残響さんの「どこでもすきしていつでもすきして」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

ものっすごいアラのある、作りの荒い作品であります。どうあがいてもB級。多くのシナリオは出来があんまよくない。それでも……最強のツンデレシナリオがここにあるっ! わたしが90点つけたのもそのシナリオあってのゆえ! そして、イチャラブ系ゲームが期せずして採用した「ブロック構造」がこのゲームにおいてはなかなか有効に機能している。なにはともあれ、榎穂は嫁。
※以下3500字くらい、いちゃラブゲー論であり、長いのでスルーしてもかまわないっす。
そういうひとに、ポイントとして押さえてほしいのは議論のなかで、たったひとつ
「ほとんどのいちゃラブゲーでは、抜きゲー的ブロック構造が必要」
デス。


●ゼロ年代後期イチャラブ論議史

誰がポスト「こんぶ」(=シリウス「こいびとどうしですることぜんぶ」)を射止めるか--!?
な議論が、07~09年あたりのイチャラバー(いちゃラブ・バカップル愛好家)の間ではケンケンガクガクだったと認識しています。

まあこの問い立て自体がアレなんですけどね。そもそもエロゲの主流は一度も「ポストこんぶ」をねらったことはないですし、狙ったところであの作品にかなうことはない--
正確にいえば「あるひとりのヒロインに対するいちゃラブと、それにより変わっていく主人公とヒロインの螺旋相克を、フルプライスで描ききる」というガイキチじみたコンセプトにかなうものは、まあそりゃあないわけです。

しかし「こんぶ」がもたらした、いちゃラブ的可能性と、いちゃラブ的飢え--「俺たちにはいちゃラブこそが必要なんだ! もっと多くのいちゃラブを!」という漢たちの叫びが、しばらくこの業界にこだますることとなります。そこから、この数年隆盛を極める「いちゃラブ論議」に発展するわけです。

真のいちゃラブとはなにか? 至高の、究極のいちゃラブとは? ほぼ美味しんぼじゃねえか的トークが重ねられました。内部分裂もあり、喧嘩もありましたが、皆、「己のいちゃラブ」を強く求めてきました。

その中で、こんぶは「暫定解」とされました。いちゃラブキングの。いちゃラブたるものこうあるべき、の。

ではこんぶひとつあれば、それですべてよかったか--? 問題はここからはじまります。

細かく分析すれば「こんぶは抜きゲーだったではないか」という批判が、当初からされてきました。
これはいちゃラブゲーを考えるにあたって重要な示唆で、まずいちゃラブゲーというものは、本質的に抜きゲーに漸近する--というか、構造を抜きゲー化さす、という必要があるということです。あるいは、抜きゲーの変種がいちゃラブゲーなのか……? このあたりの議論はさすがにこの小論では手にあまるので、エロゲ史家の論述を待ちたいところです(だからはよ「いちゃラブ大全」の第二段を出せと、このご時世なんだから)

なぜいちゃラブゲーを抜きゲーに近くさす必要があるかというと、まあ答えは単純で、
「「売り」がそこに尽きてしまう」
からです。あ、この場合の売りとは、キャッチーさというか、商業的なメリット、ととらえてください。
しかも問題はこの設問にもいくつかの分類が必要なとこで……

まあ命題とすれば、

●「ただいちゃラブを繰り返すゲームは、イコールで「なにも起こらないゲーム」だから、えちシーンを増強する必要がある」

いちゃラブで飯を食う、というのは大変なことです。俺らいちゃラバーはあくまでゲームをしてれば、いちゃラブ的腹は満たされるわけですが(妊娠するという意味ではない)、ゲーム制作者がわにとってはそうではなく。

たとえばHookのゲームが「山も谷もない」といわれていますが、物語をうまく展開させていく上において「山も谷も設定してはいけない」条件(いちゃラブだらだらまったり条件)が設定されてしまうと、それはそれは、ストーリーテラーとしては困るわけです。

物語はキャラを好き勝手に動かせておけば成立するというものではありません。外部から絶えず「揺らし」を必要とします。「揺らし」……それは、「シリアス」というタームです。
まあ、キャラを好き勝手に動かして物語を成立させるライターもいます。そして実はそういうライターこそが、真のいちゃラブライターなのです。トノイケダイスケ、竹井10日、早瀬ゆう、そして……本作の「傑作ルート」を書いている、海原楓太。前述のHookがメーカとして支持を得ている理由もここにあります。

さて、いちゃラブゲーにおいて、昨今「誰得シリアス」「誰得ファンタジー設定」がよく叫ばれます。
わたしも、よくゲームをプレイしたり、ラノベを読んだりして、これはよく思います。
ですが、そうでもしなかったら、いつまでたっても、話は前に進まないのです。
いちゃラバーはよくいいます。物語のすべてをいちゃラブ化させよ、と。つまり、物語のすべて--起承転結を、すべて「いちゃ、いちゃ、いちゃ、いちゃ」の四段構えにさせよと。
つまりいちゃラブに求められるのは、ストーリーのダイナミクスではない、という極論にして、いちゃ的快楽最大欲求。ただいちゃいちゃしていればよろしい、という。
これは多分に「俺(プレイヤー)がいちゃ空間の中で満たされたいんだ」とする立場と、「主人公とヒロインのいちゃを、永遠に観ていたいんだ」とする立場が、奇しくも同一になったところにあると思います。(ちなみに俺は後者だ)

その気持ちは最大限わかったうえで……ちょっと考えてもらいたいのですが、
「それじゃ、どうやっておもしろい物語を、世に売り出していくんだ?」


はっきりいいましょう。そのように物語に制限を加えられてしまったら(いちゃいちゃだけさせとけよ、的な条件)、物語は、かけません。
どこにでもいるような、美形の男女が、熱烈な恋愛をして、いちゃいちゃいちゃいちゃ……で、最後は結婚して、ハッピーエンド……だいたいいちゃラバーが思い描く「理想のいちゃラブシナリオ」とは、このような「ストレスフリー」なものであると思います。

ですが、あなたが……もし、会社で、企画会議なり、ディレクション的立場なりをされていて、このような企画に、GOサインを出そうと思いますか?
……いや、学生の方も、もしあなたがサークルでイベントを立ち上げようとした場合、「いや、とくになにもないんです。みんなが幸せになれればそれでいいんです」みたいなコンセプトを誰かがいってきた場合、どうですか?

もしあなたが、「幸せ」をコンセプトにするコンテンツを作りだそうとする、その気概を同じくしたとしても、
「何かスパイスを入れようや」
と、絶対いうと思うのです。

さて、話をもとにもどしますが、起承転結なり、序破急なり、なんらかの「仕組み」や「外部スパイス」がないと、物語はなりたちません。というか企画が通りません。
ですが、それらスパイス群を廃した上で、「俺はいちゃいちゃを書きたいんだ!」の志ある者(愛すべきバカ野郎)は、それでも「いちゃラブオンリーゲー」をかこうとします。
ではどうするか? ほぼ答えはひとつです。

●エロの増強。すなわち抜きゲーに漸近化さす。

これならば、従来の抜きゲー的文脈で売り出せると同時に、従来の抜きゲーになかった「キャラへの思いいれ」をプラス効果として見込めます。そしてキャラへの思い入れは、それ自身が「エロ」を補填し、「萌え」をブーストさすことはいうまでもなく。

そして……これは、作者側がもくろんでいたとは思えないのですが、この抜きゲー化、というメソッド、構造化は、案外「いちゃラブゲー」「いちゃラブ」を、高めることでもあったのです。

それは、
●抜きゲー的ブロック構造を、物語において導入するということ。

このあたりの抜きゲー的ブロック構造、というのは、ここえろすけさんでもご健筆をふるってやまない、マルセル氏が、しとろんソフト、まかろんソフト系列=Cドラ系列作品や、SMEE作品でのレビューで指摘されたところであります。
(具体的には、氏の各レビュー……「みここ」「妹スマイル」「妹スタイル」「妹スパイラル」「らぶでれーしょん」「ラブラブル」……そして、とくに「同棲ラブラブル」レビューにて)

エロも重要ですが、それと同じくらい、「各いちゃエピソード」を、抜きゲー的に分割して、それぞれのポテンシャルを高め、萌えさせる。それは、あまりに「物語のブロック化」と親和性が高い。

もちろんそれに対して、「物語の連綿たる連続性を捨てるとは、真の物語のたのしみではない! インスタントだ! 真の愛ではない!」とする立場もあるでしょう。
実際、それはある程度の妥当性のある指摘であります。そしてマルセルさんのレビューでも、そのような「物語の不連続性」が時としてうまくいっていて、時としてうまくいってない、ということを、詳細に分析されます。

おそらく、いちゃラブゲーにおける、このブロック構造そのものが、インスタントとしてとらえられるのならば……それが宿命ならば、やはりいちゃラブゲーは、エロゲにおいて、シリアスシナリオゲーの後塵を拝する宿命にあるのでしょうか。

それがこのエロゲ界における宿命だとはしりつつも……しかし、この作品のきらめきを、圧倒的なキャラの笑顔を、捨てることは、わたしにはできないっ! 

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●レビュー本文

ちなみに、このゲーム、わたしが御世話になっている……というか師匠筋レビュアーの、レビューサイトの掲示板で、プレイ後即座に感想を書かせていただいたことがあったのですよ。ほんといつも御世話になっておりますNagaleさん……
転載しますと、
(「Nagale's Homepage「岳流」掲示板にて)
http://www1.odn.ne.jp/~nagale/

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さて今回は、以前より御紹介させてもらっている個人的応援ブランド「しとろんソフト」の実質的第一作『どこでもすきして いつでもすきして(以下「してして」)の感想を書かせていただきたく思います。
このゲームはC:driveというメーカーから出ました。で、『してして』が好評だったため、ブランド内で『してして』スタッフが独立して(とはいってもC:drive系列内でですが)しとろんソフト設立、と相成ったわけです。

ではこのゲームはどういうゲームかというと、しとろん作品の原型、すなわち、延々バカップルなヤリゲー、それに尽きます。ええ、ぶっちゃけた話。
ストーリーなんてあってないがごときものです。ひたすらキャラ萌えとエロに特化した潔いまでの作りです。
ですので、まあこれは以降のしとろん作品にも言えることですが、作りが荒いです。
また、複数ライターによる、担当ルートごとの出来も結構偏りがあり、イマイチなものはやはりイマイチです。

ですが、良いルートはめっぽういい、というか良すぎるのがこのゲームの特色です。
すべてが良いわけではないのですが、そのめっぽう良いところがあまりに良すぎるため、他のところも補正して見られてしまう、というゲームなのです。
そのとりわけ良いルートは、ツンデレルートと先輩ルートです。海原楓太氏というライターが書いているのですが、思い返せば『みここ』でも『妹スマイル』でも、氏の書いたルートは面白かったです。バカで、そしてバカップル的濃度が高くて。
とくに素晴らしかったのはツンデレルートです。いざデレたときからのいちゃいちゃの濃度はほんとに最高でした。ツンツンしてるのも、生真面目さの表れ、と、理不尽さを感じさせない造形をしていたのもよかったです。根は主人公に対して強く仲間として信頼していますし。ある時期以降多くなりましたよね、理不尽暴力系ツンデレ。

とまれ、このように潔くある方面を切り捨て、エロといちゃいちゃに特化した作品を作り上げ、そしてその中で超トップクラスのバカップルを描きだしたということ、そのことにより、この作品はバカップルゲーの歴史的名作として名を残すことになりました。
ストーリーの強度を求める人にとっては「抜きゲー乙」で切り捨てられることになりますが……。


しかしわたしは弁護したいのですが、抜きゲーだからといって、そこにある面白さや詩的精神、エロの官能性といったものを無視して「意味がない」かのように語ろうとする昨今の「シナリオ重視批評」に、わたしはいささかの反感を覚えている人間でもあります。
エロゲを語るなら抜きゲーやバカゲーも語れよ、と結構痛切に思っています。
それに、このゲームは、確かにストーリーの強度は弱いですが、テキストのテンポが良く、キャラの掛け合いも面白いので、「読み物」として楽しむことができました。また、徹底して陽性な世界観で、なんだかほのぼのしているので、読んでて世界に浸れるというか、癒されるというか。


まあとにかく、ツンデレルートは本当によかったです。思わず何周もしてしまうほど(笑)。
欠点が多い作品であることは否めません。が、良い点は本当に良いゲームです。少なくとも、わたしのようなバカップル愛好家にとっては、ほんと御褒美のようなゲームでした。この成果があるからこそ、わたしはしとろんについていこう、と思えたわけです。
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とまあ、この論よりもあきらかに当時の俺のほうが、簡潔にまとめる能力があったのではないか、と思わせるところがなんともビバナミダですよ岡村ちゃん。チョベリバ~。それからなんたる長文! いやほんと御世話になっております常日頃……

だいたい、わたしが思っていることは、当時と変わってません(この当時は2010年の8月)。
欠点も……そして長所も。長所とはなにか。以下ダラダラと欠点を書き続けるなかでも、あまりに恒星のように光ってやまないルートとは!


そう、稀代のツンデレルート、南雲榎穂ルート! Summer of Goddess!!


「こんぶ」後、わりに即座に、このいちゃラブゲーは……ひっそりとでました。
メーカHPをごらんになればおわかりの通り、どこにでもあるような萌えゲーです。ただの……わりにえちが多めな萌えゲーなんじゃないか。シリアスなど影も形もない。だから出る前は、「B級のハズレ作品」とみなされてました。地雷やむなし的な。それが、案外開けてみたら……味がある。
まあ、このえろすけさんの評定をみても、だいたいB級、ただの萌えゲー、というところに落ち着いています。

そしてそれは、読みとしてオールグリーンに近い。ていうか採点すれば98点。
残り2点、なにが違うかといえば……このゲームの「アタリ」なルート……ダダ甘バカップルルートにおける、異常なテンションの高まりにあるのです。だからこそ俺はこのゲームに90点代というバカ数値を出しています。

たったひとつのルートのためだけに。それを愚かと形容しても構わん。その……テンションの高まりの前には……!
……高まり? あるいはそれを「煮詰めの深さ」と形容してもいいですが……

ではまず、「ハズれ」のルートから語っていきましょ。
とはいっても……この場合のはずれとは、残響的「なんか迫ってこない……」なルートであります。迫ってこないつーても、どのルートでもこのゲームはやることはひとつ。「ヤってイチャ、ヤッていちゃ、どこでもすきして、好きな娘と好きなことしてして!」という、ほぼあのあったまの悪~いテーマソングと同一なのです。


よって、シナリオの深みとか気にするような類の連中は、まずこの段階で引き返しましょう。(HPみてる段階で引き返してるな)
よしんば萌えゲーが好きだといっても、このゲームはどちらかといえば……いえ、もうはっきりといいますが、「好き者」向けというか……

上級者むけゲーと初心者向けゲーのなにが違うのか、は、この論ではどうでもいいのでオミットしますが、ことこのゲームにおいて、他のゲームと何が違うのかというと……まあそれを語っていくのが本論なんですが、「当たり」のルートは、なんちゅうか、アクが強いのです。
萌えゲーにおいて、アクの強さとは大体において忌避される傾向にあります。スムーズに萌えて、イチャイチャできて、Hできて……なのが、一般的萌えゲーなのかもしれません。
あるいはそこに、自称上級者は、いらだちを隠せないのかもしれません。もっと深みを、もっと刺激を!という。スムーズなることが、もはやここではグッドとならない。何らかの「ささくれ」を求めてやまないゲーマー。なので矛盾するようですが、物語になんらかの萌え的要素を求めつつ、しかし物語に深みとか歪みを求めるというユーザーは……ほとんど萌えゲーを、いつしか離れる傾向にありますが、「それでも萌えゲーをやりたい!」という奇特な連中は、「ふしぎな萌えゲー」に惹かれる傾向があります。もっと言葉を隠さずに言えば、B級。B級萌えゲー。往々にしてイチャラブこじらせ系ゲーマーって、この領域に、知らず知らず落ち着くんですよね……因果なことで。
で、その議論に従ってこのルートのハズレルート……それを2チャンネール的に図式化してみれば、
陽奏<冬桜<<<<暦<<<<<<<(ちょいと越えるのが難しい壁)<<智秋先輩<<<<<<<<(神の壁)<<<<<<<<<榎穂

ロコツ過ぎる図だな!しかしいいのだ、俺は俺のまま、60年代のステージでザ・ドアーズのジム・モリソンが公開リアルオナニーをして観客をアジったように、俺も俺としてエロスケ読者をアジろうじゃないかっ! 鳴れよ今は亡きレイ・マンドレクの呪術的オルガン! ハートに火をつけて!(C'mon baby light my fire!!)
オールド洋楽ネタはこれくらいにしといて、陽奏ルートの何が悪いかというと、

セックース→なんか気ノリしない付き合い→セクシャルセックース→なんか気ノリしない付き合い→セクシャルバイオレットNO.1→何か気ノリしない付き合い→ラスト付近で泣く(自分=陽奏の思いはあなたに伝わってなかったのね的)→エンディング(あれからお互いの思いを確かなものとしましたとさ)

……どっせーーーーーーーーい!
アンタ!あの娘のなんなのよ! さっきから繰り出すネタがやたらと古いが、それに気づいてそれを気にするおまーさんも古いんだから気にするな!(ひどい論法)
しかしこれでは、主人公はただの種馬ではないか。お互い「好き」ということになってはいるが、ただのセックスフレンドではないか、と、俺がイチャラブゲーにおいて一番嫌な形容を使わせてもらおうか。
そう、あまりにスムーズすぎて、そこにはなんの愛もない。ていうか、お互いがお互いを「伝えよう」としてないので、まるでただの壁うちテニスみたいなもんだ。スカッシュだってもっと対人コミュゲーだぜ! この壁うちテニス的「肉体は繋がってるけど、心は壁を相手にしてるよう」なのは、見ていてつらかった。なまじ表面上はイチャラブの風体をしているがゆえに……
さらには、このゲームのブロック構造が、この場合ほんとに「壁打ちテニス」的なそれしか機能してねえ! それが余計に寒々しい!

それと反しているのが、冬桜シナリオなのだけど、こっちはこっちで、ただサカっているだけ、のように見受けられました。さっきの進行表で、セクース部分以外のところを、「なんかポワポワしたワンコ的関係」と言いかえてほぼ成り立つというか……これはこれであまりに刺激がない。
イチャラブを勘違いしているフシのあるライターで、ほわほわ系シナリオに、「何の障害もブチこまない」睡眠系のシナリオにする、という傾向があります。まあこれもそれに該当するでしょうか……救いは、この幼馴染キャラがそれなりに元気なキャラなので、先ほどの陽奏ルートに比べればセックスフレンド感は大分ないですが、それでもなあ……まったりしすぎやねん。
それから、わたしが(ある程度は)幼馴染ゲー論として書いた、夜のひつじ「幼馴染と十年、夏」のレビューでも書いたことなんですが、この二人には、このルートにおいて「積年の思いを経て結ばれた喜び」も薄ければ、「その思いの爆発」もうすく、果ては「互いを思いやることによる、幼馴染的説得力、絆」も薄い。別にこれじゃあほんとに「御近所の都合のいい女の子」程度じゃねえか。

そう、このあたりの評価が低くなるルートにおいて、わたしがひしひしと感じたのは「都合のいい」ということ。都合のいい人間とのイチャラブなんて、何がたのしいか。
そういえば、このメーカの姉妹ブランド(Dドラ)は、ツゴウノイイ彼女、というゲームを出してましたね。まあそれは、年度が開くので関係ないですが……まさかね。

そこんとこがまだマシだったのが、暦シナリオだったです。
かなりオタク的フレーバーをぶちこみ……いや、言葉を濁すのはよそう。

らき●すたのこ●たなんだよお前は!!!!!(伏せ字になってない)どっからどう見てもな!行動原理すら同じかよ!キャラも……こ●たに妹属性をハンパに入れただけかよ!

いやー、ここまでのロコツなパロは、さすがに当初は心配になりました。でも、このメーカ、後になってもこういったネタを入れてくるので……このあたりに生理的に拒否感を示すユーザも多そうだな。
でも、それだけキレッキレなキャラだけあって、そこまで退屈することもありませんでした。ここにきて、まっとうにこのゲームを評価出来そうです。

でも……それでも、このあとに控えている、恐らく海原(愛ゆえの呼び捨て)と言うライターが書いたシナリオに比べれば、落ちます。なんでかっていうと、イチャ的なキレ。ネタの使い方のキレ。
ごく簡単な例を出すとすれば、海原シナリオにおいては、この暦は、似非こなた(あ、書いちゃった)として、自己をこなたと扮してネタにする、メタネタくらい、平気に繰り出してくるのです。ただ、このルートでは、それは薄い。薄すぎる。
まあこの主人公兄弟、結構金銭面ではしっかりしていて、親からの仕送りはほぼ生活費、あとはバイトで稼ぐ、という、非常にまっとうな考えをしていて(学生時代の俺よ見習え)で、妹がバイトで稼いだお金でお兄ちゃんにプレゼントをするようなことなんかあっちゃったりして、それはそれでほっこりするのですが……プレイ後しばらくの年月がたって、いまそれをぼんやり思い出すくらいのことですんで、鮮明な記憶じゃないんですね。鮮明なシーンでもなかった。

あと、近親相姦かどうか、については、大変ぼかされております。全然言及がない。昨今の「近親? いーじゃんいーじゃん!」なノリとも違ければ、妙に某ま●ろ色のようにじくじく悩むものではない。ちょっと飲みこみにくいこんにゃくをごくり、とするかの如く、みたいな「程度」です。ちなみにこんにゃくは自慰用ではない。まあ道具プレイはありますけどな……プレステのコントローラで電マとか。

だから……まあ、総括して想うのは、このゲームはなんなんだ?!ってことです。

B級。うん、それで答えは片づけられるような気もします。
それでも。
それでも、と、わたしが留保をつけるのは……海原と言うライターの異能なのです。

では、以下ふたつの「善きイチャラブ」ルートについて語ります。

先輩ルートですが、さっと流します。実はこのルートは、まだ海原の本領が出ていないというか……なんというか、ぽわぽわ系のルートでして。
それは先の冬桜ルートでも同じですが、こちらはより「性欲!万歳!」なルートでもあります。だいたいつねにおっぱいおっぱい言ってるしな主人公! 
で、それに流されるような形で先輩も恋人関係をするのですが、ひとつ強烈なところがあった。それはラブホでのフーゾクじみたプレイ。いや、これはよかった。どこかで「湿り気はひとのプライドを静かにほぐす」と書いてありましたが、まさにこの密室空間において、なんかテンション高くなってしまったふたりが、ラブラブチュッチュですよ。
そう、このあたりの、「ナチュラルにテンションが高くなって、中ばやけっぱちになることすらいとわない」のが海原のイチャラブ!
大体のライターだったら、ブレーキをかけるところを、このライターはおもいっきり踏む!踏んで踏んで踏みまくる!

……だからこそ、そのアクセル間違え踏みが、このキャラ(先輩)の場合、ぽわぽわ光線(実際、そのぽわぽわさを、作中でも積極的にネタにしてる)で相殺されてしまっている、という現象が。
実際、この後のこのメーカの「海原担当キャラ」を時系列で追っていっても、「モロ気弱キャラ、ぽわぽわキャラ」はほとんど出ていなかったはず。それが少しづつ、気弱でも変化球を出してきたのが、妹スタイルの苺花(オタ四女)とか、最新作・妹スパイラルの凛火とか……。なんか「成長」とは関係なさそうなライターですが、思い返せば結構成長してるんですね……(失礼)


で、だ。
ここからリアルマッコイ(本物)のイチャラブについて話をしようか。
そうだ、榎穂ルートだ。
見るからに典型的なツンデレ。金髪ツインテ、碧眼(日本人デスヨ)にしてツリ目、リボンの色にしても制服の色にしても原色、ああ、キツそうな娘……
と、お思いでしょう。そうですよ。その通りです。
ですが、この娘にあって、他のツンデレには明確にないものがあります。……それは「信頼」。

だいたい、ツンデレ√になると、
「はじめ嫌悪→なか気づき→おわりラブ」
の方程式になってきます。もちろん懸命なる諸賢は、最近のツンデレが、疑似ツンデレ、似非ツンデレ、なんちゃってツンデレであることをとうに見抜いているとおもう。つまり、
「はじめなんちゃって嫌悪(プライド)→なかラブ→おわりラブラブ」
いや、俺はそれで一向にかまわんッ!なのだが、たしかに原義的ツンデレの強度は下がった、と嘆くむきもわかるっちゃわかる。
そんな貴方にこの榎穂√をささげたい!
このルートにおいては、あの壁打ちテニスはない! あるのは、真の意味でのコミュニケーションだ! ブロック構造も、連綿たる物語の否定、なんてたわごとは吐かせない……まさに「シチュの横溢」と評すべき、システムといちゃシチュが融合しているっ!
(まー、それを「同人エロゲライク」と冷酷に断ずるのも可能だけど、わたしはそれをしたくない)

ふたりはファミレスでバイトしとるのだけど、まあこの職場がリアルったらリアル。Piaキャロなんてどこの話だっつうぐらいに……ほぼ間違いなくライター・海原は、ファミレスでディープに働いてたな、と思わせるくらいに、リアルリアルリアル!ラブラブルの比じゃないぜ! 食材をパズルのようにして繰り出す、とか、わりにダラけがちになる掃除とか、日々の業務とか……なんでこれほどシンパシーを感じるかっていうと、わたしもそれと近いとこで働いてたことがあったし、今もそうだから。
で、そんな「古株バイト」なふたりは、ファミレスという戦場では、まさに「戦友」。その信頼感でもって、愚痴をこぼしあったり、ほぼアイコンタクトで指令を飛ばし合ったり、お互いをフォローしあったり……
なんでそれでツンデレかってーと、もともと榎穂自身が上昇志向が強く(あんま使いたくない表現だな……)、というとこがあるんでしょう。男に負けてらんないわよ!という少女ではないですが、その後、彼女が「お店をやりたい」ということを踏まえるにつけ、「負けてらんない!」の気概は、間違いなく登場キャラ中で一番でした。
それが彼女の強みにして、弱み。負けてらんないってことは、その言葉の通りに、負けられないんです。最悪でも、勝ち続けなくてはならない。……と、書くと悲壮ですが、まあ、完璧に近いかたちで己を保っていなくててはならないというか……(充分悲壮やん)
でもそれは彼女が選んだ道です。それを引き返すわけにはいきません……それでも、それでも、ひとは弱いです。
別に主人公がそこに付けこんだ、ってわけでもないです。実際、主人公自身「俺のやってるこれは付けこみなのか?」って自問しているくらいです。そして、それでもいいとする。なぜなら、榎穂のことが心配だから。

さて、ここで、イチャラバー諸氏にとっては極めて評判の悪い「恋人ごっこ」がはじまります。榎穂の寂しさを埋めるためです。
この寂しい……少なくとも、見ている限りでは大変寂しい彼女。彼女はそれをとやかく言われるのを「大きなお世話!」と断罪します。そりゃそうです。強くなろうとしている榎穂に「弱くたっていいじゃん」とする(「弱」に引き込もうとする)のは、確かに侮蔑に近いなにかかもしれません。
ですが、彼女自身が……なぜか親から離れて独り暮らしをしている彼女が、妙に気になる主人公(ていうかこのゲーム、完全√選択式なので、榎穂を選ぶっちゅーことは、榎穂のことが自動的に気になってるっていうシステムなんですが、まあそこんとこは置きます)。そこに「恋人になりたい」というよりは、ちょい身勝手な「おめーのこと放っておけるか!」という、みょうちきりんな正義感(に似たもの)なのです。
自分のやってることが偽善だっていうことがわかっていて、それでもやる。それでも恋人ごっこをしてみて、まあパスカル的に「気晴らし」をしてみる。

数学者にして哲学者・ブレーズ・パスカルは、この手の「気晴らし」でもって、人生の悲痛から目をそらすのを、ヘイトした人間です。ですがそのパスカル自身、さんざっぱら社交界で「気晴らし」してた人間でもあります。だからこそ、逆説的に「塩水じゃ喉は潤せないよ」という教えでもあります。

『恋愛の情念について』でパスカルは次のように書いています。
「人間は、精神のどこかにこまやかな所があれば、恋愛においてもこまやかである。というのは、人間は、どうしても自分の外側にある何かのものにゆさぶられがちであるから、もし自分の考えに逆らってくる何者かがあれば、すぐそれに気が付いて、避けられるからである。こういうこまやかさをあやつれるのは、純粋で、上質で、高雅な理性の働きによる」

まさにパスカルの言うとおりの√なのです。このふたりは、ただ聡いだけに、お互いの欺瞞っちゅうものを見抜いてしまいます。
じゃーどうするか。欺瞞を欺瞞として押し通してしまうのです。この手のレトリックを海原はよくつかいます。だから俺は海原が好きだ。海原は、この手の人間の本質的弱さから逃げない。でも、決して説教をしない(残響が説教しまくりなのに対し!)。海原が提示するのは、あくまで「現実界での脱臼的パラフレーズ」なのです。見事にギャグとしょーもないシチュエーションでもって、表面騒がしいけれども、見事にストンと解決をしてしまう(非常にナンセンスなやりかたなんですけど)

この恋人ごっこにしても、そもそもナンセンスなはじまりでしたが、まあ恋に恋するふたりは、見事に自分たちの策にハマってしまいます。……結局、楽しいんですよ。
「強く愛しているときに、愛している人に会うのはいつも新鮮だ。ちょっとの間も離れていると、心の中にぽっかりと穴のあいたような気がする」

パスカル先生! 貴方は『プロヴァンシアル』で神学論戦張ってるときに、むしろエロゲの1√(例えば依存系)でも書いてくれたら、時代を越えた神学派哲学エロゲライターとして、元長もすかぢからもリスペクトを集めていただろうに! というネタはさておき、このパスカルのことばは、この√においてまたも当たっているといわざるをえない。メールなんかしちゃったりしちゃってね!しかも榎穂、あの暗号といわれるギャル文字とか使ったり!  このあたりの「清楚美少女性」を侵犯するようなそぶりをキャラに持たせるのも、また海原の強みだ!

さて、恋人ごっこには終わりはきます。でもこの終わりは、幸福な終わり……そう、「本物の恋人」になるために、主人公自ら、「告白」という形で終わらせます。
ていうか、二回も告白しちゃってるんですよ。このふたり。……でも、二回目の告白は、まさに真の告白……っていうと、ちょい違うな。本人たちは真の告白って思っているんでしょうが、「互いの境界のブレイクスルー」ならすでに終わっているわけで。また、最初の告白だって、わりにマジでしたし。冗談半分だけど、半分は冗談ではない。
……というレトリックはさておき、ここでの告白は、ほぼ「プロポーズ」に近いものです。いやーーーーーー、甘い! ここまで榎穂とバカやってたのが、あらためて

「南雲榎穂さん、付き合ってください」

というこれは、もうプロポーズじゃないっすか! そりゃあ即座に榎穂もOKですよ泣きながらな! そう、この√は、ほかのどの√にくらべても、生活臭ってもんがある……それが甘さに結びついたらどうだ? イチャラブのリアリティの担保ってことだよ! わかりやすくいえば結婚ってことだよ! いわせんな恥ずかしい!
ここからのイチャラブ怒涛はすごい! すでにこれまでの過程で殺しにかかっているにも関わらず、ここからのツンデレ……「デレ」の落差っちゅうものが、古今のエロゲの中でも、トップクラスに「ひどい(笑)」もんだからです。
なんたっても、主人公の事を想うだけで

「あは、あは、あはははははは! 候! こうーーーー!(はあと)」

と笑いだし、周りのキャラに「誰よあの娘!」と言われるくらいのキャラ崩壊! 当然のように榎穂宅にとまっては、「いやー、いやー、なんというか……朝帰りですなー」と妹に呆れられるくらいだよっ!

海原の美点は、このように、他√でのキャラをも積極的に絡ませるところで。とくに榎穂のためにホームパーティをはじめるところで、全ヒロインを登場させ、にぎやかにパーティをはじめるところの幸せぶりっていったらどうだ!
最近のハーレムものでは、ここで水面下で主人公に対するアプローチをするのが定番ですが、ここでそんな茶番はありゃしないね! このホームパーティのことを考えるだけで、昨今のそんなアプローチの浅はかさが見えるくらいだ!(言いすぎ)
ここらへんで全キャラ(ヒロイン)が出る、ここでもって全キャラは引き立て役になる……のですが、この多幸感はどうよ! キャラが生きている! 最初にdisった陽奏もクール系キャラとして味わいを見せたからかいをする! 冬桜も見事に幼馴染として、友誼でもってアシストする! 暦なんて、この√ではベストサブキャラとして勲章をあげたいくらいだ! 「まさに理解ある家族」というスタンスで、ときに兄の妹、ときに榎穂の妹(!)として、サポートをする!


このように幸せに包まれるこの二人ですが。同時に、やっぱり考えてしまうんですよ。
それは榎穂を「自分の仕事と、榎穂との関係のため、距離を置きながらも愛している」母親……実はバイト先の、本店がわの上司だったり、の存在。
この母親を、半ば捨てる格好でいてしまっていいのか? このあたりの問題を、榎穂は……思い起こせば初期から抱いておりました。巧みなストーリーテリング!

「同じひとつの考えに執着していると、人間の精神は、疲労し衰弱してしまう」

パスカル先生の仰るようなパターンを、後半ふんでいきます。で、恋人としての甘やかな時間をすごしたあとで、榎穂は母親と、親子としてのナシを……「独り」でつけようとします。

――バカ野郎、と。主人公は。

そこからの巻き返し(時間にしてすごい短いシーン)は、まあ、まあ、海原しか書けねえシナリオだよ! マルセルさんが「妹スマイル」レビューで夏希√で絶賛したような「ひとが、ひととして幸せをつかみ取る」姿を、脱臼的なギャグシチュでもって語りきる、このライターの手腕よ!
まあ…でも、この√ひとつだけで、フルプラゲーム一本かってもらうっていうのもなぁ……でも、だ! 真に良質なイチャラブツンデレ√をしたければ……この作品を買うべし!

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