えびさんの「コミュ -黒い竜と優しい王国-」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

絵23+文22+音21+他03 これは『絆』を描いてはいけない物語だったのではないか。このゲームは、まるで、エロゲー批評空間を見ているような気分になった。(2009/11/02 加筆・最終稿とする)
■2009/11/02 少しだけ加筆
 キリが無くなってきたので、最終稿とします
■2009/10/31 一言・シナリオの項を改定
■2009/10/28 一言コメントに非ネタバレ投票しました
 少なくとも、一言はネタバレしていないと断言できますので、
 長文をネタバレ感想としておきます
 シナリオの項が、あんまりなので、更新予定です
■2009/10/26 修正/追記忘れを修正
 (?ネタバレしてるかしら?)


今回から、プレイ時間を計ってみようかと思います。
気が多い方なので、途中で気になった事を調べたり、メモを取ったり、過去ログ見た
り、と、シナリオ重視系の作品の場合、特に寄り道が多くなります。
途中でWC行ったり、コンビニ行ったり、TV観たり、寝落ちしたりしますので、か
なりアバウトな数字です。
大抵の場合、攻略情報があるものは、参考にしています。既読テキストは、基本的に
スキップします。今回の場合、既読ジャンプ(次の選択肢まで進む)を使ってます。
計測には、以下のアプリケーションを使用させて頂きました。

MoeL2 - The Game Launcher - Ver1.20
(http://homepage2.nifty.com/workshoptoyo/)


では、感想へ。

映像面・・・
さえき北都の原画は、相変わらずデザイン性に富んでおり、立絵、イベント絵を問わ
ず、キャラクターの個性を表現する事は上手い。
表情付けは、何処となく、FAVORITEの司田カズヒロを思わせるシャープさがあった。
一方で、脱いでしまえば、ただの『記号』となってしまうのも相変わらずで、エッチ
絵になると感動に乏しく、荒が目立つ。
コスデザは映えるので、着衣シーンではプラスポイントだろうか。
アクションにおけるCGは、迫力、美麗さ、どちらにも振り切れない、半端さを感じ
る。

アバターの異形なデザインは、それだけで殺傷性や凶悪性を感じさせ、バトルの緊張
感を演出している。
しかし、異形であり複雑であるが故に、例えば『腕の一振り』ですら、それを映像で
表現することは難しい。
エロゲにおけるバトルの演出とは、軽妙なテキストや高揚感を煽るBGM、サウンド
エフェクトなど、総合的な演出力で魅せるものだろう。
だが、それらを引き離してウェイトを持つのは、やはり視角に訴えてくる、映像の表
現力だ。
画面の振動、暗転、ディストーション、CGのコマ割り、カットイン、多段的ぶち抜
き、対象のズーム・パン、移動体の加速度、などなど、挙げだしたら際限が無いほど
にメソッドがあり、その数だけ様々なバリエーションが産み出されてきた。
にも関わらず、この作品のバトルシーンは、『腕の一振り』すらまともに表現するこ
とが出来ないのだ。
更に言えば、アバターのデザインそのものも、緻密さと荒々しさの間隙に留まってお
り、窮屈なメソッドしか許されない演出を填補するには不足感を覚える。
このアバターは、精巧に作られたワンオフに及ばない、量産品のフィギュアのように
チープさすら感じる。
また、カット間のコンマ何秒の間が、スピード感の無さを産み、バトル演出のチープ
さを助長している。

十分に鑑賞に耐えうるクオリティではあり、中小の他ブランドに比べればまずまずな
部類である程度で、それ故に、総合演出力の甘さが露見したバトル演出だった。


シナリオ・・・
シナリオの軸の上に、多様な付加価値を付けるのは良い。
だが、その付加価値という見かけの大きさは、肝心の軸を細く見えさせる。視覚効果
の誤解を生む。

作品をプレイしている途中は、黒く塗りつぶした状態(●)である。
プレイを進めることにより、丸の中の芯(◎)が見えてくる。
この芯の大きさは、膨らませた世界観(○)の大きさによって、大きくも小さくも感
じられる。
この作品は、芯そのものは細くなかったかもしれない。
しかし、多様な要素が、膨らませた世界観(○)によって、その芯の太さは見劣りし
てしまう。

もう少し、上手く取捨をして、より必要な物で纏め上げて欲しい。



……と、ここまでが、当初の感想のまとめ的抜粋であるが、以下に改めて思ったこと
を追記する。(2009/10/31)

『るい智』は仲間の結束、信頼といった、『絆』という繋がりがテーマに据えられて
いた。所謂、コミュニティーの中の話だった。
一方、『コミュ』では、仲間内に、結束や信頼という繋がりは薄い。

「俺たちはチームだ。
  たとえ蜜月には届かない間柄でも。
   利害の一致で結びつく。
    運命共同体ならぬ生存共同体――」

OHPの一文にもあるように、彼らは生きる為の利害という『鎖』で繋がっている。
逆に、『コミュ』には、『るい智』には無かった、コミュニティー同士の繋がりが存
在し、そちらが主題なのではないと感じる。
こういった繋がりは、日常にも存在するが、匿名性という隠れ蓑を有するネット社会
では、特に顕著な例の枚挙に暇がない。
アバター=サイト・板・ハンドルネーム。
接続者=住人。
ラウンド=自治厨。
コミュ狩り・BK=荒らし・プレーヤーキラー。
戦争=炎上。
など、ネットスラングに置き換えてみれば、この作品のシナリオ展開は、我々が、日
常的に画面の中で見ているものの縮図(あるいは解剖図)であるように思える。
そう思えば、主人公の節操の無さを、自身に当てはめることもできるし、同じコミュ
に属しながら纏まりのない接続者たちにも、頷けるところが多い。
特に、ラウンド内のごたごたは、身につまされたり、思わず笑ってしまうことも多か
った。

この『エロゲー批評空間』自体も、コミュニティーと呼べるだろう。
2chの作品板などでは、誰かの感想の一部をコピペされ、批評空間全体を否定的に煽
ったり、草を生やされる対象となることは、多くの方が見聞きしてきたことではない
だろうか。
多少の暴言・虚言はスルーするのも、我々が身につけたスキルだが、もしなんらかの
勢力が、批評空間を閉鎖に追いやろうと画策したとしたならば、我々は仮初でも団結
するのではないだろうか。(昨年の声優情報問題など、好例といえるかもしれない)
批評空間のユーザ同士が、信頼で結ばれているわけではない。

「俺たちはチームだ。
  たとえ蜜月には届かない間柄でも。
   利害の一致で結びつく。
    運命共同体ならぬ生存共同体――」

『エロゲー批評空間』が無くなれば、『エロゲー批評空間』のえびというユーザも、
○○というユーザも消滅する。
まさに、作中のコミュと接続者のようではないか。

この物語は、コミュニティーの中の話ではなく、コミュニティー同士の話だった。
故に、様々なユーザが犇くコミュニティーの中の『絆』を描く必要は無かった。
そして、その逆に、コミュニティーの多様性を描く必然を求められ、それらを結びつ
けたり、戦わせたりしなければならなかった。
結局、この作品から『絆』のような強い主題を奪い、漠然と世界観を拡張させてしま
った原因は、そこにあったのではないかと考える。

冷静に見てみれば、扱った題材は面白く、ウィットな皮肉めいた魅力がある。
ただ、そこには絶対的な正解など存在しない。
そんなことは、誰もが知っているからこそ、虚しさを覚えずにはいられない、そんな
題材であったようにも思える。
多層的で複雑系なネット社会の構造は、題材として魅力的であるし、コミュニティの
中に『絆』を描かなかった事は、ある特定のコミュニティーに『欺瞞の正義』を与え
てしまうことを忌避したからだろう。
深く掘り下げてしまえば、なんらかの答えに辿り着き、その結果の行動は『正義』で
なくとも『明確な理由』となり、そこにテーマが宿ってしまうからだ。
もっと、俗っぽく言ってしまえば、『○○厨』と白い目で見られる対象となってしま
うからだ。
--2009/11/02追記------------------------------------------------------------
『エロゲー批評空間』で言えば、サイト内の問題点を指摘するユーザと、そのユーザ
を諌めようとするユーザが、なぜか口論になってしまうことが多い。
どちらも良かれと思って言っており、そこに争いの意志などなかったとしてもだ。
私の正義は、彼の正義ではなく、また、行き過ぎてしまえば、私の正義は、彼の悪に
すらなってしまう。
特に、そういったものが、顔の見えないネットの中では際立って見えてしまうのでは
ないだろうか。
作中で紅緒や奈々瀬の正義が空回りしているのは、きっとそういったものの象徴だと
感じる。
----------------------------------------------------------------------------

しかし、実に理に適ったシナリオ展開が、ユーザの熱を冷まさせてしまう結果に繋が
った。
暁WORKSは「どこへ行きたい?」と、手痛いしっぺ返しも受けるかもしれない。
これは、熱い展開を求め、明確な答えを求めた、受け手の身勝手なのかもしれない。

扱ったモノの選択と、それに挑む志は、素直に賞賛したい。
この作品は、風呂敷を広げすぎたのではなく、大きな風呂敷を描こうとした作品だ。
しかし、それを全て表現するには、型どおりのエロゲーという媒体では手狭にすら感
じられる。
(不要なエッチシーン。一部のご都合主義。過剰なイデオロギー。)
であるから、下手な小細工など抜きに、もう少しスポイルされたカタチで表現されて
いれば、実は名作になりえた可能性を、この作品は秘めていたのではないかと思う。

……と、視点を変えてみれど、当初の感想の末尾に帰結するわけだ。


音楽/声優・・・
『るいは智を呼ぶ(暁WORKS)』をやったばかりだからだろうか、プレイ開始時、音楽
のテイスト・パターンが、彼の作品と殆ど一緒に感じた。
プレイしていれば、確かにその差異は見えてくるが、妙に大人びたBGMと、登場人
物の青さの間に、違和感を抱いてしまう。
テーマ曲群も、『るい智』同様、質は高く、曲としては評価できるが、シナリオから
掴み取るべき雰囲気が定まらず、今ひとつ『協調するもの』として消化できない。

声優陣は有名どころを揃え、そつのないキャスティング。
竹河紅緒役の島夏美(またしても、別名義のあぐみん)は、自身を正義の味方という
活発少女役としては、あまりにも当たり前のキャスティングであろう。
それにも関わらず、この声優の必然性を感じられないほどに、活躍の場が少ない。
比奈織カゴメ役の一色ヒカルは、ヒロインの性質上、優遇されている面もある。
だが、ほぼ同程度の人気を誇る青山ゆかり。
独特の声質が印象的な桜坂かいや松永雪希。
定番声優とも言える、茶谷やすら、芹園みや、佐本二厘、成瀬未亜。
世に『豪華』と言わしめる布陣でありながら、誰をとってみても、活躍の場が限定的
で、不遇であると感じてしまう。
『豪華な声優』という表現のおかしさはあるが、あえてそれを認めてみれば、この作
品の場合、『もったいない声優』という印象ばかりが残る。


(当初の一言感想)
 丸の中に丸がある(◎)この丸を黒く塗りつぶしてみる(●)さて、では丸を黒く
 塗りつぶした過程を見ていないあなたに、この●の中にある丸の大きさを尋ねてみ
 たい。

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えびさんの「コミュ -黒い竜と優しい王国-」の感想へのレス

えびさんへ
そうですね。この作品内のごたごたはネットゲームやメーカーの提供した掲示板などでは、比較的よくみかける光景ですね。私は過去にネットゲームに参加していたときを思い出しました。ただ、ネットゲームなどでは、ななせのような穏健派の意見が通るんですよね。というのは、リアルの命や金がかかるわけではないので、「嫌ならやめれば」で片がつく問題が多いですからね。それを現実でやろうとすると・・・着地点がつきにくいですね。
エロゲの従来の枠では取り扱うには限界があるというのもその通りですね。連載漫画やライトノベルのように、シリーズ化した出し方というのも試みて欲しいと思います。ネトゲをとりあつかった作品ということでは、「.hack」シリーズがこの作品に近いものがあるかもしれません。しかし、あれは、「アニメ1期」「小説」「ゲーム1」「アニメ2期」「ゲーム2」という感じで、ものすごい壮大な設定を何種類もわけて出しています。資金的な余裕があるから、そこまで展開できる余地があるわけですが、エロゲだと難しいですよね。

>批評空間との類似
そうですね。本当は、ひろいんさんがもっと横暴にふるまってくれてもいいのですが、そこは優しい人ですからね。私なんか自分に逆らう人間は敵とばかりに排除してしまえばいいのに、と思わなくもないのですけどね。個人的な事情で、あまり手助けができないのが本当に申し訳ないのですけどね。せいぜい、時間見つけてゲーム情報登録をちまちまやるくらいしかできないのが心苦しいところです。
2009年11月10日04時52分54秒
xianxianさん、レスありがとうございます
>本当は、ひろいんさんがもっと横暴にふるまってくれてもいいのですが
そうですね(笑)
ま、そんな、ひろいんさん、想像もできませんが。

私は、あまりネトゲとかの経験は無いんですが、とある掲示板に頻繁に出入りしてま
した。(エロゲとはまったく関係ないところです)
そこは、とあるソフトをカスタマイズする為の、マクロや外部ソフトの置き場だった
り、ユーザ間でのヘルプ&サポートの場だったりして、とても雰囲気のいい掲示板で
した。(すべてフリー素材として公開されていました)
今年、惜しまれつつ閉鎖してしまったんですが、そこが何故、いい雰囲気だったのか
って思い返すと、ユーザさんの善意と、面白そうなアイデアに対する知的好奇心で成
り立っていたからなんだなーと思うんです。
そこでは色々、学ばせてもらいましたが、ネットに限らないですけど、コミュニケー
ションって、自身の正義を押し通しても駄目なんですよね。
見返りを求めない善意や献身さを前にしたら、自身の正義なんて、恥ずかしくて語れ
ないですよ。
結局、そこは自分も誰かに助けてもらったから、困ってる誰かを助けてあげたいとか、
そういう善意の繋がりで出来た場だったんですね。
(だから『きっすみ』のシナリオって、私のツボだったりしたんですけど)

エロゲー批評空間も、出来ればそういった、居心地の良い場所であって欲しいなーと
思うので、こういう場を提供してくださるひろいんさんや、他のユーザさんに、私も
なにかしら、還元できたらいいなーと思います。

改めて、思ったのですが、『コミュ』はコミュニティーのコミュだけでなく、
コミュニケーションのコミュでもあったんでしょうね。
2009年11月10日09時57分57秒

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