taiki_VAさんの「Minstrel -壊レタ人ギョウ-」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

テーマの対比・シナリオ構成力に目を見張る。
 2014/11/03現在。ライターのルクル氏の「紙の上の魔法使い」(2014/12/19発売予定)の体験版があまりに良かったので過去作である本作を予習としてプレイ。その結果、かみまほ体験版はまぐれでも無く裏打ちされる実力があることを確認できた。本作の構成としては4章から成り、その章ごとに起承転結がしっかりしている。その上、1章=起、2章=承、3章=転、4章=結となっておりその構成力は確かなもの。全ての章で高いクオリティを保ちつつ、後半の種明かし、散りばめた伏線、小道具を意味あるものに昇華する手腕には脱帽した。

 かみまほ1章内で「上質なプロットには、無駄なシーンが一切ない。全ての文章に意味があり、伏線があり、作者からの意図が込められている。」とあったが、本作はまさにそれを体現していた。

 90点に届かなかったのはシナリオ以外が弱かった為。仮にシナリオそのままで絵、BGM、演出を高レベルに強化してくれたら間違いなく90点以上いった。それほどシナリオ完成度が高かった。まあ、本作のような短編の方がテーマに一貫性を持たせやすく、30~40時間のゲームに比べてどうしても心に響きやすいので高得点になってしまう。私の場合「narcissu」を90点にしているしw

テーマは「愛」。感情を求め人間になりたい人形「ロマ」とそれを支える少女「リーベ」の旅。

【加点要素】
・シナリオ
 前述済であるがテーマを表す為の構成が素晴らしい。1章ではもっと深く長く関わり合いを描けば良いのにとか思ったが、バッサリと切り必要な部分のみ描いている。人によっては描写が足りないと感じる部分も多々あるかもしれないが、まさに無駄がないとも言える。

・吹き出し
会話が吹き出し形式でLittleWitchを彷彿とさせる。これにより会話をテンポ良く読め、キャラクラーの感情表現にも一役買っている。


【減点要素】
・立ち絵が少ない
 同人の為仕方ないかもしれないが、キャラの感情を表す立ち絵が明らかに足りてない。

 他にBGM数が少ないとか言っても同人なので仕方ないしな~。シナリオが素晴らしかった為、あんまり他に書くことないなw DL版で1600円程度なので興味が湧いた方は是非プレイして頂きたい。


以下ネタバレありで
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1章
 人形師が支配する町での話。私はここで鋼の錬金術師の第1話が思い浮かんだ。シチュエーションとしてはまったく同じ。なにかに縋らなければ生きていけない町人達。ハガレンとの違いは支配者に悪意があるかどうかだけ。この人形師は町の人間達と同じリスクを背負い、彼なりの信念を持って町人達を欺いている。それでもリーベは町人達の「甘え」と断罪する。彼は言う「みんながあなたのように強くない」と。どちらが正しいとかでは無くお互いの信念に基づいての対決。結果はリーベが勝つが彼女は町のその後については気にしない。「人は自分の力で生きるのよ」と。だが実際は夢に縋って逃げ出すほど人間は弱かった。

 ロマはここで酒場のマスターの娘人形を壊す。「長い夢から覚めましょう」と。容赦無く、これが現実だと。この時点でロマは感情を理解できていないことが対比となっている。人間と人形の違い。ロマは4章で両親が死んだことを受け入れられず、酒場のマスターと同様に夢に逃げる。これこそがロマが人間になった証でもある。また、酒場のマスターは絶望して自殺を行うが、これも自殺できない人形や2章の「アデル」との対比となっており、初めにプレイした際の印象以上に1章が重要な役割を果たしている。

2章
 同じ製作者ながら成功作である「ロマ」と失敗作である「アデル」の話。しかし絶望を経験したアデルは人間の負の感情を身に付けている。彼は言う。「感情なんていらない」と。感情を有する人形と有しない人形の対比。全てに絶望しながら人形の為自殺もできなかったが、ロマに感情を与える為だったと存在理由を見つけ、同時に自分を殺せる人形のロマに殺してくれと頼む。アデルの心の叫び「死にたくない」が胸を打つ。モニカと一緒にいたかったアデル。ロマとリーベを羨むアデル。支えてくれる他者の重要性を示唆しているように感じた。ロマも4章で全て絶望するがそれを救ったのは孤児院長のユッタ。酒場のマスターも支えてくれる人がいれば自殺もしなかったかもしれない。

 4章で再びここへロマが訪れるがモニカのクローバー畑はアデルの魔導核により枯れてしまっていた。感情を有しているロマは後悔する。「感情なんていらなかった」と。そして死にたかったアデルの気持ちを理解する。感情を有し人間になったからこその絶望。ここでクローバーのブローチという小道具をクローバー畑に埋めるのは印象深い。それによりクローバーが復活するかもという無意味で勝手な思い込みだが、それが人間にとっては希望となりえ、その人間臭い行動が良い。

3章 
 人形になりたい人間「ハイン」と人形ロマの対比。人間として感情があるがゆえ愛憎を持ちつつ友達を殺してしまったハインは絶望から人形になりたいと願う。ここで2章でロマが感情を一部理解しており、これが1章とはまったく違いロマが人間臭い行動を行い、それが結果的にすれ違いを解消するのは興味深い。また、ここで先に出会っていたロンドや後でモニカも合流し、物語の収束の為のまさに「転」の展開をみせる。

 ここでは人の触れ合いがテーマのように感じた。多くの人に関わり、人間の愛しているが嫌わなければ自分を保てない複雑な感情をロマは学べたと思う。ハインがユッタへ自身の気持ちを伝えるシーンはちょっと涙腺に来た。やはり子供の素直な気持ちとかの部分に弱い。また、モニカがレジスタンスを憎んでいることからロンドを刺したりと人間の利己的な部分もみせ飽きさせない。

4章
 副題の通り壊レタ人ギョウの話。
壊れた人形「リーベ」、心が壊れ人形と化した人間「リーベ(真)」、心が壊れた人形「ロマ」。

 ここまででリーベが王女とほとんどの人は予想付いただろう。だが、まさしくライターのミスリードに引っかかっていた訳だ。仮にそんな部分を匂わせなければもしかしたら考えついたかもしれないが、「王女」という王道であり大きな隠れ蓑に隠されてしまっていた。ロンドを覚えていなかったことには違和感を覚えていたが見事に騙された。そしてこのどんでん返しがただ驚かせるもので無く、今までの旅の全体に疑問を抱かせることになるのだから素晴らしい。こうゆうどんでん返しが大好き。

 ロマも悩むが自身が愛していたのはリーベという人形であり、それは自分が勝ち取った感情だと気付く。その気付く過程が二人の旅を辿る形で振り返る構成。ここも本当に上手い。これで完全に本作に無駄な部分が無いことを実感する。オリジナルの王女に会い、「泣いているの?」という言葉で人間の強さを知る。この辺もベタながら今までの積み重ねがあるからこそ映える。

 宰相との対決は見たいとも思ったが、本作は人形が感情を知る物語であるため切り捨てたのであろう。だからこそ心に残る。

 これほどの作品があったとは驚いた。まさに同人の為埋もれていたと言える。
否が応でも「紙の上の魔法使い」への期待が高まる。願わくばかみまほで本作以上のクオリティで名作となり、同時にライター過去作として本作も日の目をみますように。

2014/11/03現在でDLsite.comでDL数「27」、DMMで「13」とか…。

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