会っていないので白雲がいなくなることは彼女にとって問題にはならないでしょうが、それでもあまりに悲しい物語です。
言うまでもありませんが、桜塚家の両親にとっても絶望的な余生になるでしょう…涙

②もしその日にタイムマシンで白雲(以下、九十九②とする)が転送されてきたら…その時鏡一郎は自分がC4にいると知ることができます。
この時、彼のミッションは急に増えます。
(1)1999年に移動してきた九十九②を影から全面的にサポートする。
(2)無事九十九②が目的を達成できたら(台風の日に名月と白雲が川に転落することを防ぎ、C1のように自分も川に転落することもない状況)、九十九②の意志を確認した上で(彼が希望すれば)2012年に送り返す。この際に九十九②に「融合」について説明し、それが唯一の手段であることを了解してもらう。
(3)2012年の九十九②が帰還する5日ほど前にその時空に元々存在する白雲をつかまえて事情をすべて話し、九十九②と融合するためにタイムマシンで5日後に時間移動するよう説得する(この説得は絶対に成し遂げねばならない重要なことですが、鏡一郎は説得できる自信があったと思います。白雲の立場で考えても、目の前にあの九十九②が自分と別人物として現れるのはヤバいですからね…。利害の一致です。まぁ元々利害というか願いは一致しているのだから当然と言えば当然ですが)。
(4)白雲がタイムマシンに乗って移動を開始したところで、名月をつかまえて事情を全て話す。5日後に公園の帆船の上で待つように伝える。
(5)5日後、九十九②と白雲が問題なく融合したことを確認して、名月が帆船の上で待っていることを伝えて送り出す。

※九十九②を送り出した後はただただ13年間待つだけです。それは本当に長い時間だったに違いありません。しかし、この時空はC3とは雲泥の差があります。「当たり」の時空です。鏡一郎は1996年以降歩みだした第2の人生をかけた目的を達成できた喜びを実感できるのです。
※そのためにも、万が一にも失敗は許されません。
例えば台風の日、鏡一郎は病院から出てきた傷だらけで歩くのにも不自由する九十九②を車で待ち、川への転落事故があった現場に連れて行きました。(ゲームのシナリオに現れる直接的決定的な行動サポートはこれ位でしたが、鏡一郎は「万が一にも失敗できない」とう意識が強く、その他様々な場面で影から九十九②を見守っていたと推測できます)
※自分は直接歴史を変える行為はしないが、それを失敗することがないように全面的にサポートはする…それがこの時の鏡一郎の考えでした。
雨の中ふらつきながら現場の帯結橋に向かおうとする九十九②に、鏡一郎がかけた言葉です。
「決断し、行動するのは君自身であるべきだ――たしかに私はそう言った。しかしそれは『何も手伝わない』という意味ではないぞ? 私に助けを求めることもまた、ひとつの選択だ。」
鏡一郎は妻を震災から救う計画に何度も失敗し、歴史を書き換えることの難しさを痛感していました。だから1999年の九十九②も同じように苦労するに違いないということは予測できていたはずです。でも失敗させたくない…。鏡一郎のことですから、恐ろしい程徹底的に準備を進めていたのではないでしょうか。

※自分が今C3にいるのかC4にいるのかわからない…そしてC3だったら本当に寂しく絶望的なほど辛い思いをしなければならない。
それでも、妻と自分を助けてくれた九十九の恩に報いるには、それに耐える…
鏡一郎はそこまで覚悟した上で、この計画を実行に移したのです。何度も書いていることですが、壮大であり、そして壮絶な決意でした。

エピローグの最後、融合した白雲を名月が待つ場所に送り出した後で鏡一郎はつぶやきます。
「これで、私の成すべきことは終わったな。……長かったな」
こうして理解が進んでから再度通してプレーした時、この言葉を聞いたら本当に涙が止まらなくなりました。そして自分でもそれが何の涙かわからないくらい、複雑にいろいろな感情が絡み合っていました。感動、嬉しさ、悲しさ、優しさ…

※ここまで書けば後はほとんど説明不要でしょう。これ以降のC3とC4の時空はゲーム中に詳しくテキストで示されていて、読み間違うことや重要なことに気づかないということはないでしょう。この時空、第1章と第2章は、素晴らしいヒロインとの恋愛ノベルを読むことがメインの部分です。ここをわかりやすく書かなかったら終始意味不明ということで終わってしまいますもんね…。
(ただ、ここまで自分なりにしっかり理解してから改めて最初から通してプレーすると、それまでわからなかったいろいろなことに気づいて非常に面白く、また一層の感動を覚えました)

3.6 C3(2) 震災後:第1章と第2章の冒頭「タイムトラベル」の一部

[震災以降]
((震災後1996年))
・鏡一郎、名月救出作戦を開始。様々な準備を始める。(詳しくは上記)
・鏡一郎、共に震災で負傷し病院に入院していた身寄りのない記憶喪失の少女を養子にして九厘と名付ける。
・名月は震災直後に別れ、再会の約束を交わした「お兄ちゃん」(=九十九)を待ち続け、他の男性には目もくれずに生きていく。

((1999年夏とそれ以降2012年まで))
・鏡一郎、1999年7月までにプライムビルの最上階に居を移し、そこにタイムマシンを完成させる。
・桜塚家、震災前日に名月が会場の海浜公園で見つけて届けた捨て子を施設から引き取って養子とする。名前は白雲。当時3~4歳くらい。
・白雲には養子として桜塚家に来る以前の記憶はほとんどなく、両親と義姉・名月の愛情を受けて実の子のように育つ。白雲は自分が養子とは知らずに育つ。(白雲に残っている最初の記憶はこの日だった)
・1999/8/10…台風で川から転落した白雲を姉である名月が助けるがその際名月は腰のあたりに大怪我をして大量出血する。(白雲の最も古い記憶の1つ。初めて白雲が名月を「お姉ちゃん」と呼んだ瞬間でもあった)
・以降白雲は、助けてくれたことに対する感謝と自分のために負傷させてしまった負い目から、強くなって何があっても名月を守れるような人間になろうという強い意志の下、研鑽の毎日を送るようになると共に、他の女の子のことは全く目に入らない「お姉ちゃんっ子」になる。
・名月、白雲から「震災の時別れた友達と別れ際に、帆船の上でまた会おうと約束したので、今もたびたび海浜公園の帆船の上に来るようにしている」という話を何度も聞かされる。
・名月、千関大学の加々見教授のファンになり、著作を読みあさる。
・名月、白雲が次第に「お兄ちゃん」に似てくることに驚く。(年を重ねるほどどんどん似てきて、バンダナがなければ区別がつかないほどに)

((2012年1月頃))
・農業を営む名月・白雲の父方の祖父が倒れ、名月・白雲の両親は田舎に帰って祖父の跡を継ぐことを決心する。
 4月から名月は、白雲が通っていた七帯学園に保健医として赴任することが決まっていたのでそのまま同じ家に住むことになる。
白雲はここにとどまるか両親と共に田舎に行くか希望を尋ねられ、引っ越さずそのまま姉と一緒に生活する選択をする。
・その直後白雲は、両親から実は養子だったと聞かされ動揺するが、これまで自分は全くそのことに気づかないほど実の子のように愛情をかけられて両親・名月と生活してきたことを思い出し、素直に両親に感謝の気持ちを持ち、口にする。一方名月に対しては、その時の彼女への想いが自分でも理解できていなかったこともあり、正体不明で複雑な気持ちになる。

※この時の会話は面白いです。心温まって微笑ましくなります。実の子でないと知った白雲は動揺して…
===
白雲「けど、実際問題、血がつながってないんだろ? じつの姉弟じゃないってことで――しようと思えば結婚だってできちまうってことなんだろ…?」
父母名月「「「……えっ?」」」
白雲「――っっっ!!!?」
名月「……やっ、やだなぁ……アハハ、つくもったら変な冗談いわないでよ。リアクションに困っちゃったじゃない」

白雲「……とりあえず、わかった。”俺が養子なんだ”ってこと……うまく言葉にできないけど、わかった」
白雲「ただ、それでどうなるってわけじゃないんだよな…?」
父「あぁ、どうもならないよ。今までと変わらない、つくもは私の自慢の息子だ」
白雲「……ありがとう、父さん」
母「黙っておくのも良くないから教えただけよ。血のつながりがあろうがなかろうが、あなたが息子であることに変わりはないわ」
白雲「ありがとう、母さん」
名月「今までも……そしてこれからも、ずっとずっとつくもはわたしの大好きな”弟”だよ」
白雲「……ぁ……」
名月「えっ……な、なに? なんでわたしだけそんな顔するのぉ!? つくもはお姉ちゃんのことキライ…!?」
白雲「あ、いや…!! 今のは、なんていうか……キライなわけないだろ!」

※白雲は後に振り返ったとき、当時は気づいていなかったけれどこの時が姉への想いが恋心に変わった瞬間だった…と知ります。
しかし両親に続いて同じようなことを口にしただけなのに、九十九の反応が予期せぬものだった時の名月がかわいすぎる…笑
===

((2012年4月))
・桜塚家の両親、父方の田舎に転居、農家を継ぐ。名月と白雲の2人暮らし始まる。
・名月、七帯学園に保健医として赴任。
・白雲、七帯学園の5年生に進級、同じクラスになった保志とその彼女である春日森と親しくなる。

((2012年7~8月))(このあたりから第1章開始)
・2012/7/5…白雲、夜のランニング中に、逃げ出した飼い猫を見かけませんでしたか…のビラを見知らぬ少女から受け取る。後にそれが学園の後輩であること、さらに加々見教授の娘、美々であることがわかる。
・2012/7/7…白雲と名月、プライムビルの最上階のレストランで夕食を取った後、記念公園に向かう。
※はっきりとは書かれていませんが、名月はこの時「九十九」にあまりに似てきた白雲の横顔を見ているうちに、現実を忘れてその雰囲気に吸い込まれるような気持ちになります。そして2人は非常に怪しい雰囲気になりますが、その時たまたま名月の携帯に着信があって2人は我に返ります。
・2012/7/8…白雲、沼淵弟のグループに襲われた加々見美々を助け、背負って自宅近くまで送る(C1時空では美々が存在していなかったので美々でなく春日森が襲われていた)。この後、美々は白雲に恋愛感情を持つ。
※沼淵弟よ…兄はその子を (まぁ厳密にはこの世に出て来る直前だったけど) 危険を省みずに助けたというのに、オマエは襲うのか…汗。
最後は美々から材木で鉄槌を食らうし…兄の怒りが乗り移ったのかも笑。

・2012/7/18…美々、同じクラスで親友の春日森に自分の気持ちを語り、自分を助けたのが春日森と親しい白雲だったと知る。春日森は仲を取り持って美々と白雲を会わせる。美々はその場で白雲が好きと告白し、戸惑う白雲に返事はいつまでも待つと告げる。
・2012/7/19…美々の告白の翌日は名月の誕生日、白雲はレストラン「ル・フテュール」を予約する。名月と一緒にレストランに向かう途中、名月が美々の白雲への告白を遠くから眺めていた話になり、白雲は(言ってはいけないと十分にわかっていたのだが最終的には勢いで)名月への恋愛感情を告白してしまった後、その場にいることに耐え切れず走り去り、その後帆船の上でぼんやりしているところに名月がやってくる。名月は昔から話をしている震災の時の友達が実は「恋人」で、約束を信じて今でも彼を待ち続けている、好きな人は彼だけ。先ほどの白雲の言葉は忘れるから元の姉弟に戻ろうと言われ、白雲は首を縦に振る。
===
「そう、わたしは過去に心とらわれてる。そして、そんな自分を悔やんではいない。わたしはこれからもこの場所で”お兄ちゃん”を待ちつづける――」
「――わたしの答えは、あの日からもう決まってる」
===
※しかしこの時、実は名月の心も大きく揺れ動き初めていました…)
※思えば第3章でも、美々がいない代わりに春日森は沼淵弟達に襲われ、彼女を助けるために沼淵と戦った白雲に心惹かれるようになりました。そして春日森はお礼に白雲にクッキーを焼いてきて渡しますが、その様子を見ていた名月が、いい雰囲気だった…などと口にしたので、白雲は発作的に名月に告白してしまいました。これもまた、歴史の書き換えに対する運命の「復元力」が作用した一つの例と言えるでしょう。

・2012/7/20…名月への想いを断ち切るために、白雲は美々に「付き合おう」と答える。
自宅に帰って名月に美々とのことを伝えた白雲が、夜のトレーニングに出かけて帰ると、名月は相当酔っていた。最後は白雲がお姫様抱っこで名月を自室のベッドに連れて行く。
※美々のことを名月に伝えた時、白雲は「よかったじゃない!」といった言葉を予想していましたが、実際の名月は「そう……つくもが、あの子と、ね……」と言うなり黙り込んでしまいました。このあたりの名月の反応が面白いです。お姫様抱っこで階段を上がる途中に半分目を覚まして状況が把握できずに動揺するあたりもかわいさ満載です。
※もしかするとこの泥酔は、例の病気の最初の発症だったのかも知れません…涙

・その後、放課後の七夕まつり参加準備を一緒にしたり、保志・春日森とダブルデート(2012/7/22)をしたりするうち、次第に白雲の美々に対する親しみも増していく。美々にだけは自分が養子であり両親・名月とは血縁関係がないことを伝える。
※海でのダブルデートの時の名月の姉バカっぷりは素晴らしい…

・美々が作業でケガをした白雲の付き添いで保健室に行き、名月と会う。その場で名月は美々が加々見教授の娘と知って、教授の大ファンであることを伝える。美々の計らいで数日後、たまたま自宅にいる予定だった加々見教授に名月と白雲を会わせる約束をする。
・2012/7/27…その数日後、名月と白雲、加々見教授と美々の4人が会う。まずとまり木で食事を取るが、そこでタイムマシンの話題になる。
=====
名月「この宇宙では、時間の流れさえも不確かなもので、ただそれでも、時間をさかのぼることはできないものなんだって」
名月「過ぎ去った時間の大事さをあらためて考えさせられました」
――――
あの時の姉さんの言葉が、脳裏によみがえる。
名月「そう、わたしは過去に心とらわれてる。そして、そんな自分を悔やんではいない」
――――
教授「そうだね。過ぎ去った時間は戻らない、それはひとつの真実だと思う」
教授「ただね、わたしはちがう可能性もさぐっているんだ。その本の最後の方にも少し書いてある」
名月「タイムマシン、ですね」
美々「パパは前から趣味でタイムマシンに取り組んでて、じつはもう試作機も作ったりしてるんです」
名月「えっ、本当なんですか…!?」
教授「美々、それはまだあまり公にできない話だよ」
美々「あ、そっか……ごめんなさい」
白雲「その試作機で、ほんとにタイムトラベルができるんですか…?」
教授「いや、まだちゃんと動作はしない。ただ、理論的な部分はある程度できていて、実装もしはじめてはいるんだ」
教授「改良を続けることによって、いつか、タイムマシンとして使えるようになるかもしれない」
名月「タイムマシンで……過去に、戻れる?」
教授「ああ。私の理論では、マシンの内部にエネルギーを加え、時間の進みの異なる空間をつくりだしている」
教授「その”場”を記録して、制御できるようになれば……過去への移動も夢ではなくなるかもしれない」
名月「ほんとう、ですか?」
教授「エネルギーを加えてその”場”を記録する部分までは、かなり前から作ってあるんだよ」
教授「ただね、それをコントロールして物体を送りこむところまでは至っていない。その部分の解を、私はまだ持っていないんだ」
名月「それは、できそうなんですか?」
教授「それが、残念ながら今は見当もつかないんだよ。ずっと考えてはいるが、メドは全く立っていない」
===

※加々見教授は当然ながらタイムマシンを完成させるための「頭脳」は持っていました。しかし「動機」と「熱意」が欠けていました。教授職に就き本職の研究をして、TVに出たり著作をしたりと忙しい中では、今後もタイムマシンを完成させるのは無理でしょう。美々も言っているように「趣味」の域を出なかったのです。
※タイムマシンの部屋の横にある部屋…ここは第3章で嫌というほど目にするのですが、第3章でこの部屋を見たとき、私は既視感がありませんでした(さすがボケでるなぁ~涙)。印象が薄かったのでしょう。面白いことに(第1、第2章とエピローグに登場する)この白雲は、この部屋に来るのはこの1回だけなんですよね…。そしておそらく、凪鏡一郎が元は加々見教授だということも最後まで知らないままだったように思えます。(頭が悪い私も、1周目で第2章まで終わった時、まだそれに気づいていませんでした汗。このオヤジ誰だろう…みたいな恥)
この場面でのやり取りは、一度プレーしてから読み返してみると思い当たることが山のようにあります。まぁそれに気づかなくてもシナリオを追う上ではほとんど影響はありませんが。でも本当に深いです…。
※こういうシーンを第1章に挟み込んでおくという構成は素晴らしかったと思います。非常によく考えられています。このゲームのシナリオを見渡すと、ストーリー展開が非常によく練られていると感心することがたくさんあります。このシナリオは紛れもなく傑作だったと言いたいです。(ただ…何度も書いているように、唯一の問題点は「時空」や「時間移動」についての前提が、制作スタッフの予想に反して、私たちのような「普通」の人間にとっては難解すぎたため説明不足だったことです。そのためにシナリオの良さを十分に理解できずに終わった人が多かったののは確かでしょう。)

※とまり木での加々見教授のオーダーは例の裏メニュー、エビアボカドボウル。勘違いしそうですが、この時空の加々見教授はこのレシピの完成に一切関与していません!(「その時」彼は海外にいましたし)。でもきっと、なんだかよくわからないけど自分好みの味だと感じて気に入っているのだと思います笑。周回を重ねるたびにこういったささやかな、でも楽しい新たな発見があるのもこのゲームの魅力の1つです。
=====
・2012-7-28…白雲が自宅に帰るとポストに映画の招待券が2枚入った封筒があり、保志から美々と一緒に行くようにとのメールが届く。
その晩、名月は知人の結婚式の2次会で急に酔いが回り、高島医師にタクシーで家まで送ってもらう。(おそらく発症した最初の症状)
白雲は高島と話をして、高島が名月と七帯学園の同級生で大学でも接触があったこと、自分が小さい頃に会ったことがあるといった話を聞く。
白雲は名月が誰かと付き合ってくれた方が諦めがつくという気持ちから、美々や保志に申し訳ないと思いつつ、翌朝招待券を名月に渡し、高島と一緒に行くように勧める。(その際ついうっかりその気持ちを口にしてしまい、名月に気持ちを知られてしまうことになる)

・2012/8/2…試写会の日、招待券のことを保志から聞いていた美々は白雲に招待券をどうしたか尋ねる。白雲は仕方なく正直に名月に渡したと伝えると、美々は(それまでも薄々気づいていたが)白雲の気持ちがずっと自分でなく名月に向けられていることを確信する。そしておそらくは最後の願いを込めて白雲に抱いて欲しいと迫る。(「抱く/抱かない」の選択肢あり。「抱く」を選択したとして…)
美々は白雲に初めてを捧げるが、その行為の最中も白雲が自分を見ていないと気づき、悲しみの中その場を去る。(「追う/追わない」の選択肢あり。「追う」と美々エンドへ。「追わない」を選択したとして…)
・白雲は美々を追わず、名月への思いに素直になろうと決める。(名月が振り向いてくれなくても自分は名月だけを見て生きていこう、と)
雨の中、白雲は意味もなく試写会の会場に向かう。そこには高島がいて、ついさっき名月から行けないと連絡が来たと言う。白雲は名月を探し、帆船の上で発見するが、名月は高熱で意識朦朧とする中、「やっと来てくれた」と言って白雲に青いバンダナを渡す。白雲は救急車を呼ぶ。
・名月は病院に搬送され入院、検査するが特に大きな異常は見つからなかった。
・名月は入院直前に白雲に渡した青いバンダナを返してもらったが、身には付けなかった。「お兄ちゃん」と白雲の間で揺れている気持ちを、同時に入院していた希という女性から受けたアドバイスなども参考にしながら、入院中に少しずつ整理していく。
・2012/8/7…七夕まつりの2日目(震災の日)に退院した名月は、七夕まつりの仕事が終わった白雲を記念公園の帆船の上に呼び出し、「『お兄ちゃん』との思い出は捨てられないけれど、でも今の自分は白雲が好きだ」と、以前の白雲の告白を受け入れた。2人はついに恋人になり、翌日には初めてのHをする。(名月は処女だった)
・2012/8/12…やっと幸せが訪れた2人だったが、そのわずか5日後、名月は症状が悪化して急死する。
・その直前に高島医師が語った話では、1999年に名月が白雲を助けた時に転落・負傷した川が(震災の被害を受けた化学薬品工場の廃液の)化学物質で汚染されていたため、それを体内に取り込んだため起こった病気である可能性があるとのことだった。

※名月と白雲が結ばれるまでの物語がとてもきれいにまとまったハッピーエンドに思えるので、名月が急に死んでしまった時には本当に驚きました。まずは「は?」みたいな…。次は「嘘?」みたいな…。で、まぁここはもう、誰でもすぐ次に進みたくなりますよね。エントランスに「第2章」とかいうのが増えてますし…

((2012年9月))(ここから第2章)
・ある雨の日(2012/9/7の半日前だから9/6の夜…かな?)、名月の死後1ヶ月近く経ってもまだそれを現実のものと受け入れられない白雲は、沼淵弟に会い攻撃を受ける。最後は「このまま死んでも構わないのではないか」などとも考えて無抵抗になり一方的にボコボコにされる。
・雨の中、ひどく傷つき泥まみれになって地面に横たわりこのまま死んでしまえば楽なのかも知れないなどとボンヤリ考えていた白雲に、見知らぬ異様な雰囲気の長身の女性が現れて白雲に語りかけ、名月を助けたければついてこいと命じる。
===
女「――いつまでそうしているつもりだ?」
女「贖罪のつもりか? 名月が死んだのは自分のせい、だから死んで償おうとでもいうつもりか?」
女「”姉さん”は死んだ。十年以上も昔に負った傷が、年月をへて彼女に死をもたらした。その傷は”俺”を助けるために負ったものだ。”俺”を助けたために”姉さん”は死んでしまったようなものだ。”俺”のせいで”姉さん”は死んでしまった。”俺”は自分を許せない。そして他に許しをこえる相手もいない。”姉さん”はもういない。なら、この世界にどれほどの価値がある? これ以上、生きていても仕方ない。このまま死んでしまっても構わない。むしろ死ぬことで”俺”は自分を許すことができる――」
女「――それは、現実逃避だ」
女「たしかに名月は死んだ。貴様をかばった時の傷が遠因でな。貴様に責任の一端があることは否定できない。だが、よく考えろ、名月は貴様を助けるために負傷したのだ。名月はみずからの寿命をささげ、貴様を生かしたのだ。ゆえに、貴様がみずから死を望むことは許されない。名月の犠牲を無駄にしないためにも、命を粗末にしてはならない。貴様が生に執着してこそ、そして生を有意義にしてこそ、名月は報われる――」
その見知らぬ女が全ての事情を知るだけでなく自分でさえはっきりとは気づいていなかった心の中を的確に理解していたことに驚く白雲は、怒り、女に何者かを尋ねる。
白雲「もう一回、聞くぞ。あんた何者だ?」
女「さて、何者だろうな? ストーカーか、エスパーか、それとも悪魔か……好きなものを選ぶがいい。私の素性などさして重要なものではない。私はただの案内人。貴様を招待するために遣わされただけだ。」
白雲「宗教勧誘ならお断りだ」
女「安心しろ。こちらの要件は、貴様を宗教とは反対の方向へいざなうものだ。『天命を受け入れろ』などと説くつもりはない。その逆だ。つまり――。」
女「名月を取り戻したければ、ついてこい」

※(少し上に詳しく書きましたが)この場面での九厘の置かれた状況と心理は壮絶なものがありました。1周目にはそんなことはわかろうはずがありませんが、それを理解してから改めてこの場面を見ると、迫力が圧倒的に増します。
===

<C3時空での鏡一郎の義姉・名月を失った白雲への接触>
※何度も書いているように、鏡一郎の基本的な考えは「タイムマシンを使って歴史を書き換えるという行為は、それを希望する強い意志を持った者にだけ許される」というものでした。白雲がそれを望まなければ、それも1つの選択である…と。
ですから鏡一郎にとって、このような形で半ば強制的に白雲を連れてくることは本意ではなかったと思います。私はこの点がずっと謎でした。
(3.5の<1996年の震災を乗り越え「九十九の願いを叶える」ために残りの人生を捧げることにした鏡一郎がしたこと>に書いた「最後の方まで残っていた「謎」の1つがこれでした)
しかしよく考えるうちにそれが不可避で当然のことだったと理解できました。

※遡ってこの日の放課後、保志は白雲に、SF研の部室に行って春日森が借りてきたカンフー映画のBDを一緒に見ようと誘います。少しでも気を紛らわせようという保志と春日森の優しさが伝わってくるシーンです。しかし白雲は、個人的にワイヤーアクションは好きでないと断りますが、後で断るほどの理由ではなかったと反省します。
え~と…まぁカンフー映画はどうでもよいのです。何が言いたかったかといえば…
このシーンは、C1時空から大きく書き換えられていた、ということです。では書き換えられる前はどうだったかというと…非常に重要な意味のあるシーンでした。保志がSF研の先輩から聞いた話ということで、タイムマシンを開発しているマッドサイエンティスト(=加々見教授)がいるらしいと白雲に伝えたのです。そして白雲は加々見教授のラボを訪れて時間移動を希望したのでした。
このC3時空では、保志もSF研の先輩もタイムマシンを開発しているマッドサイエンティストを知りません。鏡一郎はプライムビルの最上階で、誰にも知られることなくタイムマシンを作り上げていたからです。だから保志の口からはタイムマシンの話題が出なかったのです。
(第3章の最初のC1時空で、保志の話を聞いてラボを探し出し訪れた白雲が「タイムマシンは完成しているのか?」と尋ねた時、加々見教授はまず「ほう……私の噂でも聞いて、ここにやってきたか」と反応しています。まぁそれは当然の反応でしょう。)
しかしこの時空でこのまま放置したのでは、白雲が自ら鏡一郎を探し出す可能性も、タイムマシンという言葉を聞いて、時間移動して名月を助けたいと思うこともないでしょう。こちらの方から白雲にタイムマシンの存在を伝え、時間移動で名月を助ける時空を作り出すことができると伝える必要があったのです。
その伝え方もいろいろだったと思いますが、基本的な考え方は、この後プライムビルに連れてきた白雲に鏡一郎が語ったように
「私は君に新たな選択肢を提示することができる」
だったと思います。それを白雲に伝えて後は白雲の判断に任せようと決めていたのだと思います。

※鏡一郎は結局、白雲に声をかける役割を九厘に任せました。すでに書いたように、この時空のこの時の九厘は非常に悲しく辛い状態でした。親友で自身のアイドルでもあった名月が急死、その後鏡一郎から急死することはわかっていたが何もしなかったと伝えられ、その理由も含めた全ての事情を聞いたばかりという状況で、その役割を鏡一郎に命じられたのです。どういうことを話すか、鏡一郎は細かい指示は出さなかったと思いますが、彼女も白雲ほどではないにしても名月への思いは非常に強かったはずです。それは、この時の白雲に投げつけた言葉の端々にも感じられます。これだけ言えば白雲は必ず付いてくるでしょう。(鏡一郎はそれも見越して、敢えて九厘にその役目を任せたような気もします)
※おそらく九厘は、白雲が沼淵にボコボコにされる様子を黙ってじっと見ていたのでしょう(第2章で1999年に跳んだ直後に九十九②があっという間に九厘に倒される場面がありました。九厘が本気になれば沼淵の一団を一蹴することも可能だったと思います。でも彼女は当事者たちに気づかれないようにそれをじっと眺めていました。何しろ気配を殺すことは彼女の特技ですから笑)。彼女の目には、白雲が死んでもよいと考えていることがわかったでのしょう。そしてそれは、名月への強い思いを持つ九厘には心の底から許せないことでした。白雲への同情がなかったとは言いませんが、本心は「現実逃避は許さない!」だったのでしょう。
※そんなことは1周目には絶対にわかりません。シナリオをよく理解して、この時空のこの瞬間の九厘の立場になってこのやり取りを考えると、1周目には何も感じず???だらけだったこのシーン、九厘の言葉1つ1つの重さが増して非常に強く胸を打ちます。
(この時の九厘は白雲とほとんど接触がありませんでした。第2章ではかなり密接に関わってくるので錯覚しがちですが、第1章では名月と白雲がプライムビルの展望台に行く時に一瞬だけ登場した位です。当然名月とは旧友ではありましたが。そんな男のために名月は…そしてそんな男に名月を救わせる…。この男は時間移動して別の時空で名月を取り戻すかも知れない。でも自分はもう名月とは会えない…。それでも自分は、そんな男に声をかけ、新たな選択肢を与える手助けをしなければならない…。そんな状況でした。………まぁ実際には2人の間には何らかの深い関係があったはずなのですが、それはここでは置いておくことにして)
実に凄いシーンでした。1周だけではこのシナリオの素晴らしさのほんの一部しか理解できないです…シミジミ

・プライムビル最上階に連れてこられた白雲、謎の資産家、凪鏡一郎と会う。鏡一郎は白雲の事情を全て知った上で、タイムマシンで過去に移動して名月を救うという新たな選択肢を提供できると白雲に伝え、白雲はそれを希望して1999年に時間移動する(⇒C4)

※鏡一郎は九厘と同様に白雲と名月のことを全て知っていた上で、姉を失った今の人生に意味があるのかと冷たい言葉を浴びせます。そして…
===
「君の人生は君のものだ。君が死を選ぶなら、私は止めはしない」
「ただ、私は君に新たな選択肢を提示することができる。そのために君をここへ呼んだのだ」
「桜塚名月を取り戻す――という選択肢を」
白雲は鏡一郎の言葉が理解できず、クローンでも作るのかと尋ねるが…
「クローンはあくまで肉体をコピーするだけに過ぎない。記憶をコピーできない以上、同一人物とはいえない」
「彼女が死んでしまったのなら、死なないようにすればいい。彼女が病に倒れるなら、病にかからないようにすればいい」
まだ理解できない白雲に…
「では、質問を換えよう。彼女のことを君はどのくらい覚えている?」
白雲「全部だ。姉さんのことなら何だって覚えてる。記憶のひとかけらだってなくしちゃいない」
「その上で問おう。もし仮に、彼女と再会することができるとしたら、君はどうする? 彼女をとり戻すために、君は何を犠牲にできる?」
白雲「全部だ。姉さんのためなら何だって捧げられる。たとえ、この命であってもな。もし仮に姉さんを蘇らせる方法があるってんなら……万が一でも可能性があるんなら、俺はそれに賭ける。俺の持ってるすべてを捧げる」
白雲「――俺の答えは、あの日からもう決まってる」
「……ふむ……」(俺の言葉にじいさんは深くうなずくと、おもむろに車椅子で移動をはじめた。)
鏡一郎は九厘と白雲を連れて、タイムマシンの部屋に向かいます。タイムマシンを見せられた白雲は…
白雲「そこに、姉さんをとり戻せる可能性が少しでもあるんなら、その選択肢に俺はすべてを捧げる。たのむ。俺にこいつを使わせてくれ」
「……いい目だ。自分のなすべきことは判っているな?」
白雲「ああっ。姉さんを事故から守る。運命を変えてみせる。だから、――1999年に、俺を送ってくれ」
===
※この場面はわかりやすいのですが、よく読むと、鏡一郎が1つ1つ白雲の意志を確認していく部分が面白いです。
この時の鏡一郎は(ずっと1996年から白雲と名月の観察は続けていたのでしょうが)、この時空の白雲と会話するのは初めてです。ですから彼があの九十九同様に心から名月を愛していて、全てを犠牲にしても取り戻したいと思っているのかを確認したのでしょう。その確認の結果が「いい目だ」だったのでしょう。

<美々エンドと鏡一郎>
※鏡一郎はこの白雲もほぼ間違いなく九十九と同じ気持ちを持っていると信じていたでしょう。でもほんの少しだけ不安もあったと思うのです。C1とC3で歴史は一部書き変わっていますから。そしてその気持ちが現れた一言がありました。上に抽出した会話の少し前の部分ですが…
「もっとも、君の”若さゆえの過ち”を私がこころよく思っていないのも確かだがね」
これも最初は意味不明な言葉でしたが、よく考えればすぐにわかります。美々のことですよね…う~ん、怖いです…笑汗。でも絶対に知っていたはずですよね…
まぁ「時々」だったと信じてはいますが、白雲と名月、そして加々見一家のことを観察し続けていたのは間違いありません。
ある意味ただ待っているだけの13年間ですからねぇ…気持ちも分かります。しかし鏡一郎にとってそれはあくまで「計画を万が一にも失敗させないため」の行動の一環だったのでしょうが…。

※美々エンド…ですが、そのルートに入った場合、鏡一郎は名月が死んでも白雲のところに現れなかったのですね…当然といえば当然のことでしょうが、でもこれも何だか怖いです。
鏡一郎も九十九のことを考えると何とも言えない複雑な思いだったことでしょう。しかも結ばれたのは自分の(…って言えるかどうか難しいところですが)娘ですから。
でもこれも鏡一郎の基本的な考え方に基づいた行動でしょう。歴史を書き換えるのは、書き換えたいと願う本人だけ。
メインルートで鏡一郎は白雲に「私は君に新たな選択肢を提示することができる」と語りかけましたが、この展開も、白雲は新たな選択肢を選んだのだ、九十九が音々を救い美々がこの世に生を受けたことですでに歴史は変わっていたのだ…と理解するのでしょう。
※1つ思ったのは…美々ルートに入った後、もし九厘が非常に強く名月のことを思っているのであれば、(この時空の九厘はあまりに報われないので、見るに見かねた鏡一郎が九厘に「新たな選択肢を提示できる」とタイムマシンの話をして)九厘を1999年に送り込んで、彼女が名月を転落から防いで歴史を書き換え、白雲と九十九②のように現代に戻るところで融合…みたい展開もあったかも知れません。まさかの百合エンドになったりしてw。(でももしそうなったらそれを受け入れる側の1999年の鏡一郎はメチャメチャ驚いたでしょうね…白雲が来ると思っていたらなんでお前が!?みたいな)…でも面白そう。本編に入れたらブーイングの嵐でしょうが、アペンドが作られていたらのなら(orこれから万一作られるなら涙)是非収録してもらいたかったかも。

※どうでもいい話ですが美々のフルネームは……「かがみみみ」

3.7 C4(1) 1999年夏:第2章(冒頭部を除く)
○この章の大筋は、1999年に九十九②が学園5年生のクラスメートである名月、九厘、高島などと学園生活を送りながら、運命の「台風の日」を待つというもの。
○冒頭から名月は九十九②を「お兄ちゃん」と勘違いしてベタ惚れ。記憶喪失と知って途中「お兄ちゃん」と九十九②を切り離して考えるようになるがそれでも基本的には九十九②への強烈な恋心は持ったまま。自分も好きだと一言いえばいつでも直ちに2人は恋人同士になるという状況にあって、「歴史を書き換えて2012年に戻って義姉・名月との生活を取り戻すためにも、ここで名月と一線を越えて親しくなってはいけない」と必死に抵抗する九十九②が、名月のラブラブアタックにいつまで耐えられるかという流れ。

[時間移動後初日(1999/7/11)]
・2012年から時間移動してきた白雲(以下九十九②)、その時代の(若い)鏡一郎と会う。
・九十九②、送り出される前に2012年の鏡一郎としていたやり取りを1999年の鏡一郎に伝える。鏡一郎はその中の「私は君に新たな選択肢を提示する」という一言に反応して、白雲をどの程度、どのようにサポートするかを決める。
===
「正直、どの程度、君の力になるべきか決めかねていたのだが……。なるほど、それが“未来の私”が出した答えならばこの私もそれに倣うとしよう」
「…私はあくまで支援者としてふるまわせてもらう。私は君の手助けをするためなら協力を惜しまないつもりだ。しかし逆を言えば、それ以上のことをするつもりはない。」
「私はあくまで君の足元を固めるのみ。歩き出すのは君自身――。――考え、決断し、行動するのは君自身であるべきだ」
===
※相変わらずの鏡一郎節です。ブレないです。

九十九②は鏡一郎との会話で、運命の「台風の日」はまだ先であることを知り、それまでどうすればよいかを考え始めると、鏡一郎は九十九②を全面的に支援すると伝える。
===
九十九②「それまでどうしたもんか……うちに帰るわけにもいかないよなぁ」
鏡一郎「言ったはずだ。『私は君への助力を惜しまない』と。衣食住の心配は無用だ」
九十九②「ほんとかっ!? そりゃ助かるけどさ……いいのか? 俺、金なんてないぞ?」
鏡一郎「いらん。金なら十分ある」

鏡一郎「”金持ちの酔狂”では納得できないかね?」
九十九②「『謝礼に一億円よこせ』って言われたほうが、まだ納得できるな。タダほど怪しいもんはねぇ」
鏡一郎「君にしてみればそうかも知れないが、私にしてみれば君も似たようなものだ。君は、姉のためなら何もかもなげうつ覚悟があるのだろう? 仮に、姉を助けたことで君が命を落とすことになったとしても、君は後悔などしないだろう。姉を救えた事実を喜ぶだろう」
(おっさんの言葉は問いかけでありながら、どこか言いきるような響きを持っていた。)
鏡一郎「私には君を支援する用意がある。君にはどんな対価だろうとも支払う用意がある――。それで、ある種の合意が成立しているとは言えないかね?」
===
※1周めでは怪しさが抜けないまま納得して読み進めましたが、2周目以降はこの時の鏡一郎の言葉の意味がわかってきます。
九十九②にとっては意味不明な言葉が並んでいたと思いますが、鏡一郎は嘘は付いていませんでした。

・鏡一郎、九十九②に1999年に滞在するにあたっての3つの注意事項を伝える。
①この世界での名は凪九十九。鏡一郎(この世界での本名は凪鏡一郎)の実子という設定。また鏡一郎のことは「博士」と呼ぶように。
②記憶喪失の人間としてふるまう。
③タイムマシンのことは他言無用。
※②の記憶喪失ですが、鏡一郎はその理由として「君はバカだからいつどこでボロを出すとも知れん。だから、人から身の上を聞かれたときは『震災で記憶喪失になってしまった』と言いはれ。それが一番安全だ。」と話し、九十九②も納得します。これはもっともな話で何も違和感は覚えませんでしたが、実は鏡一郎はこの世界の名月が九十九②を見た瞬間、お兄ちゃん(=1996年に震災で死んだ九十九)と勘違いして即恋愛モードに突入することがわかっていて、その対策をいろいろ考えるうちに、記憶喪失した者として振舞うのが最善と考えたのでしょう。当然それによって予期せぬ様々なことが発生するだろうこともわかっていました。でもそこはもう、九十九②に任せよう、彼が自分で判断して決めればよい…。そんなことを考えていたのでしょう。鏡一郎の立場に立って考えるとささやかなことでも面白く感じられます。

・鏡一郎は、タイムマシンの存在を知るのは自分と九十九②だけと話す。この場に時間移動する直前にいた長身の謎の女もそれを知っていたはずだと九十九②が不思議がると、鏡一郎は「たしかに、あの子にはいずれタイムマシンの存在を明かすつもりだ。が、今はまだ知らせていない。まだ、不安定だからな」と口にした後、改めて自分の娘九厘をその場に呼んで紹介する。九厘は部屋に入るなり、薄汚い風体の九十九②を見て不審者と判断し、催涙ガスを使って九十九②を弱らせ、スタンガンで止めを刺そうとするが、その寸前で鏡一郎が止めに入る。彼は九十九②が鏡一郎の招いた客人なので、無礼を働いたことを詫びるよう九厘に伝え、九厘も渋々それに従う。その後自室に戻った九十九②はシャワーを浴びると様々な疲れからすぐに眠りにつく。

<C4時空で2012年から移動してきた白雲⇒九十九②を鏡一郎が1999年に受け入れた時の言葉についての疑問>
※1つ、非常に気になる点があります。
この日、九十九②がタイムマシンから出て自分の部屋にやってきた時の鏡一郎の言葉です。
「なるほど……そろそろ来る頃だと思っていたが、今日だったか」
「君が来たということは、君の姉もやはり亡くなったのだな」
制作スタッフの見落としまたは勘違い…と考えるのが普通でしょう。
この一言から、鏡一郎が事前に自分がC4にいるとわかっていたと考えられます。しかし時空は九十九②が送られてきた時点で分岐するので、それまではC3にいるのかC4にいるのかはわからないはずです!
タイムマシンの過去への移動の際の出口はその日に作ったばかりのはず。だから「今日だったか」というのは納得できない言葉です。
今日来ればC4にいるとわかりますし、来なければC3にいるか、あるいは次以降に出口を作った日に来るかのどちらかです。そして台風の日が過ぎたらC3にいること(あるいは歴史の書き換えでこの先、状況が変わった…例えば2012年に美々エンドになったとか汗涙)が確定するのです。
「なるほど……来るなら今日あたりだと思っていたが、やはりな」のような言葉でなければいけないと思うのですが。
※上にも書いたように、C3とC4は地獄と天国ほどの差がある時空です。そしてそのどちらなのかが明らかになる可能性が高いのがこの日。さすがの鏡一郎も、九十九②が送られてくるかどうか、「出口」を設置した後、固唾を飲んでタイムマシンを見つめていたと思うのですが…

※でもまぁ例によって制作スタッフに見落としも勘違いもない、と仮定するならば、考えられる矛盾回避案はいくつかあります。
①新たに鏡一郎が作り直したタイムマシンでは「出口」が不要になった…という可能性もなくはないです。それまでのタイムマシンは試作品レベルで動作も不安定、定められた日時にしか戻れなかったが、この時空で鏡一郎が作ったタイムマシンは、その点が改良されて過去ならどの日時にでも移動できるようになったため、九十九②がやってくる日時を正確に知ることができなかった…ということです。
しかし、C4時空の第2章の初めで鏡一郎は「このタイムマシンは万能ではない。出入口は限られているのだ。場所も、そして時間もな」と語っており、やはり出口を作らねばならず、その場所に向かってしか時間移動はできないという基本設定は変わってないようなので、無理があります。そもそもタイムマシンに少しでも新しいコンセプトを入れてしまうと信頼性に疑問が残りますから、絶対に失敗できないこの計画で採用するのは危険過ぎるでしょう。
②照れ隠し…もあるかも知れません。当然今日とは知っていたけれど九十九②が来るかどうかじっと待っていたなどとは言いたくない。誰かがタイムマシンから出てくる予兆があった時点で、待ち望んでいたとバレないようにその場を去って自室に戻った、自分が時空C4にいることがわかって心の底から嬉しかったけれど、それを誰にも知られたくなかった…ということは考えられるでしょう。鏡一郎らしいかも笑
③「出口」を作るための「時空の記録」は自動で、この頃は頻繁に行われていた…これが最も可能性が高いでしょう。出口を自動的に事前に設定した日時に行う程度の改善は、時間移動の機能には全く影響を与えないでしょう。とにかくこの頃は、毎日とか1日おきくらいに「出口」を作っていたことが予想できます(当たり前ですが出口を作った日にしか九十九②は送られてこないのです)。白雲が送られてきたらC4時空に分岐したことが確定するので出口作りは中断します。送られて来なければ台風の日までずっと出口を作り続ける…。これなら「なるほど……そろそろ来る頃だと思っていたが、今日だったか」という言葉もそれほど不自然ではないでしょう。まあ時空がC3かC4か不明な以上、来ることは確定していないので「なるほど……そろそろ『来てもよい』頃だと思っていたが、今日だったか」とすべきとは思いますが。
いずれにしても個人的にはこの仮説で理解を進めたいです。

[移動後2日目(1999/7/12)]
※この時空の1999年の「設定」の説明を踏まえて進行しますが、印象的な言葉も多く(特に名月)、また2周目以降に意味がはっきりする内容もたくさんあって、密度がとても濃い1日になります。ショックを受けて終わった第1章から一転、明るい雰囲気と最初から名月がベタ惚れ状態であること、そして明らかになっていないたくさんの謎の存在と、全く先が見えない展開がクリックを加速させます。このあたりの構成はうまく作られていると感心させられます。

・移動した翌日の朝、九十九②が目を覚ますとそこに九厘が立っていた。九十九②は彼女に起こされた後、シャワーを浴びて鏡一郎のところに行く。その後九十九②は鏡一郎と九厘と3人で朝食を取る。そこで鏡一郎の話を聞き、自分が1999年に来ることに備えて周到な準備をしてくれていたことを知り驚く。
「”凪九十九”は七帯学園の生徒だ。現在は震災で負った怪我の後遺症で休学していることになっている。復学手続きをすれば、めでたく君は正式な生徒として迎え入れられるというわけだ。」
・鏡一郎は九厘にある程度事情を説明していた。まだタイムマシンについては話ができないので、実の息子であり事情があって離ればなれになっていていた。記憶を喪失している…といった内容だったと想像できる。九厘は頭がよい上に自身が記憶喪失だったので、九十九②の記憶喪失が嘘であることにはすぐに気づいただろうが、鏡一郎がそう言っている以上、黙ってそれを信じることにした。
・九厘は彼の養子であり、表向き九十九②と九厘は「義理の兄弟」ということになる。

((名月と九十九②の再会?))
・その後九十九②は九厘と一緒に登校する。学園に入ったところで目の前に名月が現れる。名月は九十九②を3年間待ち続けた「お兄ちゃん」と間違えて抱きつき、再会の喜びを口にする。一方九十九②は、2012年で急死して以来の名月との「再会」とも言えるこの出来事に様々な感情が湧き上がって混乱するが、気を取り直して冷静に記憶喪失した者として振舞う。
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名月「――お兄ちゃん…!!」
名月「おにいちゃん! おにいちゃん!! おにいちゃん…!!」
名月「会いたかった。ずっとずっと待ってた……お兄ちゃん…!!」
名月「わたし、ずっと待ってたんだよ。ずっと信じてた……。お兄ちゃんは約束を守ってくれるってずっと信じてた! お兄ちゃんはきっと帰ってくる。わたしに会いに戻ってきてくれる。だから、わたしたちは再会できる。また一緒にいられるようになる――。それだけを信じて、信じて、待って、待って、待って…………やっと……やっと、会えた…!!」
名月「もう放さない。ぜったいぜったい放さない! これからは、ずっとずぅっと一緒だよっ!!」
九十九②「……えっと……あんた、誰だ?」(※ 能筋九十九②が状況を精一杯考えて口にした言葉でした。よくできました涙)
名月「へっ…? や、やだな……なに言ってるの、お兄ちゃん? わたしだよ、名月ッ」
九十九②「悪いけど、人違いじゃないか。俺に妹は……あんたみたいな妹は、いない」
名月「……えっ……。からかってる……わけじゃなくて? 本気で言ってるの…? わたしのこと、忘れちゃったの?」
九十九②「記憶にない……すまない」
名月(大粒の涙をこぼしながら)「ちがう? ……ほんとに? お兄ちゃんじゃない? そんなはずない、だってお兄ちゃん……なのに、覚えてない…?」(涙を流れるままにして、うわごとのようにつぶやく)
===
※このシーンはいつ見ても素晴らしいです。きっと…いや、間違いなくCVの小春原映花さん(=アグミオン)のおかげです。第1章では「優しいお姉さん」。最後は息を引き取るシーン。そしてそのシーンを見てすぐ第2章に移ると、最初の登場が「恋する○校生」としてのこの感動の再会?シーン。第1章の暗いショックなエンディングから一転して…暗闇から白日の下に突然送り出されるわけですが、その切り替えを見事に演じ分けた素晴らしい演技でした。
やはりこのシーンも、2周目、第3章での九十九と名月のことを知ってから見ると、格段に素晴らしさが増します。1周目はどんな人でも、「?」な気持ちを持たずにいられないでしょう…

※エピローグの後、白雲と名月がいろいろな昔話をして愛情を確かめ合ったと思いますが、このシーンは絶対に盛り上がったでしょうね…。2人とも、もう絶対に会えないと思っていた人との突然の「再会」でした。様々な感情が入り乱れて壮絶な精神状態だったでしょう。
「『お兄ちゃん』じゃないっていうの、嘘じゃなかったんだね。あの時のつくも、本当にそっくりだったんだよ。…っていうかそんなの今考えたら当たり前だけど」「俺は何を言ったらいいかわからなくて困ってた」「そうだよね。それで『あんた、誰だ?』て言われて、『記憶にない』って言われて頭真っ白になっちゃって。でもあれは嘘だったんだね。」「ごめん」…みたいなカンジでしょうか笑

・その後入学(学校側としては復学)手続きもあっさり終わり、担任に連れられて朝礼の場に入り、名前を名乗るだけの簡単な自己紹介をする。名月、九厘、高島とも同じクラスだった。担任がクラスに何か彼に質問はないかと振ると、九厘から九十九②についての事情を聞いた名月がいきなり立ち上って近づき、記憶喪失ですべて忘れてしまったのかもう一度確認する。担任から九十九②を知っているのか尋ねられた名月はクラス全員の前で「はい、よく知ってます。この人は……お兄ちゃんは―― ――わたしの彼氏ですっ」と恋人宣言し、この日から九十九②に猛アタックをかける。
一方、親友でありアイドル的存在でもあった名月が言っていた待ち人「お兄ちゃん」が実は九十九②だったと知り、九厘はショックを受ける。

((放課後①:とまり木))
・放課後家に帰ろうとした九十九②は名月に呼び止められその後ずっと付き合わされることになる。
・まずアーケード街でとまり木の看板に興味を持った九十九を見て名月がそこに入ることを決める。
九十九②は2012年に加々見教授と美々と名月と一緒に店に入った時教授が注文していたメニュー「エビアボカドボウル」を注文して、なぜ裏メニューを知っていたのか名月に突っ込まれるが、何となく記憶に残っていたのだろうと納得される。
・マスターは1996年に来た九十九(=お兄ちゃん)が九十九②と勘違いしてその時の話を口にする。本当にその記憶がない九十九②を見て不思議がるマスターに記憶喪失という事情を伝えた後、九十九②は「お兄ちゃん」についての手がかりに期待してその時の話を詳しく聞く。
マスターは、お兄ちゃんが当時連れと一緒に来店した際にエビアボカドボウルの試作品を提供して意見を求め、連れのアドバイスを受けてこの料理が完成したこと、その後お兄ちゃんは喀血して救急車で病院に運ばれていたことを2人に話す。
・名月はお兄ちゃんの病気が重かったことを知り、今はもう大丈夫なのかと九十九②に尋ねるが、九十九②は持病もなく全く問題ないと答え(そりゃそうだ)、名月はよかったと安心しながらも「今度は強がりじゃないよね」と確認する。
・さらに九十九②がその「連れ」について尋ねるとマスターは、てっきり九十九の父親かと思うくらい年の離れた、眼鏡で鋭い目つきの男性だったと答える。瞬時に九十九は鏡一郎に違いないと思いつくが、その時、名月が意外にも彼のことを口にした。お兄ちゃんと鏡一郎の話を聞いた九十九②は、それが自分の父親であることを伝える。
===
名月「それ、たぶん博士さんじゃないかな」
九十九②「博士のこと知っているのか…?」
名月「うん、ちょっとだけね。ほとんど面識ないんだけど、大地震がおこった日、お兄ちゃんが『博士』っていう人とトランシーバーで話してたのを覚えてる」
九十九②「詳しく教えてもらえるか」
名月「えっと…何から話したらいいかなぁ?。その日は“大地震が起こるかも”ってちょっと前から噂になってて、でも、確証があるわけじゃなかったから、例年通り七夕まつりがおこなわれていたのね。で、おにいちゃんは『博士』って人とトランシーバーで連絡をとりながら、彼の親戚を避難させるためにがんばってたの。わたしが博士さんと会ったのは、大地震が起こった直後のことだった。博士さんは、地震で倒壊した家に巻き込まれて大ケガしてた。お兄ちゃんは博士さんを助けるためにその場に残って、わたしは一足先に避難したの……そして二人はそのまま消息不明になってしまった……」
九十九②「悪い、イヤなこと思いださせちまったな」
名月「うぅん、いいよ。だってお兄ちゃんは……つくもは、こうして帰ってきてくれたもん」
(瞳を潤ませながらほほえむ姉さんに、おれはうなずいてやることができなかった)
名月「つくもは博士さんのこと”知ってる”んだね。博士さんとは今も関係が続いているってことなのかな?
九十九②「あ、あぁ……彼なら元気にしてるよ。なんていうか……博士は俺の“親父”だ。そう聞かされてる」
===
※お兄ちゃんの病気を知っていたのかと尋ねた時の名月の返事は
「うん、持病があるのは知ってたよ。お兄ちゃんは詳しく話してくれなかったし、普段は平気そうにしてたけど、たまに辛そうだったり、ふらふらしていたり、倒れたりしてたから……」
九十九②がもう少し頭がよかったら、その内容と「喀血」というキーワードから「それはお姉ちゃんを奪ったあの病気では」と思い当たったのではないかと思うのですが…。そしてさらにもう少し考えると「その病気は震災前にはかかりようがない」ことにも気づいてよいはずです。でもマスターや名月の話に出てくる「お兄ちゃん」の話は1996年の震災前。ということはその「お兄ちゃん」はもしかして…と。
しかし言ってみればこの時の九十九②の「理解」は1周目でこの場にやってきた私と同じわけです。そして私はどうだったかと言えば…この時は当然気づいていませんでした。自分が九十九なみの脳筋(身体にも筋肉ないけど笑)であることが明らかになりました汗

((放課後②:帆船))
・その後名月は、まだ1999年時点では公園になっておらず野ざらし状態の帆船のところに九十九を連れて行く。その場で昔のお兄ちゃんとの約束の話とその後の思いを九十九②に伝える。本当に記憶がなく、また「お兄ちゃん」をよく思っていない九十九②は、ある意味正直に冷たい態度を取るが、名月は全く諦めない。
===
名月「そうだよ、ここはおにいちゃんとの大切な思い出が眠る場所……お兄ちゃんと再会を約束した場所。だからずっと待ってた。待ち続けてた。お兄ちゃんが帰ってくることを信じて。約束が果たされることを願って……。今日こそお兄ちゃんが帰ってきた目印が残っているかもしれない……。毎日そう期待して、毎日打ち砕かれて、それでもまた期待せずにいられなくて……そうして毎日、通いつめていた。毎日、辛かったよ。でも、それでも構わなかった。辛いこと以上に、わたしは、辛さが麻痺していくことの方が怖かったの。辛さに慣れて、辛さを感じなくなって、お兄ちゃんを待つことがただの習慣になっちゃって、お兄ちゃんの存在そのものが”思い出”になっちゃうことが、何より怖かった……。それにね、もう、いいの。だって、お兄ちゃんはこうして帰ってきてくれた。約束を果たしてくれた。この三年間の努力は、今日、報われた。この三年間の寂しさは、今日、思い出になる。」
名月「さあ、バンダナを受け取って。これが約束の証。ここが約束の場所。これで、私たちの約束は果たされる」
(三年分の想いがつまったバンダナを両手にのせ、差しだしてくる。このバンダナは姉さんの祈り。これは、そう、おごそかな儀式だ。俺がバンダナを受けとることで、姉ちゃんを”お兄ちゃん”の呪縛から解きはなつことができるだろう。じつに魅力的な話だ。けど、受け取るわけにはいかない。俺は”お兄ちゃん”じゃない。姉さんが勘違いしている分には構わないんだけど、俺自身が認めるわけにはいかないんだ。だから、俺は首を横にふった。)
九十九②「俺には記憶がない。俺には名月との思い出がないんだ。そんな俺に、思い出の象徴であるバンダナを受け取る資格はない、だって、それはきっと名月にとってかけがえのない物なんだろうけど、俺にとってはただの古びたバンダナでしかないんだから」
名月「……そんなっ……」(姉さんの手の上でバンダナが小刻みに震えだす)
名月「それじゃ、このバンダナはどうすればいいの? つくもにとってはどうでもいい物なの? もう、思い出してはくれないの?」
九十九②「名月との思い出を取り戻す努力はする。ただ、とり戻せるかどうか保証はできない」(さすがに「努力するだけ無駄だ」とは言えなかった)
九十九②「わかってくれ、名月。おまえの前にいる男は、おまえが好きだった“お兄ちゃん”じゃない。もはや、別人なんだ」
名月「そうだよね」(力なく、うなだれる)「つくもには、お兄ちゃんとしての記憶がない、わたしとの思い出がない、バンダナへの思い入れもない……。つくもにしてみれば、わたしは今日出会ったばかりのクラスメートでしかなくて、私のこと好きでも何でもない……」(ほんとは前々から知ってるし、好きで好きでたまらないんだけどな。”お兄ちゃん”の問題を抜きにしても、俺はいずれ”現代”に帰ってしまう身だ。この時代の姉さんと仲良くなったところで、姉さんを悲しませることにしかならない。だから、姉さんとは少し距離を開けておいたほうがいいんだ。姉さんが目の前で悲しむのを見るのはイヤだけど、こうすることで後日の悲しみをやわらげられるなら、俺は心を鬼にして姉さんの心をひきはがそう。)
名月「……でもね、わたしはそうじゃないの。私には記憶がある。この胸には”あなた”との思い出が詰まってる。わたしはこの三年間ずっと”あなた”との再会を願い続けてきた。それに比べたら”あなた”の記憶喪失なんて大した障害じゃない。だって、目の前に本人がいて、触れることができるんだもん。”あなた”がわたしのことを覚えていないからといって、その程度でわたしの思い出は薄れたりなんかしない。」
名月「忘れちゃったなら教えてあげる。つくも、わたし、”あなた”が好きよ」「”あなた”がわたしを好きじゃなくなっちゃったなら、もう一度好きにさせてみせる。だから……覚悟してね?」「こうなったら意地でも”あなた”のことふりむかせてみせるんだからっ」
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((自宅に戻ってからの九十九②と鏡一郎の会話))
・その後九十九②は自宅に帰り鏡一郎と話す。初日からいきなりたくさん失敗したようだと事情を話す。
(1)名月のこと
いきなり学校で会い、べったりされ、告白されてしまった。自分はただ名月を助けたいだけでいつもそばにいたいわけではない。今後の名月への影響やタイムパラドックスのようなものが心配と告げるが、鏡一郎はまず「何事かと思えば、のろけか」と一蹴し、歴史を書き換えようと九十九②がここにやってきたこと自体がタイムパラドックスなので気にしなくてよい、そして
「”何ができないか”ではなく”何ができるのか”を考えたまえ」と言われてとりあえず納得はする。
影響はさて置いても名月から迫られている状況をどうしたらよいかと尋ね返すが、「最愛の人から告白されたのだろう? なぜ素直に喜ばない」
と言われ、「姉さんが好きなのは俺じゃない。俺は“お兄ちゃん”じゃない」と答えると、鏡一郎も心当たりがあるようで言葉に詰まる。
・鏡一郎は、「(この時代の名月と親しくなって)この時空に残ることも可能」という選択肢もあることを九十九②に話す。
(2)「お兄ちゃん」のこと
九十九②は、とまり木で聞いた話から鏡一郎と「お兄ちゃん」が1996年には知り合いだったことを知ったと話し、当然自分がお兄ちゃんと似ていることも知っていただろうから、名月のこの反応も予測できたはずだろうと詰め寄った。さらに「あんたは『お兄ちゃん』の父親であり、さらに『お兄ちゃん』は自分の父親ではないか」という推理を披露するが、あっけなく否定される(この推理を1周目に見た時は、おぉ!と感心する一方、話の流れから考えてなんかいかにも間違っていそう…とも感じましたが、予想通りでした笑)。九十九②は非常にがっかりしながらも…
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九十九②「じゃあ……けっきょく“お兄ちゃん”って何者なんだよ? 博士の息子じゃないなら、助手か?」
鏡一郎「『助手』と呼べないこともないな。しかし、私はそう思っていない。言うならば彼は――」
鏡一郎「――彼は、私の友人だった。世代を超えた友人であり、そして恩人だった」
その顔はとても悲しそうで、その言葉は過去形で語られていて、だから、やっぱり彼はこの世にいないんだなってことを実感せずにはいられなかった。
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※鏡一郎は感情を表に出さない性格なので、このような言葉の片隅に感情がこもった発言は胸を打つものがあります。
この言葉も1周目には全く意味不明ですよね…
※それにしても鏡一郎のこの表情を顔や言葉に出さない性格は、第1章で登場したC3時空の加々見教授とは全く別人です笑。明晰で鋭さを感じる頭脳は確かに共通していますが、性格はかなり違います。1996年から2012年まで一人世間から離れてタイムマシンの開発・検証に没頭していた時期にこんな性格に変わったのでしょう。
思えば第2章で九十九②は、学園で周囲にいるクラスメートなどが第1章の時と違って誰も自分を恐れていないことにたびたび気づき、驚いていました。夜の学園で九厘の情事を見た後で能面たちに絡まれた時も、トゲトゲしい雰囲気に触発されて焼きを入れようとしに来たのではなく、名月がらみの嫉妬心からと聞いてガッカリして闘争心が抜け落ち、(時間移動直前に沼淵からも指摘された通り)トゲが抜け落ちて丸くなったことを自覚することになります。これも、第1章で名月を失ったことが、彼の内心、そして性格を変化させたわけで、なんとなく共通点の多い鏡一郎と九十九②でした。

[名月の誕生パーティー(1999/7/19)]
・名月の誕生パーティー。名月が鏡一郎・九十九②・九厘が待つプライムビル最上階の凪宅を訪れる。最初に鏡一郎が挨拶をする。
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鏡一郎「初めまして、凪鏡一郎だ。子供たちが世話になっているそうで、礼を言わせてもらう」
名月「初めまして。……ちゃんとご挨拶するのは初めてですね」
鏡一郎「私を覚えていたのか…?」
名月「もちろんです。だって、あなたはお兄ちゃんが命を賭けて守った人ですから」
鏡一郎「……っ……」
名月「その脚って……」
鏡一郎「うむ、あの時の傷だ。もう治らん」
名月「そうですか……でも、生きていてくれて良かったぁ……」
鏡一郎「……………」
名月「あれからどうなったのか、この三年間ずっと心配していました。今こうして再会できて……とっても、うれしいです……」
鏡一郎「………あぁ、私も……君と再会できたことを、嬉しく思う……っ」
(なっ……あの重厚な博士が、声を震わせてる…!?)
名月「まさか、”博士”さんがくーりんの、そして、つくものお父さんだったなんて……」
名月「もっと早く知ってれば…… ……もっと早く会いたかった…」
鏡一郎「すまない……しかし、私は…… ……君に合わせる顔がなかったのだ……」
名月「謝らないでください。なにも気に病むことなんてありません」
名月「あなたの命が助かったことを、喜ぶことはあっても、責めることなんてあるわけないじゃないですか」
名月「お兄ちゃんが記憶をなくしちゃったのは残念ですけど、こうして元気でいてくれる。それだけで、わたしは幸せなんです」
鏡一郎「っ……すまない………許してくれ……」
(それでも博士は謝るのをやめなかった。それどころか、耐え切れないように顔をうつむかせてしまったのだった。博士はしばらくの間、顔を下に向けたまま全身を震わせていた。事情を知らない俺と九厘は、へたに声をかけることもできずそんな博士を見守ることしかできなかった。姉さんにしてみても、博士の反応は予想外だったみたいで、どうしたらいいのかわからない様子で博士を見守っていた。やがて博士は自分自身で立ち直った。取り乱してしまったことを詫び、九厘に付き添われて隣室へと去っていった。)
===
※博士の心の中に様々な思いが去来して、あふれる感情に耐え切れなくなりそうだったのでしょう。非常に感動的なシーンです。事情を説明して謝れば、その重い気持ちを整理することもできたでしょう。しかしこの時はそれをすることはできません。言葉を全てのみ込んでただ「すまない」「許してくれ」と口にするだけでした。そして…鏡一郎が次に名月と会う13年後にようやく(九十九②はいませんでしたが九厘と3人の場で)その事情は全て説明されることになります。
※そもそも1996年に妻を救った後の彼の人生はこの目の前にいる名月を救出するだけのためにありました。そしてその名月と初めて会話したのがこの日でした。
※ちなみに、詳しくは書かれていませんが間違いなく鏡一郎は、名月が九十九②を「お兄ちゃん」だと思っていることを否定はしなかったでしょう。九十九②は別人なので「お兄ちゃん」のことに関しては嘘をついていません。記憶はないし、別人です(もちろん記憶喪失とか名月を知らないとかいうのは嘘ですが)。しかし鏡一郎は「『お兄ちゃん』のその後が九十九②であって、彼は実の息子である」ことを、嘘をついて認めていたのです。このあたりにも博士が精神的に辛かった理由があるでしょう。しかし、妻を救出する時もそうだったように、彼は、目的達成のためであれば自分がどんなにつらい目に遭っても耐えられる人間です。じっと耐えて、九十九②が名月を救出する時を、そして13年後を待つことになります。

・その後、九十九②・名月・九厘はバースデーケーキを食べたり凪宅のプールに入ったり一緒に(九十九②が名月へのプレゼントとして持って来た)ビデオを見たり4人でディナーを取ったりして楽しい時間を過ごす。翌朝九十九が目を覚ましてリビングに向かうと、九厘と徹夜で酒を少し飲みながら語り合っていたらしい名月が一人まだ起きていた。
前夜鏡一郎と話をしながら「お兄ちゃん」と九十九②をはっきり区別できている(意識しなくても別人なんだから自然にそうなるのは当然ですが…)ことに気づいた名月は、鏡一郎から、「お兄ちゃん」の記憶がない九十九②に「お兄ちゃん」を求めるのは負担になると、双子を例に挙げて説明され、これまで九十九②を苦しめていたことを理解した。それを九十九②に謝罪した上で、
===
「だから、もうやめる。つくもは”つくも”であって”お兄ちゃん”じゃない。もう”お兄ちゃん”としては見ないから。」
「――だから、わたしは”つくも”を好きになる」
「わたしはお兄ちゃんが好きだった。お兄ちゃんと過ごした日々はかけがえのない思い出で、あの恋があったから今の私がある。そう胸を張って言える。わたしはお兄ちゃんを決して忘れない。……ただ、逆を言えば、お兄ちゃんはもう”そういう存在”になっちゃってたんだ。ふと気づいたら……”思い出の中の人”になっちゃってたんだ。」
「今、わたしの目の前にいるのは、お兄ちゃんじゃない。今、わたしの目の前にいるのは……つくも。だたら、わたしはちゃんと”つくも”と向き合うの。”つくも”のことを知って、”つくも”を好きになりたいの」
言葉が出てこない。全身が震えるのを止められない…!! 姉さんが”お兄ちゃん”ではなく、この俺と向き合ってくれる……俺を好きになろうとしてくれてる…!! こんなに嬉しいことはない。本望だ! 今すぐ「俺も好きだ」と叫んで抱きしめたい!
「あらためて……よろしくお願いしますっ」
姉さんは深々と頭を下げる。それは疑いようもない、俺への再攻略宣言。けど姉さんは気づいてない。ままさに俺が陥落寸前だということに! 「こちらこそよろしく」と頭を下げたい衝動を抑え込むので精一杯だ。
「……おやすみ、つくも」
===

・寝ている名月と九厘を置いて鏡一郎と2人で昼食を食べている時、名月の攻撃への悩みを相談された鏡一郎は、前夜の名月の会話は、「彼女が君と一線を画することを狙った」ものだったが予想外だったと話す。九十九②はすぐに未来へ帰らねばならない自分が名月と親しくなり過ぎては、名月を長い間寂しい思いをさせるのが嫌だったのだが、鏡一郎は「すでに十分、親しくなっていると思うが」と言い、さらに
===
鏡一郎「そもそも、必ずしも未来に帰らねばならんわけでもあるまい。この時代に残って名月くんと結ばれる――そんな結末もあって良いはずだ」
九十九②「! そんなことが許されるのか…?」
鏡一郎「言ったはずだ。”何ができないか”ではなく”何ができるのか”を考えたまえ――と」
九十九②「……や、けど俺は……」
鏡一郎「私はあくまで選択肢を提示しているに過ぎない。どう行動するかは気に自信が決断すればいい。君が未来に帰ることにこだわるなら、その意思を私は否定しない。そして君が未来へ帰ることにこだわるのなら、君がこの時代の名月くんを受けいれたがらないのも当然だと言えよう。君の第一希望は”未来の彼女”と結ばれることにあるのだからな。そうだろう?」
九十九②「あ、あぁ……そうだ。そういうことが言いたかったんだ、うん」
鏡一郎「ひとつ助言をしておくならば、こういうのはどうかね? 君も彼女と同じ解釈をしてみる、というのは。」
鏡一郎「その”姉さん”とこの時代の”名月くん”ははたして同じ人物だと言えるのかね?」
九十九②「この時代の彼女は“名月”であって“姉さん”じゃない……。そして、俺が好きなのはあくまで“姉さん”だ……。……おおっ! そう考えたら“名月”のアタックも軽くかわせるような気がしてきた! スッキリした! ありがとう、博士!」
===
※さすがは鏡一郎…と言いたいところですが…甘かったですね……笑

[九厘の罠(1999/7/21)と高島の罠?笑(1999/7/23)]
・名月の誕生パーティーの2日前、九十九②は下駄箱に嫌がらせの手紙が入っていることに気づく。それは毎日エスカレートして汚物や靴の中に画鋲を入れるに至る。
・九厘がこの問題の解決に乗り出すと犯人はすぐに判明する。友梨香だった。九厘は(その敏感な嗅覚によって)九十九②の嫌がらせの犯人彼女だと知って責める。彼女は男性を毛嫌いしていた九厘が九十九②に対してだけは接触しても嫌がっておらずむしろ嬉しそうな様子を見て、九十九②に強く嫉妬したと理由を話し、九厘はそれは誤解だと必死に否定して彼女との情事に及ぶ。
・九厘は友梨香の主張を否定したものの、他の男性は触れるだけでも耐えられないのになぜ九十九②だけは平気なのかが気になり、遂にはその謎を解明すべく授業中に誰もいない保健室に九十九②を呼び出し、睡眠薬入りの茶を飲ませて気を失ったところで服を脱がせて包帯で保健室のベッドに縛り付けて身動きを取れなくする。目が覚めた九十九②を足で射精させた後、さらにエスカレートして自分も胸をはだけて九十九②にまたがって素股でイカせようとするが、自分も感じ始めてしまい同時に…
(途中選択肢あり。「(1)無理をするな(九厘の暴走を途中で止めさせる)/(2)声をかけずに様子を伺う(九厘にされるがままになる)」。(1)を選ぶとメインルート(=名月ルート)確定で、このままシナリオが進行した後に第3章からエピローグに向かうことになる。(2)を選ぶと九厘ルートに入れる可能性が残る。その場合、この章の最後にもう一度選択肢が出現する。)
・名月は、授業中に九十九②が体調不良で保健室に行ったこと、九厘もその時間にいなかったこと、保健室に駆け付けるとフラフラと出てきた九十九②から九厘の匂い、また九厘からは九十九②の匂いがしたことで九十九②と九厘が信じられなくなったと学校を飛び出し、それから2日ほど学校を休む。九十九②は名月宅を訪れるが、取り次いでもらった母さんから、会いたくないと言っていると伝えられ、もう少し頭を冷やしてしっかり何が問題点かを考えてから来るよう諭される。
・九厘は自分の暴走によって親友の名月を傷つけ、名月の恋を応援したいという気持ちに全く反する結果となったことがショックでしばらく立ち直れない。
・一方九十九②はこの状況の打開策を仰ぐべく鏡一郎に相談する。(焦る九十九②と魂を抜かれたようになっている九厘を見れば、鋭い鏡一郎は実際には何があったのか何となく推測できたのではないでしょうか汗)
鏡一郎は、名月が九十九②と九厘のことを誤解していることは大きな問題ではなく、九厘や「お兄ちゃん」のせいにして問題点の本質から目を背けている九十九②自身に問題があり、煮え切らない態度が名月を傷つけていると指摘する。そして、「選びたまえ。彼女の想いに応えるのか、否か。君が選ぶことで問題は解決する」「(中略)”選択しないこと”もまたひとつの選択だ。そして、そうした結果がこの有様だ」と話す。

※九十九②がこの時代の名月の猛烈なアタックを受けてもその想いに応えず耐えていた大きな理由は3つありました。
(1)名月の好意は自分でなく「お兄ちゃん」に向けられていること。
(2)タイムパラックス…この時代にあまりに名月と自分が親しくなると、この後の歴史が大きく書き換わってしまい、2012年に戻った時思わぬことが起こりはしないかという不安。
(3)名月の想いに応えても自分はすぐこの時代から消えていなくなるので、「お兄ちゃん」と同じように自分も名月を引きずってしまう
そしてこの時点で、(1)については誕生パーティーの時の名月の決意を聞いたことで解決し、また(2)については、時空移動してきた翌日の夜の鏡一郎との会話で解決していました。最後まで残っていた問題は(3)でした。そして鏡一郎は九十九②の絡まっている糸をほぐしていきます。
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「今の傷ついた心のまま君と別れたらそれはそれで引きずるだろうな」
「……そもそも、引きずることは悪いことなのか?」
「名月くんはこの三年間、”お兄ちゃん”のことを引きずってきた。また、君がいた未来ではさらに十年以上引きずりつづけていた」
「そのことを、彼女は後悔していたかね?」
(「――私の答えは、あの日からもう決まっている」という義姉・名月の言葉を思い出す九十九②)
「ならば、それで良いのではないか? 当人が納得している以上、君が気をもむのは余計なお世話というものだ。君ひとりで結論を出してしまうのではなく、彼女の意思を尊重しても……彼女の強さを信じてもいいのではないかな」
「さらに、もうひとつ付け加えるのならば……君は未来で彼女と再会するのだろう? 彼女に、君への想いを引きずらせたままで終わってしまうならば、たしかに酷な話だ。しかし、君は引きずらせたまま終わりにはしないのだろう? 未来で彼女と再会を果たすのだろう? 彼女が待ちつづけた日々は報われるのだろう? ならば、そこに何の不義理があるというのだ」

※この最後の言葉もなかなかよいです。九十九②も、そしてゲームをプレーして1周目にここにさしかかった私も、もう少し頭が良ければ、この言葉の中の「しかし、君は」のところが、「『お兄ちゃん』はもうこの世にはいないけれど、九十九②は再会できる」ことを意味しているとわかったでしょうね…
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・九厘の事件直後に早退して2日間学校に来ていない名月を心配した高島が名月の家を訪れる。名月が出てきて高島を家に入れて話をする。
「九十九②は九厘を選んだ」と泣き出す名月を見て、九十九②と九厘の様子からも名月の誤解と判断した高島は「じゃあそれが本当かどうか確かめに行こう」と強引に名月を学校に連れて来る。放送設備がある普段使われていない第三会議室に名月を連れて来ると、校内放送でその部屋に九十九②を呼び出す。しかし名月は緊張感に耐えられず部屋から飛び出して行ってしまう。高島は追いかけようとするが名月は見つからず、しかも九十九②が入れ替わりでその部屋にやってきてしまった。

※名月が逃げ出した時の高島の内心…「行動する前に思考してしまうのが僕の悪い癖だ! 今はそんなことしてる場合じゃない! 早く彼女を追いかけないと…!!」。そして入れ替わりで九十九②がやってきた時の高島の内心…「どうしたらいい? 考えろ! 考えるんだ! それが僕の取り柄だろう…!!」。笑いました。爆笑の連発でした。高島さん、本当によいですね~。そしてその「取り柄」を活かして、とっさにとんでもない作戦を作り上げます。

・高島は突然、自分は名月が好きだと九十九②に告げ、追い打ちをかけるように名月から九十九②と九厘が付き合っていると聞いたと伝え、第三会議室に九十九②を引き入れる。切り忘れていたと言ってマイクのスイッチをいじった後、会話が進められる。
九十九②はまず九厘のことをはっきり否定する。次に名月が嫌いなのか尋ねられ、嫌いではなく好みの塊だが、その理由は言えないが事情があってそれを受けいれることができないと答える。高島は「ならば名月を振れ」と迫る。名月のため、そして名月が好きな自分のために…と。
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(九十九②を問い詰める高島)
「まさか『できない』とでも言うのかい? なぜ? どうしてそんな自分勝手が言える。どうして彼女にそんな酷い仕打ちができるんだ?」
「これまた自覚なしか。つくづく君は自分勝手な男だね。彼女の立場に立って考えてごらんよ。好きな人に振り向いてもらいたくて、いつか想いが届くことを信じて、健気に尽くしてる……。けど、君にそんなつもりは毛頭ない。決して報われることのない努力を彼女にさせてる。そんな残酷なことってないだろう?」
(言葉が胸に突き刺さる九十九②に高島はトドメの一言を浴びせる。)
「そんなつもりじゃなかった? ハハハハハハッッ!! “自覚”が芽生えた今なら、はっきり答えを出せるよね? つくも、桜塚さんを振れ。生殺しにして弄ぶくらいなら、その方がよっぽどマシだよ」
(そしてついに九十九②は決心する)
「あぁ、決心した。俺は名月を――振らないっ!!」
「今までの俺はどうかしてた。名月を追いつめてしまったのは俺のせいだ。自分のバカさ加減にうんざりする。なんだかんだで理由つけて、『俺が好きなのは名月じゃない』って自分に言いきかせて、はぐらかしてきた。けど、どだい無理な話だったんだ。俺に、名月をキライになるつもりがまったくなかったんだから。好きな気持ちそのものにウソはつけないんだから。何より、名月が、俺が世界で一番好きな人であることに変わりはないんだから…!!」
「おまえのおかげでようやく目が覚めた。ためらいの最後の一本をおまえが断ちきってくれた……。ほんとに、ありがとう。……そして、すまない。名月のことはあきらめろ。おまえに出番が回ってくることはない。なぜなら、俺は名月を受けいれる――」
「俺が! 名月を愛してるからだっ!!!!」
===
・最後の九十九②の絶叫がエコーして、九十九②は今のやり取りが校内に流れ渡ったことを知る。高島はマイクのスイッチを切ったのではなく入れたのだったとも。高島が今度こそマイクのスイッチを切るとほどなく名月がその部屋に駆け込んできて、高島はその部屋を「颯爽と」去る。
ようやく自分に素直になった九十九②と名月は、お互いの気持ちをしっかり確かめ合う。九十九②は、自分が「お兄ちゃん」でないことが最後まで引っかかっていたが、誕生日のパーティーの時に心から好きになったのだと思うと告げる。そして名月は…
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名月「でも、それだけ? つくもがわたしを受けいれられなかった理由は、きっと他にあるよね。高島くんには話せなかった”事情”……わたしにも話せない?」
九十九②「いや、話すよ。離さなきゃ、俺たちは先に進めない。つまりーー」
九十九②「――俺は、またいなくなる」
名月「っっっ!!!?」
九十九②「俺がこうしていられるのは、ほんのしばらくの間だけ……この夏の間だけなんだ」
名月「そんなっ……そんなのってないよ…!! せっかく再会できたのに……うぅん、”出会えた”のに! ケガが治りきってないの? それとも、病気とか…?」
九十九②「まぁ、そんなとこだ。名月を笑顔にした分だけ涙を流させてしまうことが辛くて……仲良くなりすぎるのを怖がってた。名月と一線を引いておこうとしてた」
名月「それじゃ……やっぱり、わたしの気持ちには応えられない…?」
九十九②「応えるよ。俺は名月が好きだ。自分の気持ちにもうウソはつかない。だから名月、おまえの気持ちを聞かせてくれ。こんな俺だけど……すぐいなくなちまう男だけど、付き合ってくれるか…?」
名月「つくも……ズルイよ。さんざん、わたしのこと弄んどいてさ。自分が答えを見つけたからって、急に手のひらを返して……」
九十九②「うっ……た、たしかに、名月にしてみればそうだな。悪い……。俺も答えを出すまで、ずいぶん時間がかかった。『いま答えてほしい』ってのは俺のワガママだよな。だから、待つよ」
名月「ここからまた時間をかけたら、それだけつくもと一緒にいられる時間が減っちゃうじゃない」
九十九②「っ……それもそうか……」
名月「……なんてね」
九十九②「えっ?」
名月「つくもがズルイこと言うから、わたしもズルイこと言わせてもらうけど」
名月「ウソだよ。そんなことで迷ったりしない。だって――」
名月「――私の答えは、あの日からもう決まっているんだから」
九十九②「………っ!?」
名月「三年前……お兄ちゃんもそうだったんだ。彼はもうすぐ遠くに行っちゃう人だった彼と一緒に過ごせる時間はごくわずかだった。でも、わたしはその恋と向き合った。短い間しか一緒にいられないからこそ、悔いのない恋にしたかったの。お兄ちゃんとの恋をわたしは後悔してない。彼と過ごした時間をわたしは忘れない。お兄ちゃんともう会えないのはとっても寂しいけど……そう思うのは、それだけ彼との時間が幸せだったからだよ。幸せだったからこそ寂しいの。だから、わたしはこの寂しさを大事にしたい。それが、あの日に出したわたしの答え……。つくも、わたしはあなたのことが好きだよ。つくもと過ごせる時間が限られてるからって、この恋を諦めたりしない。時間が限られているからこそ、一生懸命、恋したいの。めいっぱい幸せを詰め込みたいの」
九十九②「名月……好きだ」
名月「ただ好きなだけ?」
九十九②「――愛してる」
九十九②「覚悟しろよ? もう後には引かないからな。たとえおまえが嫌がったって放してやらない」
名月「それはこっちのセリフだよ。いざ別れる時になって泣きじゃくるくらい、幸せな気持ちにさせてみせるんだからっ」

※名月、強いです。素晴らしいです。九十九②も、「設定」については止むを得ず嘘をつき続けていますが、名月のことが大好きなのにその想いに応えられなかった理由については正直に伝えています。
===
・翌日、2人は思い出の帆船の上で初めてのHをする。

[白雲との初対面(1999/8/1)]
・その後ずっとラブラブな毎日を送る2人は1週間後、海に行って遊びまくり、ついでにHもする。その後桜塚家まで行くと、白雲が引き取られてきたということで九十九②も家に上がって白雲と初対面する。白雲の第一印象は、「まさにこれは幼少期の自分、でも不愛想で可愛げがない」だった。九十九②は白雲を養子に引き取ることにした理由を両親から聞き、この両親の思いがあって自分は育つことができたと実感して、強い感謝の気持ちを改めて持つ。
※…と同時にこれは「役者がそろった」状態、つまり台風のXデーが迫っていることも表していました。

[七夕まつり(1999/8/6,7)]
〇初日から名月はメイド服~浴衣とサービス全開。メイドの担当時間が終わった名月は浴衣姿で校内を回る。天文部の展示会場はまったりしていた。来年はもう少しいろいろなことをしたいと口にする高島に、名月は「プラネタリウムとかやってみたいよね。あとは、自作のロケットを打ちあげてみるとか!」と話す。
※この名月の気持ちというか夢というか…が翌年どうなったのかはわかりませんが、制作スタッフ(チュアブルソフト)は2年後にその夢を叶えることになります。「あの晴れわたる空より高く」で…)
※タロット占いの話も面白いというか…高島は「恋人」の逆位置、九十九②は「死神」の逆位置。もうそれしかないという結果ですね。

・初日の作業後、九厘の素晴らしい計らいで、九十九②と名月は2人きりで屋上で花火大会を見る。当然Hもする。

・2日目は九十九②、名月、白雲の3人で校内展示を見てまわる。
・名月は差し入れのジュースを持って準備委員会室の九厘のところへ行き、義弟になったばかりの白雲を紹介する。九厘は白雲が九十九②に似ているような気がすると言い、名月は九厘とも似ているような気がすると言う。そしてその後、なぜか黙ってじっと白雲を見つめる九厘…
※(後で書きますが)例の「回収されない伏線」の1つですね…

・九十九②と名月、七夕飾りの短冊を書く。
名月「つくもとずっと一緒にいられますように――」(それは偶然、時間移動する前の義姉・名月が最後に書いた願いでもあった…涙)
九十九②「大切な人を守れる男になりたい……」(ぶれない…!)
そして短冊を結びつける小さい女の子を連れた親子3人が目に入る。女の子は自分のことを「みぃちゃん」と呼んでいた。
※これは明らかにこの時空の加々見教授と音々と美々なのですが…名月がこの様子に気づいて、見たことがある女の人だなぁ…と気になって、もし思い出して話しかけに言ったりしたら、おそらく歴史は少し書き換わっていたでしょう…いや、少しじゃすまなそうだなぁ。危ない危ない汗笑

・その後、白雲が迷子になり2人は慌てて探し始める。
・その様子をみた沼淵兄、九十九が帰ってきたと勘違いして目を付ける。白雲はほどなく発見されるが、沼淵兄は九十九②を呼び出すため名月を誘拐し、九十九②に電話をかけて呼び出す。
名月が連れ込まれ沼淵兄が待つのは、時間移動する前の2012年に沼淵弟と戦った同じ廃工場だった。沼淵兄は4人の舎弟を連れていたが、中の様子を伺いながら、(なぜか誘拐した男と名月が知り合いらしいことを不思議に思いつつも)九十九②は冷静に外で待機し、色々な理由から外に出てきた4人を次々に倒し、沼淵兄が待つ廃工場の中に入る。九十九②はそこで待つ男の顔を見て思わず、沼淵弟と勘違いして沼淵の名を呼んでしまう。
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九十九②「沼淵ッ!? な、なんでおまえがここにいるんだよっ!?」
沼淵「ほぅ……記憶喪失って聞いてたが、オレのことは覚えていてくれたのか」
名月「なっ!? なにそれ、どーゆーことっ!? なんでわたしのことは思いださないくせに、こんなヤツのことは覚えているのよぉ…!?」
九十九②「へあっ!? あ、いや、なんつーか…… おまえ、三年前からこの世に存在しているのか?」
沼淵「ハァ? 何言ってんだ?」
九十九②「えーと、つまり……おまえは沼淵の……竜さん?」
沼淵「そういや、たがいに名乗ったことはなかったな。オレは『沼淵竜造』だ。テメェの名前は何だっけか、お兄ちゃん?」
九十九②「『凪九十九』だ。覚えなくていいぞ。会うのは今日が最初で最後だ」
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※何と言うか…緊迫感あふれるシーンのはずなのですが、思わず笑ってしまうような、ちょっと面白くて気の利いたテキストが並んでいます。大体…「おまえは沼淵の……竜さん?」とかもう、三文喜劇のセリフですよね笑
1周目はこの沼淵弟の兄か親父かわからないこの男が名月と知り合いであること自体が謎でしたし、2周目はこの場面で「そうか~そう言えば名月と沼淵兄は1996年に面識があったのか。というか名月はこいつらに襲われたんだったっけ。沼淵は九十九②のことを『お兄ちゃん』と呼んでるし」みたいな感じでした。名月が怒るのも無理はないけれど、思わず沼淵の名前を口にしてしまった九十九②の気持ちも十分理解できます。

・その後九十九②は傷つき、左足がほとんど使えない状態になりながらも、最後の力を振り絞って放った右の膝蹴りが沼淵兄の顔面に炸裂して九十九は何とか勝利する。そして名月の拘束を解こうと歩み寄ったところで意識を失う。
※何と言いますか、酷い言い方になりますが、名月以外の女の子との情事と沼淵兄弟との対決でしか動いていかないシナリオ…という印象も否定できませんな汗。何か別のトリガーがあってもよかったのではないか…という気もしますが。ただ、このゲームのシナリオの良さはそういう部分ではありませんから、個人的には、それがゲームの評価を下げるということは全くありませんでしたが。
ですが、ケンカシーンの描写はすごく引き込まれました。元々そういうシーンはあまり好きではないのですが、それでもどんどん読んでしまうのはライターさん(草壁よしおさんだと思いますが…)の筆力のなせる技なのでしょう。シュガスパの藍衣ルートの最後のボクシングの試合のシーンも好きですね…(あれも草壁さんだったのでしょうか…?)

[台風襲来(1999/8/10)
・九十九②、「台風の日に名月を助けようとして代わりに自分が川に転落する夢」を見る。それに続いて「2012年の義姉・名月の前で、姉さんの身代わりになって自分は死んでしまった夢を見たと話し、名月から『それじゃダメ、2人そろって助からなきゃ意味がない』と言われる夢」を見たところで目が覚める。

<他時空の自分の経験の夢>
※これは(大筋では)この時空で、遡って1996年に死んだ九十九(=お兄ちゃん)の見るべき夢です。九十九②は時間移動後に台風の日を迎えたことはなく、台風の日のことについては、自分を助けようと名月が川に落ちて、後に命を奪われることになる大ケガを負ったあの悲しい記憶しかありません。
この部分をどう解釈するのかは結構難しい問題です。深く考えないのであれば、義姉・名月からの「一緒に助かろうね」というメッセージが届いたのかな…位でもよいのでしょう。それでも、経験したことのないこと、このゲームで言えば、別の時空に行ってしまった自分の記憶が時空を超えて跳んできて夢に出てくるというのは不思議と言えば不思議です。
このゲームでは、このシーンに限らず、白雲=九十九がたびたび、他の時空の自分が経験したことを夢に見るシーンが登場します。その全てに名月が現れます。
※これに関して言えることですが…「夢はパラレルワールドで自分が経験した出来事の回想」という解釈と言うか設定は、様々な創作物の中で結構使われている、言わば有名なものなようです。私はよく知りませんでしたが、ネット検索すると、確かにそういう作品はかなり存在しているようです。例えば、そんな中でも私が気に入ったものの1つは https://twitter.com/ksyjkysk/status/1172071495805235200 です。
そもそも「予知夢」などという広く自然に?使われている言葉がありますが、一部の予知夢はこのゲームの設定的に言えば「タイムトラベルによって分岐した別時空の自分の経験が夢に出てきた」と理解することもできるでしょう。そんなわけでこの作品も、その解釈と言うか設定を使った…と理解しています。

・九十九②が意識を取り戻すと、千積総合病院のベッドに寝ており、病室には九厘が立っていた。
九厘の話によれば、あの後名月が救急車を呼んで九十九②は病院に運ばれたが、疲労と負傷に加えて沼淵兄との戦いで受けた傷から細菌を取り込んでしまったためか高熱を出して寝込んでしまい、3日3晩眠り込んでいたとのこと。名月も心配して2晩ずっと付き添っていてくれたとのことだが…
九厘「とにかく、名月がまた見舞いにくるまでに少しでも元気をとり戻しておけ。今日はさすがに台風だから来られないようだが、台風が弱まれば」すぐにでも飛んでくるだろう」
※九十九②が大ケガで入院したことを知った鏡一郎はさぞかし心配したことでしょう。警報が出るような暴風雨の中、九厘を病院まで見舞いに行かせ、もしかするとある時刻が過ぎたら彼を起こすようにと連絡を入れていたかも知れません。そして自分は九十九②を現場の帯結橋に連れていけるよう車を出して待機します。

・この九厘の言葉を聞いた九十九②は、今日が運命の日、Xデーであることを知る。
記憶ではその晩、一家四人で七帯学園の体育館に避難したが、避難する際に寝ていた自分は、肌身離さず抱えていたぬいぐるみを家に置いてきたことに気づいてパニックになり、家族が目を離した隙に体育館を飛び出して訳も分からず駆け出していき、気づいたらあの橋の上にいた…
携帯で名月に連絡を取ろうとするが台風の影響で電波状態が悪くつながらない。九厘がしばらく前にメールで受けた連絡では学園に向かうとのことだった。
・九十九②は九厘に、学校に電話して名月を呼び出して話し、何があっても学校から出ないようクギを刺して欲しいと伝え、九厘が公衆電話を探しに出て行った後、万が一に備えて病院を飛び出して帯結橋の現場に向かうことにする。
患者衣のままベルトポーチだけを腰に巻き付けて暴風雨の中に飛び出した九十九②だったが、左足をひどく痛めた状態でうまく進めず、タクシーを拾うために駅に向かおうとするがすぐに倒れて水たまりの中でもがくような有様。それでも気を取り直してやっと立ち上がると、目の前に黒塗りの高級車が停まっていることに気づく。後部ドアを開けて鏡一郎が九十九②に話しかけてくる。
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鏡一郎「決断し、行動するのは君自身であるべきだ――たしかに私はそう言った。しかし、それは『何も手伝わない』という意味ではないぞ? 私に助けを求めることもまた、ひとつの選択だ。……乗るかね?」
九十九②「帯結橋まで頼む」
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※鏡一郎の万全のサポートでした。B2(とおそらくA2)時空で、1999年にやってきたが名月たちの身代わりで川に転落、受傷して化学物質に汚染されそれが原因で命を落とした記憶を持っていた(あるいは融合によって得ていた)ため、その反省から絶対に九十九②が失敗しないようにという配慮は、おそらく九十九②の1999年滞在中ずっと、(表に現れることはほとんどなかったとは思いますが)なされていたのだろうと推測できます

・車に乗るとすぐ眠ってしまっていた九十九②だが、目的地のすぐそばで台風による倒木に気づいて車が急停車したので目が覚ます。窓の外を見ていた鏡一郎が人影を見つけたのか声を上げ、その視線を追った九十九②はその先に名月の姿を見つけ、車から飛び出して左足を引きずりながら橋のところへと駆けつける。途中で声を張り上げて名月を呼ぶが、嵐にかき消されて届かず、結局名月は橋の上にきてしまいそこで白雲を抱きしめる。石橋が崩れる前兆の音が耳に入り、九十九②は力を振り絞って橋に向かい名月たちに駆け寄る。中央に差し掛かった時、橋の表面に亀裂が入ったが、タックルのような勢いで二人をまとめて抱いてジャンプ。名月と白雲は橋から降りられたが九十九②は左足に力が入らず倒れ込んでしまい、その瞬間、橋が崩落する。転落するかと思った時、名月の左手が伸びて九十九②の左手一本をつかんだ。しっかり互いの手をつかみあうが、雨に打たれて滑りやすい状態ですぐに限界が来そうだ…と九十九が諦めそうになった時、九十九②の指が名月の腕に巻かれた青いバンダナに引っかかった。滑る恐れがなくなったことで勇気を得た九十九②は、左腕の力を振り絞って腕一本で自分の身体を持ち上げ、右手が残った石橋の縁に届いたことで、遂に地面に這い上がることができた。
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九十九②「名月……大丈夫か? ぁ……左腕、抜けてないか…?」
名月「だ、大丈夫だと思う。ちょっと痛いけど。それより、つくもだよ…!! ……だい、じょうぶ…?」
九十九②「見ての、とおり……へっちゃらだ」
名月「『見てのとおり』じゃ、ボロボロだってばっ…」
姉さんが目に涙をためて苦笑する。その頬に、俺はあおむけに寝転がったまま手をのばして触れた。
九十九②「ありがとな…おかげで、命拾いした」
名月「よかった……つくもが無事で、ほんとに良かった……」
俺の手に姉さんの手が添えられる。その左手首に巻かれてるバンダナが目に留まる。
九十九②「“お兄ちゃん”に助けられたな」
名月「? そうなの…?」
九十九②「あぁ……このバンダナがあったから、こいつが俺の気持ちをつなぎとめてくれたから、俺はあきらめずに済んだんだ。……感謝、しなきゃな」
名月「そっか……ありがとう、お兄ちゃん……ありがとう」
姉さんが右手でバンダナをそっと握りつつむ。そんな姉さんから視線を外して、俺は空を見上げた。満ちたりた思いがおれを包んでる。
やった! 俺はやりとげたんだ…!! 姉さんが傷つく運命を変えることができた! これで、ねえさんが”現代”で死ぬことはなくなった…!!
名月「どうしたの、いきなり笑いだして…?」
九十九②「嬉しくってさ……名月を助けられたことが、たまらなく嬉しいんだ。思いのこすことはもう何もない……」
名月「なに勝手なこと言ってるの。わたしだけ助かったって嬉しくないよ。……二人いっしょに助からなきゃダメ」
九十九②「…………… ……そうだな。二人いっしょがいい」
ほほえむ。大粒の雨に顔面をビシビシ叩かれていることさえ心地いい。
九十九②「……がんばったから、疲れちまった……ちょっと……寝ていい、かな…?」
名月「ダ、ダメだよっ!! そのまま起きなくなっちゃったらヤダもん」
九十九②「ははっ……雪山じゃあるまいし、……大丈夫さ……たぶん」
九十九②「……………なぁ、名月」「元気になったら………また二人で一緒に……」
自分が何を言いたかったのか判らない。言いおえる前に、意識が落ちた。

※遂にあの台風の日の事故から名月を救い、自分も無事だった九十九②。人生最大の目的を果たすことができた喜びはどれほどのものだったでしょうか…。そして、時間移動する前の時空では、言ってみれば「恋敵」の象徴だった青いバンダナを、名月が肌身離さず身に付けていてくれたからこそ、2人とも助かることができたのでした。
※しかしもう1つ忘れてはいけないのは、青いバンダナがあっただけでは九十九②どころか名月も、もしかすると白雲も助けられなかったかも知れないということです。左足がほとんど使えないような状況でも何とか名月と白雲を助け、最終的には自分も助かることができた最大の理由が、九十九②のこれまでの日々の鍛錬にあることは疑う余地もありません。普通の人間であれば、ここまで鍛えこまれた身体を持っていなければ絶対に無理だったでしょう。九十九②はとうとう「大切な人を守れる男になりたい……」という願いを叶えることができたのです。白雲も名月も、前の時空で名月が亡くなる直前に書いた七夕の願いをここで叶えることができたのです涙。
(数時間前の夢が予知夢の正夢にならなくて本当によかった…)
===

※ところで、うるさいことを言うようですが…3日間で急に台風が来て気づけば警報発令中…というのはちょっと不自然とは思わずにはいられません。まぁ設定上仕方がなかったことはわかります。この部分でで制作スタッフがどうしようか悩んだという雰囲気は伝わってきます。精一杯の妥協点が「傷口から細菌が入ったのか化膿して高熱が続きようやく3日後に…」というものだったのでしょう。まぁなくもないかな…と思えるレベルなので、ここは黙って見逃す一手です汗

[タイムマシンの話をされる九厘(1999/8/12)]
※この「九厘の迷い」と「再決断」「決意は揺るがない」というエピソードは、7/21の「九厘の罠」で「(2)声をかけずに様子を伺う」を選択した時だけ出現します。(1)を選択するとそれらを飛ばして「現代への帰還」で2012年に帰還、メインルート(名月ルート)に入り、第3章~エピローグと進むことが確定します。

・鏡一郎、九厘に「大事な話」があると伝えて呼び出し、九十九②は未来の自分がタイムマシンで送り込んできた人間であることを伝える。
===
九厘「あいつは名月に言ったそうです。『短い間しか一緒にいられない』と。その理由がそれだったのですね」
鏡一郎「うむ。彼の目的は名月くんを守ることにあった。その目的が果たされた以上、彼は未来へ帰ることを望むだろう。」
九厘「今回の事故が『目的』だったのですか」
鏡一郎「本来、名月くんは橋の崩落に巻き込まれ、それが遠因となって未来で病死するはずだった」
九厘「っっっ!!!?」
名月が……死ぬ!? その様が脳裏に浮かびあがる。想像するだけで胸がきつく締め付けられる!
九厘「その未来を……運命を、彼は変えてくれたのですね?」
私の確認に、お父様はうなずいた。私の口から安どの息がこぼれた。
九厘「もっとも、それであいつが代わりに死にかけていては、世話ありませんがね」
鏡一郎「彼はそういう男だ。大切な人を守るためなら自分自身を省みない。彼女のためなら、持てる全てを犠牲にできる。そんな男だからこそ、私は彼に力を貸しているのだ」
九厘「……………」
お父様の言うとおりだと思う。だからこそ、その言葉に胸が刺さる。
九厘「……かなわないですね」
どうしてだか、そんな言葉が口をついて出た。つくもが名月にかける愛情は本物だ。そこに割ってはいる隙なんてありはしない。そんなこと、何者にもできはしないだろう。……って、何を考えているんだ、私は? どうかしているぞ。
===
※突然タイムマシンの存在について聞かされても動揺することもなく、冷静に、そして明晰に分析しているところはとても九厘らしいです。そんな九厘も「本来」は若くして病死する運命だったと聞いて強いショックを受けました。この章の最初に登場するC3時空の九厘はまさに、名月が死んでしまった直後だったわけですから、その悲しみはどれほどのものだったのでしょうか…涙

・そして鏡一郎は九厘に質問を投げかける。
===
「九厘、君はつくもをどう思っている?」
「君が自覚しているかどうか知らないが、彼が来てから、君は随分と変わった」
「君は、私に対しては誠実だが、自分自身に対しては誠実ではない。幾重ものベールで自分の本心を隠している」
「記憶喪失という不安定な状態から自分の心を守るために、自然とそうなったのだろうとは思う」
「しかし、つくもが現れてからというもの、ベールの向こうから君の本心が垣間見えるようになった。それを私は喜んでいる」
「そして、そんな彼を君がどう思っているのか、ぜひうち明けてほしいのだ」
その問いかけに九厘は、気が進まないものの他ならぬ父の頼みということもあり素直に答えていく。
「『どう』と言われましても……一言で言えば『阿呆』ですね」
「脳みそまで筋肉でできているような運動バカだと思います」
「つくもは男です。私は男が嫌いです。ゆえに、私はつくもが嫌いです」
(ただ、これはあくまで理屈が先にきている評価だ。本当の私の気持ちとは言えない)
「つくもには、他の男とは違うモノを感じています。それは『好意』と呼べるモノ…なのかもしれません」
「ただ、私が女性に対して抱く慈しみの情とはあきらかに異なるモノです。ですから、これは恋愛感情とは異なる何か……」
「……もっと根本的な、本能的な…… …自分でもよく判らないのですが………」
(はっきりと姿を現さないくせに、ひどく強い感情が、私の心の奥底でうごめいている。こんな気持ちは初めてだ。他の誰に対しても抱いたことがない。お父様や名月のみならず、私自身までもがそうだというのか? つくもを特別な存在だと感じているのか? …認めざるをえまい。本当に忌々しい奴だ。)
鏡一郎「それだけ聞ければ十分だ。よく話してくれた、ありがとう」
(我ながら曖昧な回答だったと思う。なのにお父様は満足そうにうなずいてくれた。)
===
※ここは単純に考えれば、九厘が九十九②に特別な感情を持ち始めたのではないかと鏡一郎が指摘するシーンです。
しかし、再び九厘と九十九②の関係をほのめかす伏線になっていることもまた明らかです。
※そしてそれに加えて、実は鏡一郎は九厘と九十九②の関係を知っていたのではないか…と思わせる表現も含まれています。
よく考えれば、彼がそれを知ることができた可能性はあるのです。
(詳しくは後でまとめて…)

・鏡一郎は、九十九②はすぐに彼が元いた未来に戻るだろうが、必ずしもそうしなければならないわけではなく、それは「彼の希望」であり、
帰らなくてもこの世界に支障はない。当然彼はこの時代に未練がある。名月はさらに十年以上待たせねばならない。この時代に留まればずっと名月のそばにいられる。未来に帰らない可能性はゼロではなく留まるよう説得することも可能だと九厘に話す。
===
九厘「つまり…? お父様はつくもを未来へ帰したくない……のですか?」
鏡一郎「私としては、どちらでも構わない」
九厘「でしたら、どうして…?」
鏡一郎「父親としてのアドバイス、かな。娘が寂しそうな顔をしているものでな」
九厘「っ!? 私が……寂しそう…?」
九厘「……っ……」
(そんなわけない……はずだ。しかし、だというのならば…… この胸の痛みは何だ? なぜ締めつけられるような感覚がするんだ…?)
九厘「お父様ッ……私は、どうすれば…」
お父様「君の思うようにすればいい。……ただ、後悔のないようにな」
(お父様はあくまで選択肢を提示するのみ。決断するのは私自身であるべき……か。じつにお父様らしい考えだ。私が自分の気持ちに素直になるか否か? ――なんて馬鹿げた選択肢だろう! この私にこんな選択をさせるなんて…… ……つくづく忌々しい男だな、つくも!)
===

[さよならは言わない(1999/8/12)]
・気づくと九十九②はまた病院のベッドの上にいた。名月を助けた後、意識を失い病院に搬送されていた。病室には名月がいて、看病疲れから、床に座り込んでベッドにつっぷして眠っていた。手をのばしてその頭に触れ、温もりと感触を感じた時、九十九②は目的を果たせたことを実感する。
===
胸の奥底から熱いモノがこみあげてくる。姉さんと過ごした最後の日々が脳裏に次々と浮かんでは消えていく。俺はやったんだ。姉さんを守れたんだ。これで姉さんを失わずに済むんだ。もう、姉さんがあんな目に遭うことはない。死ぬこともなければ、入院することもない。そもそも病気で倒れることもない……。あの流星群の夜から先も姉さんは生きていける。”現代”に変えれば、元気な姉さんとまた会える――
===
※しかし2012年に戻るということは、13年もの間名月を待たせ、寂しい思いをさせ、縛り付けることになります。現状で既に2人は完全に愛し合っていて、このまま過ごしていけば13年も待たせることなく、名月を悲しませずに済みます。「この時代に残って名月くんと結ばれる――そんな結末もあって良いはずだ」という鏡一郎の言葉が脳裏をよぎります。九十九②は葛藤しますが、目が覚めて話しかけられたらもう振り切ることはできそうもなかったので、言葉をかけず「――また会おう」とつぶやき眠っている名月の頬にキスをしてその場を立ち去ります。

・九十九②はすぐにプライムビルの最上階に戻る。鏡一郎は病院から何も連絡がないのに現れた九十九②に驚き、体調を気遣い、川には転落しなかったかを確認する。
===
九十九②「なんだ、俺を心配してくれるのか?」
鏡一郎「当たり前だ。名月くんを守ったはいいが、代わりに君が病に冒されでもしてみろ、笑えんぞ」
(※本当に笑えません…彼には、そうなってしまった経験が(少なくとも記憶は)はあるのですから)
鏡一郎「君の最終目的は、名月くんを守ることではない。未来で元気な彼女と結ばれることだろう?」
(※自分のことを本気で心配してくれる鏡一郎の気持ちを嬉しく感じる九十九②でした。そして感謝の言葉を伝えます。)
九十九②「ありがとな、博士。おかげで姉さんを守ることができた。一番大切な目的を果たすことができた」
===

・九十九②から、気が変わらないうちにいますぐ2012年に戻りたいと伝えられた鏡一郎は、1時間で準備すると伝える。
※「九厘の罠」で「無理をするな(九厘の暴走を途中で止めさせる)」を選んだ選んだ場合、このシーンはスキップされ、九十九はすぐにタイムマシンに乗って2012年に向かいます。「声をかけずに様子を伺う(九厘にされるがままになる)」を選んだ場合、次のエピソード「再決断」に進みます。

・九十九②は部屋に戻ってシャワーを浴び終えると、その場に九厘がいた。
※この時も九十九②は九厘の気配を全く感じておらず驚いていました。震災直前に九十九が、白雲と思われる小さな男の子を抱いた九厘と思われる少女に出会った時も、同じように気配を感じていなかったことを思い出します。その部分でも書いたように「回収されない伏線」です。

・九十九②を引き止めるためにここに来た…と九厘は告げる。理由を尋ねられると「とりあえず、名月のためではある」と答え、名月が不憫とは思わないかと訴える。決断を迫られた九十九②の心は再び揺れ動く。
※ここで選択肢が登場します。「(1)”現代”に帰る/(2)この時代に残る」。この選択によって直ちにルートが分岐し、(1)を選択した場合、九厘ルート(というべきか両手に花ルートと言うべきか…)、(2)を選択した場合、名月ルートというかメインルートに入ります。九厘ルートに入るとすぐにエンディングを迎えるので第3章~エピローグへは進めません。名月ルートに入ると第3章~エピローグへと進むことが確定し、以降は全く選択肢がありません。

[九厘エンドについて]
※プレー中はこれが「九厘エンド」とは思っていなくて、ほぼ間違いなくこれはメインルートではないだろうけど、これを選んだら何が起こるんだろう…と思って選択してみたら…いや、驚きました…汗笑、そう来るか~と。
分岐後は非常に短くあっという間に終わりますが、九厘のかわいさは破壊力抜群でした。数多くのツンデレキャラを見てきましたが、ベスト10には入りそうな勢いでした。もう少しこのルートが長かったら…個人的なその分野の最高峰、「元祖ツンデレ」の一角「秋桜の空に」のはるぴーに並ぶ勢いだったと思います笑。
九厘ルートについてとやかく言うつもりはなくて、まぁサブルート扱いだから仕方ないかな…というだけです。選択直後ああいう展開になってしまえば、まぁそういうオチになるのも仕方ないのかな…と。
※ただ本音を言えば、この時代に残ることを選択した後、九厘サンにはちょっと行動を慎んでもらって笑、その後どう言う展開になるのか見てみたかったような気はします。白雲が成長して今の九十九②とどんどん似てきたとき、名月・白雲・両親・周囲の人達は何を思うのか。時間移動の話はするのか。そもそも元々は同一個体だった2人の人間が近い場所にいて何か変なことは起こらないのか……。(でもそうやって考えてみると、何だかシナリオを書くのが面倒な世界になりそうに思えてきますね…笑。だとするとまぁこのエンディングも妥当なところなのかも知れません。もしアペンドを作るとしても、そんなシナリオ考えるくらいなら3Pシーン入りのシナリオ考えた方が楽しいしウケもはるかによいでしょうからねぇ汗笑)
※まぁ短くて、え?あれ?そういうこと? … とはなりますが、こちらを先に見てしまった人は、直ちにセーブポイントに戻ってもう1つの選択肢を選んで、「やっぱこちだよな…」などと思いつつメインルートへ戻ったでしょうね。もちろん自分もそうでした。言ってみればC5時空に分岐したわけですね爆
ということでメインルートに戻ります。

・九十九②、タイムマシンに乗り込む直前に鏡一郎から「融合」について説明を受け、「2012年に戻る時、その時空に元々いる白雲と身体・記憶が融合して1つの個体になる。それが『死んでしまった名月を取り戻す』という君の希望を叶える唯一の手段だ」と伝えられる。(完全に九十九②が理解できたとは思えないが汗)了解した九十九②はタイムマシンに乗って2012年に向かう。
※ゲーム内の第2章では何も書かれてはいませんが、エピローグに示されています。

※タイムマシンに乗り込んだ九十九②と鏡一郎の、この時代最後の会話です。
===
九十九②「ありがとう。博士のおかげで俺は大切な人を守ることができた」
鏡一郎「喜ぶのはまだ早い。うちに帰るまでが遠足だ。まだ終わってはいないぞ、気を抜くな」
(そっけない返事だな……けど、博士らしい返事だ。)
九十九②「わかってるよ。けど、いま言わなかったら、十年以上もそのままになっちまうだろ。だから、ありがとう。ほんとに世話になった。この恩はかならず返す」
鏡一郎「十年分の利子は高くつくぞ」
九十九②「かけがえのないモノをもらったんだ。がんばって返しきるさ」
鏡一郎「ふん、私の在命中に返せればいいほうだな」
九十九②「せいぜい長生きしてくれよ」
鏡一郎「……無駄口はこれくらいにしておこう。心の準備はいいかね?」
九十九②「あぁ、いつでもいいぞ」
鏡一郎「では、ゆくがいい。つくも。もとの時代に帰り、見届けるがいい。君が変えた運命を。さらばだ、友よ。未来でまた会おう」
さようなら、博士。さようなら、九厘。さようなら、名月。
長い長い一瞬をへて訪れる再会の時を、心から楽しみにしてる。
……さぁ帰ろう。懐かしい未来へ!
元気な姉さんが待つ、俺の”現代(いま)”へと――
===
※最後の鏡一郎の言葉が胸を打ちます。彼の性格のところでも書きましたが「見届けるがいい。君が変えた運命を」というところは、何というか…「神」のようでさえあります。九十九②が無事に名月を転落事故から守り、自らも無事だったらしいと知った時、鏡一郎は、自分のこの第2の人生の目的をほぼ果たすことができたという強い充実感と喜びを感じたことでしょう。そしてそれがこの自信にあふれた言葉につながったのではないでしょうか。
※一方、同じ理由で鏡一郎のテンションが(彼にとっては非常に珍しく)ちょっと高くなっていることも見逃せません。「うちに帰るまでが遠足だ」とか、このシーンの前に九十九②から、タイムマシンの準備ができるのにかかる時間を尋ねられたとき「十年」などと冗談を言っていたこともまた、その影響なのでしょう。(そこまで考えてテキスト作ってたらのであれば実に素晴らしいです。)

<九厘と白雲の関係>
※至るところで何度も議論されていることだと思いますが、白雲と九厘の間に何らかの関係(おそらくは血縁関係)があったことは確かです。血縁関係があったとすると年齢差が非常に微妙で、親子なのか姉弟なのかの判断は難しいです。
C2時空の1996年の震災の数日前、九十九は帆船の上で小さな男の子を抱いた少女に出会います。外見や夏なのに着ている長袖の服、その下に見え隠れする包帯などからその少女が後の九厘であることは確実であり、その後の話の展開からこの男の子が後の白雲であることも確実です。その時の九十九が持った印象は、自分(冷静に考えて2012-1996=16なので16~17歳)より年下で、名月(七帯学園1年生で誕生日は過ぎているから13歳)より年上に見えたということでした。親子であれば12~14歳位で産んだことになります。これを「無理」と考えるか「可能」と考えるのかは本当に微妙なところです。ただこの時の九十九の頭の中では「姉弟だろう」という結論に達しています。だから姉弟でいいのかな…と素直に考えることにしたいです。
※細かい話をするのであれば、いかに13,4歳でその後1999年や2012年に会う九厘と比べれば「成長途上(汗)」の時期であるとは言え、出産してまだ子供がここまで小さいのであれば授乳期間だったと思います。だからもっと胸が大きくなければいけないような気がします滝汗。(個人的な経験からも、2~3カップ位は昇格するはずです爆汗。でも単なる戯言と思って忘れて下さい笑)
※血縁関係がありそうだ…ということは、第2章で九厘が、普通なら男性には強い嫌悪感を覚えるはずの九厘が、2012年から送られてきた九十九②に対してそれを感じなかったことなどからも推測されます。こちらの方がより決定的ですよね…。加えて随所に九十九②と九厘、白雲と九厘が似ているといういう記述がありました。九厘が七夕まつりで学校にやってきた白雲を見た時なぜかじっと見入ってしまうシーンもありました。1996年のシーンだけだったら、例えば同じ施設などで一緒に生活している少女と仲良しの小さな男の子…という解釈も不可能ではなくなりますが、ここまで伏線入れられると…
※個人的には「姉弟」だったのではないか…と上にも書いた理由などもふまえて思い込んでいます。だって親子だったなら、C3の最後で雨の中の白雲に声をかける九厘のシーン、 (もちろん2人とも知る由はありませんが)あれが母と息子だった…ということになりますよね。さすがに…その…2人とも時間移動をしていないわけですから年齢差もそのままなわけで、それは無理な解釈のような気がします汗。それと何となく本当に個人的な感情から、親子だったらちょっと嫌だけど姉弟だったら積極的に許したい、という気持ちが…(あ、これも単なる戯言と思って忘れて下さい爆)
ただ…九厘が七夕まつりの日に白雲を会場内に捨てるシーンがありましたが、これについては逆に、何となくですが姉弟だったら「捨てる」っていう選択肢は非常に考えづらく、一緒に逃げる可能性が高いようにも感じますね…。

※もう1つ気になるのは、鏡一郎はこの2人に血縁関係があるということを知っていたのかどうか、ということです。知っていたとは考えづらいですが、知らなかったとするとあまりの偶然ということになります。第2章で九厘が委員会の部屋で一人眠っている時に悪夢にうなされた上に足をくじいた時、お姫様だっこで保健室に連れて行った九十九②は、その日の夜自宅で鏡一郎から、九厘が九十九②に感謝していたし機嫌もよかったという話を聞きます。その際の会話です。
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鏡一郎「私としても、君たちが仲良くしてくれると気分がいい」
九十九②「へぇ……こっちも意外だな。博士の口からそんなセリフが聞けるなんて」
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確かに意外です…。でも深い意味はないのかな…?
※また、第2章の最後に、鏡一郎が九厘にタイムマシンの話をしたあとの会話の中にも、実は鏡一郎は九厘と九十九②の関係を知っていたのではないか…と思わせる表現も含まれています。
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九厘「つくもには、他の男とは違うモノを感じています。それは『好意』と呼べるモノ…なのかもしれません。ただ、私が女性に対して抱く慈しみの嬢とはあきらかに異なるモノです。ですから、これは恋愛感情とは異なる何か……。……もっと根本的な、本能的な…… …自分でもよく判らないのですが………」
(はっきりと姿を現さないくせに、ひどく強い感情が、私の心の奥底でうごめいている。こんな気持ちは初めてだ。他の誰に対しても抱いたことがない。お父様や名月のみならず、私自身までもがそうだというのか? つくもを特別な存在だと感じているのか? …認めざるをえまい。本当に忌々しい奴だ。)
鏡一郎「それだけ聞ければ十分だ。よく話してくれた、ありがとう」
(我ながら曖昧な回答だったと思う。なのにお父様は満足そうにうなずいてくれた。)
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※そしてよく考えれば、彼が2人に何か関係があるだろうと知ることができた可能性は、なくはないのです。
※1996年の七夕まつりの直前、鏡一郎はたびたび会場の海浜公園を訪れて会場の調査を行い、妻の救出計画を練り上げていきました。当然会場内で写真なども多く撮影したはずで、その被写体の中に、1996年の九十九が出会った、「小さい男の子を抱く少女」が含まれていても決しておかしくはないでしょう。それが親子なのか姉弟なのかはわからないにせよ、血縁関係にある可能性が高いことは明らかでしょう。
鏡一郎が九厘を養子に迎え入れたのは震災直後に入院してまもなくのことで、その時の九厘の外見はその写真とほとんど変わらないわけですし…その男の子が九厘とも、そして九十九②とも似ているとは感じたでしょう。また、鏡一郎のことですから、桜塚家に引き取られてきたばかりの白雲もどこかで目にする機会はあったでしょう。
※さらに言えば(ゲーム内では何も記述されていませんが)台風の日の橋の崩落現場にいた九十九②を病院に運んだのは間違いなく現場の近くにいた、鏡一郎を乗せた黒塗りの高級車だったでしょう。そして当然、その車には名月と白雲も同乗します。それはおそらく鏡一郎と白雲の初対面の場で、名月は鏡一郎にそれが最近弟になった「白雲」であると伝えたと思います。当然鏡一郎はそんなことは知っているわけですが。別時空のその男の子が成長して九十九や九十九②になったことも。そしてもし(写真が撮られていたりして)1996年に「小さい男の子を抱く少女」を見た記憶が残っていれば、その小さな男の子が成長して今ここにいる白雲になったということは、すぐにわかったはずです。

※というわけで、この点については結論が出ていません。つぅか、出ないでしょう。絶対に回収されない伏線ということで、後はプレーする人が勝手に好みで想像すればよいだけの話でしょう。制作スタッフとしては倫理上、「親子」とも「姉弟」とも表明するわけにはいきませんから。何かの都合で(例えばリメイクやアペンドの出現)それを明らかにする必要が生じるように時空が書き換えられたら笑、「従兄弟だった」とか言って逃げるかも知れません笑。(まぁ「星のゆりかご」にはその関係は伏字1文字「●」と書かれてましたから従兄弟とするのは苦しいかも汗)

3.8 C4(2) 2012年夏:エピローグ C4時空の2012/8/7~12

[2012/8/7]
・この時空の白雲、九厘に声をかけられ、(おそらくはプライムビルの最上階にいた)鏡一郎のところに連れて来られる。鏡一郎はおそらくは「1999年に橋の崩落から君たちを救った九十九は君自身だ」と白雲に語り始め、事情を説明した後に九十九②との「融合」のためタイムマシンに乗って5日後に移動するよう勧める。白雲は合意する。
※ゲーム中では白雲はこの時のことを「けど、納得できる…部分も多かったから、半信半疑のままタイムマシンとやらに入ってみたんだ」と振り返っています。ただ(よくは理解していなかったと思いますが)もし融合せずに自分の別の存在として九十九②が帰ってきたら、自分は完全に名月の「弟」になってしまうとは考えたでしょう。であれば、迷うこともなくタイムマシンに乗り込んだのは当然のことですね。
※鏡一郎の「第2の人生」を賭けたこの壮大なプロジェクトを成功裏に終わらせるためには、ここで白雲が「融合」するようにとのこちらの説得に応じて、タイムマシンに乗ってもらうことが不可欠でした。そして鏡一郎は、震災直後の1996年の段階でそこまで考えていて、その時点で絶対に白雲を説得できるという自信があったのです。素晴らしいです。鏡一郎という人間の凄さには本当に感動させられます。

・震災の日、記念公園の帆船の上にやってきた名月は、お兄ちゃんと九十九②のことを思い出す。1996年のこの日の「お兄ちゃん」との約束。そして1999年に再び現れ記憶をなくした「お兄ちゃん」と思われる九十九②は、絶対自分の前に帰ってくると約束しながら、急に病院から消えて10年以上何の連絡もない。彼への想いは今も消えないけれど、一方では成長した白雲のことも気になり始めていた。そんな中数日前に突然受けた白雲からの告白を、彼女は九十九②への想いから断り、告白はなかったことにして今まで通り仲のよい姉弟でいようと伝えていた。その後関係はちょっとギクシャクしたものになり、この日も白雲をここに誘ったが来ていなかった。
・そこに足音。白雲かと思って名月が振り向くとそこにいたのは九厘だった。数年ぶりの再会に喜ぶ名月になぜここに来たか尋ねられた九厘は、名月に会うためと答え、さらに「君が何日か前に袖にした“あの男”の代わりに、な」と口にした。なぜそんなことを九厘が知っているのか不思議に思った名月が九厘の後を追って帆船を降りると、そこには車椅子に乗った鏡一郎がいた。
===
名月「っ!? 博士……さん」
鏡一郎「何年ぶり、かな」
名月「……珍しいですね。あなたのほうからわたしを訪ねてくるなんて」
鏡一郎「そうだな」
(1999年の夏、九十九が忽然と姿を消してから、わたしは何度も博士さんのもとを訪れ、疑問をぶつけつづけた。けっきょく彼は”お兄ちゃん”だったのか? どうして記憶喪失になってしまったか? そして、どこに消えてしまったのか…? それらの質問に、でも、事情を知ってるはずの博士さんはただの一度だって答えてくれなかった。)
鏡一郎「白雲を、しばらく預からせてもらう」
名月「つくもを…? それは、どういうことですか?」
鏡一郎「………”時”は熟した」
名月「……………?」
鏡一郎「まずは、これを君に渡しておこう」
名月「これは…?」
(ずいぶん古ぼけた封筒だ。その表には「姉さんへ」の文字が!!)
名月「つくも…!? これは、九十九からの手紙なんですか? つくもが、どうかしたんですかっ!?」
鏡一郎「それは、君が”桜塚白雲”と認識している者によって書かれた手紙ではない「
名月「……どういうことです?」
鏡一郎「それを書いたのは……君が『お兄ちゃん』と呼ぶ男だ」
名月「……えっ…? でも……『姉さんへ』って……字も、つくものじみたいだし……」
鏡一郎「その男がそれを書いたのは、1996年の君に出会う前だ」
名月「? ……意味が、わからないんですけど」
鏡一郎「これから君に、私が知るすべての事実を話そう」
名月「っ!? それは、”お兄ちゃん”のことですか? それとも”凪九十九”のことですか…!? 話してくれるなら…… なんで……、今までっ…!!」
(今まで何度も何度も尋ねたのに! 泣きながら叫びながら尋ねても、何も答えてくれなかったくせに…!!)
九厘「名月……今まで話さなかった理由は、ある」
名月「でも……こんな、長い間………ずっと……ずっと…!!」
九厘「落ちついて、お父様の話を聞いてくれないか」
名月「そんなこと……言われたって……」
鏡一郎「私が話すのは、”桜塚白雲”という男の長く複雑な物語だ」
名月「……つくもの、話?」
鏡一郎「そこには、君が『お兄ちゃん』もしくは『凪九十九』と呼ぶ存在も含まれている。すべてが君の愛する男についての話であり、そしてそれは、その男の、君への愛情の歴史でもある」
名月「わたし、への……」
(どういう……こと?)
鏡一郎「…………… ……すべてを受け入れる覚悟はあるか?」
(覚悟、ですって? そんなの、聞かれるまでもない! わたしの答えは、あの日からもう決まってる! わたしは博士さんをまっすぐ見すえて、はっきりとうなずいてみせる。その眼差しを正面から受けとめて、博士さんも重々しくうなずいた。)
鏡一郎「――それでは、話をしよう」
===
※鏡一郎は手紙の内容を知りませんでしたが、どういう状況で書かれたかはわかっていました(内容を知っていたのは「お兄ちゃん」を送り出してC2時空から分岐したD1時空に跳んだ鏡一郎だけでしょう)。そして、九十九という人間の名月への想いを信じていました。これは絶対に2人の関係を悪くするものではないと。いや、それは大正解でした…というか、これは名月にとって最も大切な宝物になったことでしょう。

・(おそらく)この時鏡一郎は去って自宅に戻ろうとする名月に、「受け入れる」準備ができたら5日後の8/12の20時過ぎに帆船のところに行き、融合した九十九と白雲を待つようにと指示する。
・その後5日間かけて名月はゆっくり頭の中、自分の記憶を整理する。

<鏡一郎からすべてを聞いた名月>
※鏡一郎は名月にどこまで話したのでしょう? タイムマシンのこと、まず分岐や融合のことを最初に説明した後、元史とほぼ同様のC1から始まって、C2C3C4の時空について説明したのでしょう。ちょうど今ここに書いたような内容を、要点を押さえて伝えたはずです。今はこの世にいない「お兄ちゃん」のことや、当然自分が元は加々見教授だったことも話しているでしょう。予想もしていなかったような非常に長い、そして彼女にとってはショックな内容もたくさん含まれる話ですから、受け止めるだけでも大変だったでしょう。

※別の(というか元々の)時空では、自分はこの時点で不知の病に冒されていてまもなく病気で急死するということが最初の衝撃だったでしょう。しかし自分は全く無事です。そういう意味では、衝撃を受けはしますが、まだ耐えられたでしょう。

※最も大きな衝撃は、「お兄ちゃん」の話を聞いた時でしょう。間違いありません。
・彼は1996年にあの約束の直後に死んでいた。そして、震災・津波がなくても、病気によってまもなく命が尽きる運命だった…。
・そして名月は、あの最後の約束は「お兄ちゃん」がついた嘘だったことを知ります。二度と会えないと分かっていながら…。しかしすぐに理解できたでしょう。それは自分を守るための嘘だったと。それが自分をその後3年間、九十九②が現れるまで縛り付けた。しかしあの時の「お兄ちゃん」の気持ちを思うと胸が張り裂けそうになっていたでしょう。「遠くに行ってしまう」というのが実は死ぬことだったとは…。
・「お兄ちゃん」はその時空の私が2012年に死んだ後、時間移動して1999年の台風の日に戻って助けることに成功したけれど、代わりに転落・汚染して寿命がわずか数日という状況になってしまった。その後2012年に戻ってもその時空の私の隣にはその時空の白雲がいたため、歴史を書き換えて、自分の命を犠牲にしてまで救ったその時空の私に会えずに、その思いを手紙に書いたが結局それも渡せないまま終わった。そして震災前に跳んで私と出会った…
・そして「手紙」です。「お兄ちゃん」の遺品は、青いバンダナとこの手紙…。この手紙は自分に向けて書かれたものではなく、別の時空の2012年の「名月」に向けて書かれたものでした。でも確かに、今の名月が知る、あの彼が書いたものでした。
「――俺はもう姉さんとは会えない。この先も会うことはない。姉さんの傍には俺と同じように姉さんのことを想ってる白雲がいる。もし姉さんにその気があるんなら、これからは白雲を見てやってほしい。あいつと幸せになってほしい――」
短い文章ですが、九十九の想いが強烈に伝わってきます。自分に向けて書かれたものでもなく、自分に会う前に書かれたもので、言うまでもなく自分の手に渡ることを想定して書かれたものではありませんでいた。しかしそれは、今はもうこの世にいない「お兄ちゃん」を思い出すための、何物にも代え難い貴重なものでした。名月は涙を止めることができなかったことでしょう。そして、彼がこの手紙を書いた時に託したその時空の白雲は、現実には今この時空にいる白雲や九十九②とは違いました。でもこの手紙の文章の「姉さん」を自分に置き換えると、彼が託したのはそのまま1999年に出会って恋に落ちた九十九②や、現在の白雲になるわけです。「自分はこの世を去らねばならない。そして白雲と幸せに」…という言葉に、しっかりうなずいたことでしょう。

※そして次に、10年前に突然消えてからずっと自分の思いを縛り続けてきた九十九②についていろいろ考えたでしょう。彼が本当に「お兄ちゃん」ではなかったこともこの時初めて知ったのでしょう。本当は自分のことを知りすぎるくらい知っていて大好きだったはずなのにそれを隠し続けなければならなかった彼の辛い立場、自分に「お兄ちゃん」と勘違いされた時の彼の気持ち。自分を置いて1999年から姿を消してこの時間に戻ろうとした時の気持ち…。そんなことを1つ1つ考え、理解していったのでしょう。

※「お兄ちゃん」「九十九」との思い出を1つ1つたどっていくと、名月の頭の中で疑問だったことがどんどん明らかになってつながっていったはずです。そして、その場面場面で彼らが考えていたことを想像すると、胸が張り裂けそうだったことでしょう。彼らは元はと言えば自分と共に2012年まで歩んできた白雲で、将来は義姉・名月となることを知っているのにそれを隠さざるを得なかった。そして2人とも、2012年に死んでしまったその時空の自分を救うために、過去に向かって旅立ってくれたのです。

※名月が鏡一郎から話を聞いた後、「彼」との再会は5日後でした。それくらい時間がないととても頭は整理できなかったと思います。でもその時間は、素晴らしい時間だったことでしょう。彼らと過ごしたたくさんの時間を思い出して、たくさんの大切な記憶を、新しく知った情報を加えて少しずつ書き直してつないでいったのでしょう。それは16年前と13年前という、気が遠くなるような昔のことでしたが、きっと名月の頭の中には鮮明に残っていたと思います。その作業は楽しくもあり、悲しくもあり…そしてどの場面でも、不思議に思えたことはほとんど全て、彼らの自分に向けた「優しさ」から生まれた行動・言動だったことにも気づいたのは間違いないです。

※最後のエピローグですが…う~ん………。
今書いたようなことをテキストにしてはいけなかったのでしょうか? そんなに詳しく書かなくてもよいとは思いますが、鏡一郎から話を聞いた時、あるいは聞いた後の5日間の名月の様子を書いた方が感動的だったのではないでしょうか?

※感動的な場面でしょ~もないことを書くのは気が引けますが、名月は不明な点を確認するために、翌日や翌々日あたりに鏡一郎に質問をしたのかも知れません。電話…だったのかな。「何で歴史書き換え前の自分は転落・汚染から13年もかかって発症したのに、お兄ちゃんはすぐ死んでしまったのか」…とか笑。「泣きながら叫びながら尋ねても、何も答えてくれなかった」…になりそうですね滝汗。

[2012/8/12]
※歴史が書き換えられる前はこの日が名月の命日でした。そしてペルセウス座流星群が極大を迎える日でもありました。

・九十九②と白雲がタイムマシンで帰還する。「融合」は成功し、身体も記憶も無事に統合されていた。鏡一郎は彼に、名月が例の場所で待っていると伝える。
===
融合白雲「……博士、何から何までありがとう。この”借り”はかならず返す」
鏡一郎「タイムトラベルする前に説明しておいたはずだ。私は”桜塚白雲”に多大なる恩義がある。このくらいは当然のことだ。そんなことより、早く行きたまえ」
融合白雲「あぁ、そうさせてもらう! それじゃ……またな!」
===
※そして、彼を送り出した後の鏡一郎と九厘の会話です。
===
鏡一郎「これで、私のなすべきことは終わったな。……長かったな」
(※このセリフが一番好きかも…いつ聞いても涙腺が崩壊します)
九厘「あの二人、うまくいくのでしょうか?」
鏡一郎「桜塚白雲はどの時空でも桜塚名月を愛していた。そして、その逆も然り。私はそれを、この時の流れのなかで何度も見てきた。今回お例外ではないだろう」
九厘「そう、ですね……」
鏡一郎「……気に入らないかね?」
九厘「っ……何がですか?」
鏡一郎「つくもが名月のもとへ行くことを、ここよく思っていないのではないか?」
九厘「そ、そんなことはありません! 私は名月の幸せを願っています。それに……。……あの男とのことは、昔の話です。私は名月のような一途な人間ではありませんから」
鏡一郎「それならば、たまには他の男を見てもよかろう?」
九厘「他もなにも、私は男になど興味はありませんので」
鏡一郎「ふぅっ……肩の荷が下りたと思ったのだが、私はまだまだ死ぬわけにはいかないようだな」
九厘「ぁ……当たり前です! お父様には長生きしてもらわねば困ります!」
鏡一郎「ふっ……そうか……そうだな」
===
※本当に心から「お疲れ様でした」と言いたくなります。白雲=九十九と名月の物語も本当に壮絶で感動的でしたが、鏡一郎のこの16年間も本当に凄まじいものがありました。そして…九厘もよく鏡一郎を支えてくれました。お疲れ様でした。
※非常に難しいことと想像しますが汗、九厘さんにはこの後、何とか新しい幸せを掴んで欲しいです。

※その後は、第1章の最後あたりに登場した人たちの様子が一通り描かれます。「希・あおばと高島霧彦医師」「沼淵弟」「保志・春日森」「加々見教授・音々・美々」そして最後は「名月と白雲(九十九)」。
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名月「おかえり」
融合白雲「ただいま、姉さん」
===
※う~ん…………。
1周終わった時の正直な感想は「これで終わりなのっ!」でした。いや、展開には全く問題はなかったのですが、「その一言ずつで終わりなの? あとは脳内保管せよと?」「姉さんを取り戻すために信じられないほど頑張って、やっと願いが叶って、やっとまた姉さんと会えたんだよね……?」そういう「不満」が非常に強かったです。それはおそらくプレーした人誰もが感じたことでしょう。本当に綺麗なエンディングだということはわかります。でもこの2人は共に、爆発寸前の想いを抱えていて、それがこの再会によって一気に…そういう場面ですよね?
そう感じる気持ちは基本的には何度プレーしても変わりません。ただ、制作スタッフの気持ちも理解できるようになってきました。何か書こうとしたのかも知れません。エンディングムービーが終わった後に、少しでもよいから何か…と。でも、書けなかったのだと思います。何を書いても陳腐になってしまいそうです。それなら、様々なゲーム中のシーンをつないだエンディングムービーで終わった方が…ということでこうなったのかな、と勝手に想像しています。
それに…理解できない点が多く残っていれば「尻切れ感」は非常に強く残ったのでしょうが、ここまでいろいろと理解できてからであれば、ああいう終わり方も「きれいなending」ということで納得できるようになってきたことも事実です。

※このC4時空では、全ての関係者がハッピーエンドを迎えられました。C3とは雲泥の差です。白雲と名月、鏡一郎だけでなく、加々見教授も音々も。そして桜塚家の両親も。そしておそらく、九厘と美々も…涙。(沼淵弟はどうだったのかな…汗。九十九も気にして声をかけたのですが、沼淵兄の歴史は書き換えられませんでした涙)それがこういう綺麗なエンディングを迎えられた大きな理由でもあります。
※最後の他の登場人物たちの様子のところで、加々見教授一家の様子も描写されていますが、この加々見教授は、鏡一郎と元々は同一個体だったとは思えません。激しいギャップがあります。元々はそういうキャラだったのです。「震災とタイムマシン、そして九十九との出会い」によって鏡一郎は本当に変わりました。何度も書いていますが、鏡一郎の方はまさに神に近づいた印象があります。

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4.まだ残っている疑問点のまとめ
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※こじつけで何とか理解できそうなものは省きました。結局最後まで残ったのは3つということになりそうです。

①A2B2C2時空の2012年から1996年に移動した九十九はなぜ融合しなかったのか
※これはずっと制作スタッフの見落としではないかと思っていましたが、最近になって、3.3にもちょっと書いたように、メカニズム的に融合しないという前提なのかも知れない…という気もしてきました。

②川に転落・化学物質に汚染してから、名月は発症まで13年かかったのに九十九がすぐ発症したこと
※これは制作スタッフも気づいていたことは明らかなので、要するに「ゴリ押し」です。適当に可能性を考えて納得して…ということですね。
思うところは3.3に書いた通りです。

③第2章のC4時空で1999年夏、2012年から送られてきた九十九②と会った時に、元からC4時空にいて、彼が来ることを事前に知っていたかのような口ぶりで話しかけたこと。
※九十九②が現れる直前までは時空は分岐していませんから、分岐前のC3にいるのか、分岐後のC4にいるのかは全くわからないはずです。

※また、1.2にも書きましたが、一度妻の救出に失敗した鏡一郎が再度震災前に戻る際に使ったタイムマシンについても疑問は残っています。「①鏡一郎自らが別の場所で製作し、出口のみ加々見教授宅にあるタイムマシンを使った」「②加々見教授がタイムマシンを完成させるのを待って、彼に気づかれないようにこっそり使った」という2つの可能性があります。ただしこれは「矛盾」とかではなく、どちらも多少の無理はありますが許容範囲内で十分に理解できるレベルです。
ということで、疑問というよりは、「テキストを読む限りでは鏡一郎は自分でタイムマシンを製作しているように思えるけれど、それで本当に正しいのでしょうか? 入口と出口は空間的に離れていても大丈夫という前提なのでしょうか? 何か見落としはなかったのでしょうか? それよりも、加々見教授がタイムマシンを完成させたところでこっそりそれを使ったと考えた方が自然だったのではないでしょうか?」という確認を、製作スタッフの方に確認したかったなぁ…という無理な希望が残っているだけです。

※当初は疑問点山積みでしたが、本当にかなり減ってきました。これを書き始めた時は両手でも足りないくらいあったのですが…やはり制作スタッフ様にミスや勘違いはなかったのですね…シミジミ。信じてよかったです…(って、一部、あまり信じていないところもあるくせに汗)

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5.老婆心的改良案
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※このゲームなは「残念」な部分がかなりあると思いますが、そのうち最大のものは「時間移動や時空についての正確な理解が難しいのに説明が不足している」ということでしょう。それは間違いないと思います。この素晴らしいシナリオの魅力のうちどれだけの部分を、プレーした人はわかってくれているのでしょうか? ほぼ完全に理解できている人…は相当少ないと思います。
ただ、あまりよく理解できていなくても何となくストーリーは理解できますし、それなりに感動することができるようには作られています。おそらく現在のこのゲームの評価は、そういう人たちの評価と言えるでしょう。例えば現時点でこのゲームのESでの評価は、中央値80平均値79となっていますが(2021/10/10現在)、この数字は上に書いたところの「それなりの感動」の評価だと思います。時空についてよく理解した上でもう1周するだけで、ゲームの評価は格段に上がっていたのではないでしょうか。
ということで、個人的に考えた「こうすればもっとこのゲームを理解してくれる人が増えて、評価ももっと上がったと思う」という老婆心的な改善案を書いてみたいと思います。「そんなもんチュアブルが解散する前に書けよ! 今さら何も意味ね~だろ~がっ!」というお叱りの声が飛んでくることを承知で汗

<2周以上させる工夫>
※私のように、よく理解できない点がたくさんあるから2周目…という人は少数だと思いますが、その作業を始めるとどんどんこの物語にはまって行くのではないでしょうか。その結果、評価は絶対に上がっていくでしょう。そういうシナリオです。
しかし非常に残念なことに、再プレーした人は少なかったと思われます。理由は簡単。1周でCGが全て回収されるからです爆。
この点がちょっと…残念なところでした。思えばシュガスパとか好き好きとかは、何度も繰り返しプレーしないと理解できないシナリオではありません。でもそれこそ皆さん何周も何周もしましたよね…はねるとか全CGを回収するのに3周以上必要ですし笑。(誤解がないように言っておきますが、シュガスパにも好き好きにも大好きなヒロインルートがあります。ただ、シナリオは1周で理解できるということが言いたいだけです)
※このゲームのシナリオは、絶対に1周ではよく理解できないようになっています。それは当然です。なぜなら、そもそもゲームの章立て構成が時間の流れに沿っていないからです。言ってみれば、2周以上を前提とした作品なのです。第3章を読んで初めて理解できる第1章第2章のイベントや会話が大量に存在しています。このゲームこそ、強制的に2周3周とさせるような工夫が必要だったのではないでしょうか?
具体的には、2周目以降に分岐を増やして、時空についての理解を増やしつつHシーンを含むイベントが追加されるようにする…とよかった、というか是非そうするべきだったと思います。
※具体的には(当然Hシーン付きの笑)新たな分岐イベントを要するのが手っ取り早いと思います。一度エピローグまでたどり着くと、エントランスのCG・イベントのところに新たなものが加えられており、それらしく「new!」などと書かれている…みたいなことにしておけば、周回を重ねる人は数倍に増えていたはずです。

<時間移動や時空の概念をわかりやすく伝える工夫>
※チュアブルと言えばやはり最初に思い浮かぶ作品は「晴れたか」でしょう。あのゲームをしっかり味わうには、ロケット関係の専門用語の理解が不可欠です。そしてあれだけ詳しい用語解説が準備されている理由は「1周でシナリオを理解させたい」からだったと思います。分岐がほとんどないので4人の個人ルートを終えてグランドルートを終えれば終わりです。それまでにしっかり理解してもらいたいという配慮があの膨大な解説に現れ、そしてゲームとしての高い評価の一因となったことは疑う余地もありません。
※このゲームは、そこまでの配慮は必要ないとは思いますが、それでも、最低限の「解説」は必要だったのではないでしょうか。
ゲームを進めていくと「chart」なるものが表示されます。そしてそれが唯一の「解説」らしきものでした。そして大半の人はそれをよく理解しようとはしなかったでしょう。雰囲気はわかるのですが、細かい部分まではよく判りません。そして私は何とかそれを理解したいと思いましたが、そんなことはどうでもよいと考える人の方が多かったと予想します。

※ということで「晴れたか」レベルに詳しい解説は不要だとは思いますが、せめて「キスカちゃんの時空解説」みたいなものを準備して、一度エピローグまで見た後は、オマケメニューまたはエントランスからそれを見に行ける…ようにすればよいのでは、と提案したいです。
「chart」にも、非常に短い言葉で各時空の説明が示されています。でもそれだけではほとんど何も理解できないのが普通ではないでしょうか? そこをもう少し丁寧に書くと同時に、「時間移動」「分岐」「融合」などの重要な点についての解説があれば完璧です。

※「晴れたか」と比較した時のこのゲームでの制作スタッフ側の大きな誤算の1つは、「私たちのようなこのゲームをプレーする普通のファンが、自分たちが前提とした時間移動や時空に関する設定をどこまで理解してくれるか」という部分で読み違えたことにあると推測します。スタッフが考えているほど私たちは賢くなかったのです。
「晴れたか」はその点、制作スタッフ側としてもわかりやすかったでしょうか。一般の人には難しい科学技術用語をピックアップして解説を加えればよいので。要は「客観的」に判断できたのです。このゲームはそうではなく、自分たちが考えている前提をどれくらい他の人が理解できるかという「主観的」な要素が入ってきます。客観的な判断は難しかったということでしょう…
※ということで、すでに書いたように「キスカちゃんの時空解説」を作ることが一番のオススメですが、もう1つ、(すでに書きましたが)エピローグの最後、鏡一郎が名月に全てを説明するシーンをスキップせずに、何も知らない名月に話したことを全て書いてしまうという手段もあったのではないでしょうか? 状況を理解させるためだけではなく、感動を高めることもできたと思うのですが…
当然制作スタッフ側の方は「え~! そんなことまでする必要があるの?」と思われるかも知れません。でも頭の悪い私たちの頭脳には、それ位がちょうどよかったのではないかと思います。

※冒頭にも書いたように(完全に個人的な推測ですが)チュアブルの制作スタッフは、この作品では説明不足だったことを発売後に痛感して、「晴れたか」ではその反省からあそこまで丁寧な「解説」を加えたのではないか…と勝手に確信しています。

<鏡一郎の視点でストーリーを追わせる工夫>
※またこのゲームのシナリオの中で、非常に重要な部分を占めているのはC3C4時空の鏡一郎です。鏡一郎の立場に立つことで、このシナリオは格段に評価が上がります。個人的には、その理解が進むに連れてどんどん評価が上がっていきました。しかしプレーをした大半の方は、そんなことには全く気付いてなかったと思います。Hシーンに絡むこともなさそうですし汗
※ということでまずすぐに思いついたのは「鏡一郎視点でC3C4を振り返る」というパートを作って、1周目終了後に新たに選択できるようにするという改善策でした。しかし…それはすぐにセルフ却下されました。だってこれ、ERGですもんねぇ爆。そんなもの誰も手を出す気になれません涙
※しかし…この案を諦めてからしばらく考えていたら、使えそうな、頭の悪い自分にしてはなかなかよさげなことを思いつきました。それは、そのボツ案の代わりに「九厘視点でC3C4を振り返る」という内容の新たな「章」を作ることです。1996年からずっと鏡一郎の最も身近な人間だった九厘に、鏡一郎のことを語ってもらうのです。震災直後から、1999年夏に2012年から跳んでくる九十九②を受け入れるまでの時期に、鏡一郎が何を考え何をしたかを文章にするだけで、この作品への評価は大きく変わってくるはずです。(特に震災後、鏡一郎の養子になるまでの経緯は是非読んでみたかったですね。鏡一郎は彼女の頭脳の明晰さと性格の良さに気づいていき、九厘は少しずつ鏡一郎に心を開いていく…。おそらくは心温まる会話が数多く交わされたと想像します。そんな様子を主に九厘の視点から語る…実に魅力的だと思います)
そして当然その中には、鏡一郎とはほとんど無関係な部分があってもよく、例えば保健室での九十九②とのHを九厘視点で描いたり、名月の誕生日の「つぼ押し」の様子を取り上げたりしてもHCGが追加できそうです(これは見たいかもっ!笑)。それだけではなく、例えば九十九②が2012年に跳んでしまったためにできた心の中の空洞を埋めるべく友梨香とメチャメチャHしたり、2012年に近づく頃には春日森に迫ってみたり笑、ヤバそうな展開ですが白雲を誘惑してみたり汗、最悪、ヤケクソになって高島に手を出したりしてもよいです(す、すみません霧彦センセイ…「ヤケクソ」だなんて汗。でも高島一族の若い男性たちがそういうシーンに登場することは、少なくともチュアブルのゲームでは絶対にあり得ませんよね爆)。うん、これはよさそうです。

<その他誤解を招きそうな部分にテキストを補足する>
※第3章の冒頭の「相違点ダイジェスト」の部分をもう少しだけ膨らませるべきだったと思います。シナリオを成立させるために不可欠なイベントだけに絞って書かれているものと理解できますが、制作スタッフ側が「これはもう説明しなくてもわかるよね?」と思っていることのうち非常に多くのことを、プレーする側は理解できていなかったのです。「シナリオの成立」に加えて「前提の理解」にも配慮する必要があったと思わずにいられません。
※例えば2012年から1999年に送られてきた九十九が、タイムマシンから出たところでその時代の加々見教授と会う場面は、絶対に書くべきでした。
「突然の未来からの訪問者に驚く加々見教授は九十九の話を聞いて、おそらくこの時点でこのタイムマシンは想定通り動作すると推測する」というようなことは一言書いておくべきだったでしょう。私もそうでしたが非常に多くの人が「1999年にはまだタイムマシンが完成していなかったはずなのにどうやって2012年に九十九を送り出したの?」と疑問に思ってはずで、そしてほんの一言書き加えるだけでその誤解は防ぐことができました。
※また加々見教授が歴史を書き換えて2012年に戻る九十九を送り出す際の鏡一郎と九十九の間のやり取りも書いて欲しかったです。例えば…
「まだ自分は未検証だが2012年の自分が君を送り込んだ以上、彼はこの時点でタイムマシンは想定通り動作すると確信しているはず。不安もあるだろうが、君を送り出してくれた2012年の私を信じて欲しい」
「このタイムマシンが想定通り動きそうとは言っても、自分はすぐに妻の救出活動のために1996年に向かうことはしない。君が送られる2012年まで13年間じっと君の帰還を待ちながら、君が書き換えた時空の様子を観察する。」
「その理由は2つ。」
「まず、君が送り出される現在の状態のまま無事帰還することを確認して、タイムマシンによる時間移動が、想定外のトラブルもなく実行されたことを確認すること。そして最終的に歴史の書き換えが成功したことを確認すること。それによってこのタイムマシンによる時間移動が可能と確証されるから。」
「もう1つは、このタイムマシンの人体実験の被験者となってくれた君に対する責任。君の身にに何か予期せぬことがあった場合、可能な限り配慮する。」
「自分はそれほど妻の救出を焦っていない。それよりも、万が一にも失敗しないことが重要。そのためにも君が無事帰還するまではこの時空で待ち続ける。また13年後に会おう!」
そんな感じでしょうかね…。
ちょっと書き過ぎたかも知れませんが、何もないよりは絶対によいと思います。
※他にももう一言書き加えておけば誤解は防げたのではないか、理解が進んだのではないかと思われることは多々ありました。自分の経験上、最も大きな誤解は「タイムマシンの完成時期」で、それが解決したことで次々と疑問点が解決していきました。それは多くの他のプレーヤーの方にも共通しているのではないかと想像します。上に書いた加筆の「例」はこの点を意識したものです

<まとめ>
※ということで、個人的で、そして時期を完全に逸した(涙)ことを承知で、老婆心的な改善案をまとめると…
①「キスカの時空解説」を新設。エピローグ最後までたどり着くと、エントランスからそこに行けるようになる。
②2周目以降見られるようになるイベントを追加。Hシーンも多め。エピローグ最後までたどり着いてエントランスから「オマケ~CG」を見に行くとなぜか、埋まっていたはずのところに新たな未読CGが現れて「new!」とか書かれている。それを埋めるためにプレーヤーは2周目に向かうことになる。
③「新章:九厘視点のシナリオ」を新設。C4時空の震災直後、1996年~2012/8/12までの鏡一郎の考えたことと行動、そしてその周りで起こる出来事を九厘が自分の視点から語る。エピローグ完了後、または②に追加CGが埋まった時点で見られるようになる。
④その他、誤解を招きそうな点についてテキストを補足する。

うん、やっぱり③はオススメできるような気がしてきました笑

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6.最後に
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※非常に簡単にまとめると、このゲームの評価は
「時間移動もののERGとして(もしかすると全てのERGの中でも)最高峰と言える素晴らしいシナリオ」
「しかし設定が難解で広く一般に理解できるものではなかったため、シナリオの素晴らしさの全てを理解できる人は非常に少なかった」
という2点にまとめられると思います。特に設定をよく理解できていないと、鏡一郎という人間の素晴らしさがほとんど伝わらないというとても残念な結果になってしまいます。
これに加えて、
「魅力的なメインヒロインと『十数歳年上の義姉』『同級生』『3つ年下』という3つの異なる状況で親しくなり、攻略することができる。」
という点も見逃せません。これについてはそこまで詳しく「設定」を理解できている必要もなく楽しむことができ、それがこのゲームの現在の一般的な評価と言ってよいのではないでしょうか。
(「同級生」「年下」のパートはもう、攻略するというより攻略されると言うべき状況でした笑)

※このゲームのシナリオを私が個人的に高く評価する理由は
「複雑に絡み合っているがよく練られていて、よくこんな凄いストーリーを考えついたものと感心せずにいられない」
「『白雲=九十九』『名月』そして『加々見教授=鏡一郎』の長く複雑で絡み合った歴史を、彼らの立場になって考えた時に感じられる彼らの行動とその時々の気持ちへの感動が、理解を深める連れてにどんどん大きくなってくる」
「展開が全く読めず、マウスクリックが止まらなくなる。(特に第3章)」
「構成の素晴らしさ。第1章でやっと結ばれた名月は何と5日後に急死。ショックを受けるたところで第2章に移り、時間移動ものとわかり過去に跳ぶとそこで待っていたのは過去の名月とのベタ甘な学園生活。無事目的を達成できたと思ったらすぐにエンディングに向かわず、第3章で『謎解き』を兼ねてそこに至るまでの長い経緯を示し、時間移動や時空について理解させ、悲しい結末を見せる。そして最後にエピローグに向かってハッピーエンド…。悲しい展開と嬉しい展開がうまく絡まっていてゲーム終了後に、他のゲームではあまり味わえないような複雑で独特な強い感動を覚える。加えて各章で3世代の名月との恋愛、Hシーンを経験することができる。」
といったところでしょうか。
※このゲームは、はっきり言ってシナリオだけで勝負できると思います。もう少し改善すべき点はありそうですが、これだけ複雑な、しかし感動する物語は他にほとんどなく、またHシーンがなくても感動は色褪せないと思うので、コンシューマーゲームに移行してもかなり評価されたのではないかと、個人的には思っています。

※「余計なお世話」は抜きにしてシンプルに個人的な感想を言えば、「最高レベルに感動したシナリオだった」ということになります。
(疑問点を解消しようと)周回を重ねるごとに新たな発見があり、そのたびにゲームの評価はぐんぐん上がって行きました。
また、主人公以外の登場人物の立場に立って考えることでシナリオの内容は深みを増して、非常に感動的と言えるレベルに達しました。

※個人的にチュアブルソフトと言えば代表作は、この作品と「晴れたか」ということになります。
この2つの作品に甲乙を付けることは非常に難しいです。全くタイプが異なるゲームなので。

・「晴れたか」は、ERGの王道の学園物のさらに王道である部活物でした。さらに言えば部活物の中でも王道と言える「廃部寸前からの奇跡の復活物」でした。言ってみれば、個別ルートの結末は見えていたわけです。ですが、圧倒的な専門知識を丁寧な解説付きで投入することで、プレーヤーがロケット初心者だった主人公の立場になってゲームに参加できるようにした上で、何度も挿入されるロケット打ち上げや構成機器のテストシーンの迫力で引き込み、フォーセクションズでの達成感と感動につなげるという構成がゲームのその評価を非常に高くしました。加えて、高度に専門的な科学的知識を織り交ぜながら、非常に魅力的な4人のヒロインとサブキャラとの日常を楽しくハートフルに描いた範乃さんの筆力もあって、王道中の王道であっても、他の同種のゲームを圧倒する素晴らしい作品になったと言えるでしょう。(そして制作スタッフの「どうしてもロケット打ち上げの部活物を作りたい」という熱意もこの作品を完成させるために不可欠だったでしょう)

・一方「アステリズム」は、「時間移動」という他になくはない題材を取り上げていますが、その内容というか設定は独特のもので、新鮮に感じられました。ストーリーも、第2章の冒頭で主人公が鏡一郎からタイムマシンに乗ることを提案された時に、最後の最後に主人公が歴史を書き換えてハッピーエンド…ということはわかりますが、展開は全く見えません。特に全く何も分かっていない状況で突入する第3章は予期せぬ展開が続いてハラハラの連続になります。こういうゲームではストーリー展開の設定が非常に重要であり、そこで失敗するとボロボロになるのですが、制作スタッフが非常に丁寧に詳細まで詰めて検討した甲斐あって、非常に素晴らしいシナリオになりました。ここまで感動的なストーリーが作れれば、後はそれをうまく伝えれば自然にシナリオの評価も上がるはず…そんな内容でした。

※こうやって考えてみると、このアステリズムというゲームの特徴がはっきりしてきます。私は本当にシナリオに感動させられました。今までプレーしたERGの中でも最高レベルの一作でした。そして繰り返しになりますが、難しい(時間移動についての)設定を今ひとつよく理解できなかったプレーヤーが多かっただろうと思われることが本当に残念でなりません。

[最後に]
昔あるブログで「人間は過去の『記憶』と未来の『約束』の間に挟まれた『今』を生きている」という意味の言葉を見つけて感動したことがあります。そしてその言葉が非常に好きになりました。そんなこともあってか、この作品は最初にプレーした時から非常に印象に残るものでした。
このゲームをプレーできてよかったと心から思っています。素晴らしい出会いでした。

[最後の最後に]
制作中のまさに佳境というところで、想定していた場所で本当に震災・巨大津波が発生してしまうという信じられない事態を乗り越えて、この作品を世に送り出してくれたことに対し、今や会社はなくなってしまいましたが、制作されたスタッフの全ての方々に心から感謝しています。
この作品に出会えて本当によかったです。ありがとうございました。
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