kiss-umiさんの「きっと、澄みわたる朝色よりも、」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

この作品は、お朱門ちゃんの最高傑作や~~!!
って、作品の中でハッキリと主張していたから間違いないよ!

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→「その通り!」という方は、どうぞそのままお読み下さい。
→「そうでもないんじゃね?」という方は、下段***までスキップしてください。
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「クロノベルト」でプロデューサーとしてその手腕を発揮した“天災”朱門優氏が満を持して企画したのが本作「きっと、澄みわたる朝色よりも、」である。

 原画にやすゆき氏、音楽に樋口秀樹、歌WHITE-LIPS、その他背景演出共に素晴らしいものであるが、それらは全て朱門氏の指揮・指示によって一から創作された物であり、その功績は全て偉大なる朱門氏に集約される為得点からはあえて除外した。

 本作品は「優しさ」とは何にかをテーマとしており、薄っぺらい単なる甘やかしとは異なる本当の「優しさ」についてを追求している。
 また、和や絆といった要素が大変意識されており、登場人物やストーリーは勿論、建物やその周辺の背景、単なる小物など細部にわたって朱門氏のその拘りを見ることができる。

 その拘りのひとつが、主人公である崇笹丸である。

 彼は、親友アララギが「生徒会の若さんに『おとーさま』と呼ばれている」と学校で噂になれば、それを微笑んでいるゴミどもに対し激しい怒りを露にすることで、四君子の特別な絆を見せつけました。

 また、彩生祭提出作品を壊していた青妹を庇った際には、「俺、(笹丸を)信じるからさ」などと世迷言をほざいた黄組の男子生徒に対し、『本当のことを言えば犯人にされる』と天才的頭脳を働かせて黙秘すると、その通り、この男子生徒は気が狂っていたので哭きながら笹丸を殴ってきましたが、しかしそのような暴力に屈することなく、信義に厚く情に溢れる笹丸は正義感を持って少女を庇い黙秘を貫きました。
 勿論、頭脳明晰な彼のこと、この生徒のことは後々まで「(あいつ……!) それは、いつか俺を殴った──黄組の男子生徒だった。」とずっと覚えていました。

 少女を庇ったことで笹丸と赤組は生徒たちの冷たい視線に晒されますが、何一つ罪を犯していないのですから、彼が反省することなど何一つありません。
 青姉に対しても白組に対しても堂々と胸を張って、「俺は何もしていない」と断言します。

 そんな彼は、武道の超人的達人でもあります。
 父親の虐待によって超人的武力を身に付けた彼は、ヒロインである「ひよ」を貶された際には、逃げる白組を相手に大立ち回りを繰り広げ、命乞いをする彼らを一切許さず血祭りに上げました。
 ですが、本来は極めて忍耐強い人物なのです。
 絆の象徴である四君子のアララギや春告であれば、彼女らがどれだけ穢されようともその拳を振り上げることはありません。
 なにより、暴力を厭う彼に暴力を振るわせたのだから、白組が悪いことは証明されています。むしろ、彼らを殺さなかった笹丸の慈悲深さに感謝するべきなのです。
 ですので、暴力で解決したことは反省するべきですが、白組に対しては悪いとも思っていませんし、当然謝る必要もありません。

 四君子の春告は笹丸を止めることが出来ませんでしたが、それは別に笹丸に蔑ろにされている訳ではなく、白組に正義の制裁を加える笹丸を止めた「ひよ」が特別な選ばれたヒロインという存在なだけであって、決して彼が四君子という絆を蔑ろにしてたわけではありません。

 そのことは、春告の「きみは今でも、私たちの為に本気で怒ってくれるんだな」という台詞で証明されています。
 半の貶しがひよに言及してから笹丸は怒ったのですが、春告がそう言っているのだからそうなのでしょう。

 そして、笹丸は視野の広い人物であり、赤組が彩生祭で優勝した途端に、生徒たちが掌を返して自分たちを賞賛しても、「この学園の奴らは、その場や周囲に合わせて甘やかしているだけだ」と冷静なものです。
 ですが遠慮がちな彼のこと、「流石に四君子には及ばない」と謙遜することも忘れません。

 このように、彼は「好意」に対してこそ鈍感であるものの、文武に大変優れた優秀な人物であり、また他者の気持ちを察することに長けた大変素晴らしい人格者として描写されており、氏の視点からは非常に共感される人物となっている。

 これほど素晴らしい人物でありますから、笹丸はヒロインのひよを始めとして登場する全ての女性キャラクターたちから愛されています。
 特に、実の姉である春告からは、「きみがいないと駄目なんだよ……!」
「……きみがいるだけで、どうしてか、“なんとかなる”と思えるんだよ」
「……いい男だな、彼は。そう思わないか? アララギくん」と、非常なまでの愛情を注がれています。ベタ惚れです。

 そして、もうひとつの拘りが、名前です。
 登場人物たちには、笹丸の『崇められる』を筆頭に、物語の役目にそった名前を与えられています。
 作品中でわざわざ名前の解説をしているので、それが重要なのことであるのは一目瞭然です。
 逆に言えば、名前のないキャラクターは存在していません。
 いない事もないのですが、彼らは背景にすら描かれていない空気のようなキャラクターたちです。

 秋に思い入れがあっても、秋を題材にした作品を作ることは出来ません、空気なので。
 空気なので、皆が冷たい視線を向ければ冷たい視線を、優勝すれば一転赤組を賞賛します。
 それぞれの胸にそれぞれの理想の秋の姿があろうとも、空気なので笹丸の“秋”を褒め称えます。
 理想を持って入学した生徒たちも、空気なので名前のある半の手下になります。
 空気ですから、芸術家を志していても授業のない日々を無為に過ごします。
 病気が蔓延した際にひよを責め立てたのも、笹丸がひよを庇った途端に責めることを止めたのも空気だから当然です。
 笹丸の呼びかけに手を伸ばしたのも、背景の彼らがその雰囲気を空気として読んだからです。

 彼らは目立ってはいけません。ですから、何事もなかったことにして物語を〆なければいけません。

 勿論、それ以外にも朱門氏の拘りは多々存在します。

・作中において主人公に自身の過去作品を絶賛させた上で、本作こそが最高傑作であると賞賛。とか
・学園の木々全てを飾りつけ出来るだけの作業時間がありながら作品を完成させることの出来なかった怠惰な緑組。とか
・登場する教師たちは大人の象徴であり、自分たちを無用のものとして主人公たちを褒めたたえる。とか
・救うんだ! 救いたい。救ってくれた。救い出す!!「救いたい」救わなきゃ。救うんだ。と、一方的な力で他者を救い上げることが出来るのが偉大なる笹丸さま。とか
・見よ! 石女と揶揄された彼女は、こんなにも素晴らしい才能を持ち得ていたが、子供が生まれないのは俺の所為。とか
・妻と娘と孫を捨てて自殺したけど、笹丸は妻の為に生きた。とか
・人の言葉を聞かずに好き勝手なことをするのは純粋だからで、本当は皆優しいんだ。とか
・「”ヘタクソ”っていうのは、心の篭っていない画を描く奴の事をいうんだ。何が描きたいのかもわかっていないくせに、ただそこに“それらしいもの”を描いてる奴の事だ────」とか
・「あの程度でもあれだけ売れるんだから、自分が作った方がより面白く、もっと売れるものになる」と本気で思ってしまうのだ──「知っている」事と「作れる」事は違うのに。とか
・多面的な物語構築を否定して所謂Hシーンを排除することで、極めて斬新なアダルトゲームを創造しながら、その情報を徹底的に隠蔽することでユーザーに驚愕を与えた。とか

 などなど、上げていけばキリがありません。

 このような拘りによって、この作品は朱門氏の理想とする優しい世界を構築しているのです。

   * * *

……まあ、吊りです。長くてゴメンね。

絵や音楽を含めて非常に演出の優れたゲームです。

テキスト的には、同じ表現を繰り返す。ギャグ・シリアスシーンを問わず、雑学ネタを大量に挟み込む。と言った非常に人を選ぶ要素が含まれますが、キャラクター同士の掛け合いに限定すれば面白いです。

ですが、シナリオは0点です。
だって、無いものに点は付けられませんから。

 この作品はただひたすらキャラクターの設定を語っているだけで、そこには物語が存在していません。

 ツンデレキャラはツンがあって、デレがあるから萌えられるのです。

 デレてるだけのキャラクターが出てきて、作者が「実はこのキャラクターにはツンという設定もあるんだ」「ツンデレキャラなんだ。萌えるだろ」とか言われても萌えられません。

 例えば、「実はこの主人公は、愛する妻の為に生涯を生きたんだよ」とその設定こそ語られますが、実際にこの主人公が本編でやった事といえば、
・子が産めないと周囲に責められる妻を傍観する。
・これより悪鬼と責められることになる家族を放り出しての自殺。

 他にも、「この学校の生徒たちは皆が皆、芸術家としての誇りを持っており、同時に、秋に強い思い入れがある」という設定を語っておいて。
・にも拘らず、授業がないと暇を持て余す。
・周りの人間が主人公を責めれば主人公を責め、誉めれば誉める。救うなら救うという主体性の欠如。
・主人公たちだけが秋を題材にしたのも謎なら、その作品に皆が皆感動するというのも謎。

 万事、この調子でテキストが進んでいきます。ストーリーはあってもドラマがありません。

凝った演出に捻ったテキストで作品を着飾らせて、後はひたすら作品の設定を語っているだけで、シナリオなんざ皆無です。

体験版にあたる一章部分と幼年シーンに限定するのであれば、シナリオも存在するのですが、全体を通してのシナリオがありません。
 当然、作品のテーマとなる優しさや絆・和に関しても、作者の考えが述べられているだけで作中で実践なんかされちゃいません。
 テーマを語れていないのに、どうやって0点以外を付けろと?

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