asteryukariさんの「シュガーコートフリークス」の感想

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もう少し踏み込めてただろうとか、もっと綺麗な流れにしてくれればなど、多少の不満はあれど、その雰囲気に浸り最後まで楽しく読むことができたことを嬉しく思う。読後に再度パッケージの絵を見ると本当に周りの温かさを感じる作品だったなとしみじみ。
ルリタニア王国という地と王国らしさが漂う街の雰囲気、もう始めてすぐこの作品の虜になってしまった。もともとこういったファンタジー学園モノの作品が好きなのもあり、どんな学園生活を見せてくるのか、ファンタジー要素はどれくらいなのかなど気になることばかりだった。

この作品の雰囲気作りに貢献していたのは絵だろうが、音楽の方も同じくらい素晴らしいものだった。やはりここのブランドは弦楽器の音作りに非常に長けている。ただぎゃんぎゃん音を流すのではなく、実にその曲に合った旋律を奏でている。その美しさには時たま読み進める手を止めてしまうほど。

また、ピアノに関してもただシリアスな場面で流すのではなく、盛り上げる、あるいはキャラクターの気持ちが前に向く時にも使われているのがとても印象的だ。綺麗な音色でありながら、本当にキャラクターの心情が伝わってくるような音楽を提供してくれた。

お話はガンガン盛り上がっていくような面白さではなく、どちらかと言うとキャラクターの内面に触れ、共に前に進んでいくというお話が多く、とんとん進んでいく中でいくつか綺麗なモノを見ることができたかなと思う。

また、学園モノということで共通パートは学生らしく出し物の制作を行っていたり、馬鹿みたいな掛け合いや、笑みがこぼれるほど優しい空間がそこにはあった。皆、性格も立場も出生も異なっているのに仲良くしている光景がとても眩しかった。パッケージを見ても、グランド√である珠姫√の最後を見てもそうだが、この作品の一番の魅力は仲間達にあるのかもしれない。

以下√ごとの感想

<マリー√>
いつも明るくリーダー的な存在を務めることの多い彼女。何処までも他人思いでそれは主人公の回想でもよくわかる。誰も知り合いがいない、慣れない地で退屈な毎日を過ごす主人公に手を差し伸べたのは彼女だった。初めはその強引さに背を背けようとする彼だったがまあ彼女には敵わなかった。でもこの強引さがあったからこそ今の主人公があるのだ。そしてそんな強引さが彼女の強さであり優しさなのだ。

外から見ると完璧にも見える彼女も実は辛い境遇に立たされていて、そのエピソードというのも中々に胸が痛くなるものだった。死んだ娘の代わりに引き取られた小さな女の子、それが彼女。マリ―が恐れていたのは主人公と付き合うことではなく、付き合うことで自分の家族にどういった影響が出るか。あの時のマリーの声を震わせ方にはこだわりを感じられた。声優さんすごいなぁと。あんな自然に悲しみが伝わってくるようなボイスは久々に聞いた。

終盤は多少ひっぱり過ぎたような気もしたが、手を握り締めるシーンの再演なんかは良かった。最後の三人の一枚絵なんて素晴らしい。あの絵こそ彼女が思い描いていた幸せの形であり、これからの新しい家族のあり方なのだ。

<レン√>
ボーイッシュな髪型と高い剣の技術を持つ少女。底抜けの明るさを持ちながら、どこか抜けているような感じだったが、それが彼女のチャームポイントだ。場の空気を和ませる存在として目立っていた。あと個人的に声がとても好きなので容姿はあまり刺さらなかったのだが、好きになることができた。

この√では主人公の父であるミナトについてと、そのミナトに倒されたグルディア同盟国の王であるリーガンの存在が物語に深く関わってくるのだが、それがまあ何とも素敵なお話へとつながっていった。うーん最近、娘と父親という関係にどうも弱くなってきた。

リーガンのキャラがとてもいいし、彼の娘を想う気持ちはまさに本物。自分は消えるしかないから主人公に娘を託そうとする…と思ってもやっぱりそんなの我慢できない。お話の流れとしては停滞しているようであったが、本当に娘のことが大好きなんだなぁというのがひしひしと伝わってきて私は好きだった。

主人公の事を認め、「ハル」と呼ぶようになり自分は死んだ妻の傍らで余生を共にすることに決める。テンポが悪い部分もあったが、落ちとしてはとても綺麗なモノに仕上がっていた。

<ジル√>
平服しろと言われたら迷わずそうしてしまうような、性格も声も容姿も全て魅力的な女の子だった。あんなにツンケンしているのに実は頑張り屋さんとか可愛い以外の言葉が出てこなくなる。

彼女には一目惚れしたせいもあって共通の時点で琴線に触れる場面が多かったように思える。人々から「欠落姫」と呼ばれてもなお気丈に振る舞う彼女を見てとても心が痛くなった。本当にあの酔っ払いカスはころしていい。

そしてこの娘の一番の魅力溢れるシーンと言ったら襲撃者から珠子を守ろうとする場面だろう。

「珠子には、ゆ、指一本…触れさせないんだから…」
「私は私でいい!欠落姫だってなんだって構わない!」
「私は珠子を守る!それが私にできることで、しなくちゃいけないことで、したいことだもんっ!」

今まで珠子に嫉妬し、劣等感を感じていた彼女がこんな事を言い出すなんてさぁ…こんなの涙が出ないわけがないのだ。これこそが「やりたいこと」と「やれること」の違いに苦しんできた彼女が出した答えだったのかと思うともう涙が止まらない。本当にどこまでも真面目で健気な女の子だ。この場面を見てもうこの娘に心を掴まれてしまった。

こんなことがあって珠子とも仲良くなって、メイン√ではまた別の「違い」に苦しんでいくことのなる彼女。また彼女は苦しまなくてはいけないのかと、涙の装填準備は万全だった。

王族の婚姻は国のために行うものであり、庶民の結婚とはわけが違う。ここでは立場による違いがメインのお話になっていて、まあ国王様と対峙することになったのだがそこは案外あっさりしていた。まあだからそんなに感動するお話は見られなかったのだが、最後の指輪のシーンは良い。あの指輪こそが彼らの象徴であり、大切なものなのだ。

<珠姫√>
不思議な雰囲気を持つ女の子。歳に見合った純粋無垢な発言と行動が何とも愛らしい。何も知らず幸せそうな彼女も実はしっかりと自分の立場、役目を理解しており、その上で時折、自分の生き方に悩むというのがまたなんとも…。力に恵まれているからといって必ずしも幸せではないのだなぁ。

この√は作中では一番ファンタジーらしい話になっており、後半は龍や異世界、喋る剣といったものまで出てくるからもう楽しくなってくる。話に感動したかどうかはさておき、私の好きな要素が凝縮されていて嬉しく思った。喋る剣は某作品の影響もあり、かなり好き。

色々とドンパチしていたが、この√で一番に感じたのは周りの存在の重要さだ。珠姫が悩むようになったのも、変わったのも結局はそこに繋がっていく。また、主人公も周りの存在に感謝していた。逃げるようにやってきた自分を、温かく迎えてくれた遠い異国の街。それこそが彼にとって一番の喜びだったのかもしれない。



まだまだ友人に関するお話を見てみたかったりもしたがそれなりに綺麗な話が詰まっていたので満足だ。また、個人的にライカが好きで、彼女の境遇を考えるとなかなか辛い。あんなエゴで生み出されたようなさ…。味覚も痛覚も感じない、そんな彼女を胸が締め付けられていたからこそ、珠姫√で味覚を取り戻しのは地味に嬉しかった。さらっとだがあのワンシーンは重要だ。

魅力溢れる街と人々に囲まれた素敵な作品だった。

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