armchairさんの「グリザイアの果実 -LE FRUIT DE LA GRISAIA-」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

たとえば散々連載が引き伸ばされた漫画が序盤の伏線を投げっぱなしで終わったら、そりゃあまあ楽しんだかどうかに関係なくイラっとするというもので。
(アンチの感想でしかないですがご了承ください)



総合すると、あまり好きな作品ではない。



第一に、幸と由美子ルートが全く合わなかった。

天音ルートのシリアスと、大往生ハッピーエンドにうならされた。みちるルートのEDムービーでの不意打ちには涙腺が緩んだ。
蒔菜ルートのラストには「これが藤崎というライターか…」と衝撃を受けた。共通部分はなんだかんだ楽しかった。
しかしである。残る二つのルートに関しては……。

由美子は「お嬢様と家との確執」という設定的にも展開的にも完全に蒔菜の下位互換でしかなく、ただ平平凡凡だらだらとこぢんまりしたシナリオが垂れ流されてるとしか感じられなかった。キャラも結局は、大人っぽいと見せかけて子供っぽく反抗する同級生がいつの間にやらなよなよした女性になってしまうというだけで、ツン⇔デレやツン→デレのギャップを楽しめたわけではない。

幸は……人物も展開も不自然でしかないというか、なんというか(悪い意味で)ご都合主義の嵐にしか感じられず色々通り越して気味が悪く、プレイ中は軽いめまいと吐き気に襲われた。「不幸で可哀相なヒロインを、運命的なつながりのある主人公がかっこよく助けてあげたら泣けるよね」という魂胆が透けてどころかくっきりと見えるのが不快でしょうがない上に、それがために相当に不自然な設定や展開の積み重ね(主人公の幼馴染設定とかどう考えても蛇足だし、あの両親との話の結末が交通事故とか何がやりたいのか分からない、オチに至っては誰でも思い至るだろうけどやっちゃダメだろという意味であまりに突飛)が行われているせいで物語としてもそもそもお粗末。テーマや技巧に富んでるとかコメディやキャラが突出して良いとかそういうこともなく、好きな人には申し訳ないがこのシナリオだけは全くもって評価する気になれない。
色々と触れてきた商業同人含めたエロゲ…いや、あらゆる作品の中でも最悪の部類の印象。シナリオの良し悪しだなんて好みの問題だというのは重々承知しているが、それでも自分は人目もはばからず「このシナリオはクソだった」と触れまわりたいくらいだ。

人が人を救うなどおこがましい、とはみちるルートのどこかで主人公が言っていたことだと記憶しているが、全くその通りである。ああ、全くだ。ヒロインが可哀相なだけの物語に、彼女らに憐れんで流す涙に、デウスエクスマキナによって得られる自己満足に一体いかほどの価値があるというのだろう。
(他ルートに対してケンカ売りすぎだろとみちるルートをプレイしていて思ったが、みちる担当の桑島氏は後から参加したのだと聞いて妙に納得した)

これらの……特に幸ルートから受けた不快感は、(共通を含む)他ルートの好印象を帳消しにしてあまりあるもので、点数をつけるなら各ルートで80+75+70+45+30=60点*5というところだろうか。




そしてさらに腹に据えかねるのが、これだけの大ボリュームにも関わらず、藤崎氏の担当ルートしかグリザイア(シリーズ)本編のシナリオとして機能していないということである。天音・蒔菜でチラ見せされた伏線が回収されないまま、基本的にキャラとのエピソードでしかない他ルートを見せつけられ、そうやって散々長いことプレイして得た読後感は、体験版とファンディスクだけプレイしたような微妙なことこの上ないものであった。

冒頭のように漫画の喩えでいうと、「打ち切りになった漫画が伏線未回収」なら、まあしょうがない。まあ残念だったけど次回作に期待、ということもできる。しかしこの作品は違う。手が足りなくて天音・蒔菜ルートしか作れなかった未完成作ではない。通常のゲーム以上に人員と労力が割かれ、膨大なテキストの、5人のヒロインのエピソードから構成される大作なのだ。
それにも関わらず、実際に「必要」なルートは2/5、人員でいえば1/4でしかない。そんな状態で「今回では話がまとまりきらなかったので続編出します」とは一体何様なんだ。藤崎以外の面子にちゃんと本筋を書かせればまとまったんじゃないのか。残りは一体何の仕事をしていたのだ。ただの水増しでしかないのじゃないか。

その水増しにもなんかしらの良さがあればまだ許容できるというものだが、先に述べたように個人的には幸・由美子ルートは要らないどころか作品の価値を損ねるものにしか感じられず、どうあっても「時間と労力の無駄」だったとしか評することができない。
作品の完成度の向上に注ぐべきだった労力をドブに捨てて出来た怠慢の成果が、この大作「グリザイアの果実」……個人的にはそう評せざるを得ない。




全く楽しくなかったと言えば絶対に嘘だし、続編をプレイすることになるなら、まあ、明かされなかった謎が解明されたりしてそれはそれで面白いこともあるのだろう。
けれどそれでも、自分はもうこのシリーズに触れたいとは思わない。この一作目に触れたときの不快感を思い出し続けることになるだろうから。そしてきっと、また新しく同じ不快感を味わうことになるだろうに、そうしてまで得るべきものはこの作品には存在しないだろうから。


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