マルセルさんの「乙女恋心プリスター」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

一週間かけてやっとコンプリート。結果的に途中感想の時よりもやや評価ダウンかな。やっぱ12人クリアはキツイわ。周回の度に敵能力が上がるから、6周ぐらいまではわりと楽しめるんだけど、9周ぐらいになると勝ちパターンがわかってしまうので作業プレイ化は避けられない。シナリオの方も、一国ごとに共通ルート7割、後半個別ルート3割といった構成なんで、後半のちょい個別シナリオをやるために2時間ぐらいのバトルはタルいぜと言う気分にだんだんなってくる。一国に物語を限定して、攻略キャラを3人ぐらいに絞ったら90点ぐらいの名作になっていたかもしれないねぇ。ただまぁ12人クリアはキツイけれど、1~5人くらいの気になるキャラを攻略する分には充分に楽しめる作品だとはおもう。なんといってもこの戦闘システムは神だろう。必殺技の組み合わせを練って「ずっと俺のターン」で相手を知的フルボッコする爽快さは他のゲームからは味わえない。
(1)

度重なる延期の所為でこれが「メーカー10周年記念ソフト」だったことを覚えている人は最早いないんじゃないかと思うのだが、
いちおーここは11年前からシコシコエロゲを作り続けているメーカーであり、「プリマヴェールシリーズ」
「メタモルファンタジー」「ふぃぎゅシリーズ」といったある程度は有名な作品をコンスタントに出している老舗なのだっ!

…………とは書いてみても、ちいとも「老舗」臭が匂わないのが、この「Escu:de」というメーカーの一番大きな特徴なんですけどね。
メーカーの歴史とソフトの質を考慮してみるに、もうちょっと熱心な信者層というか、「信者ユーザー」みたいな声が大きくても良さそうなものなんだけど、
例えばわりと同期に出発した「ソフトハウスきゃら」なんかに比べると、その存在感は2割ぐらい小さいように思われる。
むろん「ソフトハウスきゃらとエスクードどっちがえらいメーカーか?」というような厨議論をしようっていうんじゃ……いや、試しにそれをやってみよう。
どうだろうか? たぶん、そういうネタで煽ったとしても「そんなんどっちでもいいんじゃね?」みたいなヤル気のないレスが返ってきて糸冬っぽい。
むろんコレは別に「エスクード信者が大人だから」というわけではないと思われる。大人とか子供とかそういう以前に、わりと素朴な好感度の問題で、
エスクード作品ほぼ全てをコンプしている僕のようなユーザーでも「エスクードは好きだけど、大好きってほどではないよなぁ」ぐらいの好意しか寄せていないからだろう。

そういう「好感度70%」ぐらいの固定ユーザーが支えている「中堅老舗ブランド」つーのは、実は結構存在しているのだが、
その理由はメーカーによって多種多様だ。さっき例に出した「ソフトハウスきゃら」あたりは、2年前ぐらいまでは「好感度100%」のユーザーを
集めていたブランドだったけれども、ここ最近は忍流が大遭難してしまった所為で、たぶん今現在は「好感度70%」ぐらいまでの落ち込んでいると思われる。
たいてい、連続で「平均点70点以下」ぐらいの作品を出してしまったブランドは、ユーザーの好感度は下がるものではある。

エスクードもそういう側面はある。例えば「メタモルファンタジー」が大ヒットしたあと、「ラブリー・ラブドール」の中継ぎはまぁ妥当だったとはいえ、
次の完全超期待作「ジュエルスオーシャン」を壮大にハズしてしまい……その後「英雄×魔王」とそのFDで多少の復活をみせ、
「ふぃぎゅ」シリーズで過去の栄光を取り戻し、「彗聖天使プリマヴェールZwei」で過去の遺産を大幅に進化させるという偉業を成し遂げたのは素晴らしかった。
しかし「ワンダリング・リペア」あたりから暗雲が忍び寄り、「ヴェルディア幻奏曲」ではエスクードファンが誰も望みはしないであろう「紙芝居ADV]と、
今のエロゲオタでも望みはしないであろう「一本道」シナリオの豪華二本立てをやってしまい、これまたエスクード終了フラグがたってしまった。

(そんな危機的な状況のさなか、エスクードはせっせと誰もほしがらないハタヤマ君人形を作り続けていたのであった……)

平たく言えば、このメーカーは「三歩進んで二歩下がる」ような歴史を10年間ずっと繰り返していて、ファンもその辺は承知しているから、
あまり過度な期待を抱かないようになっているわけである。

さらに、前述したエスクード作品を通してやってみると、大多数の作品に一貫している「欠点」に気がつくだろう。
別に自分でやってみなくても、エロ助のレビューをざっと読むだけで何となくわかる人も多そうだ。ココの作品の「欠点」とされている要素はいつも殆ど、
「個別ルートがみじかい」だとか「○周目以降結構ダレてくる」だとか「○○ルートは××システムの意味がない」といったような表現で語られていることが。
これらの評価や欠点は、各ゲームの特徴によって少しずつ意味が違うのであるが、大まかな特徴は殆ど共通しているように思われる。つまり、要約すれば、

「ゲームシステムは素晴らしいけれど、そのシステムが複数の攻略シナリオと齟齬をきたし、作品全体のバランスを大きく崩している」

これがエスクードの伝統的な弱点だといえるかもしれない。この公式を特にエスクードの「評判の悪い」作品に当てはめて見れば一目瞭然である。
「ヴェルディア幻奏曲」は紙芝居ADVだからゲームシステムも糞もないけど、紙芝居ADVに伝統的に要求されている「複数攻略シナリオ」すらも、
見事に放棄した作品だったことを想い出して欲しい。「ジュエルスオーシャン」は戦闘システムすらわりと洗練されているが、これも事実上一本道シナリオだった
「ワンダリング・リペア」は上二本と比べると致命的な欠点にはなっていないけれど、歯車システムでアミリを変化させても、
アミリ自身のシナリオはあまり変化しないというのは些か肩透かしの感が否めない。「彗聖天使プリマヴェールZwei」も調教システムの素晴らしさは、
基本的に調教ルートシナリオ一本だけに限定されて、調教ルートだけ見れば最高に近い評価を与えられるが、他ルートじゃ調教システムはお荷物でしかない。

逆に、そこそこ評判の良いエスクード作品を見てみると、複数の攻略シナリオがわりと充実していて、ゲームシステムとシナリオが調和していることがわかるだろう。
「メタモルファンタジー」は戦闘&育成システムこそ割とテキトーだが、各キャラの純愛ルートや調教ルートや魔王ルートが充実しており面白い。
「ふぃぎゅ」シリーズはまさに、ゲームシステムとシナリオが調和した一つの模範例ではあるだろう。
「魔改造」というゲームシステムによって行われる(変態)行為の数々が、シナリオの分岐に直接的にリンクし、フィギュア改造のひとつひとつの積み重なりが、
イフリナ様を人間の姿に戻して純愛ルートを作り出したり、欲望のまま突っ走るとイフリナ様を完全にモノにしてしまったり、変な改造ばっかをやっていると、
超空間もびっくりなキテレツSFシナリオが暴走しちゃったり何でもござれだ。エスクードの代表作を一本選べと言われたら、僕は間違いなく「ふぃぎゅ」を選ぶだろう。

(2)

って、をいをい、そうだ。この文章はあくまで「乙女恋心プリスター」のレビューであった。じゃあ無理矢理ネタを繋げるとして、
エスクードのなかでこの作品をどのような位置を持つかと言われれば、「メタモル」と「ふぃぎゅ」の中間点あたりじゃね?と答えるだろう

この作品は「複数主人公プリスター育成バトルSLG」という、こう纏めてみるとなんかワカランちんなジャンルに属している。
「複数主人公」という時点で、エロゲだけではなくコンシューマゲームでもかなり珍しいのに、そこに「モンスター育成SLG」がくっつくと、
更にワケわかめ度が増すように思われる。大抵「複数主人公」を用意するゲームは「シナリオ重視ゲーム」であり、あんま他の要素は重視されていないからだ。
となると、この作品は「シナリオ重視」プラス「ゲーム性重視」という、今までに類を見ない画期的な作品でありエロゲの歴史を塗り替える可能性を持った傑作……
とかなんとか、僕がエロゲ雑誌の提灯ライターだったら、そんなノリでマンセーするんだろうけど、そんな文章を見てもやっぱ普通の人は「はぁ?」で糸冬であろう。
この作品がメーカーが「超大作」だと頻りに宣伝したわりには、イマイチ反応が薄かったのは、この辺の事情によるところが大きいだろう。
僕のようなエスクードふぁんですら、このゲームがどういうゲームなのか、発売前はよくわからなかったもの。体験版の切り取り方も悪かったし。

実際に、このゲームをやってみれば「プリスター育成バトルSLG」の楽しさはよくわかる。これが何故、体験版ではよく解らないのかと言えば、
体験版のような短い期間では「育成」と「バトル」の連携の長期的な戦略性を充分に味わえないからである。ココの部分がこの作品のキモだったのに。
「育成」といっても、プリスターのステータスは「HP」とか「MP」とか「マホウ」とかいった程度の、数種類のシンプルな能力値と属性値ぐらいしかないが、
この作品で重要なのは「個々」のプリスターの育成要素ではなく、仲間プリスター4体が集まって結成するカルテットとしての育成だ。
個々のキャラのプリスターの能力値は基本的に二の次であり、カルテット全体としての力を育て上げるのがこの作品の真の育成要素である。
(だから、この作品はまがり間違っても「ポケモン」なんかではない。似ているのは表面的な「雰囲気だけ」であり、ゲームシステムは真逆に近い)


これを理解するためには、「バトル」のゲームシステムの説明から入ったほうがわかりやすいだろう。細かいところは抜いて肝心な所だけ説明すると、
このシステムのキモは、プリスターの「行動順序」と各種コマンドの「速度」が厳密に定められていることだ。前述の二点は似ているようで微妙に違うので注意して欲しい。
まず、手始めにこのバトルは「ターン性」を採用していて、味方ターンは基本的に味方全員が行動を起こし、次のターンは敵ターンに移って以下略を繰り返す。
さて、「行動順序」つーのは、基本的にはそのまんまの意味であり、味方が行動を起こす順番である。「カルテットの陣形」と「行動の種類」によって決まるが、
基本的に重要なのは後者の方だ。回復マホウ(技)が「必ず」最初に始まり、次に補助マホウ→シールドブレイク→攻撃マホウ→打撃……という順番が決まっている。
ドラクエで言えば、「素早さ」のステータスに関係なく、ベホマズン→バイキルト→ルカニ→ギガデイン→会心の一撃……って感じで順番が決まっているわけね。

では、「各種コマンドの速度」つーのはなんだろうか? ドラクエや普通のPPGでは主に「行動順序」を決めるのが「素早さ」だったけれども、
このゲームは「コマンドの種類」によって予め行動順序は決まっているとは前に説明した。このゲームの「各種コマンドの速度」は「行動順序」とは基本的に関係ない。
このゲームには「キック(打撃コマンド)普通」とか「ジュエルショット(マホウ)超遅 」とか「レジストマジック(補助)遅い」と技に速度が決められているけど、
これをバトルでやってみても、先の説明の通り「レジストマジック(補助)遅い」→「ジュエルショット(マホウ)超遅 」→「キック(打撃)普通」となる。
この速度は何回も繰り返すが「行動順序」には一切関係が無く、この各種コマンドの速度は敵味方両方とも「ウェイトポイント」というモノに変換される。
早い行動を取ればこのポイントはあまり増えないが、遅い行動を取ってしまうとこのポイントは飛躍的に溜まる。相手のポイントが相手のポイントの一定値を越えると、
相手はそのポイントの分だけ連続ターンで攻撃を仕掛けることが可能になる。要は「遅い行動」をしていると、相手に隙を見せてしまい、連続でフルボッコされちゃう。
むろん「早い行動」の多くはそれぞれ効果が低いものが多く、「遅い行動」の多くはそれぞれ効果の高いものが多いのだが。

この二つのバトル要素の他に、更に重要なのは、先に少し触れたけど「シールドブレイク」という要素だ。
その前に少々説明が必要なのは、このバトルシステムでは、HPやシールド(防御力)の概念が普通の作品とは少し違っていて、
バトル上の二つの能力値は(通常の状態だと)4体のプリスターの合計の値が表示・機能されており、
敵から受けるダメージは合計HPにカウントされ、合計シールドによってダメージを軽減する。
つまり、ひろいん(HP20 防20)というプリスターが四体いるなら、「HP80 防80」というように表示・機能されるわけね。

で、「シールドブレイク」というのは、この合計の「防御値」だけを削る方法だ。
シールド値は合計で表示・機能しているわけだが、敵のプリスターの個体にはそれぞれのシールド値が機能している。
その個体のプリスターのシールドに「シールドブレイク」を仕掛けて、相手のそれを0にすると、そのプリスターのシールドは0になるので、
プリスター全体のシールド値は「60」になる。三体同時にシールドブレイクをすれば、相手のシールド値は「20」となって大ダメージを与えられるわけだ。
このシールドブレイクの破壊効果は、味方ターンの間しか続かない。相手のターンになると、相手のシールド値は90%ぐらい回復して戻ってはくる。
だけど、先に説明したウェイトポイントによる「連続ターン」の間ならこの破壊効果は持続する。連続ターンの一発目に相手のシールドを全破壊し、
次のターンに味方全員あるいは主力プリスターで全員攻撃を仕掛ければ……自分たちの三倍近い能力を持った敵に対しても大ダメージを与え勝機を掴むことが出来る。


これだけバトルの説明すれば、先の「カルテット全体としての力を育て上げるのがこの作品の真の育成要素である」という言葉が何となくわかるかと思う。
つまり、このバトルシステムでは「個々のキャラの能力値を上げまくって火力重視で敵を圧倒する」タイプの戦闘方法よりも
「個々のキャラの役割分担を決めて、ウェイトポイントを稼ぎつつ、シールドブレイクを用いて、的確に敵を攻撃する」タイプの戦闘方法の方が効率的だから、
「個々のキャラの能力を上げる」よりも「個々のキャラたちの連携力を強めカルテットを協力させ強力にする」ことが育成の最大のポイントになるわけだ。
ここで始めてシンプルな能力値の意味が理解されよう。物理・マホウ攻撃役のプリスターには、基本的にHPやシールド値は必要ないし、
補助・回復・シールドブレイク役のプリスターには逆に物理・マホウ攻撃能力値はまったく必要ないからだ。能力値自体よりも「能力の組み合わせ」が重要になるってわけ。

(余談だけど、これは「カルテット」の元ネタであるクラシックの「弦楽四重奏団体」でもまったく同じことがいえる。
優秀なソロメンバーを集めれば優れたカルテットがうまれるわけではない。これは室内楽曲からオーケストラに至る全てのアンサンブルにいえることだが、
「絶対音感」とか何とか言って個々の奏者の「能力値」だけを矢鱈に褒める日本のクラシック風潮が、世界で活躍できる優秀なソリストをポンポン生み出せても、
優秀なオーケストラやアンサンブルをなかなか生み出せないのも、この辺がわかっていないからであろう。「べっかんこうとるーす先生が組めば最高のエロゲが」
とかいっちゃうアホなエロゲオタと「絶対音感」云々とかいうハイソっぽいセレブたんは、正直実に相性が良さそうである。エロゲオタはセレブ並の貴族ってことね)

もちろん「Aをマホウ攻撃にして、Bを物理、んでCとDは補助ね」と最初に決めて、後は適当にやればOK牧場……ってほど、このゲームは楽じゃない。
もちろんある程度は計画性を持って育てないとダメだけど、攻撃マホウからシールドブレイクまで、技の種類は多岐にわたり、
その技の習得にも、自分の属性値や技のレア度によって難易度があるので、そう簡単に自分の理想のカルテットを生み出すことはできないのだ。
自分の習得している限られた技の中で、効率的な攻撃パターンを生み出し、如何に自分の理想のカルテットを作り出していくか……
個々の様々な状況によってカルテットの能力を臨機応変に変えていきながら、最強のカルテットを目指していく試行錯誤の面白さが、
基本的にわりと単調になりがちな「育成バトルSLG」の落とし穴からこの作品を救っているといえる。この点だけに関して言えば、
あらゆるエロゲ、いやコンシューマ、洋ゲー(には育成SLGってあんまないけど)と比較した上でいっても、少なくとも10以内にはランキングできるだろう。

(3)

しかし、総合的に考えてみた場合、先の「10位以内」はまぁ「100位内」としなければ妥当ではないだろう。
今まで一言も触れていなかった「シナリオ」部分に目を転じると、まず基本的なところから押さえておくと、
このゲームは最初に主人公(国)を選択し、その国の中で四人のヒロインの物語を進めることになる。3国×4ヒロインで12ルートってなわけね。
基本的にはどの国から始めても大丈夫だし、一回クリアすれば(クリアデーターは引き継がれる)また国の選択から始まるので、途中乗り換えも可能。
もちろん、3つの国のシナリオのなかである条件を満たせば、トゥルールートへの道が開かれ……といった、超大作っぽい展開もありーの。
だけど、この「超大作っぽいシナリオ」と(2)で前述した「育成バトルSLG」が全然……とはいわないけれど、わりとマッチしていないのである。


まずは、どのシナリオが面白かったのか詰まらなかったのか、素朴な感想を言ってみよう。
それほど出来に大きな差があるわけではないが、僕としては「マリアン」→「ツドラ」→「モンロー」の順番で詰まらなかった。
これはもちろん、僕のシナリオの好みやキャラ萌えの好みと言った点も影響しているとは思うが、このゲームの欠点も深いところで影響していそうだ。
だって、単純にキャラ萌えだけいったら「モンロー」が一番よかったのだ。単純にメイリンやランカのCGが気に入ったという点も大きいが、
ツンデレキャラにしては単に照れてるだけだろ藻前なソシア、主人公への悪口のボキャブラリーでは他の追随を許さないサンデーなど、見所は盛りだくさんだった。
じゃあ何がダメだったかといえば、曖昧な言い方になるけれど、モンロールートを通じて、何を表現しようとしているのかよくわからなかったのである。

コレは別に「テーマ云々」だとか「思想性がどーこー」みたいな話じゃない。そこらへんを云々するだけなら、このシナリオはそれほど悪くはない。
「ゆとり国家」という現状から「影プリスターの真の目的」へと繋げる一つの線はなかなか意外性があって面白いとは言える。
でも、それがゲームのなかで表現されているとは全然思えなかったのだ。なんかプロットの段階の生原稿をずっと読まされた感じがするというか。
何がイカンのかと言えば、まずカイト君が「ハーレム云々」ばかり言っているのに、ハーレムルートがまったくないのが許せん……
とは半ば冗談だけど、半分くらいはマジである。カイト君の「ハーレム云々」という設定が日常テキストいがいのネタに深く関わっていないのが弱点だ。

むろん、カイト君のハーレム云々は一種の「テレ隠し」ではあるだろうし、「本当は真面目な男の子」であることを語る「隠れ蓑」設定ではあるだろうし、
カルテットの結束力を強めるため、カイト君が一種の道化役として振る舞うための設定ではあるだろう。さて、こうした点を全て認めた上で、さらに
こうした効果の観点からモンローシナリオを見てみると……やっぱりイマイチだとしか思えない。
カイト君の照れ隠しは部分的にモノローグとして語られるだけだし、真面目な男の子云々も山場を締める要素にしかなりえていない。
何よりも致命的なのは「カルテットの結束力云々」という点で、このシナリオは、カルテットが日常的に生活しているところや、
カルテットが団体で動いて活躍しているシーンが少なめであり、「ハーレム云々」といったところで実感として「女の子に囲まれている」感じが殆どしないのである。
故に、カイト君のキャラは、攻略キャラとの日常特訓シーンではそれなりに面白くても、シナリオ全体としてみると非常に中途半端なものにおもえ、
ラストのカッチョイイ台詞も、カイト君が自分で考え抜いた答えと言うよりも、ゆとりな学生が模範解答をコピペしているようにしか見えなくなる。

モンローやマリアンはその辺がしっかりしているわけだ。「主人公がカッコイイエロゲは素晴らしい」とは必ずしも思わないけれど、
「主人公の立ち位置がはっきりしているエロゲは何がしたいのかよくわかる」はある程度は真実だろう。
なにゆえか人気投票で一位の座をキープしているツドラの「アモン」は確かに「アモぉン」と言いたくなるような魅力にあふれており、
中二病ハードボイルド風のモノローグから、急にシスコン病がぶり返したりすると「アモぉン、可愛いぜぇ」と甘美ボイスが脳内再生されちゃうのだ。
ツドラは他ルートと比べて、カルテットを含めたキャラが日常シーンで登場する機会も多く、妹のニャンと攻略ルートのヒロインの絡みも手伝って、
大勢のキャラクターと物語が溶け合って、厳しい雪国の現実と、ちょっとバカだけど暖かなキャラクター達の触れあいを描いているように思われる。
どうにもアモンの存在感が強すぎて、特にリンゴルートに見られるように、ヒロインの物語や存在感が薄れがちになるのが玉に瑕ではあるが。

マリアンはパッケージの中心に載っているだけあって、流石に一番バランスが良い。
主人公である「タカシ」君とジュリエッタ姫との騎士道恋愛話がシナリオの中心にあるから、他の国とは違って「メインヒロイン」が誰なのかちゃんとわかる。
それを取り囲む形で存在するサブヒロインのストーリーも、それぞれ個性的ながらメインシナリオとちゃんと関係していて好感が持てる。
セネアはジュリエッタシナリオのまわりを騎士役として回転しながらも、時々見せる女の子らしい惚けた感情と表情がかわいい。
リェリィシナリオは、腹にイチモツありそうなリェリィが、基本フルボッコ前提のタカシ君を唯一慰められる正統派幼馴染みだと証明する一乙シナリオ。
メイドシナリオは、シナリオと好感度が進むにつれて、メイドさんの病みっぷりが増大していくのかなかなか楽しい。上から下まで隙のないマリアンルートである。


ただ、先に「出来に大きな差があるわけではないが」といったように、これらのシナリオはどれもある一点において「出来が悪い」と言えてしまうところがある。
これも多少ルートによって差があるのだが、基本的にどの国ルートも「共通シナリオ」が多すぎるのだ。
基本的には「魔法少女決定大会」が終わるまでの筋書きはどのヒロインを選んでも変わらない。変わるのは、ヒロインの個別イベントでこれはそれなりに量があるが、
だいたいの感覚で比較してみるなら(こういう時にクリック数が使えないのは不便だ)一周目の「共通シナリオテキスト」+「個別ヒロインシナリオ」の量が
100だとすれば、二周目の既読テキストスキップ時における「個別ヒロインシナリオ」の(だけ)の量は10~20ぐらいだろう。
どの国でもシナリオがそこそこ凝っているので、まぁ二周目ぐらいまではそれぐらいのシナリオでも「あの伏線はどうなんだろう?」と他シナリオが気になるが、
どの国でも二周もすればだいたいの仕組みはわかってくるので、ある国の三周目以降は結構飽きが来てしまう。
このような構成では、所謂「いちゃらぶ」もテキスト以上に弱く感じてしまうのも痛い。個別テキストでは恋人と主人公の日常が語られても、
本筋を占める共通テキストには変化がなく既読スキップされちゃうから、物語といちゃらぶテキストやエロしーんが断絶してしまい、キャラ萌えやエロ度が下がる。

この「○周目以降の飽き」は(2)で前述した「プリスター育成バトルSLG」要素によってさらに倍加される。
ほんの少しの個別テキストを読むためだけに、だいたい合計で三時間ぐらいするバトルをするのも面倒くさいわけだし
さらに重要なことは、いくら周回の度に敵がある程度は強くなっているとしても、味方の能力の成長速度とユーザーの戦術の進化には追いつけないことだ。
つまり、ユーザーのやり方や趣味によって多少違いは出てくるだろうけど、最悪でも6周ぐらいはすれば、ほぼ全てのバトルには完全に勝てるわけで
以降の周回プレイは完全に「プリスターバトル作業Aボタン連打ゲー」と化してしまう。これがこのゲームの最大の弱点だ。
もうちと詳しく正確に言えば、クリアデータは引き継がれるとはいえ、他の国へのデーターの引き継ぎはごく一部に限られるし、
国によって手に入る技やアイテムが違うので、新しい国で始める場合は、ある程度は新しいゲーム感覚で始めることが出来る。
とはいえ、どんな国でもまぁ二周もやれば、黄金パターンカルテットを作るのは可能であり、三周目以降は作業プレイ化は避けられないだろう

つまり、シナリオ面においても、この作品は「12人ルートを攻略させるために充分な」個別ルートを用意することが出来ずに、
ゲームシステム面においても、この作品は「12周してもまったく飽きがこない」攻略性を構築することが出来ていない。
この二つの弱点が、ゲームを噛めば噛むほど唾液の味しかしなくなるガムのように、作業感と退屈感がユーザーのこころに染みこんでしまう
「超大作」というからには、やればやるほどゲーム空間や物語が広がっていくようなイメージがあると思うが、、
この作品の場合、最初から6周目ぐらいまでは、やり応えのある「プリスター育成バトルSLG」や壮大な物語が魔法少女の夢を見せてくれるのだけれども、
そこから先は、なんだか色々あってやさぐれてしまったネイ・キサラギの気持ちがわかってしまうのである。
このゲームの作業感が強くなると、やっぱアベルは正しいし影プリスターも必要な存在だよなぁと素で思えてきちゃんだから不思議だ。
はっ! もしかしたら、このゲームの真の目的とはこうした作業プレイを通じて、本当の現実はもっと退屈で残酷なんだぜぇとアモぉンと伝えるためだったの?
(とか、バカ解釈をしながらやればそこそこ楽しめる作業プレイではあるけれども)

(4)

まぁ、ただ「12人ルートを攻略させるために充分な個別ルート」と「12周してもまったく飽きがこない攻略性」を兼ね備えたゲームなんて、
エロゲーであろうとコンシュマーであろうと、(やりこみプレイみたいな方法はのぞいて)基本的には存在しないだろう。
もちろん、そのような「超大作」を作ろうとしたからには、そのような「超大作」の評価基準によって褒められたり貶されたりするのは当然ではあるものの、
今まで誰もなしえなかったような作品の基準をもって、作品を徹底的に痛めつけるのも正しくはあるが優しくはないようなきがする。
そのような基準でもってすれば、アリスの最も成功した作品である「大悪司」ですら70点前後が妥当だろうし、
普通の70点前後の作品なんて20点そこらに落ちてしまうだろう。それはそれでいいかもしれないけど、
そんな辛口レビューで世の中に点数をつけていたら、その辛口レビューアー以外の人間はみな死ぬべしという結論にもなりかねない。
12周の半分程度の6周をそこそこ楽しくプレイ出来る時点で、この作品はそれでも大したもんだというのが僕の評価ではある。

僕が思うに、この作品の「プリスター育成バトルSLG」は、あくまで現状のママのシステムだと、いくらバランスを少々弄ったところで、
せいぜい4周ぐらいまでしか通用しないと思うのだ。この作品の作業プレイに対して、難易度バランスが悪いだとか戦闘スキップを入れろといろいろ言われているけど、
それらは基本的に対処療法しかならないんじゃないのか。まぁ修正パッチというのは基本そういうものだけど、
12周を戦闘システム込みで作られた作品に対して、戦闘スキップパッチを出すというのはメーカーが負けを認めているようなものだと思う。
余談だけど、初めから戦闘スキップありで「超大作」を作るような某メーカーのアレとか某メーカーのアレとかの制作者は寝だ(しんだ)方が良いんじゃないか。
対処療法として「戦闘スキップがないとゲームが成り立たない」のならある程度は仕方がない。でも、初めから戦闘スキップありでそのことを、
「ユーザーの自由度を高めるためですぅ~」とかさも「それっぽい」御託を並べて誤魔化そうとするのはやめて欲しい。単にお前らのゲーム作りが失敗しただけだろソレ

話を元に戻すと、このさくひんのばあい、そもそも4周ぐらいまでしか通用できない「プリスター育成バトルSLG」を軸にして、
三つの国の4人のシナリオ+αをやろうとしたところに無理があったんじゃ。
詳しくシステムを分析すれば、「カルテットバトル」というシステムそのものが、シールドブレイク戦術を最適化するように出来ているので、
「シールドブレイク戦術」をユーザーが最適に構築させるまでは、その試行錯誤でユーザーを楽しませることが出来ても、それが完成したらほぼお仕舞いである。

これは結構根深い問題だ。「シールドブレイク戦術が効かないような敵を作ればいいんじゃね?」とは誰でも考えるが、
その可能性を考えてみると、このゲーム全体がシナリオ面を含め「シールドブレイク戦術」を最適化するように出来ていることがわかる。
このゲームはどのルートを選んだところで、あるヒロインのルーンの輝きを高めなければ途中でバットエンドなわけで、
必然的に戦闘スタイルは、リーダープリスターの攻撃と、後衛プリスターによるシールドブレイクが最適とならざるを得ない。
ルーンの輝きをもっと自由に調整できたり、カルテットのスタイルを現実の弦楽四重奏団の歴史のように、いろいろと変えることが出来たなら、
もっと戦術と戦略の幅が広がっていたと思うのだけれど、ここにもエスクードの伝統的な弱点である「シナリオとシステム」の衝突が認められるだろう。
たとえば、ヒロインを四人に限定して、ルーンの輝きによって多種多様のエンディング(全員平等にルーンを上げるとハーレムエンドとかいろいろ)を作り、
カルテットバトルもいろいろな陣形を増やして戦術性を増やせば、12周やっても物語もゲーム性も飽きないような作品が作れたかもしれない。

たぶん、この作品はFDになるんじゃないかと思うし、その予定がないならFDにして欲しい。
エスクードならこの作品のゲームシステムとシナリオの良いところをあつめて、さらに面白いゲームを作ることが出来るはずだ。
カイト君シナリオで全キャラのルーンの輝きを自由に調節できる「ハーレムバトル編」とか楽しそうじゃん。
と、同時にこの「なかなか面白かったけど、もう少しこのシステムを練り込んだら傑作だったかも。FDと次回作に蝶期待」って感じのオチは、
うーん……やっぱり、いつもの(わりと良い感じの)エスクードと同じなのねぇ。10周年記念ソフト(の予定)というお題目は、
今までのエスクード作品の特徴を良くも悪くも合わせもった「10周年を振り返る」という意味では正しいのかもしれないけれど、
次の「10年に向けて新しいステップをもった作品」としては些か微妙だったのかもねと適当にオチつけましょうか。
ま、それもエスクードらしいといえば、案外納得できちゃう僕は思ったよりもエスクード信者なのかも。まぁアモン人形なんぞ発売されても絶対に買いませんが。

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