OYOYOさんの「神採りアルケミーマイスター」の感想

過去作の地道な改善から生まれた、手抜きを感じさせない洗練されたゲーム。弱点はあるものの、作り手の本気と、遊び心が合わさった良作。2011年度個人的トップ10候補の1つ。
工房都市ユイドラで工匠を目指す少年・ウィルフレド。異国の剣士ユエラ・魔法幼女(笑)エミリッタ、エルフのセラウィの三人を護衛として、研鑽に努める毎日。ウィルの周りには次々と新しい出会いが訪れる。が、それは一帯の火種でもあった。人にとって技術とはどうあるべきか――。仲間と歩みながら、ウィルは答えを探し成長して行く。

ゲームの要素は、大略以下の七つ。1.採集、2.合成、3.コレクション、4.育成、5.衣服強化、6.マップ攻略、7.店の経営。よくも並べたり、という感じだが、ただ雑然と詰め込まれたわけではない。どれも本作の真骨頂とでも言うべき共通点を持つ。それは、積み重ねが要求されるということである。

本作は基本的に、「蓄積」の楽しさを最大限引きだし、料理した作品であると思う。ランダムレベルアップやアイテムドロップはセーブ&ロード可能で、時間をかければ手に入る最適解が存在する。ある種の(たとえば『ヴァンテージマスター』のように、詰め将棋的システムで知的な緊張感のあるSLGを楽しむ)人にとってそれは、単に作業を誘発するもので、興ざめの要因かもしれない。しかし、成果の累積に楽しみを覚えるユーザーにとっては、費やした労力次第で高みを目指すことができるという、何者にも代え難い達成感を伴う過程なのだ。

また、純粋にゲームとして楽しみたい場合、「S&Lなし」のような縛りプレイ(卑猥な意味ではない)によって、存分に楽しめるよう調整されたバランスとなっている点も評価したい。低レベルクリア、タイムアタックなど、さまざまな制限をつけても工夫次第でクリアできる。これは、ユーザーのさまざまな入力を受け付ける懐の広さがあるということだ。作品としての完成度を高めながらも、多くのユーザーを受け入れられる間口を持っていることは、素直にすぐれた点だろう。

やり込み要素と間口の広さ。どちらのニーズにも応えられるシステムを着々と(前作『姫狩』の進化形として)つくりあげたのが、本作の特長である。ユニット育成は単純にやりがいがあるし、合成解放のタイミングと素材ドロップのバランスは秀逸で(単純に次のシナリオにならないと解放されないのだが)、次のMAP、次の称号を目指す強い推力となっていた。

また、『姫狩』からの変更点として、ステータス上昇の変更がある。各キャラのランクごとに上限値が定められ、アップしなかったステータスについては上昇乱数が引き継がれるようになった(要するに、上がらなかったステータスは次のLvアップ時あがりやすくなった)。これによってS&Lに浪費する時間が減るとともに、Lvのあげすぎやステータスの偏りによるバランス崩壊が起こりにくくなっていた。細かい工夫だが、システム改善で最も目を惹いた部分である。

聞くならく、萌えゲーアワードの「プログラム賞」エントリーを辞退したとか。賞自体の意味や、受賞の可否はさて措き、本作は記録に残す価値のある作品だったと思うだけにいささか残念だ。

一方で、相変わらずの弱点も露呈した。いかんせんストーリーにパンチがない。原因の一つは、各イベントの繋がりが希薄なこと。個別に並べられた各シーンの、その隙間をゲームパートで穴埋めした感じがする。実際、クエスト的単発イベントで展開されるMAPがかなりの量を占めていることからも、上の指摘はおわかり頂けるのではないだろうか。ゲームパートの最中でも、背景の物語を意識できる。そんな風に、物語の流れの中にゲームも位置づけられる統一感があれば、もっと盛り上がっただろう。

もう一つの原因は、キャラクターの弱さだ。攻略キャラはなかなか魅力的なのだが(ユエラかわいいよユエラ)、悪い意味で解りやすい。ストーリー的に大きな転回があったユエラでさえ、一般論的でありがちなキャラ止まり。ある背景を背負った、このキャラにしかできないような行動や言葉が殆ど出ず、今ひとつ印象に残らない。

同ブランドのヒット作である『戦女神』や『幻燐の姫将軍』では、セリカやリウイといった強力な中心が存在することで、各キャラがその中心に沿って位置付けられ、強い個性を発揮していた。だが、本作のように中心の求心力が弱いと、たちまちキャラは宙に浮いてしまう。

ただしこれは、キャラ作りが下手というよりも、キャラが住まう背景世界の完成度が高く、釣り合いがとれていないために生じる結果ではないかと私は考えている。エウシュリーの世界観は、長い練り込みを経てユーザーとメーカーの間に共有されている。それなりの奥行きを持ったキャラでなければ世界に定着できないのも、やむを得ないところだ。

というわけで、システムの洗練には敬意を表するが、全体を見た場合、主力シリーズの『戦』や『幻燐』には一歩譲るように思われた。

基本点90点、システム+5、やりこみ+5、キャラ-5、ストーリー-5、時間かかりすぎ-3。やりこみ要素と時間泥棒は裏表の関係なのでこう配点した。

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